2020年5月13日 報道ステーション

2020年5月13日 報道ステーション

5月13日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な放送であったか
・様々な論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
森川夕貴アナウンサー(以下森川アナ):検察官の定年を延長する法律の法改正をめぐって検察庁を所轄する森雅子法務大臣が一転明日の国会審議に出席することで与野党が合意しました。一方で記者会見で法改正について問われた安倍総理ですが恣意的な人事が行われることは全くないと述べました。

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【VTR】
自民党・森山国対委員長『国民の関心も高いですから、国民の前で法務大臣から説明することも大事』

森川アナ:検察幹部が定年を迎えても政府の判断で幹部ポストにとどまることができる検察庁法の改正案をめぐり今日、与党と野党が断続的に協議しました。その結果、明日の内閣委員会に森法務大臣が出席することで合意しました。

立憲民主党・安住国対委員長『(定年延長する場合について)明確に基準を示してもらわないと、私どもは採決には合意できません』

森川アナ:採決は、国会審議を受けて再び与野党で協議しますが自民党側が目指す明日中の採決は難しい状況になっています。

安倍晋三内閣総理大臣『今回の改正により三権分立が侵害されることはもちろんありませんし、恣意的な人事が行われることは全くないことは断言したい』

森川アナ:そのうえですでに定年延長が決まっている東京高検の黒川弘務検事長を検事総長に任命するかはまだ決まっていない。『私が申し上げるのは恣意的じゃないかと思うので今の段階では申し上げることはできない』と述べました。

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【コメンテーターによる解説】
森川アナ:コロナの混乱の中で採決に向かっているんですけれどもこの法改正が本当に必要なのかどうか疑問に思っている方もたくさんいらっしゃると思いますし納得できない方も梶原さん、多いですよね。

朝日新聞・梶原みずほ記者(以下梶原記者):実はすでに閣議決定している黒川さんの定年延長について今朝の朝日新聞にこんな記事が載りました。元法務省官房長の堀田力さんのインタビューなんですがこの記事、ものすごく今日読まれていまして今日の全国のSNSの検索のトップに入るなど多くの国民が関心を寄せているんですね。堀田さんはこう言っています。政治家がその権力を背景に捜査に圧力をかけることはよくある。組織のトップたる総長や検事長には政治の不当な圧力に対抗できる胆力が求められ人事が政治家の判断にかかるようなことはあってはならない。そして、定年延長を受け入れた黒川さんの責任は大きいしそれを認めた稲田現総長も責任がある。自ら辞職をすべきですとこんなふうにいっています。

森川アナ:堀田さんのような立場の方が新聞という公の場で辞職を迫るということはなかなかないことなんですかね。

梶原記者:異例なことで私も驚きました。ここまで厳しく言う背景には検察は国民から情報提供を受けたりあるいは任意で取り調べをするなど国民に信頼してもらって支持してもらわないと成り立たない組織でもあるんです。その信頼を勝ち取るには本来のあるべき姿つまり、公正中立な立場というものが強く求められているんですね。そのためには政治の圧力に屈せず時の政権におもねったり忖度するようなことがあってはならないと思います。明日、検察OBの方々が法改正に反対する意見書を法務省に出すそうなんですがこうした検察OBの意見にも政権には耳に傾けてほしいと思いますね。

【検証部分】
連日この検察庁法案改正に関する放送を取り上げています。
検察という中立性が求められる存在への政治介入が一番の焦点といっていいでしょう。

今回の改正案と争点について簡単に振り返ります。
改正案は検察官の定年を63歳から65歳に延長するというものが主な内容ですが、争点となっているのは特別規定の方です。
特別規定は検事総長や検事長など、検察の幹部の定年を内閣の判断によって3年間延長することができるというものです。
つまり時の内閣の判断によって検察人事に介入できるのではないか、という点が争点になっています。

これについてさらに前提を確認しておくと、検察は行政機関です。
つまり法律上は内閣が人事に介入しても問題ありません。
しかし、検察には当然司法の面があり、時には政治家に立ち向かう必要があります。
ですから検察は中立性が求められるのです。

この日の放送でも検察は政治になるべく関わるべきではないという論調でした。
確かに検察は中立性が求められる存在ですからその通りではあるのですが、安倍政権を全否定するのではなく、政治介入がどこまで許されるのか、といった議論の方が建設的であると言わざるを得ません。

例えば2010年に起きた尖閣諸島の事件を思い出してみましょう。
海上保安庁の巡視船に中国漁船が体当たりしました。
その後中国漁船の船長は逮捕されましたが、那覇地検の次席検事は釈放を発表しました。
この事件に関して産経新聞の以下の記事を見てみます。

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「官邸の意向で釈放したとすれば検事総長はクビだ。検察が勝手に忖度(そんたく)した可能性は否定しない」。民主党(現民進党)政権時代の平成22年10月、幹事長代理を務めていた枝野幸男氏が講演で語った言葉だ。

(中略)

法と証拠に基づき粛々と処分をしてきた検察組織が、端的に言えば「政治的判断」をした。複数の関係者の証言は、検察当局の官邸への忖度を示していた。当時の仙谷由人官房長官は「地検の判断なので、それを了としたい」と語った。枝野氏の講演の発言を補えば「官邸側が釈放したいと考えている」と検察が勝手に忖度したということか。
《産経新聞2017.10.27 尖閣沖の中国漁船衝突事件をめぐる7年前の忖度
https://www.sankei.com/affairs/news/171027/afr1710270029-n1.html
》より抜粋
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この記事で紹介されている冒頭の枝野氏の発言も政治介入にあたる可能性もありますが、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は民主党政権が当時検察に圧力をかけていた可能性を主張しています。

このような検察と政治の関係は非常に難しく議論が必要な問題なのです。
上記の問題・論点を提示しておらず、安倍政権の政治介入ばかりを取り沙汰する放送は下記の放送法に抵触するおそれがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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