2018年12月7日 ワイド!スクランブル

2018年12月7日 ワイド!スクランブル

ワイド!スクランブル、2018年12月7日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・ファーウェイの副社長が逮捕された報道について
以上について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、ファーウェイの副社長がカナダで逮捕された件について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容をみていきましょう。

株式会社ファーウェイにおいて、副会長がカナダで逮捕されていたという報道がVTRで解説された後、スタジオにて

大下容子アナウンサー(以下大下)
スタジオには米中貿易問題に詳しい経済評論家の渡邉哲也さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

経済評論家 渡邉哲也(以下渡邉)
よろしくお願いします。

ここからしばらくは、ファーウェイという会社がどのような会社か、そこの製品がどのように素晴らしいかという話が続く。世界第二位のシェアを誇り、その通信基地局の数なら世界一。製品に関しては価格の安さが売りだと説明されている。性能もいい。価格・性能面でコスパがいいことを挙げている。
そして、問題の逮捕の話題から。

大下
では、そこの最高財務責任者CFO。どういう方なのかお願いします。

小松靖アナウンサー(以下小松)
はい。ここからが今伝えられているニュースになるわけなんですが、こちらの女性です。モウ・バンシュウ容疑者。ファーウェイの副会長兼CFO。最高財務責任者という肩書きです。今日の1日、カナダのバンクーバーで逮捕されました。モウ容疑者はファーウェイに秘書として高校中退後に入社した人物なんですね。こちらがその主なプロフィール。のちに博士号取得のために進学しているという経緯もありますが、早くからこの会社に入ってそして働いていたということです。こちら、実はモウ・バンシュウ容疑者というのはファーウェイの創業者であるニン・セイヘというこちらの人物の実の娘です。実の娘にして会社の副社長、いわばナンバーツーということになっているんですが、じゃあこのニン・セイヘさんという創業者はどういう人物なのかというと74歳。7人兄弟の貧しい家庭に生まれました。そして、人民解放中国の軍の出身です。さらに1代でファーウェイを中国を代表する巨大企業に育て上げた最高経営責任者となっています。アメリカでは、今カナダで逮捕されましたこのモウ容疑者ですが、身柄の引き渡しをカナダに求めているということになっています。

大下
ブエノスアイレスでの米中首脳会談で貿易摩擦、一時休戦。その裏で同じ日に逮捕ということですね。デープさん。

TVプロデューサー デーブ・スペクター(以下デーブ)
妙なタイミングでもあるんですが、新しい日本の技術の5Gというさらに早くなる接続スピードなんですが、みんな懸念しているんです。つまり、アメリカだけでなくオーストラリア、イギリス、ニュージーランド。いろんな国が中国がそれを仕切ったり支配すると彼らのハードウェアにもしかしたらということでスパイ行為的な。少なくともデータ収集。知って欲しくないことを知るのではないか。実は今度、自動運転でも中国製の自動車にでもなったらそういったデータを集めるのではないかっていろんな形で実際には警戒されている中で起きてしまった。

小松
後で詳しくやりますけども、そういう懸念が背景にあるというのは確かにデーブさんが仰る通りです。

デーブ
ただ、商品そのものは非常に評判が良くて、日本でも量販店が積極的に宣伝して大きいし、値段は安いし世界第二位といっても安いということもあるんですね。あと機能がいいという。
アイフォーンやサムスンがやっていない機能を作るんですよね。でないと同じものになっちゃうから。

柳澤秀夫キャスター(以下柳澤)
デーブさんそういう背景は別として、今回カナダで身柄を拘束されているじゃないですか。その拘束した理由についても明確になっていなくて。ただ、先ほどのニュースではイラン制裁に関連する部分で何か抵触するようなことをしていたとなっているんですが一体それがなんなのかということも含めて意外と事件の今回の騒ぎの本質的な部分ってどこがポイントなのかわからない気がするんですよね。

小松
まさにそこを見ていきましょうか。確かに外形的には現状としては中国の巨大通信会社のナンバーツーが逮捕されたと。しかも外国で。アメリカが身柄を求めているということなんですが、その背景にはもっともっと大きな構図がございます。米中貿易摩擦の新たな火種。その疑惑1というのが今まさに柳澤さんからご指摘がありました、イランの制裁に違反しているという、これはアメリカ側の主張になります。どういうことかというと、アメリカはイランが人権の侵害をしている、あるいは約束を破って核開発をしているということを問題にして経済制裁を敷いています。お金、それから技術サービスの輸出を禁止。イランを経済的に孤立させましょうということをやっているのがアメリカです。これがなんで問題かというと中国のファーウェイというのはこの自分たちが作った製品を当然イランに商売、取引相手として売ったりするわけです。これがなんで制裁違反なのかということになるんですが、ファーウェイの端末の中にはさっき実物をお見せしましたが、アメリカで作られた半導体部品、精密機器が入っていると。それが、アメリカからすると間接的にイランに行くというのは渡邉さん、まさに経済制裁、孤立化させようという中で制裁破りじゃありませんかと。こういうことでいいんですか?

渡邉
そうですね。制裁破りに該当するのと同時に、当然、この段階で代金決済が行われているはずなんですね。代金決済もイランと金融取引をしてはいけないという条項がありますので、HSBCというイギリスの銀行を騙す形で代金を移動したのではないか。

小松
ちょっと補足すると代金決済というのは中国がものを売ります。そうするとイランからそのお金が中国に行きますよね。でも、ここからお金が入るのももちろん制裁で禁じられているわけですからそれをいわばバレないようにするための不正な金融取引というのをやったと。それ自体も経済制裁の違反に当たると。

渡邉
金融制裁の違反に当たるのではないかというのが疑惑として出ていますね。

柳澤
事件としてみたときに発端としてはそういう部分があるかもしれないですけどただ単にこのイラン制裁についてアメリカが全体像を明らかにしようとするよりも昨日の東京市場の株価の下がり方を見ていてももっともっと深い背景があるからこそ今回の事件というのはまさに入り口にしかすぎない。本当の狙いは別にあるような気がするんですね。

デーブ
まして逮捕までしなくても。

脳科学医 中野信子(以下中野)
ちょっと乱暴な感じですよね。しかもカナダという。

小松
もう一つ疑惑があるのでその疑惑にも迫っていきましょう。二つ目の疑惑がこちらです。スパイ目的で技術利用?とあります。何か違う話が出てきましたね。これは何かといいますとこちら。まずアメリカの下院の公聴会、つまり議会で2012年にファーウェイの技術がスパイ目的で中国政府に利用されている可能性があると。だから、アメリカ議会がこのファーウェイというのがどんどんアメリカも含めて世界で売れていますが、これによって諜報活動に使われているんじゃないかと。情報を抜き取るような形で。我々が日常的に使っている。ここで思い出していただきたいのが、先ほどのファーウェイというのは通信基地局数でいうと世界第一位と。その通信網を持っている。非常に広くて強力な通信網を持っていると。これがアメリカとしては脅威になると思われている。そしてこちらです。今年の8月、トランプ大統領は使っているアップル社のアイフォーンが中国に盗聴されていると報道されました。これはもちろんファーウェイの端末ではなくてアイフォーンですがそうしたところ中国はこんな皮肉交じりのジョークで応じています。

中国外務官 華春螢報道官
もしアイフォーンの盗聴が心配なら、ファーウェイの携帯電話に変えてください。

小松
これはその背景にファーウェイがスパイ活動をしていると言われている。だったら私たちはしていないからじゃあ使ってくださいという逆の発想で言っているということなんですね。一方のトランプ政権がどうしたかというと、こちらいきます。アメリカ政府機関は8月からファーウェイ製品の使用を禁止したと。かなり強行手段といってもいいと思いますけどね。

大下
中国は今回のモウ容疑者の逮捕をどう対応しているんでしょうか?

小松
中国側の反応を見ていきましょう。こちらです。カナダ・アメリカのいかなる法律も中国としては違反していませんと。中国の公人を逮捕したことは重大な人権侵害だと中国政府側は言っています。さらにファーウェイは企業としてもあらゆる法律を遵守しているということを強調しています。経済評論家、今日のゲストの渡邉さんによりますと、やはりキーワードは5G。先ほど、デーブさんからご指摘いただきましたが、将来の成長市場を握る米中の覇権争いが激化したことを表しているということです。

大下
5Gとはなんでしょうか?小松さん。

小松
5G、皆さんも聞いたことがあると思いますが、今日本で使われている通信規格というのは4G。5Gというのは100倍の速度を誇ると言われています。速度のみならずそれから多くの方が同時に接続できるというのが利点です。その結果、何ができるかというと例えば遠くから外科手術ができる。先生が遠くにいても手術できますとか、これから言われている自動運転やロボットによる遠隔操作も可能になる。つまりこれからの社会が一気に変わるインフラの重大な部分を担う規格の争いが今行われているということなんですね。

大下
渡邉さん、この5G戦争でアメリカは中国に主導権は渡さないぞという戦いのゴングを鳴らしたと。

渡邉
そう考えられますよね。中国は携帯端末と半導体というのをメインに置いているんですね。この携帯端末、5Gに関しては位置情報サービスが今、ついていますよね。マイクのスイッチを入れてもわからないですよね、利用者は。ですから、スパイ端末として非常に使いやすい。特に端末の方はいいんですが基地局を握られてしまうと非常に危険であるということがアメリカ側の言い分になるわけです。

大下
中野さん、ここまでで。

中野
これはやっぱり私が一方的にファーウェイがやり玉に挙げられているけれども、ちょっと思ってしまうのはアメリカだって結構そういう疑惑を指摘されているよなということなんですね。具体的な名前を挙げるのはどうかなという気持ちもありますがGAFAと呼ばれる4つの企業があるんですね。グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブック。これらが個人的な情報を非常に多く収集できるのでGAFA帝国と呼ばれるくらい。それに対してファーウェイの陣営はどうするの?みたいな話にもなり得るわけで、じゃあ、アメリカがどれだけフェアなのか、ちょっと手の内を見せてもらえないかと証明してみせろという気にもなりますけどね。

柳澤
この5Gというのは要するに第5世代と呼ばれていてこれで通信のネットワークインフラができるとみんなそこの上で今後仕事しなければならなくなる。そこに乗らざるを得なくなるということでいうと、誰が主導権を握ってこの5Gを作るかということが今後に一番大きいインパクトを持ってくるということですよね。

大下
次世代の通信システムの米中のせめぎ合い、日本への影響はどんなことが考えられるでしょうか?

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。

今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の点です。

1、全体を通して片方の立場の意見しか出てこない

では、詳しく説明いたします。

1、全体を通して片方の立場の意見しか出てこない

今回の放送では、この問題について全体を通してファーウェイの商品は優秀であり、且つ又ファーウェイの副社長を擁護するようなに立場に立った意見のみが出てきました。特にデーブ氏の意見は、中国やファーウェイに肩を持つような発言が多く見られました。

デーブ氏は以下のように発言しています。

デーブ氏:ただ、商品そのものは非常に評判が良くて、日本でも量販店が積極的に宣伝して大きいし、値段は安いし世界第二位といっても安いということもあるんですね。あと機能がいいという。
アイフォーンやサムスンがやっていない機能を作るんですよね。でないと同じものになっちゃうから。

(注:ここで、発言の冒頭に「ただ」とありますが、これは5G通信網の覇権争いに関してのものであり、逆説的な用い方ではありません。)

次に副社長が逮捕されたことに関して

柳澤:事件としてみたときに発端としてはそういう部分があるかもしれないですけどただ単にこのイラン制裁についてアメリカが全体像を明らかにしようとするよりも昨日の東京市場の株価の下がり方を見ていてももっともっと深い背景があるからこそ今回の事件というのはまさに入り口にしかすぎない。本当の狙いは別にあるような気がするんですね。

デーブ:まして逮捕までしなくても。

このように終始一貫してデーブ氏の発言はファーウェイを支持するものになっています。更にいうと、デーブ氏は逮捕に関して否定的である理由を具体的に述べておりません。

次に、通信傍受・盗聴疑惑であればアメリカにもあるという論点に関して中野氏は以下のように発言しています。

中野
これはやっぱり私が一方的にファーウェイがやり玉に挙げられているけれども、ちょっと思ってしまうのはアメリカだって結構そういう疑惑を指摘されているよなということなんですね。(中略)それに対してファーウェイの陣営はどうするの?みたいな話にもなり得るわけで、じゃあ、アメリカがどれだけフェアなのか、ちょっと手の内を見せてもらえないかと証明してみせろという気にもなりますけどね。

今回の事件の論点は「ファーウェイがイラン制裁を回避して、不正に取引をしていた」という点です。それにもかかわらず、中野氏は逮捕を要請したアメリカに対する批判を述べています。(なお国単位で通信傍受等による諜報活動をしていることは、アメリカであればCIAなどの情報機関がある点で明白です。)イラン制裁を回避して取引をした点に関して議論すべきところを、論点のすり替えを行っています。

以上のことから、今回の放送内容はアメリカ政府によるファーウェイ副社長の逮捕は認められないという立場に立って報道が行われた可能性が高く、その場合は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では一定の立場に偏った内容だけを報道した恐れがあります。これは、視聴者への印象を誘導する恐れのある偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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