今回は7月8日放送のグッとラック!からレポートをお届けします。
この日の放送では、辛坊治郎氏がコメンテーターとして登場し、TBSがこれまでダム建設反対運動をしきりに煽ってきたことを批判しました。
今回のレポートは放送法と関係するものではありませんが、放送内容を紹介し、ダム建設反対運動について紹介します。
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【スタジオ】
国山ハセンアナウンサー(以下ハセンアナ):大雨特別警報も毎年のように出ているという状況ですね。中でも甚大な被害が出ているのが球磨川の周辺なんです。こちらをご覧ください。暴れ川と呼ばれていたこともあったと、水害が今までも確認されているわけですけれども、決壊地点がここにあります。以前、実は近くに流れる川辺川という川があるんですが、川辺川ダムの建設予定、計画があったそうです。しかし、のちに中止となっていますこれが一体なぜ中止となってしまったのか。ダムがあれば今回、水害が軽減できたのではないかといった指摘の声があります。中止になってしまったその理由、VTRでご覧ください。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):熊本県を襲った豪雨により、ほぼ全域で氾濫を起こした球磨川。その支流の1つ、川辺川の合流地点付近でも2カ所で氾濫し、周辺に大きな被害をもたらしました。
熊本・相良村よりレポーターの報告『標識がなぎ倒されていたり、ここら辺も被害が出ていますね』
ナレ:実は今、この水害を軽減できたのではないかとして議論になっているのが、かつて川辺川に造られる計画があった幻のダムの存在です。おととい「グッとラック!」に出演した元大阪府知事、橋下徹さんもこのダムを巡り疑問を投げかけていました。
橋下徹元大阪府知事『実は球磨川の上流の方に川辺川という川がありまして、その川辺川にダムを造るかどうか2008年に大論争になった。熊本県知事は「ダムを造らない」という判断をしました。この時メディアも大騒ぎになって「英断だ」「素晴らしい」ということでダム反対派が大騒ぎした。ダムを反対・中止にしたのであれば、ダムによらない治水をしっかりできていたかという検証が必要なんです』
ナレ:1965年には、戦後最大の洪水と呼ばれた球磨川の水害により1万戸以上が浸水するなど人吉市の市街地に大きな被害をもたらしました。その翌年、球磨川の水害対策の一環として国は支流の川辺川にダム建設を計画。ところが、土地の補償問題、税金のむだづかい、環境問題など地元住民による反対運動が根強く計画は40年にわたって進まず。ダムに頼らない治水について、熊本県の蒲島知事は…
熊本県・蒲島郁夫知事『ダムによらない治水を12年間でできなかったことが非常に悔やまれる。早く逃げることが大事というソフト面を大事にした。(今後も)ダムによらない治水を極限まで検討する』
ナレ:はたして、ダムは必要だったのでしょうか。それとも必要ではなかったのでしょうか。
【コメンテーターによる解説】
ハセンアナ:川辺川ダムの中止というのは橋下さんもおっしゃっていましたが?
立川志らく氏(以下志らく氏):あれからいろいろと新聞見たり、知り合いに聞いてみたりしたらば治水対策は途中までしていたんだけれども、結局、国のほうはダムを造りたい、お金は出さないと。結局、治水の作業が頓挫してしまってさらにフロンティア堤防、それすらもなくなってしまったと。この水害が起こる数週間前に市民団体がフロンティア堤防を復活させようという嘆願書を出したという、その直後の今回の水害だということ。ただ果たして、ダムがあれば助かったのかどうかというのは辛坊さん、どうなんですか?
辛坊治郎氏(以下辛坊氏):全くそのとおりで結論から言うと、ダムがあっても防げなかった可能性のほうが高いですよ。ただし、ハセンさんがダムがあったら軽減できていたかもしれないとおっしゃいましたよね。私が出てくるからわざと言ったんじゃないかぐらいの気持ちで、なぜかというと、川辺川ダムの建設反対運動にはこのTBSだの、テレ朝だののニュース番組が徹底的にバックアップして、ダム反対! 中止! というのを徹底してあおった結果、中止になったんですから。それを忘れて言うなよ、と。みんな覚えてる、アーカイブ調べたらこの局のアーカイブのニュースに川辺川ダムの建設反対運動をどれだけ取り上げたかというぐらい取り上げましたよ。ただし、できてたからといって防げたとは思えない。もうそういう発想をすべきじゃないんですよ。ダム造ったってね、そこに水があふれて一気にあふれたら危険だから。大切なのは、日本中でこういうことが起きると。ただし、2つ言い方があって、私もニュース番組で言うときには、皆さん、ひと事ではありませんよ、皆さんが住んでいるところでも起きますよ、気をつけてくださいと言うんだけれども、実はこれはうそなんです、安全な地域もあるんです今回被害が出ているのは、全部、ハザードマップで危険だと言われていた地域なんです。ハザードマップ上、危険じゃない地域もあるんです。何で危険な所に人が住んでんの?という話なんです。特に問題なのは、高齢者福祉施設がやたら多いんですよ。なぜかというとね、高齢者福祉施設は民間事業ですから地価の安い所に建設しようとするんです。そうすると危険な所に建っちゃうんです。そうすると、高齢者の方が避難できずに死んじゃうんです。だったらどうすればいいかというと、ダム造る金、堤防をかさ上げするか、防潮堤を金でそういう所の施設に関しては補助金を出して安全な地域に造ってくださいねという。危険な地域に住んでる人はお金出しますから安全な地域に家を建て替えてくださいねという施策を地道にやるしたないんだけど、全く行われない、なぜかというとね構造的な問題があって、政治家はそれじゃもうからない。まともな政治家もいますけどたちの悪い人たちは利益誘導で地元の建設業者に金を流して大きな防潮堤造ったり、堤防造ったりすることで、世の中のお金が回ってるから、個別の家に引っ越してもらう、小さな社会福祉法人に引っ越してもらうためにお金を使う、自分の利益にならないというんでやらない。その結果、これが起きているんです
志らく氏:人々の命を守るためのダムじゃなくて自分たちの懐を温めたいがために政治家はダムを造りたいということなんですよ。でも、TBS批判に対しては、TBSを代表して言ってください。
ハセンアナ:私からはノーコメントです、それは言えないですけど。
辛坊氏:ダムの反対運動でダムだめですよ、それについては賛否あるでしょう、そういう立場でやるのもいいでしょう、だけど、じゃあダムの建設が終わったあと治水どうするんだという、そこまで目を広げないと。
志らく氏:結局治水ができていなかった、フロンティア堤防すらなくなってしまった。それだと市民が不安だから何とかしてくれと言っているんだけど、結果こうなってしまった。
辛坊氏:フロンティア堤防もそうなんだけど、大規模な建設工事で命を守れるかというとそれを越える水が来たら終わりなわけで、今、そういう時代だから、ハザードマップで危険な地域は分かってるんだから、そういうところに人が住まないよう対策するしかないんだ。
志らく氏:橋下さんもこの間出たときに山の斜面に住んでいる方々、土地を守るという気持ちはあるんだけど、そういった人たちに補償しなきゃいけない。さらに「ひるおび!」で八代弁護士が同じことをおっしゃってました、老人ホームとかとにかく安いところに建ててしまうんだと。この人たちの命が本当に危ないんだと。そこら辺を何とかしなくちゃ根本的対策にはならないということですね。
辛坊氏:広島の水害のときにもう明らかだったんだけれども、もともとの地名で言うと、ここは危険地帯だということが類推できる地名がついてたんだけど、町名変更でそういう名前がどんどん忘れ去られて戦後のというか、ここ数十年の人口が爆発しているときにどんどん危険な地域に人が住み始めたと。歴史の知恵もあるんです。江戸時代、住んでなかったでしょという所に実は住んじゃいけない。今、幸か不幸か日本の人口、急激に減少し始めてますから、だったら安全な所にまず住もうよという、それは社会的に進めることが大切です。
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九州で降り注いだ大雨によって甚大な被害が出ています。
今回は全域で氾濫を起こした熊本県の球磨川の支流の1つ、川辺川にダムを建設するという計画についての部分を取り上げます。
辛坊氏は
「ダムがあっても防げなかった可能性のほうが高いですよ。」
「ただし、(ダムが)できてたからといって防げたとは思えない。もうそういう発想をすべきじゃないんですよ。ダム造ったってね、そこに水があふれて一気にあふれたら危険だから。」
としながらも、これまでTBSが煽ってきたダム建設反対運動を批判しています。
「川辺川ダムの建設反対運動にはこのTBSだの、テレ朝だののニュース番組が徹底的にバックアップして、ダム反対! 中止! というのを徹底してあおった結果、中止になったんですから。それを忘れて言うなよ、と。みんな覚えてる、アーカイブ調べたらこの局のアーカイブのニュースに川辺川ダムの建設反対運動をどれだけ取り上げたかというぐらい取り上げましたよ。」
自らが出演するテレビ局の報道を批判することは勇気のいることだと推察できますが、辛坊氏は臆することなく批判しました。
ではこの川辺川ダム建設をめぐる反対運動とはどのようなものだったのでしょうか。
まず放送では触れられていないのですが、このダム建設中止が決まったのは公共事業批判をしていた民主党政権下の2009年です。
この時の様子を元財務官僚だった髙橋洋一氏は以下のように振り返っています。
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この水害で思い出されるのは、川辺川ダムの建設中止だ。2009年8月30日に衆議院議員選挙があり、民主党が大勝、政権交代が成った。民主党の公約の中に「コンクリートから人へ」というものがあり、そのシンボルだったのが「東の八ッ場ダム、西の川辺川ダムの中止」だった。
その当時、マスコミは民主党への政権交代という熱気の中で、八ッ場ダム・川辺川ダムの建設中止に異を唱える向きはなく、大賛成の大合唱だった。テレビのコメンテータとして出演している人までも賛成一色だった。
《髙橋洋一 九州水害で露わになった民主党政権「ダム建設中止」の大きすぎる代償
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74031
》より抜粋
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辛坊氏も番組で言っているように、ダムに頼らない治水を実現するべきで、ダムはいらないという意見当時あったでしょう。
テレビ放送は賛否どちらの意見もとりあげることが放送法で求められています。
TBSだけでなく、当時も今も物事を一面からしか報じないマスコミの体質は大きく変わっていないと言えるのではないでしょうか。
また2009年当時はSNSやネットニュースなど、他のメディアが今ほど発達しておらず、テレビの影響力が今以上に大きかったことは想像に難くありません。
弊会、「放送法遵守を求める視聴者の会」も設立さていませんでした。
そんな中で「マスコミは民主党への政権交代という熱気の中で、八ッ場ダム・川辺川ダムの建設中止に異を唱える向きはなく、大賛成の大合唱」をしていたのですから、報道姿勢に問題があったと言わざるを得ません。
辛坊氏はそのような状況を振り返って、批判を加えたものと思われます。
視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けてまいります。