11月20日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた放送であったか
・事実に基づいた放送であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【放送内容】
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【VTR】
ナレーター菅総理の肝いりで始まっているGo To キャンペーン。不安の声や見直しについてどう考えているのでしょうか。
立憲民主党川田龍平参院議員:いま一度この感染拡大期において何が一番重要か、多くの方の声を聞いた上で、GO TOトラベル事業の取り扱いを議論すべきではないでしょうか。
菅義偉総理大臣:感染対策と経済の回復を両立させていくのが基本的な考え方であります。これまでも専門家や現場のご意見を伺いながら制度の見直しを行なってきたところであり、今後も適切に運用していきたいと考えます。またGO TOトラベル事業についてはこれまでのべ4000万人以上が利用していますが、判明した感染者は176名であります。
共産党倉林明子参院議員:全国一律のGO TOキャンペーンはただちに見直し地域の実態に応じた事業者への直接支援に踏み出すべきです。総理お答えください。
菅義偉総理大臣:事業の対処地域を含めた制度内容については感染状況や専門家や現場のご意見もふまえつつ適切に運用してまいります。
ナレーター:専門家の意見を踏まえつつ適切に運用という言葉を繰り返しました。ただ、ある国交省幹部は部分的にGo Toから除外していくのは現実的ではない。やるなら、全面的な中止にせざるを得ないと思う。ただ、全面的な中止を判断する時には緊急事態宣言が出ているだろうと話しています。
ナレーター:自民党からは…。
自民党幹部1:GO TO中断はないでしょう。日々の感染者数に左右されすぎちゃいけない。正しく恐れることが大事
自民党幹部2:GO TOトラベルが感染拡大につながっているエビデンスがなく、見直しといわれても従えない。
ナレーター:といった声が聞こえてきます。今夜開かれた新型コロナウイルス対策の
分科会。
田村憲久厚労大臣:7月8月のあの一番厳しくなっていくあの角度にほぼ並んでいるということで、さらに危機感を持っていかなければならないと感じております。
西村康稔大臣:これから寒くなり、初めて冬を迎える中で、乾燥し、換気が不十分な場所で活動することも増えるわけであります。
感染がさらに拡大する恐れもあります。極めて強い危機感を持っているとこでございます。
ナレーター分科会では感染が急拡大しているとしてGo To Travelについて一部地域の除外も含め在り方の見直しを検討するよう政府への提言をまとめました。
西村康稔大臣:足元の感染状況を踏まえて、これまでより強い対策を求める提言となった。緊急事態宣言のようなより強い措置を必要とする状況にならないために短期間でリスクの高いところに焦点を絞った知見・経験に基づく対策を打つ。GO TOキャンペーンについては運用の見直しの検討が提言されています。トラベル事業が感染拡大の主要な要因とのエビデンスは存在しないとの認識であると思います。その上で感染拡大地域においては都道府県知事の意見も踏まえ、一部区域の除外も含めて国として運用の早急な検討を行うことが求められている。また感染がステージ2に戻れば事業を再開してもらえば良い。GO TO
イートについては食事券の新規発行の一時停止やすでに発行された食事券、付与されたポイントの利用を控える旨の利用者への呼びかけを都道府県知事に検討を要請することが求められている。
記者:GO TOトラベルなどを中断して近い範囲で経済を回す選択肢はあるか
西村康稔大臣:すべてのGO TOキャンペーンを中断するという議論ではなく、一部区域の除外を含め運用の見直し、早急な検討をするようにということです。
【スタジオ解説】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ):分科会の提言案を受けまして西村大臣はどのような方向性が出せるか検討して、明日の対策本部に臨みたいとも話していました。このあと会見が終わり次第
尾身会長の会見も始まるとみられています。ここからは政府の分科会のメンバーで日本医師会常任理事の釜萢敏先生に伺ってまいります。分科会、終わったばかりですが、駆けつけていただきました。よろしくお願い致します。分科会に関しては予定より1時間ほど
長引いたようですけれども何でそんなに長引いたんですか。
日本医師会常任理事釜萢敏(釜萢理事):国民の皆さんに非常に大きな影響のある大事な課題でありますので、しっかり議論を尽くそうということで時間がかかりました。
富川アナ:結構、かんかんがくがくあったんですか?
釜萢理事:皆さんの認識は決してずれているわけではなくて、現状の認識については一致しているんですが、どのような対策が必要かというところについてはいろいろな課題が出ました。
富川アナ:細かい点でどう変わったかというのもあるかもしれないので、詳しく見てきますね。分科会ではこのような提言案が政府に示されたんですね。1つずつ見ていきます。まず営業時間の短縮要請。3週間程度の期間限定でガイドラインを守る店と守らない店で差をつけるべきだと。そして国は自治体に財政的支援を行うよう要請すると。そして移動にかかる自粛要請。感染予防が徹底できない場合感染拡大地域との移動を自粛するよう要請すると。そしてGoToキャンペーンについても提言がありました。まず、こちらはGoToTravelです。都道府県がステージ3と判断したら除外を検討するようにと。GoToEatに関してはプレミアム付食事券の新規発行これを一時停止というのも検討すべきだと。更に行動変容の促進。テレワークを推進したり感染リスクが高まる5つの場面を避けるとこの5つの場面というのは飲酒を伴う懇親会等ですとかマスクなしの会話狭い場所での共同生活など、こういった5つの場面を避けるようにという提言です。そして、この4つに加えまして、これまでも提言してきました年末年始の休暇分散ですとか 保健所の機能及び医療提供体制の強化。こういったことも改めて求めたという内容ですがまず、営業時間の短縮要請です。どういった状況からこのような提言案を出されたんですか?
釜萢理事:これまでもいろいろな対策を講じてきたわけですが、その中にあって、感染の拡大が今、かなり見られているので、新たに強い踏み込んだ対策を講じなければならないという中で影響は大きいですが1つこのような柱を立てたということです。
富川アナ:かなり厳しい言葉ガイドラインを守る、守らないで差をつけるべきということもありましたけどもこういったことに異論や反論などなかったんですか?
釜萢理事:それぞれのお店で最大限の努力をしていただいているわけですが、努力を更にやっていただきたいという思いも込めてこのようなことになったと思います。
富川アナ:短縮や自粛を要請するとしたらやっぱり財政的支援が必要になるということですね。そして、もう1つ注目すべきなのはGo To Travelについてなんですね。都道府県がステージ3と判断したら除外検討するということですが、このステージ3というのはどういうことなのか、改めて見てみますと感染者が急増して医療体制に支障が発生した場合、講じるべき対策としては休業要請やイベントの見直しなどということなんですけども、このステージ3に地域別で見てみると、どんなところが入ってきそうな状況なんですか?
釜萢理事:まず札幌を中心とした北海道がありますし、東京を中心とする首都圏それから大阪府、愛知県などが大変、注意しなければならないところとなります。
富川アナ:各都道府県知事の判断にはなるんですけども、そういった地域は休業要請イベントの見直しを行っても、おかしくないような状況に入ってきていると。ただ、先ほど西村大臣の会見を聞いている中ではステージ3という言葉が抜けていたような感じがしたんですけども…。
釜萢理事:ステージについての判断はあくまでも総合的にそれぞれの都道府県知事と国がしっかり協議をして決めることになっているので指標を満たしたからすぐに自動的にステージが決まるというものではないという形になっています。
富川アナ:政府としましては経済的な影響も含めてあえてステージ3という言葉を除いたのかもしれないですが、地域別に見てみますと、森川さん過去最多を更新しているところまた多いんですね。
森川夕貴アナウンサー:そうなんです。日に日に感染者は増えています。今日も全国的に増えていまして過去最多を更新しました。今日は2428人の方の感染が確認されました。地域別に見ていきますと赤く塗られているところが過去最多となったところです。北海道、304人。初めて300人を超えています。そして、大阪では370人。そのほか、岩手ですとか山口、大分など全国的にも感染が広がっています。東京都では522人。2日連続で500人を超えていまして、愛知県も202人。2日連続で200人を超えています。大都市圏で感染が広がっているようです。
富川アナ:都市は増えています。そして地方にも広がっている状況の中で、先生はGo To キャンペーンについてはどうするべきだと思われますか?
釜萢理事:もともと非常に感染が拡大してステージ3というふうに知事が判断した場合には見直していただくということが、もともと決まっていることでありますので、今は、そのような時期に差し掛かっているということで、早く対策を講じることが大事なので、今日、強い要請を行ったということでございます。
富川アナ:強い要請というのは都道府県がステージ3と判断したら除外を検討するようにという要請です。そして、重症者の数も気になるところなんですよね。全国の感染者数と重症者数を示したグラフなんですけども、黄色が感染者数赤が重症者数です。昨日の段階で感染者数2383人重症者数291人と重症者の数が第1波に迫ってきているような勢いなんですね。感染者から遅れて重症者数が増えてくるというのが、このグラフでも分かるんですが下がり具合を見てみますと、重症者の数のほうがなだらかなんですね。入院が必要ということもあって、なかなか減っていかないということもあるんですが、第2波の時、重症者数が少なかったというのは夜の街関連という言葉がありましたけども20代の若者の感染者が多かった。だから少なかった。じゃあ、第3波は?ということになりますが…。
釜萢理事:現在の感染、流行の拡大を見ていますと、その前の時に比べるともっと年齢が上がって、40代、50代、60代の感染者多くなってきていますから、重症者の数は今後また増えてくることが予想されます。
富川アナ:やっぱり高齢の方は重症化リスクが高いというのは改めて認識しなければいけないですよね。このあとどう増えていくとみていらっしゃいますか?
釜萢理事:重症者の数は確実に増えていくだろうと思います。それに対して対応ができるのかどうかという医療の提供が一番気になるところです。
富川アナ:また、12月は乾燥していて寒い時期、更にインフルエンザの同時流行も懸念されている中での状況ですね。このあと重症者が増えていくのも心配だということなんですが、病院としては病床数には余裕があったとしても重症者が急激に増えてしまうと対応が難しいと?
釜萢理事:おっしゃるとおりで患者さんが急に増えてさあ、ベッドをどう用意するかといっても、ベッドをもともと準備はしていますけれども、実際に稼働できるようになるための準備の時間が2週間とか必要ですからそのことを考えると、急激な患者さんの増加というのは非常に対応が難しいということが言えると思います。
【検証部分】
今回はGO TOトラベルなどのコロナウイルス対策に関する放送部分を見ていきます。
放送では、「GO TOは中断とすべきだ」とする野党の主張を取り上げながら、GO TOトラベルの運用見直し検討という分科会の提言に焦点を当てていました。
さらにスタジオ解説では都市部以外にも感染が広がっていることを中心的に取り上げており、GO TOトラベル中断に肯定的な内容であったと言えます。
まずGO TOトラベルについて確認していきます。
GO TOトラベルはコロナウイルスで打撃を受けた観光事業の振興を図るために、行われた政策です。
これまで述べ4000万人以上が利用しており、観光事業者を救済するという効果を上げてきたといえます。
大和総研のレポートでは
「Go To トラベルキャンペーンの経済効果を試算すると、直接効果で3.0兆円、間接効果で1.9兆円と見込まれる。また、経常利益を3.4兆円押し上げ、46万人の就業誘発効果があるという結果が得られた。」
とされており、その効果が認められます。
《緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/regionalecnmy/20201015_021832.html#:~:text=Go%20To%20%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%92%E8%A9%A6%E7%AE%97%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8,%E6%8F%A1%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8D%E3%81%86%E3%80%82
》より
まずこうした経済効果、GO TOトラベルという政策を正当に評価することなく、放送を行うことは次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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次にGO TOトラベルと新規陽性者の関係についてですが、菅総理が述べているように、GO TOトラベル事業と新規陽性者数増加については大きく関係しているということはできません。
新規陽性者の数は8月に一時増加したものの、8月から11月初旬にかけて新規陽性者数はほぼ横ばいです。
月別の新規陽性者数で見てみると、8月は3万人程度新規陽性者が出ましたが、9月・10月の新規陽性者数は1.5万人と半分程度となっています。
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参考
月別新規陽性者数について
新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(2020年12月16日18時時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000706508.pdf
「GoTo」は本当に悪なのか 米韓も増加傾向類似、森田洋之氏「経済的な犠牲者を出すことも医療の目的に反する」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2012/18/news064.html
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放送ではこの新規陽性者数とGO TOトラベルの関係について十分に精査されることなく、新規陽性者数が増加していることのみを強調したものであった可能性があります。
GO TOトラベルと新規陽性者数について、事実に基づいた正しい放送が行われていたということはできず、次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指し、監視を続けてまいります。