2018年10月30日 Nスタ

2018年10月30日 Nスタ

Nスタ、2018年10月30日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・韓国の徴用工の訴えが韓国内の裁判所で認められたという報道がされた部分

以上について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、部分となります。
では、さっそく放送内容をみていきましょう。

徴用工裁判確定までの流れの説明。
キャスター、ホラン千秋さん(以下千秋)が説明をしていた。
元徴用工たちが日本で裁判を起こして敗訴。その後、韓国での提訴でも1審、二審で請求棄却されたことを説明。
そこから

ホラン
これまで4人の訴えが認められなかった背景にあったのが、日韓請求権協定です。この協定で、日本は韓国に5億ドルの経済協力。当時のレートで1800億円ですね。この経済協力を行いますよということで第1条に掲げ、その第2条として『両国と国民(法人を含む)の財産や請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されたことを確認する』と条文に記していることから、個人の請求権に関しては、日本政府も韓国政府も解決済ですよという立場を取ってきたわけです

キャスター 井上貴博さん(以下井上)

この協定を前提にしてある意味日本と韓国、仲良くやっていきましょうと、国交正常化もなされたわけですもんね。

千秋
しかし、今回の裁判などにからみまして、韓国の最高裁はですね、2012年のことです。『植民地支配に直結した不法行為で生じた損害賠償請求権は協定の対象に含まれない』。つまりざっくりと言いますと、ここで解決したよとされた徴用工においての個人の請求権は解決していませんよという判断を示しまして、高裁に差し戻すという判決を下したことから、実際に翌年です。2013年にソウル高裁はこれまでの判決を覆しまして新日鉄住金側におよそ4000万円の賠償を命令しまして、今日5年の月日を経て、最高裁で、まあ判決が確定した、ということになるわけなんです。

井上
与良さん、この違いというのがよくわからないんです。
両国間で解決済だとしていたものが個人の請求権がいやそうじゃないという判断をした。

毎日新聞専門編集委員与良正男さん(以下与良)

あのこれは、当時から論理的ではないと私自身も思います。これを引き継いで、当然まだ個人のこの件に関しては生きてるんだという判決だったと思うんですけども、韓国の司法がね、法よりも情に流されがちだというのはこれに始まった話じゃないんですよね。とりわけ日本との関係になると、どうしてもなんか国民感情みたいなのが反映された判決が出るってのはものすごく繰り返されていて、今回もやっぱりそれに近いと僕は思っています。

井上
これ、賠償金は払わなきゃいけないんですか?

与良
あの、当然払わないというのが日本の立場ですから、企業側も払わないと思います。その場合は要するに差し押さえという手続きにでる可能性もあります。ただ、韓国側に新日鉄住金はあんまり財産を持ってないとも言われています。そうすると日本の財産を差し押さえるのかってまた別の手続きになってくると思います。裁判はそういう形で最高裁で確定しちゃいましたから、おそらく弁護士さんたちは進むと思うんですね。ただ問題はやっぱり韓国政府です。韓国政府はこれ喜んでるかっていったら絶対喜んでないと思います。今日本との関係っていうのを、今も決していいとは言えませんけども、慰安婦の問題とかまだあってね。ただ、悪化させたくないってのが今の文在寅政権の立場ですね。それとこの問題が慰安婦合意以上にちょっと深刻なのは経済に影響を及ぼしかねない。もしかすると日本企業が撤退するというような事態に発展させたら両国の経済にものすごい大きい影響を与えると。で、北朝鮮問題ってのは日本も抱えてる中で、やはり悪化させたくないってのがありますよね。だから今後はむしろ、政府がどうするか。まずですね、日本はああやって受け入れられないと言いましたけども、韓国政府はさっきのレポートだと、閣議やってるって言いましたね。やっぱり深刻に捉えてるわけです。どういう声明を発表するかね。まずそれを見てみたいと。まあ日本政府もまずその韓国側の対応を見てから考えるってことじゃないでしょうか。まあこれは深刻にしちゃいけないですね。

1時間後、再び同じ話題。
簡単に流れを説明した後、今度は原告の一人、イ・チュンシクさん(以下チュンシク)のインタビューから。

チュンシク
私たちは働いてご飯を食べての繰り返し、それで終わり。
お金は触ったこともない。
労務課で全部管理されていた。

ナレーター
原告のうち3人は裁判中に亡くなった。

チュンシク
裁判の最後を見るまで死ねない。
私が生きている間に清算してくれたら嬉しい。

ナレーター
そもそもこの問題は、1965年、日韓で結ばれた日韓請求権協定を根拠に日本政府は解決済みという立場をとってきた。

菅官房長官
完全かつ最終的に解決済み。
我が国の一貫しての立場であります。

ナレーター
しかし、事態は一変。2013年、ソウル高裁は個人の請求権は消滅していないとして原告側勝訴を言い渡した。その後、5年間審議は中断。迎えた判決の日。今日、最高裁は新日鉄住金に損害賠償を命じる判決を下した。日本政府は韓国の中日大使を呼び、抗議。

河野外務大臣
両国の友好関係の基盤となってきた法的基盤を根本から覆すものです。

ナレーター
安倍総理は・・・。

安倍総理
今般の判決は国際法に照らしてありえない裁断であります。
日本政府としては毅然と対応してまいります。

ナレーター
今回の判決を受けて韓国側はどのような影響を及ぼすのだろうか。

千秋
判決を受けて韓国側はどのような反応を示しているんでしょうか。ソウル支局にいる曽根さんに伝えてもらいます。曽根さん

リポーター 曽根英介さん(以下曽根)
はい。こちらはソウル市内にあリますヨンサン駅なんですけれど、その駅舎、非常に近代的なんですけれども、その一角に徴用工像が設置されています。ここは戦時中に強制徴用された人々が集められて各地に送られた場所なんですけれども、注目の裁判が開かれた今日も、普段と変わらない様子です。さて、ソウル市民の反応なんですけれども、原告側勝訴の判決が出た直後に話を聞きますと、判決を支持する声が多く聞かれました。

ソウル市民A
当然な判決だと思います

ソウル市民B
強制労働させて戦場では先頭に立たせた人々に補償されるのは当然だよ

ソウル市民C
悪影響が及ばないように隣国同士が円満に解決してほしいと思います

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。

1、ソウルで行われた街頭インタビューの意見が政治的に偏っている
2、インタビュー解答者の発言の真意がわからないままに引用されている

それぞれ順を追って解説します。

1、ソウルで行われた街頭インタビューの意見が政治的に偏っている
ソウルにいる曽根氏は以下の発言をしました。

曽根氏:さて、ソウル市民の反応なんですけれども、原告側勝訴の判決が出た直後に話を聞きますと、判決を支持する声が多く聞かれました。

この発言は、原告勝訴の判決が支持されているとするものです。

次に韓国内での街頭インタビューの映像が流れました。
そこで3人の韓国人がインタビューに答えましたが、どの回答もそれぞれ今回の判決を支持するような発言でした。

番組では数回に及び、日韓請求権協定に関しての説明が行われました。これは1965年に日本と韓国の間で結ばれた協約です。外務省が公表している『韓国との請求権・経済協力協定』によると、本協約の第二条1項では、” 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する ”とあります。条文末尾の「完全かつ最終的に解決された」というのが、この請求権協定においての要です。言い換えると、これ以降はいかなる請求も認められないとするものです。
数度に渡り番組内でも説明があるように、韓国の最高裁判所がこの協約を反故にするような判決を下すことは国際法上許されるものではありません。

つまり、その場合は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」に違反する可能性があります。

2、インタビュー解答者の発言の真意がわからないままに引用されている

ソウル市内でインタビューが行われ、そのうち3人の意見が報道されました。
そこで3人目の発言は以下のようなものでした。

ソウル市民C
悪影響が及ばないように隣国同士が円満に解決してほしいと思います

とありますが、この発言だけでは本人が今回の司法判断に対してどういった意見を持っているのかが不明瞭です。この人の意見は、あたかも直前の二人のソウル市民に同調するような形で報道されていますが、これだけでは真意は読み取ることができないのです。

つまり、その場合は第3項(「報道は事実を曲げないですること」)に違反する可能性があります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では
事実と異なる内容を報道し、政治的に公平でない内容を報道した恐れがあります。
視聴者への印象を誘導する恐れのある偏向報道の可能性が高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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