5月7日放送のグッド!モーニング(テレビ朝日)のレポートです。
今回の報告では、
【新型コロナウイルスに対してヨーロッパと日本の対応の違いについて報道された部分】
について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
では、放送内容を見ていきましょう。
【ニュース部分(全文)】
アナウンサー:(新型コロナウイルスの)感染が疑われる人がPCR検査を受けられず病状が悪化することが相次いでいることなどを受け、加藤厚労大臣は検査基準を見直す方針を明らかにしました。基準の見直しは検査数を増やすことにつながるのでしょうか。
(ここから澁谷氏のオンラインインタビューのVTR)
アナウンサー:想定していた日本の医療体制と、実際に現場に入ってみて、何か違いはありますか。
澁谷氏:なかなか話が詰められていなかったりモノも足りなかったりしたので、この後どうなってしまうのかという不安を4月の頭時点では漠然と感じました。
ナレーション:新型コロナウイルスに対する日本の遅れを痛感したと話すのは、最近までベルギーで心臓外科医として活動していた、澁谷医師です。(テロップにて「ベルギーの心臓外科医」として澁谷氏を紹介」)澁谷医師は、ベルギ―が感染拡大防止のためにロックダウンをした3月に一時帰国し、神奈川県で非常勤医師として、診察にあたってきました。そこで愕然としたのが、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」をめぐって、世界でも早いうちに集団感染と向き合ったはずの日本の医療体制が整っていないことでした。
澁谷氏:どういった動線で患者を搬送してどうやって診るのか、いろいろ対策が練りに練られていたと思っていたので、その違いはとてもびっくりしました。
ナレーター:さらにヨーロッパとの政策の違いにも、戸惑ったといいます。
澁谷氏:すべての人にPCR検査をしないで、感染が疑わしい人にだけPCR検査をするという世界的に見ると珍しい政策をとっていたんですけども…。
(澁谷氏の話し方では何か続けていたが、画面が切り替わる)
ナレーター:ヨーロッパでは多くの国が大規模なPCR検査を早くから実施し、感染者の抑え込みに乗り出しました。しかし日本では依然として、PCR検査に高いハードルが設けられているため、重症化しやすい患者を見逃すリスクがあります。最前線の医療現場からも困惑の声が上がるなか、政府は昨日PCR検査を受ける際の目安を見直す方針を明らかにしました。
加藤厚労大臣:平熱も人によってそれぞれですから、それはその中でご判断いただく。高熱だと思った方はすぐに行っていただく。平熱であればこうという書き分けをさせていただいている。
(このあと、PCR検査の基準の緩和が遅れたこと。PCR検査数が1日あたり2万件に増やすはずが現状1万件にとどまっていること。そのボトルネックとして保健所等が検査を独占していたことを挙げ、独自に解決に乗り出した例として、山梨大学の医学部病院が独自でPCR検査を実施している例を紹介。)
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1.澁谷氏の発言に対して意図と反した編集や報道を行っている
2.本報道が偏った立場・観点に立っており、主張のデメリットや代替案を呈示していない
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澁谷氏は番組が放送されたあと、ご自身のfacebookでの投稿にて、以下のように述べています。
(以下、澁谷氏facebook投稿内抜粋)
PCR検査に関してはこれから検査数をどんどん増やすべきだというコメントが欲しかったようで繰り返しコメントを求められましたが、私は今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではないとその都度コメントさせていただきました。
確かに潤沢な検査をこなせる体制というのは本当に必要な方に対してはもちろん必要です。
ただ、無作為な大規模検査は現場としては全く必要としていない事をコメントさせていただきましたが完全にカットされていましました。
(中略)
カットだけならまだいいのですが、僕がヨーロッパ 帰りということで、欧州でのPCR検査は日本よりかなり多い(日本はかなり遅れている)といった論調のなかで僕のインタビュー映像が使用されて次のコメンテーターの方の映像に変わっていき、だからPCR検査を大至急増やすべきだ!というメッセージの一部として僕の映像が編集され真逆の意見として見えるように放送されてしまいとても悲しくなりました。
参考URL(5月7日11:07 澁谷氏のfacebook投稿より) https://www.facebook.com/taisuke.shibuya
番組の内容・澁谷氏の投稿から今回の報道の要旨をまとめると、
・澁谷氏の立場は「PCR検査が必要になった際に、対応できる潤沢なキャパシティは必要。」「ただし、無作為な大規模検査は現場では全く必要としていない。」とコメントしています。
・しかしながら、番組内では「PCRの検査数を大至急増やすべき(世界よりも検査数が少ない)」という主張として活用されており、「PCR検査を大規模に実施したヨーロッパの現場を見た医師の“お墨付き”」のコメントとして紹介されています。
現状、新型コロナウイルスやPCR検査ついては、各国でも対応が分かれています。早期段階で都市封鎖に近い対応を行い、感染者が早期に終息したとみられる台湾が評価されている一方、WHOはPCR検査数を闇雲に増やさず都市封鎖を最低限に抑え込んだ日本を高く評価する等、見解は様々です。各国の医療制度の違い、国民性による移動制限の効果など複雑に要素が絡んでいることを踏まえると、一概に「早急に大規模な拡充をすべき」「拡充は慎重に行うべき」はどちらも明確な正解とは言えない現状と言えます。
番組内の「PCR検査数を早急に増やすべき」という意見の呈示自体は問題ありませんが、その場合に考えられる医療人員・設備の不足といった危険性を考慮した観点の呈示が必要と考えられます。
これらを踏まえ、改めて今回の番組内での3つの問題点を提示いたします。
・インタビューを行った澁谷氏の意図・立場を尊重せず、意図と真逆の発言として報道していること。
・吟味の必要がある意見や立場に対して、それぞれのメリット・デメリットや代替案を報じておらず、
政治的公平性が保たれていないこと。
以上より、今回の報道での澁谷氏の発言に関連する一連の流れは、本人の意図・立場を曲解しての報道、消費者に対して偏った意見へ誘導の可能性がある報道を行っていると言えます。
このことは放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。このような報道は放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。