2019年9月18日 羽鳥慎一モーニングショー

2019年9月18日 羽鳥慎一モーニングショー

今回検証するのは、

テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(9/18放送回)」にて、
「大阪市松井市長による福島第一原発の処理水受け入れの表明」について報道された部分

となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
原発の処理水の処分について、大阪・松井市長が環境へ影響がないのであれば大阪湾への放出に協力するという考えを示した。松井市長は「科学的に全く環境被害のないものは、国全体で理解をしながら処理すべき問題」と述べ、大阪府吉村知事も「見て見ぬふりをしてはいけない課題」と語った。
処理水をめぐり原田前環境大臣は「(海洋に)放出して希釈するほかに選択肢はない」と訴えているが、小泉現環境大臣は慎重な姿勢を示している。吉村知事は「嫌われても政治家がやるべき仕事。小泉さんの地元の横須賀で放出するくらい腹くくってくれたら」と述べた。これに対し小泉大臣は「軽々に所管外の者が発現することで結果として地元の福島県の方、漁業関係者の皆さんを傷つけることになってはならない」と話した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・処理水とは、原子炉を冷やすために使用した汚染水から放射性物質を取り除いた水で、トリチウムが含まれている。
・トリチウムは水道水にも存在し、体内に入っても新陳代謝などにより体外に出る物質
・トリチウムを含む処理水は110万t貯蔵され、一日に150t増えるため2022年には置き場がなくなる
・海外の原発・再処理施設ではトリチウムを海洋放出する国もある
・経産省が福島で開催した公聴会では、風評被害を心配する声が続出している
・タンクの水に取り除くべき放射性物質が排出基準を超えて残っていたことが発覚している

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【コメンテーターの発言】
浜田敬子氏(全文):府知事もおっしゃったように、見て見ぬふりをしてはいけないってその通りですよね。貯蔵量に限界があるので、どっかで何らかの決断はしなければいけない問題だと思うんですけれども、でもそもそもこう、基準値内であれば安全だということで、放出の可能性も検討材料に入ると思うんですけれども、そもそもが、去年ですかね、排出基準超えということが県として発覚しているということで、ますます地元の方は本当にじゃあ、科学的にまず安全なのかっていう不安が募るのは当然ですよね。あとやっぱり今、政府の小委員会でもこの処理に対しては、あの議論がまだ続いている過程ですよね。で、科学的に安全だというだけで本当に判断していいのか。その経済的にとか社会的な影響まで考えるべきではないのかということで、結局今もまだ議論が続いている。その途中で、担当大臣とかまあ環境大臣が出て前の環境大臣が個人的な見解として言ってしまってまた議論が混乱するということがすごくその不安に拍車をかけている。さらにはあの、先日ですね、IAEAって国際会議で韓国がまあ今、日韓対立でこの問題を政治的に利用していることもあって、もう少しやっぱり議論をその、進めなければいけないけれどもきちんとやっぱり手続きをうって慎重にやるべきじゃないかと思いますけどね。

羽鳥アナ:慎重さが必要だと思うんですけど、第一原発の映像を見ますと、貯蔵タンクの数がもう尋常な数ではない。これ、西田さん、このままですと、3年後にもう、処理能力が超えちゃう。もうこれ以上は無理だということがくるというのも現実にあるという。

西田亮介氏(全文):そうですね。科学的な安心安全の問題と、それから、そうですね、現地で生活されてる皆さんが、安心安全だと思うこと、これまた別問題だと思うんですね。つまり、科学的に安全だから人々が安心するってことじゃないわけですよね。で、そのときにじゃあどうすればこの両者ってのは合致するのかって言った時に、大前提として政府がきちんと説明して。まあ電力会社もそうですね。で、そのことがまあ、きちんと受け止められるという土壌が必要なんだけれども、日本の場合というのはそこがまあなかなか難しくてですね、この間いろいろな言説が出てきたりとかですね、それから今回の大臣の発言もそうですが、その中で混乱が生じているとますます安心しにくい状況というのが生まれてると。ここについてきちんと手当をしていくというところが一つ重要なのかなと思います。

羽鳥アナ:安全と安心を両立させるというのはかなり難しいと思いますけどね。

西田氏:極めて難しいことだと思いますね。

羽鳥アナ:ただ、このままのペースですと3年後には貯蔵タンクがパンクしてしまうというのが現実です。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、西田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

浜田氏(抜粋):でもそもそもこう、基準値内であれば安全だということで、放出の可能性も検討材料に入ると思うんですけれども、そもそもが、去年ですかね、排出基準超えということが県として発覚しているということで、ますます地元の方は本当にじゃあ、科学的にまず安全なのかっていう不安が募るのは当然ですよね。(中略)で、科学的に安全だというだけで本当に判断していいのか。その経済的にとか社会的な影響まで考えるべきではないのかということで、結局今もまだ議論が続いている。その途中で、担当大臣とかまあ環境大臣が出て前の環境大臣が個人的な見解として言ってしまってまた議論が混乱するということがすごくその不安に拍車をかけている。さらにはあの、先日ですね、IAEAって国際会議で韓国がまあ今、日韓対立でこの問題を政治的に利用していることもあって、もう少しやっぱり議論をその、進めなければいけないけれどもきちんとやっぱり手続きをうって慎重にやるべきじゃないかと思いますけどね。

要旨をまとめると、
・基準値内であれば安全だというが、排出基準を実は超えていたという事例もある。科学的に安全だということで本当に判断していいのか。経済的な影響、社会的な影響を考えるべきだという議論もある。
・IAEAで韓国がこの問題を政治利用しているので、なおさら慎重に物事を進めるべきだ。

というものです。

しかしながら、
・排出基準を実は超えていたという事件が過去にあったことは、排出基準を下回れば科学的に安全という事実に相反するものではない。
・科学的に安全な処理水が経済的影響や社会的影響を引き起こすのは、マスメディアなどが科学的根拠に基づかない風評被害を拡散するからである。したがってこうした影響が当たり前に発生するとする浜田氏の主張は事実に基づかない。
・IAEAで韓国がこの問題を政治利用していることは、処理水の科学的な安全性を無効にするものではない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、西田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西田氏(抜粋):そうですね。科学的な安心安全の問題と、それから、そうですね、現地で生活されてる皆さんが、安心安全だと思うこと、これまた別問題だと思うんですね。つまり、科学的に安全だから人々が安心するってことじゃないわけですよね。で、そのときにじゃあどうすればこの両者ってのは合致するのかって言った時に、大前提として政府がきちんと説明して。まあ電力会社もそうですね。で、そのことがまあ、きちんと受け止められるという土壌が必要なんだけれども、日本の場合というのはそこがまあなかなか難しくてですね、この間いろいろな言説が出てきたりとかですね、それから今回の大臣の発言もそうですが、その中で混乱が生じているとますます安心しにくい状況というのが生まれてると。ここについてきちんと手当をしていくというところが一つ重要なのかなと思います。

要旨をまとめると、
・科学的な安全安心と、現地に暮らす人々の安全安心とはまた別物である。科学的に安全だからと言って人々が安心するわけではない。
・電力会社や政府がきちんと説明し、受け止めるという土壌が必要だが、日本にはそうした土壌がない。そうしたなかで小泉環境相の発言などがあるとますます安心しにくい状況が生まれてしまう。

というものです。

しかしながら、
・電力会社や政府に説明責任があるのは事実だが、科学的な安全を人々が直ちに受け入れられないのは、科学的根拠もなく電力会社や政府の説明を否定し、人々の不安を煽るマスメディアなどにもその責任の一端がある。したがってこうした影響が当たり前に発生するとする西田氏の主張は事実に基づかない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「科学的根拠があるから安心だとは言えない」「国際社会や経済、社会への影響を考えるべきだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「科学的根拠を無視して危険性を喧伝するのは風評被害だ」「科学的に安全だと証明されたのなら毅然としてすべきことをするのが正しい姿勢だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告となります。事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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