4月20日の報道ステーションのレポートです。
今回はPCR検査に関する箇所をピックアップしてレポートをお届けします。
検証する内容は以下の点です。
・様々な論点を取り上げた放送であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
森葉子アナウンサー:新型コロナウイルスの検査数の増加が求められています。厚生労働省はPCR検査よりもはるかに結果が早く出る抗原検査の導入を検討していることが分かりました。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):抗原とは体内に入ってきたウイルスそのものです。ウイルスを形作るたんぱく質があるかどうかを調べるのが抗原検査です。抗原から体を守るために作られる抗体は増えるのに時間がかかり感染初期には検出ができません。これに対し、抗原のたんぱく質は感染の初期に検出が可能です。
KARADA内科クリニック五反田・佐藤昭裕院長(以下佐藤院長)『「抗原検査」はこれまでたとえばクリニックなどでインフルエンザ、のどの病気、溶連菌感染症の検査キットとしてあった。B型肝炎の簡易的なキットも存在する。インフルエンザはこの綿棒で鼻腔の液をとる。簡易キットであれば5~10分で(結果が)分かる』
ナレ:日本で初めて抗原検査が導入されたのは1972年。B型肝炎ウイルスのスクリーニング法いわゆる簡易的な検査として実施されるようになりました。厚生労働省は手間や時間のかかるPCR検査を補う方法として期待を寄せています。抗原検査の長所はその手軽さです。PCR検査は結果が出るまでに4時間から6時間かかります。中には保健所に行ってから数日かかる場合もあります。一方で、抗原検査の場合小さなクリニックでも行うことができ検査結果は、早ければ15分程度で出るといいます。
佐藤院長『PCR検査に比べれば簡便なものになると思う。「抗原検査」は非常に一般的で(地元の)クリニックや病院でもよく使われている』
ナレ:関係者によりますと現在、複数のメーカーが国の支援を受け抗原検査の専用キットの開発を進めているということです。すでに検査キットの開発に取り組んでいる大学があります。先月横浜市立大学の共同グループは新型コロナウイルスの抗原検出に成功しました。来月から検査キットの販売を開始する予定です。しかし、そこには課題も。
佐藤院長『製品によるところがだいぶん大きい。抗原検査ができても感度が低くて見つけられない検査だったら意味がない』
ナレ:新型コロナウイルスはインフルエンザと異なりウイルスの数が少なく検査結果の精度がPCR検査より劣るため確定診断に利用できるかどうかはまだ分からないといいます。厚生労働省は抗原検査を簡易検査だけではなくインフルエンザの検査のように確定診断にも利用できないか検討を続けています。
【コメンテーターによる解説】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):改めまして音声聞こえますでしょうか。松本先生よろしくお願いいたします。まず先ほどVTRにありましたこの抗原検査についてお話を伺おうと思いますが抗原検査と、今PCR検査が行われています。PCR検査と比べてどうなんでしょうか?
国際医療福祉大学感染症学・松本哲哉教授(以下松本教授):抗原検査というのは先ほどのVTRにもありましたようにキットだけあればその場で検査ができます。例えば、時間に関しても抗原検査は大体5分から15分ぐらいで結果が出ますがPCRは4時間から6時間。そして、検体そのものは基本的には鼻咽頭の粘液ですのでその検体は変わるわけではありません。ただ、PCRはどうしても機械が必要ですし決められた場所でしかできません。ただし、高感度です。抗原検査はどこでもできるし本当に誰でも簡単にできる検査になりますけど残念ながら感度は落ちます。PCR検査と抗原検査はそれぞれ特徴があるので本当の意味でその両方の利点・欠点を理解したうえで使い分けることが非常に重要だと思います。
小木アナ:複数のところが開発をしているということなのでその正確性を、より研究によって上げていくということ自体は可能なんですか?
松本教授:どんどんといい製品を作っていくように改善していけば抗原検査もかなりの精度まで上がってくることができます。ただ、基本的にPCRというのは本当に感度がいいんですねそれに比べると、いくら抗原検査の感度を上げてもなかなかPCRまでには届かないと思います。
小木アナ:そうするとどのような使い方ができるのかという辺りはどうでしょうか。
松本教授:まずは簡便にできることを利点として使うならばどのクリニックでも一般の診療所でもできるという利点があると思います。ただ、やはり抗原検査は場合によっては一部の方は本当にウイルスを持っているのに見逃してしまう可能性もあるので例えば重症の肺炎だとかそういう方をきちんと診断するならばPCRまで検査を行ったほうがいいかもしれません。あるいは退院の基準としてPCRは2回陰性確認となっていますがこれがなかなか簡単にはできない検査なので場合によっては抗原検査で2回簡単に検査を行ってすぐに退院するというふうに持っていくこともできるかもしれません。
小木アナ:なるほど。PCR検査の補助的に使うケースになってくるでしょうか。先ほど、お話をお伺いできなかったんですが感染拡大前と比べて人出がどのぐらい減っているか。全国各地特に特定警戒都道府県なんかはかなり人出が減ってるんですがこの辺りの数字はどう評価できますか?
松本教授:やはり皆さんこの緊急事態宣言に指定された大都市のところはかなり感染者も増えていますし危機感を持っておられてそういう意味ではそういった行動に出ている。しかも、その成果が表れていると思います。ただ、一方残念ながら地方に関してはまだそこまでの危機感がないので数としてはやはりそこまで期待したほどは減っていないと。それが、これから感染者は恐らく地方にも必ず増えていきますのでこの今のタイミングでとにかく8割を目指してもっと自粛していただくことが大事だと思います。
小木アナ:こういったところの数字にも全国的に近づけていかなきゃいけないということなんですが東京都の感染者数は今日は102人でした。先生、ちょっとずつ減っているようには感じますがこのあとの動向はどの辺りに注目していますか?
松本教授:見かけ上、確かに減っているように見えますがその中でもかなり経路が追えない方もおられます。そういう意味では感染者が確実に減ってきていると今の段階では言えないと思います。緊急事態宣言が出されて今週の後半がその2週間を超えて、その成果が少しずつ見えてくる時期になるので今週、例えば、水木金辺りそういったときの感染者数がどのような数字を示すかが非常に注目されると思います。
小木アナ:5月6日が緊急事態宣言が出ている期間なんですがその5月6日までに一概に、はっきり数字で言うのは難しいかもしれませんがどのぐらい減っていれば解除につながるようなものなのか。もちろん、その直前のギリギリの数字を専門家の方が判断してそして政治的な判断も加わってくると思いますけど数字としては、先生どう考えます?
松本教授:皆さんが本当に納得してこれは減ったねという数字というのは例えば、1桁とかあるいは10人とかそれぐらいのところまで持っていければ、成果が出せたといえると思いますが毎日のように、例えば30人40人、50人というようなレベルの数字だと確かに減ってはいる。ただ、そのあと本当に緊急事態宣言をやめたあとで増えないといえる数字ではないわけですよね。だからやっぱり、なかなか数で何人というのは難しいかもしれませんが確実に減ったといえるところまで持っていかないとなかなか、宣言を解くことは難しいと思います。
小木アナ:全国一律で解除するのも先ほど、先生も地方にもっていう話がありましたが難しいかもしれませんね。
松本教授:今、全国に指定されていますので恐らく、都内である程度減っていくことができたとしてもあるいは、それ以外の地方はそのときにはまだ更に増えているかもしれません。そういう段階で一斉にやめるっていう判断は難しいんじゃないかと思います。
小木アナ:なるほど。松本先生にお話をお伺いしました。音声のトラブルもありまして大変申し訳ありません。ありがとうございました。
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【検証部分】
これまでもPCR検査に関する放送を取り上げてレポートをお届けしてきましたが、PCR検査数をただ増やすべきなのか、という点に関しては様々な論点があります。
4月16日のレポートでも取り上げた内容ですが、再度取り上げます。
日本感染症学会と日本感染環境学会はPCR検査の増加が医療資源の逼迫に繋がると指摘しています。
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新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府は7都府県だった緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した。日本感染症学会と日本感染環境学会は、感染症診療のあり方を変えていく必要があるとして、診療に携わる臨床現場などに向けて「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」を発表した。ポイントの一つが、軽症の患者に対してはPCR検査を勧めていないことだ。さらに、医療崩壊を防ぐために重症患者の治療に特化することを提言している。
(中略)
感染拡大初期から「風邪の症状だが、新型コロナではないか」といって検査を求める声が殺到したという事情がある。舘田理事長は「不安な気持ちは分かるが、治療法もなく、軽症でも入院が必要になるなど、医療資源を逼迫(ひっぱく)させてしまう可能性が学会では危惧されていた」と言う。
≪時事メディカル PCR検査、軽症者に推奨せず―新型コロナ 感染2学会「考え方」まとめるhttps://medical.jiji.com/topics/1614より抜粋≫
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また新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)では、オーバーシュートよりも先に医療崩壊が起きる可能性について指摘しています。
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いわゆる「医療崩壊」は、オーバーシュートが生じてから起こるものと解される向
きもある。しかし、新規感染者数が急増し、クラスター感染が頻繁に報告されている
現状を考えれば、爆発的感染が起こる前に医療供給体制の限度を超える負担がかかり
医療現場が機能不全に陥ることが予想される。
≪新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617992.pdfより抜粋≫
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もちろんPCR検査を円滑にする体制を築くべきではあるでしょう。
しかし、検査数をただ増加させ感染者の不安が蓄積していけば、医療資源の逼迫が予想されます。
そして医療崩壊のような事態となってからオーバーシュートになる可能性もあるのです。
PCR検査の増加について上記の論点も紹介するべきではないでしょうか。
このような放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。