2019年8月29日 ZIP!

2019年8月29日 ZIP!

日本テレビ系列ZIP! 2019年8月29日放送回の検証報告です。

今回の報告では、上記の番組内で放送された韓国特集について検証し、その問題点を探ります。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容をみていきましょう。

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桝太一アナウンサー(以下、桝太一)
「さぁ、ここからは注目のNEWSの現場を詳しく取材する『NEWSなゲンバ』(コーナー名)です。」

徳島えりかアナウンサー(以下、徳島えりか)
「はい。今日は悪化する日韓関係についてです。輸出手続きを優遇する、いわゆるホワイト国から昨日、韓国が除外され、解決の糸口は見えないままです。韓国の人たちの本音を現地で取材して来ました。」

【VTR】
26日月曜日 韓国・ソウル市内

徳島えりか
「ソウルの街の中心地、光化門広場にやって来ました。あの、ソウルの代表的な広場だということなのですが、この週末も、この芝生の上で大規模な集会が行われました。」

※集会の模様のVTRが挿入

徳島えりか(ナレーション)
「これは同じ場所で土曜日に撮影した映像です。芝生の上を埋め尽くす蝋燭を持った人々。『NO 安倍』と書かれたプレカードを掲げています。」

デモ参加者のコール
「安倍!うせろ! 安倍!うせろ! 安倍!うせろ!」

徳島えりか(ナレーション)
「安倍政権に対する抗議集会は土曜日で6度目の開催とのことです。」

※集会の挿入VTR終了

徳島えりか(ナレーション)
「そして、ソウルの街中では。」

徳島えりか
「見えました。あそこに少女像があります。警察官がいたり、少し物々しい雰囲気になっています。」

徳島えりか(ナレーション)
「オフィス街にひっそりと佇む少女像が。その取材中、突然。」

プラカードを持った韓国人男性
「日本から来ました?日本から?」

ZIP!取材班
「はい。日本から来ました。」

プラカードを持った韓国人男性
「日本の総理大臣ともあろう人がなぜそんなに心が狭いんだ。」

徳島えりか(ナレーション)
「今朝のNEWSなゲンバは、悪化する日韓関係、ソウルで韓国の人たちの本音を聞いてきました。」

※CM

※24日土曜日の大規模集会のVTRからスタート
徳島えりか(ナレーション)
「悪化の一途を辿る日韓関係。韓国ソウルでは安倍政権に対する抗議集会が土曜日にも行われました。」

デモ参加者のコール
「安倍!うせろ! 安倍!うせろ! 安倍!うせろ!」

デモ参加者(男性)
「日本の行為に怒りを感じている」

デモ参加者(女性)
「一度も日本を同盟だと思ったことはない」

徳島えりか(ナレーション)
「いま韓国の人たちは日本のことをどう思っているのでしょうか。ソウルで取材しました。」

※26日月曜日 韓国・ソウルでの取材VTRに切り替わる

徳島えりか
「見えてきましたね。あの辺り、『NO 安倍』と書かれたポスターがあります。」

徳島えりか(ナレーション)
「街路樹に掲げられていたのは、『NO 安倍』と書かれたポスター。日の丸の中には安倍総理の写真が使われていました。」

徳島えりか
「え、下の部分、何か手書きでハングルが書かれています。『歴史を忘れた民族に未来はない』と書かれているそうです。」

徳島えりか
「そして、こちらのポスターの下の部分にはですね、『安倍は去って行け』と書いているとのことです。」

徳島えりか
「こうして『NO 安倍』というポスターがたくさん有るんですね。」

徳島えりか(ナレーション)
「この道が通学路だという高校生に話を聞きました。」

徳島えりか
「あのポスターはどれぐらい前に貼られたかって分かりますか?」

現地の高校生
「1~2週間前です。」

徳島えりか
「割と最近なんですね。」

現地の高校生
「日本の製品を使っていると『このご時世に?』と驚かれることも多くて。『非国民だ』と叱られることもあって、そういう雰囲気で関係悪化を感じます。」

徳島えりか(ナレーション)
「続いて私が訪れたのはソウル市内のビジネス街。そこで見つけたのが日韓の間で根深く残る『慰安婦問題』のシンボルです。」

徳島えりか
「見えました。あそこに少女像があります。警察官がいたり、少し物々しい雰囲気になっています。」

徳島えりか(ナレーション)
「歴史問題の象徴とも言える慰安婦を表現した少女像。無表情で見つめるその先には、日本大使館が建つ予定の建設現場がありました。そして、少女像のすぐ隣にあったのが。」

徳島えりか
「まぁ、恐らくテントのような状況になっていて、こちらで生活のようなものが出来るようになっています。」

徳島えりか(ナレーション)
「ビニールや緑のネットで作られたテント。少女像を守る団体が寝泊まりしていると言います。」

徳島えりか(ナレーション)
「そして、別の日に取材をしていると。」

※24日土曜日のインタビューVTRに切り替わる

プラカードを持った韓国人男性
「日本から来ました?日本から?」

ZIP!取材班
「はい。日本から来ました。」

プラカードを持った韓国人男性
「日本の総理大臣ともあろう人がなぜそんなに心が狭いんだ。」

徳島えりか(ナレーション)
「歴史問題で日本に不満を持つ人が、ZIP!の取材班に安倍政権への不満を訴えかける場面もありました。」

徳島えりか(ナレーション)
「いまや安全保障の分野にまで広がっていて、戦後最悪とも言われる日韓関係。きのう輸出手続きを優遇する、いわゆるホワイト国から韓国が除外されました。」

※26日月曜日 韓国・ソウルでの取材VTRに切り替わる

徳島えりか(ナレーション)
「では、観光地は。」

徳島えりか
「こちら、南大門市場です。ソウルでも人気の観光地ということで、平日の夜なんですけど、かなり活気がありますね。」

徳島えりか(ナレーション)
「グルメやショッピングが楽しめる南大門市場。日本人観光客にも人気のエリアでは関係悪化の影響はあるのでしょうか。」

露店店主(男性)
「これカニです。カニ。チョーおいしいですよ。」
※中略 徳島アナウンサーが露店を楽しむ様子が放送される

徳島えりか(ナレーション)
「さらに。」

露店店主(女性)
「安いですよ~」

徳島えりか(ナレーション)
「日本語で次々と声を掛けられます。市場で出会った日本人観光客は。」

徳島えりか
「反日感情みたいなものを感じる瞬間とかってありました?」

日本人観光客
「いや、まったくない。」

徳島えりか
「もう、とにかく楽しい旅行?あぁ、よかった。なんか表情からもとても伝わってきます。」

※日本人観光客と談笑する様子

徳島えりか(ナレーション)
「一方で揺らぐ日韓関係に困っている人も多くいます。ZIP!が訪れたのは、日本企業が主催する韓国人就活生と日本企業をつなぐ就活セミナー。この日は24人の韓国人就活生が日本企業の採用面接を受けるために訪れていました。」

韓国人就活生(女性)
「韓国の就活が大変なこともあるし、日本に行きたいと思って、日本で就職することを決めました。」

徳島えりか(ナレーション)
「日本のIT企業に勤めるため、日本語を猛勉強しているといいますが。」

韓国人就活生(女性)
「両親や友達に心配されるのは事実です。『正直行かない方がいいんじゃない?』と。」

徳島えりか(ナレーション)
「さらに、こんな不安も。」

韓国人就活生(女性)
「ビザの問題があって、ビザが出るかどうかが大事。」

徳島えりか(ナレーション)
「これ以上、日韓関係が悪化すると、日本企業から内定が出ても就労ビザが下りないのではないか、という不安さえ抱えていました。」

徳島えりか(ナレーション)
「多くの人が様々な思いを巡らせていた日韓問題。本当は日本のことをどう思っているのか、韓国の皆さんに本音を聞きました。『日本は好き』、『日本は好きだが日本政府の対応は悪い』、『日本は嫌いだが韓国政府の対応は悪い』、『日本は嫌い』。この4つから選んで貰いました。」

徳島えりか(ナレーション)
「30代の会社員は。」

徳島えりか
「『日本は好きだが日本政府の対応は悪い』。その理由はどういった所ですか?」

30代会社員(男性)
「日本の人たちに悪い感情はないです。適当にごまかさずに歴史的な問題を解決して、両国間で結論を出してもらいたい。」

徳島えりか(ナレーション)
「中には4つの選択肢から選べなかった人も。」

30代女性
「日本の友人が多いので、日本が好きです。悪い感情はない。日本も韓国も悪い影響を受けないで欲しいです。両政府が協議して、以前のようないい関係に戻りたいです。」

現地の高校生
「日本に対して好き嫌いの感情はないですが、韓国の対応が感情的すぎる。」

徳島えりか(ナレーション)
「物流関係の会社に勤めるこちらの女性は。」

50代会社員(女性)※『日本は嫌いだが韓国政府の対応は悪い』を選択
「最近は韓国政府への不満の方が大きいです。現政権があまりにも間違っているからです。」

徳島えりか(ナレーション)
「すると。」

50代会社員(女性)
「わたしも1つ質問させて。日本人は韓国の外交的政策と決定をどう思っているの?」

徳島えりか
「政府同士の、この、感情のもつれあいというか、なかなか交渉が進まないな、という所にもどかしさを感じてますね。」

50代会社員(女性)
「反韓の感情が高まっているということはないですよね?」

徳島えりか
「いや相変わらず韓国の文化っていうブームは続いていますし、なのでそこは上手く分けて、たぶん、考えられているのかなとは感じますけれど。」

徳島えりか(ナレーション)
「韓国の人たちも日本人がどう感じているのかは気にしている様子でした。」

【VTR終了、スタジオへ】

徳島えりか
「まぁ、限られた時間での取材にはなりましたが、ソウルで16人に聞いたところ、最も多かったのが『日本は好きだが日本政府の対応は悪い』と感じている人で9人。ただ、こうしてですね、悩んで悩んで中間(『日本は好きだが日本政府の対応は悪い』と『日本は嫌いだが韓国政府の対応は悪い』の間のこと)を選んだ方からも分かるように、皆さん日韓関係に色々な要素があることを踏まえた上で、冷静に考えている印象でした。」

※4択アンケートの結果(有効数:16票)
『日本が好き』3票
『日本が好きだが日本政府の対応は悪い』9票
『中間』3票
『日本は嫌いだが韓国政府の対応は悪い』1票
『日本は嫌い』0票

ココリコ・田中直樹
「たくさんの人が韓国に行くじゃないですか、日本人で。で、そこには反日感情もなくて、まぁ普通に観光を楽しまれているように、韓国の人が日本に来た時に、我々も同じように楽しんで、嫌な気持ちをせずに、やっぱり旅して欲しいなと思いますし、そこの気持ちとはまた別のところで揉めているような印象もあるので、これ以上やっぱりこじれて欲しくないなという思いですね。」

徳島えりか
「そうなんですね。今回の取材でも、日本人が明らかに旅行客が減ったような印象もなかったですし、やはり何かこう敵対意識を向けられることも無かったですね。やはりお互い顔を合わせて対話を続けていく重要性を感じました。」

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の点です。

・視聴者に対する印象操作が疑われる点

今回の放送は、「韓国人の本音はどうなのか」というテーマに沿って番組構成がなされていました。取り上げられた韓国人の意見は、反日感情は抱いていないというものであったり、冷静に韓国人は今回の出来事を捉えているというものばかりでした。そのうえで、「安倍やめろ!」というデモの映像を繰返し放送したり、街頭アンケートをとって「日本政府の対応が悪い」とする意見を強調して放送していたのです。これでは番組を見ている視聴者は、日本政府の対応が悪いのではないかという印象を抱きかねません。

日本に対して好意的な意見を持つ韓国人へのインタビューに重きを置き、反日デモに参加しており、「一度も日本を同盟だと思ったことはない」と発言するような韓国人に対してはまったくインタビューも何も為されていなかったのです。また、VTR中には日本人旅行客が楽しそうに観光している様子が放送されていますが、twitterなどで問題となった日本人女性に対する韓国人男性による暴力事件についてはまったく触れられていませんでした。報道しない理由としては、日本人の反韓感情が激化するのを防ぐためといったことが考えられますが、実際に事件が起きているのにも関わらず、韓国への旅行は安全安心だとする報道を行うことには違和感を覚えます。こうした放送は、放送法4条3項「報道は事実をまげないですること」に違反している恐れがあります。

今回の報道は、安倍政権が韓国をホワイト国から除外したが為に、韓国の人々は日本が好きにも拘わらず、そうした日本政府の対応が原因で日韓関係が悪化しているのだというような一方的とも思われるものとなっていました。しかし、ホワイト国から韓国が除外された原因は韓国側の不適切な管理体制にありますし、そうした点に何ら言及がない点にも大きな問題があるのではないでしょうか。こうした点は、放送法4条3項のみならず、4条4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」にも違反している可能性があります。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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