2018年 2月21日のTBS「ひるおび!」の報告です。
この日のひるおびは「報道しない自由」を行使した悪質な放送を行っていたことから、今回、調査対象に加えました。
問題の放送箇所は、番組がこの放送の前日(2月20日)に行われた、平昌オリンピック男子500mショートトラック競技予選7組の試合について放送した場面です。
この競技は、1週111.12ⅿのショートトラックを、4人の選手が同時にスタートした上で、その滑走する速さを競うものです。今大会では予選、準々決勝、準決勝、決勝が行われ、各ラウンドの上位2位が次のラウンドに進出する勝ち抜き方法で行われていきます。
あらかじめ申し上げれば、この競技ではレース中の追い越しはいつでもどこでもOKですが、前の選手を押す、あるいは引っ張るなどの妨害行為をすると失格になり、次のラウンドには進めません。接触や転倒などは日常茶飯事で、今回のオリンピックでも接触や店頭の場面が多く見られました・
今回の放送では、TBSが「報道しない自由」を行使していたため、まずは実際の試合を振り返ります。
【実際のショートトラック競技予選7組】
今回の予選7組に登場したのは、日本代表の渡邊啓太選手、韓国のファンデホン選手、アメリカのトーマスインサク・ホン選手、北朝鮮のチョン・グァンボム選手です。
まず、1回目のスタートで、レースが始まった序盤、北朝鮮のチョン・グァンボム選手が転倒。その直後に日本の渡邊啓太選手の足をつかむような行為をしました。チョン選手は体勢を崩して前方に倒れた後、右手で渡邊選手のスケート靴を明らかにつかんでおり、渡辺選手もスケート靴をつかまれたことでバランスを崩していました。
この行為で渡邊選手が転倒することはありませんでしたが、スタートは仕切り直しになりました。
問題は仕切り直した後の2回目のレースでも発生しました。またもや北朝鮮のチョン選手がレース中盤で転倒。今回はコーナーを回っている最中にバランスを崩したため、選手側から見て右側のコーナー外に滑る格好でチョン選手は転倒しました。単に転倒しただけなら問題にならなかったものの、その時チョン選手の右側を滑っていた渡邊選手に右足を伸ばしてスライディングをしながら転倒したため、SNSを中心に物議を醸しました。
今回も渡邊選手は転倒することなく、2位で予選を通過しましたが、チョン選手は妨害行為で失格となりました。
この予選7組のレースはこのような流れで進みました。
では、この予選を「ひるおび!」はどのように報じたのでしょうか?
実際の放送を見てみましょう。
【「ひるおび!」で報じられたショートトラック競技予選7組】
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ナレーター「昨日の男子500m予選に北朝鮮選手が登場すると、旗を北朝鮮の国旗に持ち替え懸命に応援します。」
北朝鮮応援団「(北朝鮮選手) チョン・グァンボム!」
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北朝鮮のいわゆる「美女応援団」の映像が流れ、上記のようなナレーションが入ります。
その後、問題の予選試合の映像が流れ、下記のようなナレーションが入ります。
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ナレーター「レースは韓国の選手がトップ。日本の渡邊啓太選手は2位でフィニッシュ。北朝鮮の選手は転倒などもあり、4位に惨敗。これには北朝鮮の美女応援団も少し落胆しているようにみえます。」
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このナレーションの最中に流れた予選試合の映像は、主に下記の映像でした。
・スタートの瞬間からチョン選手がスケート靴をつかむ直前までを、選手のスタート地点真上から撮影した映像
・2回目のレースでチョン選手が転倒する直前から選手たちがゴールするまでを、ゴール地点から観客席に上った場所で撮影した映像
・コーナー外に飛び出した転倒直後のチョン選手を正面から撮影した映像
・チョン選手以外の選手がゴールした瞬間をゴール脇から撮影した映像
・チョン選手が転倒する瞬間を正面から撮影した映像
・落胆する北朝鮮の応援団の映像
ここに問題の「スケート靴をつかむ」場面は入っていません。また、チョン選手がスライディングした映像も、その他の映像より故意にスライディングしていることが分かりにくい映像を使用していました。
この場面について様々な意見があるかと思いますが、ひとまず次に進みます。
落胆する北朝鮮応援団の映像が流れた後、下記のようなナレーションが入りました。
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「しかし、応援を終え会場を出るころには笑顔が戻っていました。」
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会場を笑顔で後にする北朝鮮応援団の映像が流れ、ショートトラック予選を伝えるVTRが終わりました。その後、北朝鮮応援団が北朝鮮に戻る日程が伝えられ、CMに入りました。
CM後、読売新聞の紙面を用いて、韓国国内でも北朝鮮に対して冷めた雰囲気があることをスタジオ内で伝え、コメンテーターのコメントに移ります。
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恵キャスター「始まる前は八代さん、いわゆる合同チームであったり統一国旗であったりと、印象的でしたけれども・・・」
八代英輝コメンテーター「まあ、そうですね、政権主導の融和ムードという演出といった形ですけれども、まあ応援というよりも、もともとプロパガンダですから、やはり韓国の方々が冷めてみるのも当然と思うのですけれども、昨日のショートトラックも縮図だったなと思うのは、北朝鮮の応援チームはすごい熱入れて応援しているんですけれども、ショートトラックで協議している北朝鮮の選手がおよそフェアプレーからかけ離れたような汚いやり口で戦って、結局失格になったんですけれども、それを応援するっていう空気感が、やっぱりなんか、みんなとずれてるんでしょうね。やはりそこが、まあ、どうしても韓国の人たちにも受け入れられない部分というのは、だんだん、だんだん見えてくるんだと思いますね。」
恵キャスター「本来、だから、ちゃんとその出場枠を獲得して出てきているっていう出方ですらないんですもんね。」
八代氏「ほかの選手の妨害をしたりですね、2度も転倒したりしてですね、これはちょっとひどいなといった感じですね。」
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八代氏のコメントの後、恵キャスターが田中里沙コメンテーターと立川志らくコメンテーターに話を振り、北朝鮮や北朝鮮応援団に対する不信感・不愉快な思いをそれぞれコメントしてお天気コーナーに移りました。
いかがでしょうか?
全体として、いわゆる「美女応援団」の動向を伝えるニュースであったとはいえ、ショートトラック競技予選7組の試合の様子と結果に触れている以上、2度のチョン選手の妨害行為にも触れるべきなのではないでしょうか?
2回目の妨害行為は、1回目のように悪質な切り取りはせずに放送していましたが、それでも一瞬のうちに起きたことなので、視聴者には妨害行為とは分かりづらい構成となっていました。スロー映像や妨害行為があったことを伝える解説はなく、予選試合を見ていない視聴者は「ただ単にチョン選手が転倒して予選敗退した」と考えたことでしょう。
八代氏は、妨害行為の映像がなかったにもかかわらず、チョン選手の妨害行為に触れていたので、その点は評価できました。しかし、八代氏のコメント中に実際の妨害行為をインサートすることもなく、八代氏のコメントとは関係のない「美女応援団」の映像を中心にインサートしていたのはなぜなのでしょうか?
妨害行為の映像を準備していなかったのか、流したくなかったのか、真相は分かりませんが、いずれにしても妨害行為について制作陣が触れるつもりがなかったということなのでしょう。
今回の放送では、TBSが「報道しない自由」を行使しており、一般視聴者の誤解や勘違いを招く放送内容となっていました。「報道しない自由」については過去にも問題となっており、加計学園獣医学部新設問題において「加戸証言」がほとんど報道されなかったことは記憶に新しいかと思います。
SNS等の普及によってマスコミの意図的な「切り取り」や「つなぎ合わせ」がすぐに拡散されるようになった現代において、いまだに悪質な編集を行うTBSの報道姿勢にはあきれ返りますが、このような偏向報道をなくしていくためにも当会は存在しているのだと強く思いました。
今後も当会では偏向報道の是正と国民の知る権利を守る活動に力を入れてまいります。