2018年12月20日 プライムニュースイブニング

2018年12月20日 プライムニュースイブニング

プライムニュースイブニング、2018年12月20日放送回の検証報告です。

今回の報告では「国際捕鯨委員会脱退」について報道された部分を検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容をみていきましょう。

島田アナ:クジラ漁をめぐり日本が異例の決断です。商業捕鯨の復活を目指し国際機関から脱退する方針を固めました。

ナレーション:クジラのお刺し身にクジラの竜田揚げ、更に、クジラカツ。こちらは、クジラ尽くしの特製丼。巨大なシロナガスクジラの骨格標本がどどーんとお出迎えしてくれる千葉県南房総市にある道の駅はクジラ料理が名物です。

インタビューを受ける女性:さっぱりしていて美味しいです。柔らかいです。硬くない。

ナレーション:このクジラをめぐり、日本は異例の決断をしようとしています。現在、日本の捕鯨はIWC・国際捕鯨委員会で決められた小型のクジラや調査捕鯨に限られてきました。今日、明らかになったのは、政府がこのIWCから脱退する方針を固めたことです。捕鯨議連の幹事長代理を務める 鶴保議員は…。

鶴保衆議院議員:最大の拠出金国としてですね、主要プレーヤーとして、これからも参加していく存在の意味は、かなり薄れたのではないかというふうには思っています。

ナレーション:脱退の目的はIWCが実質的に禁止している商業捕鯨の復活です。ある自民党議員はこのIWCの在り方に不満をぶつけます。

ある自民党議員:IWCが機能不全に陥っているから。IWCというのは、本来、クジラの調査をする役割を担っているはずだが、捕鯨が良い悪いという議論に終始してしまっている。そういったいまのIWCの体制・体質に一石を投じたいという事だと思う。

ナレーション:今年9月に行われたIWCの総会では…。

IWC総会議長:Slovenia, No? Netherlands No.

ナレーション:日本は、資源が豊富なミンククジラなどに限っての商業捕鯨の再開などを提案しましたが反捕鯨国の反対により否決。

船舶体当たりVTR音声:いま衝突しましたー!

ナレーション:更に、IWCに認められているはずの調査捕鯨をめぐっても反捕鯨団体シー・シェパードなどによる過激な妨害工作が問題となるなど日本は常に強い逆風にさらされてきました。

安倍総理:今後ともですね、国際協調主義のもとの/実効性のある国際協力を推進し…

ナレーション:これまで、外交面では国際的な協力関係を強調することが多かった安倍総理。89か国が加盟する国際機関からの脱退は日本の捕鯨文化を守るための異例の決断といえます。そして実は、自民党のトップ二階幹事長の地元も安倍総理の地元も捕鯨とのゆかりが深い町です。

インタビューを受ける男性:周りとのつながりを取るか、日本の伝統を取るか、究極の二択ではありますよね。

インタビューを受ける女性:クジラにかこつけて難癖をつけてくるとか、そういう可能性もあるのかもしれないですよね。

ナレーション:政府は、IWCからの脱退を来週にも表明する方針です。

倉田アナ:はい、どうなるんでしょう。

反町アナ:この問題のポイントはクジラの資源量なんです。農水省でクジラ問題に長年取り組んだ東京財団政策研究所の小松さんによりますと、このように南極海におけるクジラの資源量は回復していて、特にザトウクジラ・ナガスクジラの資源量しっかり増えているんです。そもそもIWC・国際捕鯨委員会はクジラ資源の保存と捕鯨産業の発展を目的としたものだったんですが、小松さんはIWCは1980年代クジラ保護団体に変質したと批判しています。そうした上での今回の脱退なんですが小松さんの評価は否定的です。その理由としては、まず日本はこれまで南極海で調査捕鯨を続けてきて、クジラに関する膨大なデータを日本だけが蓄積しているにもかかわらず脱退すれば、IWCのもとで行われる南極海の調査捕鯨はできなくなりますし、データも入手できなくなることを挙げています。そのうえで、IWCにとどまったままで調査捕鯨枠を拡大するか、商業捕鯨を再開する手も日本にはある。脱退してもしていなくても商業捕鯨を再開すれば、どこかの国から訴えられるんだから同じじゃないかと、こういう説明なんですね。食生活の問題ですこれは。食生活はその国固有の文化でもありますし当然尊重されるべきです。加盟国を説得するためには正確なデータに基づいた合理的な議論も必要です。日本外交のセンスが、ここで問われているともいえそうです。

倉田アナ:ここまではプライムフォーカスでした。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の3点です。

1、全体を通して反捕鯨派の意見が取り上げられていない点
2、インタビューを受ける女性の引用が印象操作的である点
3、政府のIWC脱退方針に対して否定的に偏った報道になっている点

それぞれ順を追って解説します。

1、全体を通して反捕鯨派の意見が取り上げられていない点

 捕鯨に関する問題は、捕鯨に対して賛成派と反対派に分かれて議論がなされている問題ですが、この報道では捕鯨反対派の意見としては、一部の過激派組織のVTRを取り上げるに留まっています。これでは、過激派ではない公正な捕鯨反対派の国家や人々などがどのような理由でもって日本の捕鯨に反対しているかが不明確で、過激派のみを取り上げるのは印象操作的です。これは放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

2、インタビューを受ける女性の引用が不明確かつ印象操作的である点

 この女性の意見として下線部「クジラにかこつけて難癖をつけてくるとか、そういう可能性もあるのかもしれないですよね。」と引用されていますが、この切り取ったこの部分だけでは、誰が難癖をつけてくると言っているのか不明確です。加えて、仮に前後の報道内容の文脈から○○が難癖をつけてくるという意見だと解釈したとして、あたかも○○は難癖=非合理的な意見しか言わないかのような印象を視聴者に与えてしまいます。これは放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、政府のIWC脱退方針に対して否定的に偏った報道になっている点

 VTR中のナレーションが何度も「異例の」という言葉を遣っている点や、報道終盤の反町アナの解説内容など、この報道は政府のIWC脱退方針に対して否定的な意見に基づいて構成されているように見受けられます。これは放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では事実と異なる内容を報道、及び一定の立場に偏った内容だけを報道した恐れがあります。これは、視聴者への印象を誘導する恐れのある偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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