2019年9月24日 羽鳥慎一モーニングショー

2019年9月24日 羽鳥慎一モーニングショー

放送法順守を求める視聴者の会による、2019年9月29日分の検証報告(中編)です。
この日はサンデーモーニングの放送がお休みでしたので、他局の報道番組の中から放送法違反が見受けられるものをレポートとさせていただきました。

今回の報告では、
① テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/24放送回)」にて、
「安倍首相によるアメリカ産トウモロコシ購入の約束」について報道された部分
② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分
③ テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(10/4放送回)」にて、
「中国における日本観光ブームと外交問題」について報道された部分
以上3番組について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容のなかから疑わしい部分を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分
となります。

では、さっそく放送法違反が疑われる部分をみてみましょう。

【VTR要約】
福島第一原発の処理水の扱いに関する政治家のさまざまな発言が注目されている。前環境相は退任直前に「それしか方法はない」と発言し波紋を広げた。今も増え続ける処理水の問題に大阪市松井市長が声を上げたが、突然の発言に大阪の漁業関係者からは困惑と怒りの声が上がっている。賛否が分かれる処理水の海洋放出だが、あと3年で限界を迎えるなか、どうすればよいのだろうか?

——–トリチウム除去について——–
【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
 澤田哲生氏は「トリチウムは自然界にあるため濃度が自然に近ければ科学的には人体に影響が出ない」と話している。また、更田豊志氏は「海洋放出が最も合理的な手段。科学的な意味での影響が出ることは考えられないが、社会的な影響は小さなものとはいえない」と話している。
 一方、山田耕作氏は「今後どのような影響が出てくるかわかっていない時点での海洋放出は危険」と指摘しており、西尾正道氏は「トリチウムは体内でたんぱく質や糖などとくっつくと排泄されず年単位で体内に残る可能性がある」と反対の意見である。

【スタジオの発言】
浜田敬子氏(要約):私も自分の中で結論が難しいが、期限は決まっていて何か対策を立てなければいけない。社会的な合意形成をどうやって作っていくっていうことがまだまだ全然段階を踏んでないときに、ああいう大臣の発言はすごく無責任だと感じる。

羽鳥アナ:原田前大臣は「これしか方法がない」と言って、小泉新大臣は「その発言はだめでしょ」と言っているが、でも具体的にどうするのかはなかなか難しい。玉川さん、どうでしょう?

玉川徹氏(全文):これはもう、原発の事故が起きて、水冷で冷やすって話になった直後から、いずれはって話だったんですよ。貯まってくんですから。で、トリチウム以外も、取り切れないものはまだまだ出てきてですね、水冷ですると。今回トリチウムが問題ですけど、このままずっと続けていけば、他のもののタンクだってまだ増えてくんですよ。じゃあそれどうするんですかって話は全然今回出てきてないんですよね。で、僕が思ってるのは、他の方法を、なんでその原子力の専門家とかが、もうちょっと良い方法を考えることができないんだろうなってことが根本にあって、だいぶ前からこれ水冷じゃなくて空冷でもいけるんじゃないかって話もあるんですよね。時間が経ってるんで、そこそこ冷えてきてんですよ。あの、熱崩壊も段々時間が経って。だったらこれは水じゃなくて、空気で。あの、エンジンってあるじゃないすか。で、今車のエンジンって、ほとんどが水冷って言って、水で冷やしてるんですね、エンジンは。でも、ちょっと前のポルシェの車なんかは空冷って言って空気でエンジン冷やすんですね。で、オートバイのほとんどは今でも空冷なんですよ。水冷じゃなくて。だから、水を使わないで冷やす方法とかっていうのは、実際検討されてんのかされてないのか。だから前大臣が、それしかないって言っちゃってんだけど、本当にそうなのかってとこまで含めて考えないと。で、もう一つ大原則としては、これは原発の事故があったから生まれてるんですよこれ全部。で、原発の事故は起こんないって言ってたんです。原発専門家は。ほとんどはね。でも起こって、起っちゃったあとじゃあどうすんだって言ったときに、もう泥縄のようにこれ放出するしかないんだと。また無責任なこと言ってんのかってのが僕の心の中にはあります。そういうふうに、本来は大量に放出しないで済んでるはずものを大量に放出するしかない。これしかないんだからいいだろうっていうふうなことは謙虚さに欠けてると思うんです。少なくとも専門家なんだったら、放出しないで済む方法を考えろっていうわけです。

羽鳥アナ:澤田さん、空冷っていうのは可能なんですか?

澤田氏(要約):仕組みとしては事故から8年以上経っているので可能だが、地下水を完全止めないとドライにならない。今貯まってるデブリ自体は温度がかなり下がってるので、空冷できる可能性はある。

羽鳥アナ:それは地下水ですよね?1日150tずつ排出される水は減りませんか?

西尾氏(要約):基本的に箱のようなものを作ればいい。離れたとこから深い壁を全方位から作って、原子炉そのものをその箱に入れれば水は遮断できる。そして、上もチェルノブイリのように鉄管のようなものを加えて空冷にすればいいだけ。それ以外は、汚染水を止める方法はない。しかもトリチウムだけが問題になっているが、ストロンチウムやヨウ素129、ルテニウムなど、トリチウム以外に放射性物質はたくさん入っている。

澤田氏(要約):現在は凍土壁でやっているが、箱の底まで箱にするのはコストがかかる。技術的に可能かという問題もある。

西尾氏(要約):でも実際には100年200年という単位ですから、そういう工事するしかないんですよ。

澤田氏(要約):お金がかかりすぎても、どこかが負担しなければいけない話なので、そこのバランスを取らないといけない。

玉川氏(全文):僕はね、お金の話が出たんでついでに言わせていただくと、そのお金はね、もうかかるお金なんですよ。あの原発の事故のコストなんですよそれは。だからまあ、実際どれくらいかかるかっていうのは試算しなくちゃいけないと思うんですけど、それはお金をかけても閉じ込めるっていうふうなことをやらざるを得ないんですね。で、あんまりお金かけたくないんですよ。電力会社にしても国にしても。それぐらいかかっちゃうと、ほら、原発って事故が起きたらこんなにお金がかかるじゃないかってなるのがそもそも嫌なんですね。でも、それはお金がかかったらそれは事故のコストとして受け入れるしかないんです。

羽鳥アナ:しかし現実として今、処理水は毎日150トンずつ溜まっていくので、それをどうするかという話もちょっとしていかなければいけないということです。

——–政府の説明について——–
【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
しかし政府は、人体の影響について「トリチウムはエネルギーが弱いので皮膚の表面で止まる」「普通の水と同じく尿などで排出」「特定の臓器に蓄積しない」ということで健康への影響は確認されていないと説明している。

【スタジオの発言】
西尾氏(要約):これは内部被ばくをまったく考慮していない。核に取り込まれてるということが全く分かってない。論外。

浜田氏(要約):処理の仕方も含めて、私たちは原発事故を経験して以降、国、原子力行政や東電に対してまず不信感から始まっている。いくら説明が良くても疑いの目で見てしまう。去年処理水の中から基準値以上の物質が見つかったという報道もあるので、そこを払拭するのは相当大変だと思う。先週に判決が出た東電の体質があれだけ明らかになっている中でこの企業や国に今の原子力行政を任せていいのかという不信感が一番大きい。

——–トリチウム水の海洋放出について——–
【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
 福島第一原発では1年間に約1000兆ベクレルのトリチウムを放出している。フランスのラ・アーグ再処理施設では1京3700兆ベクレルを放出している。カナダのブルースA,B原発では892兆ベクレル。  
事故前から40年以上にわたり全国の原発でトリチウムの海洋放出は行われている。2010年における福島第一原発のトリチウムの年間排出量は約2.2兆ベクレル。

【スタジオの発言】
羽鳥アナ:なぜ海へ放出されているんですか?

澤田氏(要約):運転するとトリチウムを含む水が発生するので、濃度調整をして海へ放出するというのを従来からやってきた。

羽鳥アナ:もうしてたんですね?

西尾氏(全文):いや、してるから、要するに玄海原発周辺とか、泊原発の周辺も、健康被害が出てるわけですね。(羽鳥アナ「因果関係ははっきりは?」)疫学的データとしては見事に出てます。

【羽鳥アナによるパネル説明(要約)】
 福島第一原発では事故後も海洋放出している。2017年における原子炉建屋近くの井戸(サブドレン)からの海洋放出量は約1100億ベクレル。

【スタジオの発言】
羽鳥アナ:これは玉川さんどうなんですか?世界でやってるっていう。

玉川氏(全文):あのね、既にやってるからって安全とは言えないんですよ。あの、人間はいろんなプラスチックを海に放出してますけど、それがマイクロプラスチックになって、今になってやっと問題視されてるんですけど、多分プラスチックの放出が始まったのってのは、1960年代ぐらいから大量に出てるんだと思うけど、それから、40年近くは問題視されなかったんですね。だから、既に放出されている。だから安全っていうふうな話にはならないっていうのは、非常に一般的な話だろうと。で、先ほどの、トリチウムが、人間の体の中に取り込まれるって。人間の体って、外から取り込んだものでできてるんですよ。自分で生み出したものは一切何もありません。全て外から取り込んだもので僕らの体だってできてます。それは細胞もそうだしDNAも全部そうです。で、それは、水素と炭素と窒素を主にしてできてるんですけども、全部外から取り込んでるんですね。で、取り込んでるからこそ、どんな場所にも行くんですよ最終的に。で、取り込まれたものが、放射線をってことで言えば、それは例えばさっき先生がおっしゃったように核の中に取り込まれればね、核っていうのはまさに遺伝の中心ですから、そこに影響を与えるっていう研究もあります。そのトリチウム自体が。であとはね、確率なんです。人間みんな、みんなとは言わないけど、まあほとんどの人間は体の中で癌細胞ができてるんですけども、病気としての癌になる人ってのは一定数いるわけですよね。人間の半分ぐらいは癌になるって言われてますけど。一生のうちに。で、何で癌になるのかいまだによくわかってないんですよ。ただ、その取り込まれたトリチウムが、リンパ球とかに変化を及ぼすってことはどうも科学的には言えるみたいです。だから、それで、先ほど先生がおっしゃったように、白血病とかとの関連が疑われるっていうふうなことがね、実際に疫学的にあるんだとすれば、それは、関係ないとは言えないなと。

羽鳥アナ:実際に(海洋)放出されていますが、影響はどうなんですか?

澤田氏(要約):元々自然界には海洋放出された量よりも多くあり、その中で我々は生きてきた。仮に核に取り込まれていたとしても、それを修復しながら生命は進化してきた。放出されているトリチウムと自然界にあるトリチウムに違いはない。そこがポイント。

玉川氏(要約):因果関係がないのと因果関係がわからないというのは大違いですよね。トリチウムが体に影響がないとは言えないわけですよね?(澤田氏「もちろん、ちゃんと調べないといけない」)太古の昔からある癌とトリチウムに因果関係があるのか今はわからない。その中でさらに海洋に大量に放出して影響がないのか、今の科学ではその因果関係を立証できない。

西尾氏(全文):トリチウムってのはね、海に撒いたらプランクトンが取り込んで、それが小魚が食べて、最終的に人間に、生物濃縮した形で濃度の高いトリチウムが入ってくるんですよ。それから例えば、僕が医者になった頃はですね、実は日本の癌の患者さんって20万人だったんですよ。今100万人超えました。なんで5倍になってるの?原発っていうのは要するに、トリチウムを垂れ流してるんで、周辺のとこ、世界中のですね、健康被害が報告されてんですよ。それは事故を起こさなくても、健康被害が出てるっていうのはですね、疫学的には有意な形でもう多くなってるわけです。これは、最大の原因は僕はトリチウムだと思ってます。

羽鳥アナ:専門家でも意見が分かれて、素人は風評被害になるわけじゃないですか。

玉川氏(全文):なっちゃいますよね。わかんないからね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、玉川氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
3、西尾氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

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1、玉川氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
玉川氏は今回の報道で、以下のように述べています。

玉川氏(抜粋):これはもう、原発の事故が起きて、水冷で冷やすって話になった直後から、いずれはって話だったんですよ。貯まってくんですから。で、トリチウム以外も、取り切れないものはまだまだ出てきてですね、水冷ですると。今回トリチウムが問題ですけど、このままずっと続けていけば、他のもののタンクだってまだ増えてくんですよ。じゃあそれどうするんですかって話は全然今回出てきてないんですよね。で、僕が思ってるのは、他の方法を、なんでその原子力の専門家とかが、もうちょっと良い方法を考えることができないんだろうなってことが根本にあって、だいぶ前からこれ水冷じゃなくて空冷でもいけるんじゃないかって話もあるんですよね。時間が経ってるんで、そこそこ冷えてきてんですよ。あの、熱崩壊も段々時間が経って。だったらこれは水じゃなくて、空気で。あの、エンジンってあるじゃないすか。で、今車のエンジンって、ほとんどが水冷って言って、水で冷やしてるんですね、エンジンは。でも、ちょっと前のポルシェの車なんかは空冷って言って空気でエンジン冷やすんですね。で、オートバイのほとんどは今でも空冷なんですよ。水冷じゃなくて。だから、水を使わないで冷やす方法とかっていうのは、実際検討されてんのかされてないのか。だから前大臣が、それしかないって言っちゃってんだけど、本当にそうなのかってとこまで含めて考えないと。で、もう一つ大原則としては、これは原発の事故があったから生まれてるんですよこれ全部。で、原発の事故は起こんないって言ってたんです。原発専門家は。ほとんどはね。でも起こって、起っちゃったあとじゃあどうすんだって言ったときに、もう泥縄のようにこれ放出するしかないんだと。また無責任なこと言ってんのかってのが僕の心の中にはあります。そういうふうに、本来は大量に放出しないで済んでるはずものを大量に放出するしかない。これしかないんだからいいだろうっていうふうなことは謙虚さに欠けてると思うんです。少なくとも専門家なんだったら、放出しないで済む方法を考えろっていうわけです。

要旨をまとめると、
・水冷という手段を取った時点でこうした問題は必ず起きると予想できた。水冷だとトリチウム以外にも取り除けないものが増え、そうした物質のタンクもまた増えていってしまう。
・原子力の専門家が水冷以外の方法を考えないのはなぜか。時間が経っているので空冷でも行けるのではないかという議論が存在する。実際、車のエンジンはほとんど水冷式だが、オートバイのエンジンのほとんどは今でも空冷エンジンを使っている。
・前大臣が「これしかない」と言っているが、本当にそうなのかということを考えるべき。本来は大量に放出しなくて済むものを放出するしかない、これしかないからいいだろうという考え方は謙虚ではない。専門家なら放出しなくてすむ方法を考えるべき。

というものです。

しかしながら、
・トリチウムは他の放射性物質を取り除く処置を行った後にどうしても残るため処理水として蓄積されており、他の物質のタンクが増えていくという主張は事実に即していない。
・車やバイクのエンジンと原発の冷却は全く次元の違う話である。また、オートバイのエンジンは現在ほとんど水冷式となっており、玉川氏の主張は事実に反している。
・現在海外の原発のほとんどでトリチウムを含む水が排出されており、本来は大量に排出しなくて済むという主張や放出しなくていい方法を考えるべきだという主張は事実に即していない。また、原子力の専門家は放出する以外の選択肢を考えていないという主張には根拠がなく、放出するという選択肢を「謙虚ではない」とする姿勢は公平なものとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

また、玉川氏は今回の放送で以下のようにも述べています。

玉川氏(抜粋):あのね、既にやってるからって安全とは言えないんですよ。あの、人間はいろんなプラスチックを海に放出してますけど、それがマイクロプラスチックになって、今になってやっと問題視されてるんですけど、多分プラスチックの放出が始まったのってのは、1960年代ぐらいから大量に出てるんだと思うけど、それから、40年近くは問題視されなかったんですね。だから、既に放出されている。だから安全っていうふうな話にはならないっていうのは、非常に一般的な話だろうと。で、先ほどの、トリチウムが、人間の体の中に取り込まれるって。人間の体って、外から取り込んだものでできてるんですよ。自分で生み出したものは一切何もありません。全て外から取り込んだもので僕らの体だってできてます。それは細胞もそうだしDNAも全部そうです。で、それは、水素と炭素と窒素を主にしてできてるんですけども、全部外から取り込んでるんですね。で、取り込んでるからこそ、どんな場所にも行くんですよ最終的に。で、取り込まれたものが、放射線をってことで言えば、それは例えばさっき先生がおっしゃったように核の中に取り込まれればね、核っていうのはまさに遺伝の中心ですから、そこに影響を与えるっていう研究もあります。そのトリチウム自体が。であとはね、確率なんです。人間みんな、みんなとは言わないけど、まあほとんどの人間は体の中で癌細胞ができてるんですけども、病気としての癌になる人ってのは一定数いるわけですよね。人間の半分ぐらいは癌になるって言われてますけど。一生のうちに。で、何で癌になるのかいまだによくわかってないんですよ。ただ、その取り込まれたトリチウムが、リンパ球とかに変化を及ぼすってことはどうも科学的には言えるみたいです。だから、それで、先ほど先生がおっしゃったように、白血病とかとの関連が疑われるっていうふうなことがね、実際に疫学的にあるんだとすれば、それは、関係ないとは言えないなと。

要旨をまとめると、
・マイクロプラスチックの問題など後から危険性が発覚するものもあるため、「すでに行われているから安心だ」という話にはならない。
・トリチウムが人間の細胞の核に入り込んで悪影響を及ぼすという研究が存在する。人間のうちガンを発症する人間は半分くらいだが、その理由はよくわかっていない。取り込まれたトリチウムがリンパ球に変化を及ぼしガンの引き金になるとも言われており、白血病との関連も疑われている。関係がないとは言えないだろう。

というものです。

しかしながら、
・現在科学的に危険性が証明されていないものを「もしかしたら危険かもしれない」と主張すると、この世のありとあらゆるものに潜在的な危険性を認めざるを得なくなる。根拠なしにこうした危険性を主張することは事実に即しているとは言えない。
・「原子放射線の影響に関する国連科学委員会2016」によると、トリチウムの被ばく線量と影響との因果関係に基づいてリスク推定ができている研究はほとんど存在しない。また、日本放射線影響学会によると体内に取り込まれたトリチウムは基準値以内であれば生物影響がはるかに少なく、また同位体置換反応や代謝で排出されるので体内にとどまり続けるということはないと指摘されている。したがって、玉川氏の主張は事実に即しているとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での玉川氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トリチウムを排出することは人間への影響はもちろん大きな風評被害を生む」「絶対に安全とわかるまで海に放出すべきではない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「もともと自然界に存在する物質で危険性はほとんどない、風評被害を広めているのはマスメディアだ」「海外では当たり前のように海に放出している、タンクにため続ける方が問題だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/25放送回)」にて、
「福島第一原発のトリチウム水排出」について報道された部分における
  検証3「西尾氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(10/4放送回)」にて、
「中国における日本観光ブームと外交問題」について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

① テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/24放送回)」にて、
「安倍首相によるアメリカ産トウモロコシ購入の約束」について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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