2018年1月8日 報道ステーション

2018年1月8日 報道ステーション

2018年1月8日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。

新年最初、1月8日の報道ステーションはどのような報道をだったのでしょうか?
今回は長文のレポートとなりましたので、すでに放送をご覧になられた方は、コメント欄の検証部分からご覧ください。

今回の放送で一番時間を割いた話題は「アメリカによる北朝鮮攻撃計画判明」についてのニュースでした。
この話題に関して詳しく検証していきます。

【放送内容:前半】
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富川アナウンサー「どうしたら北朝鮮に核・ミサイルの開発をやめさせられるのか。様々な思惑がうごめいていますけれども、(中略)一方でアメリカのトランプ大統領はその北朝鮮と直接対話する考えも前向きな姿勢を示したんですね。で、これで対話路線に進むのかとおもいきやですね、一方でそのアメリカは具体的な攻撃計画を練っていることも明らかになったんです。こちらの狙いは。」

富川アナが冒頭、最近の北朝鮮の対話重視への姿勢転換と、秘密裏に進むアメリカによる北朝鮮への攻撃計画に触れ、VTRがスタートします。
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まず、ナレーターが、1月8日で北朝鮮の金正恩委員長が34歳を迎えるとみられることに触れます。

その後、トランプ大統領が金正恩氏との会談について記者に問われる場面を放送。
記者「現時点で金正恩氏との電話会談の意思はありますか。」
トランプ大統領「もちろんだ。私は常に話し合いがいいことだと信じている。」
ナレーターは「核の放棄が前提ならばいつでも対話する」という、以前からのトランプ大統領の主張も紹介。

その後、番組は、北朝鮮政策に深くかかわるアメリカ政府関係者に直接取材をした結果、アメリカによる攻撃計画が明らかになったと主張。その詳細について放映していきます。

アメリカ政府関係者「これまでは先制攻撃だろうが何だろうが、軍事攻撃をすれば北朝鮮が反撃してくるからダメだった。でも最近ワシントンの考え方の主流が変わった。」
「最近の主流は、北朝鮮は『全面的な反撃はしてこない』という考え方だ。」
記者「具体的な攻撃計画を教えてください。」
アメリカ政府関係者「北朝鮮が弾道ミサイルを今まさに発射しそうで、上には核爆弾が載っているかもしれない。それがアメリカに向かってくるかもしれない状態では安全が保障できないのでその発射基地もしくは移動式発射台だけをピンポイントで攻撃する。」
記者「北朝鮮は反撃しないのですか。」
アメリカ政府関係者「もし全面反撃してきたらそれは自殺行為だ。金正恩政権どころか北朝鮮が無くなる。ミサイル発射台1つを攻撃されても反撃はしてこない。今のアメリカ政府はそう考えている。」

ナレーターが「金正恩は合理的な考えをするから反撃は無い」というアメリカ政府の分析を紹介。ただ、北朝鮮による暴発の可能性もあることから、この攻撃を「ギャンブル」とも主張します。

アメリカ政府関係者「攻撃後北朝鮮はしばらく何もせずに静観するだろう。そして誰も警戒していない時期に特殊部隊などを使って韓国国内でテロを起こしたりサイバー攻撃をやる。北朝鮮がやったという確定的な証拠が出ない形で報復してくると考えている。」
記者「この攻撃計画だと韓国にいる米国人などは避難させない?」
アメリカ政府関係者「そうだ。このシナリオでは時間の猶予がない。ミサイルが立って発射するとなったらやるわけだからせいぜい数時間だ。これはアメリカの自衛の行使だ。国連安保理の決議は考えていない。核ミサイルはどこに飛ぶかわからないし、グアムに行くかもしれない。そんな状態ではアメリカ国民の安全は保障できないので先制攻撃せざるを得ない。トランプだろうがオバマだろうがジョージワシントンだろうがやるしかない。」【放送内容:後半】
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ナレーターは水面下でアメリカと中国が北朝鮮への軍事攻撃について擦り合わせを行っていることも紹介。
さらに、攻撃が在日米軍基地から行われる可能性もあり、日本にとって無関係ではなくなるとも伝えます。
記者「攻撃前に日本と事前協議するのですか。」
アメリカ政府関係者「攻撃のために例えば嘉手納基地から離陸するなら日本側と事前協議することになる。ただ事前協議には『時間の問題』が出てくる。事務方が安倍総理に報告してその返事がアメリカ政府に来る。攻撃までそれだけの時間の余裕があるかどうか。」

その後、アメリカのティラーソン国務長官の話も紹介。

ナレーターはアメリカ政府が考える、攻撃のタイミングについても言及。
アメリカ政府関係者「アメリカ政府も当然平昌オリンピックは成功させたいと考えている。それまで北朝鮮と中国に圧力をかけ続けて北朝鮮が核開発を放棄して対話に出てくればそれでいい。ただ五輪後も核ミサイル開発を続けて再び弾道ミサイルを発射しようとすればそのタイミングで攻撃する可能性がある。北朝鮮にはぜひわかってほしい。あなたたちが実験だと思っていても私たちアメリカはそうは思わない。」
このアメリカ政府関係者の言葉を最後にカメラはスタジオに戻ります。

その後、ワシントンの山下達也支局長、そしてソウルの高橋正光支局長が登場。
山下氏は富川アナの「アメリカの攻撃は現実にあり得るのか」という質問に対し、「可能性はある」と回答。さらに「トランプ大統領は日本や韓国が被害を受けることに対して、意識が高くないと感じる」というホワイトハウス関係者の声を紹介。この部分も武力行使への一つのポイントであると伝えました。
高橋氏は富川アナの「アメリカによる限定攻撃があった場合、韓国はどう動くのか」という質問に対し、「韓国政府はそのような事態を想定していない。文在寅大統領は事前協議などがあれば全面的に反対すると考えられる。」と伝えました。
また、高橋氏は北朝鮮との関係を改善したいという韓国政府の思惑も紹介しました。

そして、カメラは富川アナとコメンテーターの後藤謙次氏の会話に移ります。
富川アナ「後藤さん、日本政府はこの軍事攻撃計画どう見てるんでしょうか。」
後藤氏「そうですね。日本政府関係者に今日も電話で取材したんですが、米朝関係についてですね、表の動き、それと地下の動き、これは全く違うんだと。(中略)軍事衝突も困るし、かといって北朝鮮が実質的な核保有国になるのも困ると。非常に悩ましい状況に身を置いているというのが日本の現状だと思いますね。」
富川アナ「そういう意味でも明日(1月9日)の南北会談というのは重要な局面だといえますかね。」
後藤氏「そう思いますね。」

その後、富川アナは高橋氏に「翌日の南北会談はオリンピックの話題以外にも話は及ぶのか」と質問。
高橋氏は「南北関係改善に向けての話し合いが行われると思われるが、北朝鮮側がそこに付け込んで見返りを求めてくる可能性があり、警戒感も強い」と答えました。
また、富川アナは山下氏に「アメリカ側は今回の会談をどう見ているのか」と質問。山下氏は「トランプ大統領は歓迎の意を示しているものの、実際は韓国側の譲歩を恐れている。」と伝えました。

場面は再び富川アナと後藤氏の会話に移ります。
富川アナ「日本は蚊帳の外に置かれてしまう懸念もありますよね。」
後藤氏「その懸念もありますね。(中略)会談をやることによって、北朝鮮が時間稼ぎに入ってるわけですね。しばらくの間、国際圧力が弱まるだろう。じゃあその時間稼ぎの間に何をするのか。そのところがはっきりしてこないと。そういうことなんですね。さらに韓国側からきちっとした北朝鮮が望むような答えが出なければですね、例えば米韓合同軍事演習を中止する、永久にやらないと。あるいは在韓米軍を撤退させろとか。新たな要求を突きつける可能性もあると。そういう意味で非常に危険を伴う、日本側から見ると会談と言っていいと思いますね。」
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【検証部分】
今回の放送が問題であると考えられる要因の一つが、番組の内容が、北朝鮮が対話路線を推し進める一方でアメリカが軍事攻撃を行う可能性がある、という印象を抱かせるようなものであったことです。
詳しく説明していきます。
このニュースの終わりごろに登場した、ソウル支局長の高橋氏やワシントン支局長の山下氏は富川アナとのやり取りの中で、北朝鮮は今回の南北会談を機に韓国との関係を改善し、韓国側にスキがあれば経済協力の再開や米韓合同軍事演習の中止などの要求を行っていく可能性がある、という趣旨の発言をしました。後藤氏も北朝鮮の今回の動きを「北朝鮮による時間稼ぎであり、新たな要求を突き付けられる可能性のある、非常に危険な会談」と語っています。
一方、冒頭で富川アナが言及した、「北朝鮮の対話姿勢」。これについては、番組のVTRやスタジオ内のやり取りにおいて、全く詳しい説明がありませんでした。富川アナはどんな情報を基に「北朝鮮の対話姿勢」を感じ取ったのでしょうか。根拠ないままの発言であれば、非常に問題なのではないでしょうか。
このままの番組内容では、視聴者は根拠なき「北朝鮮の対話姿勢」に対して、アメリカが軍事計画を練っていると考える可能性があります。つまり、対話を求める北朝鮮に対して、アメリカが最大限の圧力をかけ続けるのではないかという印象を受ける可能性があるということです。これほど北朝鮮の姿勢を擁護する必要があるのでしょうか。

また、今回の放送で問題にしたいのは印象の問題だけではありません。
実は、テレビ朝日は報道機関として決定的な失態を犯していた可能性があるのです。
それが、「情報源の不確実さ」です。
たびたび登場し、北朝鮮に対する軍事攻撃の詳細に関して語っていた「アメリカ政府関係者」という人物。この人物は、北朝鮮政策に深くかかわるアメリカ政府関係者だ、ということしか明かされませんでした。番組は今回の放送で、彼の発言を基に多くの情報を視聴者に提供したわけですが、人物像が明らかにならない以上、その情報についての信ぴょう性は薄いものとなっています。
加えて、アメリカと中国の間で、アメリカ軍が北朝鮮への軍事攻撃を行った場合に備えて水面下で交渉を行っている、という報道にも疑問があります。この報道では、誰が、どこで、この趣旨の発言をしたのかが一切触れられていません。発言者は、これまで登場した「アメリカ政府関係者」なのかもしれませんが、そのようなことは番組内では確認できませんでした。
テレビ朝日が巨大な報道機関であることを踏まえれば、これらの点は問われるべきものだと考えます。今後も監視を続けます。

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