フジテレビ「プライムニュース イブニング」2019年1月24日放送回の検証報告です。
今回の報告では、
・日韓レーダー照射事案に関係して「韓国人の交渉術」が取り上げられた点
以上、1点について検証を行い、その問題点を探ります。
はじめに、今回の報道内容をお伝えいたします。
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※敬称略
反町理(メーンキャスター)
「まぁ、日韓関係についてはですね、まぁちょっとうんざりしている人もいるかと思うんですけれども、韓国在住のべ36年、韓国文化をよく知っている、その産経新聞ソウル駐在黒田、特別記者の黒田さん(黒田勝弘記者)によりますと、『韓国人の交渉術』、これには3つのポイントがあると言うんですね。」
倉田大誠(メーンキャスター)
「ほぉ」
反町理
「1つ、まず強い言葉で相手を威圧する。2つ、周囲にアピールして理解者を増やす。3つ、論点をずらし優位に立つ。こういう風に言うんですけど、まぁ韓国人の行動パターン、これを国にも当てはまるとは限りませんが、黒田さんは例えばレーダー照射に関して言えば、韓国政府は自衛隊機の低空での威嚇飛行を新たにポイントとして出すことによって論点をずらし、韓国国内で今やレーダーの話は消えたと。もうこの3番目の、その戦術に当たるという風にしているんですね。で、まぁ、あのー。はい、どうぞ。」
倉田大誠
「こうなってくると日本はどうすれば良いのかということですよね。」
反町理
「そこなんですよ。黒田さんはですね、まぁ今回先に協議打ち切りを防衛省が先に言った訳じゃないですか。言った日本の戦略は正しいと。韓国は、これで終わったら韓国は間違っていたと世界に思われると焦ってしまい、ばん回して終わろうと低空威嚇飛行の事案を持ち出しただけだから、まぁ、日本は興奮せずに冷静に放置すべきであると。このように言っています。」
倉田大誠
「はい。ここまではFOCUS(コーナータイトル)でした。」
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以上が報道内容になります。
この報道は現在、「韓国人へのヘイトスピーチだ」という批判がネット上を中心に起こっています。そこで当会では、以下の点を検証しました。
・『韓国人の交渉術』という経験則に基づいた主張が放送法違反に該当するのか
『韓国人の交渉術』という報道は、産経新聞ソウル駐在・黒田勝弘記者のコメントに依拠するものです。36年もの韓国駐在歴を持つ記者の実体験に基づく発言ですから、この発言自体を認めないとなると、今後はジャーナリストが発言する機会というのは一切なくなっても良いということでしょう。
例えば、当会が毎週調査をしております「サンデーモーニング」や「NEWS23」などでは、独自の取材経験をもとに政権批判を行うコメンテーターらが大勢います。彼らにも当然、「言論の自由」が保証されている訳ですから、誤った事実を発信しない限りは、意見を発言すること自体に問題はありません。もちろん、誤った事実を発信したり、番組全体として意見に偏りが見られたりした場合には、放送法上問題ではありますが、コメンテーターが意見を発言すること自体は全体として公平性が担保されていれば問題ではありません。
しかし、それを公共の電波に乗せて、不特定多数の国民に報道するという観点では、放送法を遵守し、国民に誤った印象を抱かせないよう注意し、政治的公平性を担保する必要があります。この点で、「サンデーモーニング」や「NEWS23」などには大きな、根深い問題性があるのです。
さて、この観点から「プライムニュース イブニング」の報道を振り返りますと、黒田記者の考えの発言自体は認められるべきですが、放送法の遵守が不徹底であったと思われます。特に、番組内では反町メインキャスターが、「まぁ韓国人の行動パターン、これを国にも当てはまるとは限りませんが、」と発言していますが、この時点で「韓国人」と一括りにしてしまっています。発言をそのままの意味で理解してしまえば「韓国人はこの行動パターンで行動しているが、韓国という国自体はこの行動パターンには当てはまらない可能性がある。」ということになります。これでは、国民に誤った印象を与えかねませんので、放送法違反の疑いがあります。
例えば、「韓国人全員に当てはまる訳ではありませんが、韓国在住のべ36年、産経新聞ソウル駐在黒田記者の実体験に基づく意見によると、以下のポイントを用いて交渉する韓国人が多いと言います。」といった前置きをしておけば、黒田記者の分析が韓国人全員の行動パターンを評価したものではなく、長年韓国で勤務した記者の経験に基づく分析であることを強調できました。報道機関としては、提示した資料の出どころ(今回の場合は「(黒田記者の)実体験」であるということ)と、補うべき注釈(今回の場合は「全体的な傾向に関する話である」ということ)をしっかりつけるべきであったのに、それがなかったことに今回の報道の問題はあったと思います。
これは、報道監視員の個人的な意見になりますが、現在ネット上で繰り広げられている「ヘイトスピーチ」だといった論争こそ、日韓関係の対立を過熱させ、問題悪化を引き起こしているのではないでしょうか。番組では、冷静になって事態の収束を図るべきと主張されており、緊張感を煽る内容ではありません。冷静さが欠けているのは、他ならぬネット世論のような気がします。
また、もしBPO(放送倫理・番組向上機構)が当該報道を問題視するのであれば、同様に「サンデーモーニング」や「NEWS23」などの報道内容にもメスを入れるべきでしょう。日頃の問題を放置しながら、こうした特定の話題にのみ焦点を充てるのであれば、放送界の自立機関としての正統性が失われることでしょう。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。