2019年10月4日 羽鳥慎一モーニングショー

2019年10月4日 羽鳥慎一モーニングショー

放送法順守を求める視聴者の会による、2019年9月29日分の検証報告(後編)です。
この日はサンデーモーニングの放送がお休みでしたので、他局の報道番組の中から放送法違反が見受けられるものをレポートとさせていただきました。

今回の報告では、
① テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/24放送回)」にて、
「安倍首相によるアメリカ産トウモロコシ購入の約束」について報道された部分
② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分
③ テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(10/4放送回)」にて、
「中国における日本観光ブームと外交問題」について報道された部分
以上3番組について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容のなかから疑わしい部分を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分における
  検証3「西尾氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
③ テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(10/4放送回)」にて、
「中国における日本観光ブームと外交問題」について報道された部分
となります。

では、さっそく②の検証3をみてみましょう。

3、西尾氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西尾氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西尾氏(抜粋):トリチウムってのはね、海に撒いたらプランクトンが取り込んで、それが小魚が食べて、最終的に人間に、生物濃縮した形で濃度の高いトリチウムが入ってくるんですよ。それから例えば、僕が医者になった頃はですね、実は日本の癌の患者さんって20万人だったんですよ。今100万人超えました。なんで5倍になってるの?原発っていうのは要するに、トリチウムを垂れ流してるんで、周辺のとこ、世界中のですね、健康被害が報告されてんですよ。それは事故を起こさなくても、健康被害が出てるっていうのはですね、疫学的には有意な形でもう多くなってるわけです。これは、最大の原因は僕はトリチウムだと思ってます。

要旨をまとめると、
・トリチウムは生物濃縮が起こるため、濃度の高い状態で体内に入ってくる。
・私が医者になった時は日本のガン患者は20万人ほどだったが、今は100万人を超えている。5倍に増えたのは原発のトリチウムが原因だ。

というものです。

しかしながら、
・トリチウムは通常の水と同じように代謝などで体外に排出されるため、水銀などと違い生物濃縮は怒らない。
・日本のがん患者が5倍に増加した要因は平均寿命の長期化などがその最たるものであり、トリチウムがその原因だとする主張には根拠が全くない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西尾氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

続いて、
③ 「中国における日本観光ブームと外交問題」について報道された部分
となります。では、放送法違反が疑われる部分を見ていきましょう。

【VTR要約】
 中国では大型連休中、中国人観光客の争奪戦が起きている。中国人観光客といえば爆買いだったが、今年は農家民宿や寿司作り体験など爆体験が人気となっている。

——–日本が国外旅行先として人気が高い理由——–

【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
中国では国慶節となる10月1日から大型連休となり、約8億人が旅行する。日本は国慶節の人気海外旅行先ランキング1位で、この時期に約190万人が日本へ旅行すると言われている。一番多いのは上海発。訪日中国人観光客は女性が6割で、若者が増加している。7月から電子ビザ申請が導入されて申請が簡単になったこと、香港はデモが過激化しており、8月から台湾旅行が禁止されていることから、日本が人気となっている。

【スタジオの発言】
根本一矢氏(要約):マレーシアやシンガポールは中国系が多いので旅行に行きやすい。タイは中国人観光客に観光の面で頼っており、近く安くコンパクトに旅行ができるので人気が高い。国慶節では日本旅行で1人当たり20万円ほどお金を使うと言われており、相当な市場になる。上海は国際色豊かな文化的壌土があり、上海から大阪への直行便が北京より多い。今は東京より大阪が人気。中国人観光客は物の消費からコトの消費に移ってきており、アニメの聖地巡礼などで人気を博している。

吉永みち子氏(要約):香港と台湾は中国語が通じるので行きやすい場所ではあった。旅行は国同士の関係が関与するのかと思った。

玉川徹氏(要約):中国では伝えられていない情報がたくさんあるが、日本に来たら中国では知ることのできない情報を知ることができるから、すごく良い機会だからアピールしても良いと思う。

——–日韓関係悪化の影響を受けている九州について——–

【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
 今年8月では九州を訪れる韓国人観光客が前年同月比48%減少して約30万人だったが、中国人観光客は前年同月比16.3%増加し100万人を超えた。
佐賀県ではきれいで済んだ空気を吸う「洗肺」が訪日中国人に人気となっている。中でも嬉野温泉や武雄温泉が人気だが、嬉野温泉の観光協会担当者は「韓国人客はぱったり減ってしまった。嬉野市内は中国語の会話だらけだ」と話している。
大分の別府温泉にあるリゾートホテルでは、韓国人客の予約はゼロである。中国人を呼び込むため、中国大手旅行会社と提携して観光セミナーを開催しているという。

長嶋一茂氏(要約):我々は政治と民間は区別して考えるが、旅行となると支障が出てくるのではないか。

根本氏(要約):政治的関係が観光に影響を及ぼしやすい。旅行禁止措置が経済制裁にもなる。韓国人は宿泊数が短いので消費額は約11万円。

玉川氏(要約):あれだけ日本バッシングがあるときに日本に行きづらいし、日本のお土産を渡しづらいと思う。

吉永氏(要約):九州は韓国に近いので韓国人観光客を呼び込むために力を入れていた。だからある意味気の毒だが、韓国人が減っても中国人の方が消費額が多いので、韓国人が減った分を取り返せるかもしれない。

——–訪日中国人によるマナー問題について——-

【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
韓国人は夏は部屋をキンキンに冷やし氷水はガンガン飲む。中国人は極端な温度差を嫌い、夏でも温かいお茶を飲むので、そういう民族性に合わせていこうという努力もしている。

【スタジオの発言】
長嶋氏(要約):中国人は夏でも熱いお茶を飲む。人肌のビールを飲んだりもする。そういう民族性。

羽鳥アナ(要約):秋口に行ったとき、ビールを冷やしたいと言ったら外に置かれたことがある。

【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
WeChatの公式アカウントを開設している。WeChatは約11億人が利用している。

【スタジオの発言】
根本氏(要約):WeChatは中国版LINEと呼ばれるメッセージアプリ。これを使って日本に旅行している中国人が日本に住んでいる中国人や中国語が得意な日本人とやり取りしている。

長嶋氏(要約):(アプリは)日本をプロモーションするのに使えるし良いことのような気がするが、一部の中国人観光客が日本の文化、風習が分からなくて迷惑をかけている映像がこれまでたくさんあったので、呼び込んだからと言って良いことばかりではない。全員がマナー・モラルが高いとは思えない。そこはどのような話がされているのか?

根本氏(要約):中国人観光客によるマナー違反が取り沙汰されていることが多いが、現在は多少改善の方向にある。

長嶋氏(要約):それは俺も感じる。昔よりは改善されている。恥ずべき行動をしたら、中国の人がマナー違反を指摘するようになってきている。それも聞いている。

吉永氏(要約):中国の新聞でも、本当に日本の旅行を楽しむのなら、日本の文化や伝統を尊重するべきだというようなものも随分発信されていると聞いた。

羽鳥アナ:だいぶ浸透はしてきてるんですね。徐々に。

長嶋氏(要約):変わってきてはいる。

根本氏(要約):それに加えて、日本でもマナーを多言語で展開することによってお互い歩み寄るフェーズになってきていると思う。

長嶋氏(要約):データで良いなと思ったのは、女性が6割で20代から30代。若い人が多いので、リスペクトする気持ちもお互い民間だったらあると思うので、そういう人たちが本土に戻って日本の良さを伝えていくと、もっと良い交流が生まれる。中国でもちょっと前まで反日があった。また中国人が反日行動をして日本に来ないということもあると思う。
根本氏(全文):あり得るとは思います。

玉川氏(全文):結構あの、中国いまアメリカと対立してるじゃないですか。貿易問題で。それが、こういう部分については良い影響があるのかなと思ってるんですよね。アメリカと対立してるから、中国としては日本とはいい関係にしといたほうがいいわけね。だから、中国の共産党の上の方も、日本に対する頑なな態度ってどんどんどんどん引っ込めてるじゃないか今。だから、そういうものはこういうとこまで影響するんだなっていう。

吉永氏(全文):日本の政府も韓国とこれだけぶつかってるので、今中国とはなるべく関係を保ちたいっていうような意識もありますけどね。

長嶋氏(全文):でも中国と仲良くしたらあんまりトランプ、良しとしないよね。

玉川氏(全文):うーん、その辺は、でも、本当はそう・・・

羽鳥アナ:観光の分野ですから。

長嶋氏(全文):政治ではないから。

玉川氏(全文):本当は、日本は中国とアメリカを天秤にかけるような外交が本来できるはずなんですよ。だから、あんまり、じゃあアメリカがとんでもないこと言うようだったら中国と仲良くするぞとかできるはずなのに、そういうふうなことをやりにくい政治状況をずっと作ってきたって言うデメリットっていうか、そういう部分はありますよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、玉川氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、玉川氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
玉川氏は今回の報道で、以下のように述べています。

玉川氏(抜粋):結構あの、中国いまアメリカと対立してるじゃないですか。貿易問題で。それが、こういう部分については良い影響があるのかなと思ってるんですよね。アメリカと対立してるから、中国としては日本とはいい関係にしといたほうがいいわけね。だから、中国の共産党の上の方も、日本に対する頑なな態度ってどんどんどんどん引っ込めてるじゃないか今。だから、そういうものはこういうとこまで影響するんだなっていう。(中略)本当は、日本は中国とアメリカを天秤にかけるような外交が本来できるはずなんですよ。だから、あんまり、じゃあアメリカがとんでもないこと言うようだったら中国と仲良くするぞとかできるはずなのに、そういうふうなことをやりにくい政治状況をずっと作ってきたって言うデメリットっていうか、そういう部分はありますよね。

要旨をまとめると、
・米中が対立することは日本にとってメリットがあるとも言える。アメリカと対立するなかで中国は日本と仲良くしたいと考えており、それが中国における日本観光ブームにつながっている。
・日本は本来アメリカと中国とを天秤にかける外交ができるはずだ。アメリカと意向が食い違う際には中国と仲良くするなどの駆け引きができるはずなのに、そういうことをしづらい政治状況をずっと作ってきた。

というものです。

しかしながら、
・中国人観光客の増加は香港締め付けなどによって宙に浮いた旅行需要が日本に流れてきたもので、米中対立が要因となったものではない。 
・日本の外交は日米関係を基軸に行われており、南シナ海などの安全保障問題や人権問題、商標権や特許の問題など様々な面で日本をはじめとする自由主義国と対立する中国がアメリカのカウンターパートになるという主張は明らかに事実に反している。また、米中対立のなかで一方的に中国と仲良くするべきだという主張は政治的公平性を欠く。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での玉川氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「中国人観光客はマナーが悪いことで有名だったが、現在は自分たちでマナーの改善を行っているので問題はない」「中国の若い人、特に女性がたくさん来ており、こうした動きは中国における反日を和らげるはずだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「中国人観光客は依然としてマナーが悪く、日本の文化に馴染むとは思えない」「中国の反日は共産党の意向も強く反映されており、旅行や文化交流でどうにかなるものではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/24放送回)」にて、
「安倍首相によるアメリカ産トウモロコシ購入の約束」について報道された部分
については前編の報告を、

② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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