2020年12月15日 報道ステーション

2020年12月15日 報道ステーション

12月15日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは次の点です。

・事実に基づいた報道がなされていたか
・さまざまな論点を取り上げた放送であったか

まずは放送を見ていきます。
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【放送内容】

小木逸平アナウンサー:そして、新型コロナ対策を盛り込みました、第3次補正予算案が閣議決定されました。Go To Travelの延長に、およそ1兆円を計上するほか菅総理が掲げる脱炭素化推進の2兆円基金などが盛り込まれます。
また、国債を新たに22兆円発行する結果、今年度の新規国債発行額は過去最大の112兆円となりまして財政の一段の悪化が懸念されます。太田さん、大変なピンチの中での借金ということになりますけども、これが本当に適正に感染拡大の防止とそれから経済の下支えに使われるかですね。

太田昌克共同通信編集委員:やっぱり弱ってらっしゃる医療現場、それから事業者の皆さんですよね。そこを救うこと迅速に柔軟にぜひ適正に執行してほしいと思いますね。

【検証部分】
時間にして非常に短い報道でしたが、コロナ禍の経済対策という非常に重要なニュースでしたので、取り上げていきます。

報道を確認すると、「Go To Travelの延長に、およそ1兆円」、「脱炭素化推進の2兆円基金など」が盛り込まれた第3次補正予算が閣議決定されたというものです。

その上で「国債を新たに22兆円発行する結果、今年度の新規国債発行額は過去最大の112兆円となりまして財政の一段の悪化が懸念されます。」「大変なピンチの中での借金」などと財政悪化について触れられていますが、これについて高橋洋一嘉悦大学教授は次のように記しています。

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これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れている。日銀買い入れ国債について利払いがされるが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になる。
このため、政府にとって財政負担はない。これはやり過ぎればインフレ率が高くなるが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠い。

別の言葉で言えば、コロナショックで需要喪失なので、インフレの心配がなく、しかも通貨発行益を活用するので財政悪化もなく将来世代への心配もない。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われている。

この期に及んでも、まだ「将来世代への付け回し」というのは、呆れてしまう。日銀以外が保有する国債についてはいずれ税金で返済するが、日銀が保有する国債はそうではなく、利払い負担も償還負担もない。

強烈なインフレにならない範囲で、国債発行という手法が使える。不勉強なテレビのコメンテーターも似たような発言をしているが、今や単なる無知をさらけ出しているだけだ。

《高橋洋一 「73兆円コロナ経済対策」報道を比べて浮き彫りになった、マスコミの「大きな勘違い」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78316?imp=0
》より引用

高橋氏が述べているように、コロナ禍における経済対策で日本の財政が悪化するということはありません。
戦前の金本位制ならいざしらず、現代の管理通貨制度ならば中央銀行がお金を刷ることができます。
そしてお金を刷ることの唯一といっていいデメリットがインフレです。
インフレとはお金が増えることでお金の価値が下がり、物価が上がりすぎてしまうことですが、現在の日本はインフレではありません。

以上のように放送のような財政悪化が進むといった解説は事実に基づかない可能性があり、次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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またコロナ禍における財政悪化ばかりを強調し、経済対策の重要性を語らないことは重要な論点を欠いており、問題のある放送であると言わざるを得ません。
先ほどとりあげた高橋洋一氏のコラムでは次のような言及もなされています。

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潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もある。

これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇する。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるだろう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるだろう。それはコロナによる死者2300人の2倍以上だ。

(中略)

マクロ経済政策の究極の目標は雇用の確保だ。それができれば自殺者の増加を抑えることもできる。

以上のことから、GDPギャップを経済対策の有効需要で埋めないと後で失業が増え、結果として命が失われるので、経済対策はまず規模というのが、マクロ経済学からは正解になる。

《高橋洋一 「73兆円コロナ経済対策」報道を比べて浮き彫りになった、マスコミの「大きな勘違い」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78316?imp=0
》より引用
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経済対策の規模が小ささもたらす最悪のデメリットについて論じています。
失業者の増加、そしてそれに伴う自殺者の増加です。自殺者に関しては実際に増加しており、女性を中心に2019年の同時期と比べて700~800人程度、自殺者が増加しているというデータもあります。

以上のような経済対策の重要性を見落としている報道は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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