12月10日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点をとりあげた放送であったか
まずは放送内容を見ていきます。
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【VTR】
ナレーター:菅総理大臣は就任後初めて岩手県と宮城県を訪れ東日本大震災で被害を受けた地域を視察しました。
菅義偉総理大臣:発生から10年を間近に控えて復興の総仕上げの段階になってきている。残された課題に対しては内閣として全力で応援していきたい。
ナレーター:処分の方針が決まらない福島第一原発の処理水への対応については…。
菅義偉総理大臣:極めて重要なことであり、いつまでも先送りすることはできないという考えは持っています。
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【検証部分】
今回取り上げた部分は福島第一原発の処理水に関する非常に短い箇所です。
処理水をどのように処理するのか、海洋放出するのか否かなどが問題視され続けていますが、放送ではこの処理水の扱いの何が問題なのかが全く取り上げられていません。
処理水の報道を行うのであれば、処理水について何が問題なのかを取り上げるべきでしょう。
経産省の資料
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/pdf/2020/20200701a1.pdf
に基づいてこの問題について見ていきます。
処理水が発生する仕組みについてはやや複雑ですが、燃料デブリを冷やした水を処理したものを処理水と呼びます。
この処理水は福島第1原発の敷地内のタンクに貯められており、2022年の夏にはタンクが満杯となるため、処理水の行き先を決めなくてはなりません。
そして検討された手段が二つあります。
水蒸気放出と海洋放出ですが資料6ページには
「2つの方法の中でも、放出設備の取扱いやモニタリングが比較的容易であることから、「海洋放出」の方がより確実に処分を実施できる」と紹介されています。
処理水は「トリチウム」という放射性物質を含んでおり、これが海洋放出する際の問題となっています。
処理水を海洋放出すると環境に影響が出るのではないか?という懸念があるのです。
「トリチウム」「放射性物質」と聞くと、確かに不安に思う方もいるかもしれませんが、トリチウムは「雨水、海水、水道水、人の体内や、自然界にも広く存在しています。」(資料14ページ)
最も重要な点は資料15ページの次の記載です。
「世界の原子力施設ではトリチウムが放出されていますが、これら施設周辺でトリチウムが原因と思われる影響は見つかっていません。」
そして17ページには韓国・フランスなどでも処理水が海洋放出されており、福島第1原発の処理水が海洋放出されても問題ないと紹介されています。
このように処理水の問題点やそれについての対策など事実に基づいて報道を行う必要があるはずです。
しかし放送では取り上げられておらず、次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。