2020年6月2日 報道ステーション

2020年6月2日 報道ステーション

6月2日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは下記の点です。

・政治的に公平な放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):アメリカの混乱が激しさを増しています。黒人男性が白人警察官の暴行を受け死亡した事件をきっかけに全米で広がっている暴動の鎮圧に向けて、トランプ大統領は必要なら軍を投入すると述べるなど強硬姿勢を強めています。一方、亡くなった男性の弟はデモ隊に対して暴力に訴えないよう強く呼びかけました。

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【VTR】
高羽祐輔記者:あと2時間ほどで外出が禁止されるんですがホワイトハウスの前には大勢の人が集まっています。公園の道を挟む形で警察官が対峙しています。

ナレーション(以下ナレ):州兵も投入し厳戒態勢が敷かれたホワイトハウス。その中で、トランプ大統領は力説しました。

トランプ大統領『ワシントンでも迅速かつ決定的な行動に出る。数千規模の重武装兵、兵士、法執行官を派遣する。暴動、略奪、破壊行為などに歯止めをかけるためだ』

ナレ:更に各州の知事に州兵の動員を求め応じなければ米軍をもって鎮圧すると表明しました。秩序のためには力による制圧も辞さない。演説の直前それを象徴するかのような光景が広がりました。ホワイトハウスの目の前でいたって普通の抗議活動を行っていた市民を突然、強制排除したのです。

(ホワイトハウス前の映像)

ナレ:デモ隊が消え失せた道路をトランプ大統領が悠然と歩いていきます。向かったのは先日のデモで放火された教会。そこで聖書を掲げて…。

トランプ大統領『アメリカは偉大な国だというのが私の思いだ。それをさらに偉大にしていく』

ナレ:デモ隊の排除はこの訪問のためだったのでしょうか。トランプ大統領が繰り返すのはデモにかこつけた略奪や暴力は許さないということ。ANTIFAと呼ばれる極左勢力が扇動しているとしてテロ組織に指定すると意気込んでいます。ANTIFAとはアンチ・ファシスト活動の略でネオナチや人種差別などに強く抗議する勢力を指し、特定の組織を指すわけではありません。ただ、その中には集団で破壊行為に及ぶ人たちがいるのも事実です。

ミネソタ州の女性『聞いたところ、暴動や略奪行為を始めたのは部外者で、ミネソタ州民ですらないそうです。部外者が私たちの街をめちゃくちゃにしたあげく、私たちがやったように見せかけるなんて本当にひどい話です』

ナレ:一部の人たちによる卑劣な行為が警察との衝突を生んでいる今の状況は、多くの人にとって決して本意ではありません。

(CM)

ナレ:殺害されたジョージ・フロイドさんの弟テレンスさんです。

テレンスさん『兄貴はこの町が大好きだった。俺にはわかるんだ。みんなのしていることを兄貴は望まないだろう。みんな何をやってるんだ? みんなのやっていることは無意味だ。そんなことをしても兄貴は生き返らない 平和的に抗議してくれ。お願いだ。』

ナレ:暴力反対を訴える私たちが暴力集団になってはいけない。そう願う声がデモ参加者を突き動かします。

群衆『暴力をあおる者を見たら警察に一報を!』

ナレ:暴力を防ごうと皆で団結し…。略奪が起きないよう店の前で体を張ります。対峙する警察と一触即発のときにも…。

(ワシントンの映像)

ナレ:投石しようと歩道の石を砕いている参加者を別の参加者たちが取り押さえます。相対する警察側にも変化が起きようとしています。並んだ警官が一斉にひざをついたのです。この、ひざをつくしぐさ。4年前アメリカンフットボールの選手が黒人に対する警察の暴力に抗議の意思を示したときのポーズです。今回は、警察がデモ隊への連帯の意思を示すものに。今、各地で見られるようになった光景です。

【記者レポート】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):アメリカでは、連日デモが続いているようですがご覧いただいたように暴力を食い止めようという動きもあります。現地から中継で伝えてもらいます。ニューヨークの様子ですね。新谷さんに聞きます。ニューヨークの現在の様子伝えてください。

新谷時子記者(以下新谷記者):こちら、ニューヨークロックフェラーセンターの近くにいるんですがご覧いただけますでしょうか。複数の店の窓が粉々に割られています。そして、向こう側の通り5番街といわれる高級ブランドショップが立ち並ぶ目抜き通りなんですがあの建物の角一面が全てベニヤ板で覆われています。こちらの百貨店なんですけどこの辺りの高級店、多くの店がベニヤ板を貼るなどして自衛手段をとっています。ニューヨークは昨晩だけで200人以上が逮捕され全米ではこれまでのデモで5600人以上が逮捕されています。混乱はますますエスカレートしています。

小木アナ:なぜここまで広がったのか。そして、なぜ収まらないのかこの辺りはどうでしょうか?

新谷記者:さまざまな要因があると思うんですけれどもまず、第一にこの2か月半新型コロナウイルスの問題で人々の心も経済も相当、疲弊しています。全米では、これまでにおよそ4000万人労働者の4分の1が失業しているんですけどそうした影響を受けているのが貧困層。特に黒人の割合が高いといわれています。アメリカでは過去こうした人種問題に端を発するデモや暴動が何度も起こっているんですけどそれでもやっぱり差別は変わらないという黒人を中心とする人たちの怒りや不満がコロナで生じたひずみによって爆発したという形になっています。更に加えてトランプ政権になって大統領自身、人種差別をあたかも助長するような容認するような発言を繰り返してきました。人種間の対立・分断を深めるような空気が高まってきたこともデモがこれだけの規模に発展したことにつながっているとみられます。

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【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:ニューヨークからの報告でした。太田さん、トランプ大統領のデモ隊の鎮圧を教会で聖書を持ちながら宣言するという非常に印象に残る姿でしたね。

太田昌克氏(以下太田氏):トランプ大統領の狙いは明瞭だと思います。宗教的な権威を利用しながら自身の政策決定の正当性をアピールすることだと思うんですね。恐らくトランプ大統領の目線には何があるか。大きく言って2つの聴衆があると思うんです。まず、各州の知事たちですね。一歩も引くなと。抑え込めというさもなければ軍隊を投入するぞといういわば脅しのメッセージ。それから、もう1つはご自身の大統領再選ですよね。11月に絶対必要なキリスト教の右派いわゆる白人の保守層をなんとか取り込みたいということで自身の政治基盤に思いっきりアピールしている。この教会の司教さんなんですがワシントン・ポストの取材にアイムアウトレイジ。はらわたが煮えくり返るっておっしゃっている。女性の方なんですけどね。それはやっぱり政治が宗教を利用するな教会を利用するなというメッセージで私も見ていましてこれが本当にアメリカの民主主義か?って正直、驚愕を覚えました、今日。

徳永アナ:それからトランプ大統領は軍隊の投入もちらつかせるということで強硬姿勢も崩していないですよね。

太田氏:南北戦争の経緯がございましてアメリカの軍隊というのは基本的に国内で動いて市民にましてや銃口を突き付けてはいけない。禁じられているんです。しかし、例外措置がありまして内乱法といいましてですね、これも確か19世紀の法律なんですが大統領による軍の動員が可能なんです。トランプ大統領はこれをちらつかせながら瀬戸際戦略を今、やっている。これが果たして、国をまとめる国のトップ、国父たる大統領の行いなのかということです。先ほどフロイドさんの弟さんが出ていましたがメッセージは、分断をあおるトランプ大統領の罠にはまるな。このメッセージだと思いますね。

【検証部分】

今回の放送はトランプ大統領に批判的な論調でした。

トランプ大統領がデモの鎮圧を政治的に利用している、宗教的な権威をも利用しようとしている、アメリカの分断を煽っているなどと解説がされていました。

VTRでもトランプ氏がデモ隊に全く理解を示さなかったといったような映像を放送していました。

そもそも、このデモの発端はアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんの死に端を発します。
5月25日ミネソタ州・ミネアポリスでフロイドさんが警察に詐欺罪で逮捕されようとしていました。
その時、フロイドさんは白人警官により首を膝で圧迫され、亡くなってしまったのです。
白人警官が黒人を殺害したということで、人種差別を撤廃するデモがミネアポリスからアメリカ全土に広がっていきました。

アメリカでの人種差別問題は根深いものがありますし、実際に差別は残っています。
この日の放送ではトランプ大統領はこの件について理解を示さずに、デモを一方的に鎮圧しようとしているような放送ぶりでしたが、5月28日には以下のようなツイートをしています。

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At my request, the FBI and the Department of Justice are already well into an investigation as to the very sad and tragic death in Minnesota of George Floyd….

….I have asked for this investigation to be expedited and greatly appreciate all of the work done by local law enforcement. My heart goes out to George’s family and friends. Justice will be served!

午前7:39 · 2020年5月28日
《ツイート元
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1265774767493148672?s=20

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訳は次の通りになります。

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私はFBIと司法省にミネソタ州で起きた、とても悲しいジョージ・フロイド氏の死について捜査するよう指示した。

そしてこの調査を早急に進めるよう指示した。また地元の警察の対応に感謝する。ジョージ氏のご家族と友人に心からお悔やみ申し上げます。正義が下されるだろう!
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問題の白人警官たちは当該事件の前にも問題を起こしていたこともあり、トランプ大統領はこのような冷静な行動をしています。
当該警官たちは懲戒処分となり、殺人容疑などで逮捕・訴追されています。

また平和的ではないデモを煽っているのはトランプ大統領ではありません。
トランプ大統領が分断を煽っているなどといった解説がありましたが、分断を煽っているのはデモにかこつけて暴力・略奪を行っている者たちです。
ネットやSNSなどで少し調べるだけでだけで、略奪の様子をとらえた映像がたくさん出てきます。
デモを行っているはずが、略奪被害を受けている店のオーナーと全く話をしようとせず、暴力に訴えるデモ参加者の様子をとらえた映像もあります。

暴力的なデモを煽っているのはアメリカ人だけでない、という情報もあります。
こういった暴力的な勢力を鎮圧しようとすること自体を間違ったことだとは言い切れません。

トランプ大統領の動きは全く報じず、トランプ大統領を批判ばかりする放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正な放送を目指して監視を続けてまいります。

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