2020年1月17日 報道ステーション

2020年1月17日 報道ステーション

1月17日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・自衛隊の任務について様々な論点をとりあげていたか

まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
森川夕貴アナウンサー(以下森川アナ):続いては、国会です。自衛隊の中東への派遣について今日、閉会中審査が行われました。派遣に理解を求める政府に対し野党は武力紛争に巻き込まれる可能性はないのかただしました。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):自衛隊の中東派遣について各国から理解を得たということですが肝心の国会での審議は今日になってようやく行われました。

安倍晋三総理大臣『日本関係船舶の航行の安全を確保するため。自衛隊による情報収集を行うことに関し各国の理解と支持を得ることができました』

本多平直衆院議員『議論の機会をいただけなかった残念な形で閣議決定され、非常に国会の議論を軽視しているんじゃないかと』

河野太郎防衛大臣(以下河野大臣)『日程上そういうことになりましたが、しっかりとご説明してまいりたい』

ナレ:現地の情勢について…。

河野大臣『自衛隊が何らかの武力紛争に巻き込まれる危険があるとは考えておりません』

ナレ:危険はないとする河野防衛大臣に対し、野党は…。

小西洋之参院議員『(派遣期間の)1年以内の間にアメリカとイランの軍事衝突は絶対に起きないという理解か、その根拠をお示しください』

河野大臣『何かが100%起きないと断言することはたぶん誰にもできないんだろうと思います。イランとアメリカ双方が事態をエスカレートする意図はないことを明確にしているから、軍事衝突が起きる状況にはない』

ナレ:日本の船が襲撃されるなどの不測の事態については…。

玄葉光一郎参院議員(以下玄葉議員)『日本関係船舶がやられそうになった、あるいはエスコート(護衛)に入った、そしてホルムズ海峡を通る、あるいはペルシャ湾に行く。その時に事実上丸腰じゃないですかと』

河野大臣『たかなみ(護衛艦)自身は武器等防衛で自らを守ることができるし、不測の事態が起きた時には海上警備行動を発令する』

ナレ:今回の派遣の目的である調査・研究から武器の使用も認められる海上警備行動に切り替える方針です。本来の活動範囲からはイランへの刺激を避けるためホルムズ海峡が排除されていますが…。

玄葉議員『海上警備行動が発令された場合の活動範囲は、ペルシャ湾とかホルムズ海峡とかも含まれるということでよろしいですか』

河野大臣『他の海域を排除しているわけではございません』

ナレ:海上警備行動に切り替えた際にはよりイランに近いホルムズ海峡での活動もあり得るとの認識を示しました。P3C哨戒機部隊は20日から現地での活動を開始する予定です。

【コメンテーターによる解説】
森川アナ:本来ならば派遣を決定する前にこういった議論がなされるべきでしたよね。

野村修也弁護士(以下野村氏):今回は、とりあえず急ぎの調査・研究が必要な状況になっていると。それで、今のところは現時点では危険はないという判断のもとで出しているということだと思うんですがこれはやっぱり、いつ何時何が起こるか分かりませんし議論は避けるべきじゃないしできることならば今のような議論をしっかりと事前にやっていくべきだとは言えたと思います。特に、例えば今のは海上警備行動になるような事態の話だけでしたが実際、武力衝突が起こりますとホルムズ海峡に機雷をまかれるような事態が起こるんですね。このときは今回派遣している任務とは全く違いますので改めて自衛隊をどうするのか議論しないといけなくなりますがそのときに、自衛隊を出さないという選択肢ももちろんありますし行ったとしても他国が機雷を除去する行為を後方から支援するというようなやり方にとどめるという場合もありますしまた戦闘中にあるにもかかわらず機雷を除去すると。選択肢、いろいろあるわけです。これって実は安保法制を検討したときによく議論されていた存立危機事態とか重要影響事態といわれているものがどういう意味なのか。ここをしっかりと詰めないと何ができて、何ができないのかがはっきりしないんですね。そういうことをしっかりと今のうちに議論を進めておくこと。こういうことが大事だと思います。

小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):何もないと100%言い切れないのであれば調査・研究という根拠そのものがちょっと問題じないかという指摘はどう思いますか?

野村氏:やっぱり調査・研究というのはあいまいですから、法律上のしっかりとした根拠が必要だといえると思うんですね。ただ、野党は特別措置法みたいなことをいっていますけれども実は、自衛隊が普段やっている国内の近く領域内でやっている警戒とかあるいは監視というものもはっきりしないんですよね。法的な根拠が。ですから、それ自体も含めて自衛隊が正規に行っている業務の中で警戒や監視というのを自衛隊法の中でどう位置付けていくのか。その辺りもしっかりと議論していくことが必要だといえると思いますね。

小木アナ:そうなると当然法改正になるんだったら、国民的な議論も必要だし、国会での審議も当然必要になってくると。

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【検証部分】

今回の放送では自衛隊が軍事衝突に巻き込まれる危険性についてと自衛隊活動の法的根拠といった論点が多くとりあげられていました。

一方で自衛隊を中東へ派遣することになったその必要性や自衛隊の活動に関してポジリスト・ネガリストといった論点については触れられていませんでした。この2つの点について見ていきます。

放送では、自衛隊の中東への派遣は軍事衝突の危険があるといった論調でしたが、実際は軍事衝突のリスクを下げることが期待されます。

2019年の6月に日本のタンカー船が中東で攻撃を受けていますが、一国の軍艦がその周辺にいることで大きな抑止力となります。
実際にソマリアの海賊を哨戒機などで監視するようになってからは、海賊の問題行動は報告されていません。
このような自衛隊を中東へ派遣する必要性についての論点が取り上げられていないのが1点目。

次に自衛隊活動の法的根拠ですが、野村氏も解説で述べているように、今回の活動に限らず自衛隊活動の法的根拠はその都度作られています。
そして自衛隊が実際に現地で活動するときは、ポジティブリストと呼ばれる「やっていいこと」を列挙したリストを見ながら行動することになります。
一般的な軍は「やってはいけないこと」を列挙したネガティブリストを基に、それ以外の行動は許される法体系で行動します。

実際に事が起きて自衛隊がポジティブリストにない行動を起こさなければいけない日が来ないとは言い切れません。
その時法体系に不備があったのか、自衛隊の行動に不備があったのか、大変難しい問題となるでしょう。
そのため今からこういった議論が必要になりますが、論点として提示されていません。

このような放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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