2019年3月8日 ニュースウォッチ9

2019年3月8日 ニュースウォッチ9

【内閣法制局長官発言問題】
NHK「ニュースウオッチ9」2019年3月8日放送会の検証報告です。

今回の報告では、
・内閣法制局長官の発言が不適当なものであると取り上げられている点
以上、1点について検証を行い、その問題点を探ります。

はじめに、今回の報道内容をお伝えいたします。

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※敬称略

【スタジオ】
桑子真帆
「続いては、こちらの写真です。こちらはですね、去年10月の内閣改造の時の写真なんですけれども。一番後ろの列の一番左、こちらにいるのが内閣法制局の横畠長官です。」

有馬嘉男
「その職責から法の番人とも呼ばれる法制局の長官が、国会で厳重注意を受けました。何があったんでしょうか。」

【VTR】
ナレーション
「今日参議院予算委員会に出席した横畠内閣法制局長官。冒頭、金子委員長から。」

金子 参議院予算委員会委員長
「発言は法制局長官の職責及び立場を逸脱するものであり、誠に遺憾であります。委員長としては横畠長官に対し、今後かかる行為のないように厳重に注意を申し入れます。」

横畠内閣法制局長官
「行政府にあるものの発言として、その立場を逸脱した誠に不適切なものでありましたので、お詫びをして撤回させていただきました、ここに改めてお詫びを申し上げます。」

ナレーション
「横畠氏が長官を務める内閣法制局。政府が作成したすべての法案などが、憲法や過去の法律と矛盾しないか審査する唯一の機関で、法の番人とも呼ばれます。その了解がなければ政府は法案を国会に提出することもできません。また、憲法や法律の解釈について、政府の見解を国会で答弁する役割なども担っています。横畠氏が長官に就任したのは、第2次安倍政権下の平成26年。与野党が激しくぶつかり合った、5年前の安全保障関連法の審議では、歴代の内閣ができないとしてきた集団的自衛権の行使を、憲法解釈の変更によって容認していました。」

横畠内閣法制局長官
「これまでの憲法の解釈と整合すると憲法9条の下でも許容される。」

ナレーション
「その横畑氏が厳重注意を受けるきっかけになったのが、おとといの参議院予算委員会でのやり取りです。安倍総理大臣と質疑を交わしていた野党の議員がこのように発言。」

小西洋之(立憲民主党)
「安倍総理のように、時間稼ぎをするような総理は、戦後一人もいませんでしたよ。国民と国家に対する冒涜ですよ。聞かれたことだけを堂々と答えなさい。」

ナレーション
「その上で、国会での議員の質問が内閣に対する監督機能を持つかどうか、横畠長官に質問。すると。」

横畠内閣法制局長官
「国会が一定の監督的な機能、国権の最高機関、立法機関としての作用というのはもちろんございます。ただあのこのような場で声を荒げて発言するようなことまで含めては考えておりません。」

ナレーション
「野党議員の姿勢を揶揄したと受け止められる答弁。抗議を受けた横畠長官は答弁を撤回し陳謝していました。昨日、野党からは。」

辻元 立憲民主党国対委員長
「法の番人が安倍政権の門番に成り下がったと、言わざるを得ないと思います 。」

志位 共産党委員長
「全くの越権行為であると。自分をなんと心得ているのか。これは資格なしと、やめさせるべきだと思います。」

ナレーション
「さらに与党からも。」

伊吹 元衆議院議長
「姿勢だとか態度っていうものをね、批判するなんてことはね、あり得ないことなんですよね。少し思い上がってるんじゃないか。」

ナレーション
「そして今日の参議院予算委員会。野党側は横畠長官の辞任を求めました。」

杉尾秀哉 (立憲民主党)
「憲政史上に一大汚点を残しましたよ。その任にありません。やめるべきだと思いますがいかがですか。」
横畠内閣法制局長官
「十分反省しているつもりでございます。その反省の上に立って、しっかりと職責を果たして参りたいと考えております。」

ナレーション
「こう述べて職にとどまる考えを示しました。与野党からは。」

自民党 加藤総務会長
「政府の方に置いてはですね、そうした発言も含めて緊張感を持ってですね、国会において建設的な審議がなされる環境を作っていくこういった努力はしっかりとしていただきたいと思います。」

公明党 斉藤幹事長
「発言を撤回されておりますので私は辞職の必要性はないと思います。」

立憲民主党 福山幹事長
「安保法制で矜持を捨てて以来、安倍総理の官邸に対して、意向をいかに忖度して法律を出すかに注力をしてきた方だと。いい加減にもういいんじゃないかと 。」

国民民主党 玉木代表
「権力を行使する側の謙虚といったものが失われてしまって、長期政権という思い上がりというのが法制局まで蔓延してるなと。大変危険なことだと思っています。
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以上が報道内容になります。
当会が調査を行い問題性があると考えたのは以下の点です。

・今回の法制局長官の発言が、一方的に問題として取り上げられていることです。

そもそも内閣法制局長官とは一体どういうものなのでしょうか。内閣法制局は内閣の法制の助言機関で、その長官は内閣の指名によって選ばれます。つまり内閣法制局長官は「内閣の法制の助言機関の長」であって、「憲法の番人」ではないのです。

仮に内閣法制局長官が憲法の番人であるとすれば、司法の違憲立法審査権はどういう扱いになるのでしょうか。憲法について言及するにも関わらず、司法の役割について言及がないのは恣意的と言わざるを得ません。

民主党政権で、内閣副官房長官を務めた元参議院議員の松井孝治慶應義塾大学教授は、以下のように指摘をしています。

「確かに横畠長官の発言は、国会議員の委員会での追及その他の発言ぶりを揶揄するもので、政府の一員の答弁としては褒められた発言ではありません。
ただ、内閣法制局は内閣の法制助言機関であり、下記の記事にもある「法の番人」は本来は司法の役割です。戦後の歴代内閣法制局長官があたかも「法の番人」のように振る舞ってこられたことは事実かもしれませんが、内閣法制局は、本来は、その政権の法制顧問のような役割を担うというのが、制度の趣旨のように思います。
また、内閣法制局長官は、官房副長官(事務)と並んで数少ない政治任用職として政権から任命されている職。事務次官その他の幹部職とは異なり、一般職公務員としての身分保障もありませんし、政権と去就を共にする(内閣改造の時もいったん辞表を提出します)職なのです。その意味では、一般の官僚とは任命形態も異なり、役人だから政治的発言は控えるべきという単純化もいかがかと思います(戦前はこのことが少し行き過ぎていたかもしれませんが)。」

このように、その役割についてしっかりと考えている人もいます。

一方で、これまでの法制局長官があたかも「憲法の番人」のように振る舞ってきたことを根拠として、今回の発言を強く問題視するのは、問題の本質を捉えた非難とは言い難く、政権批判の一環でしかないといえるでしょう。

こうした点も含め報道全体を通して、放送法 4 条(2)政治的に公平であること(3)報道は事実をまげないですること に違反している可能性があります。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けてまいります。

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