2018年11月6日 報道ステーション

2018年11月6日 報道ステーション

2018年11月6日の報道ステーションの報告です。
この日、最も多くの時間を割かれたのは「アメリカ中間選挙に関する話題」でした。
では、詳しく見ていきましょう 

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【スタジオ】
徳永有美アナ:さあ、つい先ほど、アメリカの中間選挙がいよいよ始まりました。大統領選で勝利して2年、国際社会はトランプ大統領の一挙手一投足に翻弄され続けてきました。そのトランプ氏に、アメリカ国民は待ったをかけるのか。それとも、さらに勢いづかせることになるのでしょうか。トランプ大統領のお膝元、ニューヨークに富川キャスターが行っています。富川さん、お願いします。

富川悠太アナ:はい。私、今日は、ニューヨークの中心部、タイムズスクエアに来ています。このニューヨークでは、6時ごろから、今の2時間前からですね、投票が始まりまして、現在は中部で始まったところ。そして2時間後には西部で投票が始まります。いよいよ中間選挙が始まったという状況です。で、まあ今日見ていますと、今、出勤前の方々がずーっとこう、歩いてるんですね。で、この近くに投票所がありまして、見てきたんですけど、この出勤前の人たちが次々と投票に訪れるという姿が見られました。テレビを見ていても、新聞を読んでも、まさに中間選挙一色でして、かつてない盛り上がりを見せています。まるで、大統領選のようだと話す人もいました。で、この中間選挙、トランプ大統領の動きも含めてですね、最終日まで異例づくめの展開となりました。
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【VTR】
トランプ大統領(字幕):ここから追い出せ!出て行け!

ナレーター:選挙戦最終日も、異例づくめでした。対する野党は、前大統領がドーナツの差し入れです。事実上、トランプ大統領の信任を問う投票がついに始まりました。

有権者:やった 一番乗りだ

ナレーター:日本時間午後8時、投票が始まりました。一見盛り上がりにかけるようにも見えますが、現地はまだ朝6時です。皆さん、出勤前に投票する熱の入れようです。こちら、ニューヨークの投票所もにぎわい始めました。若い人の姿も目立ちます。

CNNキャスター(字幕):まさに民主主義が進行中です 午前6時なのに続々集まっています

ナレーター:選挙戦最終日の5日も、異例づくめでした。トランプ大統領は、一日で3つの州を飛び回り、ラストスパートをかけます。大統領選挙並みの過密日程です。

トランプ大統領(字幕):これまで中間選挙は退屈だったよな 今じゃ一番のトピックで メディアは俺たちのおかげでもうけてやがる

ナレーター:集会を開いた中西部は、大統領選でトランプ氏勝利のカギとなった場所です。岩盤支持層とされる白人労働者に投票を訴えました。

トランプ大統領(字幕):もっと多くの移民や犯罪を求めるなら あした民主党に投票しなさい 強い国境と安全な社会を望み 麻薬も移民もいらないなら共和党に投票しよう

ナレーター:場内が歓声に包まれる中、プラカードを破り始めた女性が。すると。

トランプ大統領(字幕):あいつをここから追い出せ 出て行け ママのところへ帰れ

ナレーター:マイノリティーや女性を中心に反発が広がっています。さらに、選挙戦最終盤にして、あるキャンペーンCMが批判を浴びました。

キャンペーンCMに出演する男性(ナレーター):俺は警官を殺した。シャバに出たらもっと人を殺すだろう

キャンペーンCM(字幕):民主党が彼をアメリカに入国させた。

ナレーター:男は不法入国をして殺人を犯したメキシコ人です。その後に、アメリカを目指す移民の映像が続きます。そして。

キャンペーンCM(字幕):トランプ大統領と共和党員がアメリカの安全を取り戻す

ナレーター:殺人犯と移民を同一視するCMに非難が殺到して放送中止が相次いだのです。トランプ政権に好意的とされるFOXニュースも放送を取り止めました。

トランプ大統領(字幕):何のことかわからない 選挙広告は山ほどある 不快なことはたくさんある 君らの質問も不快なものばかりだ

ナレーター:アメリカ国境に向かう移民キャバンは、早ければ今週中にも国境に到達します。その数は、7000人から1万人と見られます。メキシコとの国境を抱えるテキサス州では。

西尾哲也記者:大歓声に出迎えられ、オローク氏が登場しました。勢いに乗るオローク氏。投票日前、最後の訴えです。野党、民主党の新人が、共和党の大物、クルーズ上院議員と接戦を繰り広げています。

民主党支持者の男性(字幕):私も移民してきた 誇りを持った米国国民だ 移民がこの国を偉大にした

ナレーター:共和党陣営では。

共和党支持者の女性(字幕):あの集団を全員入国させるのではなく 一人一人選別するべきだ

ナレーター:対する民主党は、この人が応援に駆け付けました。前の大統領が、選挙戦の前面に立つのも異例です。

オバマ前大統領:女性には敬意を持って接して 肌の色で 判断しないことが当然だと思っていたが 当たり前ではなかった 勝ち取らねばと 突然 みんなが気付いた ブーイングじゃなくて投票するんだ

ナレーター:長蛇の列は、期日前投票を待つ人たちです。全米各地にこんな光景が広がっていました。大勢が判明するのは、日本時間の明日昼頃になる見通しです。

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【スタジオ】
平石直之アナ:アメリカ中間選挙の投票がいよいよ始まりました。ここからは、最新のデータで詳しく見ていきます。まず、予想議席数です。そもそも現在は、上院下院ともに共和党が過半数を占めているんですけれども、まず上院は全体で100議席あるうちの、今回は35議席が改選です。で、現在の予想ですと、民主が43。そして、共和党が49という、49ですね。いうことで、半数に迫っているんですけれども、今回の選挙で取った票数、取るであろう現在での予想ですけれども、20対7とで、民主の方に勢いがあるようにも見えます。一方、下院は435、すべて改選です。現在の予想では、民主が203、共和が194、そして接戦38。これ本当に蓋を開けないとまだ全く分からないという状況になっています。では具体的に、トランプ大統領が最終日に回って3つの州で見ていきますと。トランプ大統領、この3つの州を回りました。まず、ミズーリ州は、共和党が0.6ポイントリードしています。そして、このインディアナ州、こちらはというと、民主党が1.3ポイントのリード。そのお隣のオハイオ州はといいますと、今度はこちらはですね民主党が7.5ポイント。少し差がついているようにも見えるんですけれども、実はあの2年前の大統領選でもオハイオ州は民主優勢と言われていたんですが、蓋を開けたらトランプ大統領が取りました。これが全体の票数にも影響してきたというような見方もありまして。ま、両党にとっての重要選挙区と。この3州を、トランプ大統領は最終日に回りました。最終的な結果を大きく左右する投票率なんですけれども、上が大統領選挙、そして下が中間選挙ということで、もう明らかにですね、大統領選挙に比べると中間選挙は毎回低いんですね。前回は36.7%だったんですが、今回は、45%まで伸びるんじゃないかという見方もありまして。もうこの水準まで来ますと、50年ぶりの高水準という。はい。蓋を開けないとわからないんですけどね。

徳永アナ:そこまでその、中間選挙なのに、投票率が高いってことになると、若者の動向がポイントになるってことになるんですか。

平石アナ:そうなんですね。実はそこがポイント、大きく一つありまして、こんな数字もあるんですね。前回36.7%と言いました。18歳から29歳でみると、16.3%しか投票に行ってなかったということなんですけれども、今回ある調査では、必ず投票に行くと答えた同じこの、18歳から29歳が、40%いたということです。これはあの、過去、中間選挙で言えば過去最高の数字ということで、まあそれだけの熱意が、現状表れているということなんですね。

徳永アナ:過去最高の熱意とはすごいなと思いますが、さあここで、アメリカで取材をしている富川さんに聞きたいと思います。今日はアメリカ在住でトランプ現象に関する本も書かれています町山智浩さんと一緒に伝えてもらいます。富川さん、取材の中で、若者の関心の高さというのは実感としてはありましたか?

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【中継】
富川アナ:そうなんですよ。まさに熱意というのを感じまして、私街でインタビューしていても、どんどんどんどんこの中間選挙について皆さん話してくださるんですね。で、特にやっぱり、若者ですとか女性の人たちが、自分の考えをしっかりと強く主張してくれてるという印象を受けました。町山さんよろしくお願いします。

町山智浩:はい、よろしくお願いします。

富川アナ:この、若者や女性の意識の高さっていうのは、今まであまりないといいますか、今回特別ですかね。

町山氏:今まであまりないですよ。だから女性と、若者と、あと黒人の投票率はもともと低いんです。あの、アメリカがすごいってことじゃ全然なくて、低いんですけども、彼らはオバマ大統領のときの2008年の選挙ではみんな投票に行って、オバマさんを大統領にしたんです。ところが2016年では、彼らは基本的にバーニー・サンダースさんを支持していたんですけど、予備選で彼がヒラリーさんに負けてしまったので、本選に投票に行かなかったんです。

富川アナ:ヒラリー支持にはいかなかったんですね。

町山氏:行かなかったんですけど。それで、トランプさんが大統領になっちゃったと。ということがあって、しまったと思ってるんですよ。

富川アナ:同じ轍は踏まないと。

町山氏:同じ轍は踏まないと。彼らにとって非常に不利な政策が実行されてるので、トランプで。今度は阻止するために、まあ投票に行こうということになってます。

富川アナ:かなり各地でそういった、マイノリティーの人たちも含めて、ウェーブが起きていますよね。

町山氏:はい。この3つはですね、すごい運動をトランプが大統領になってから起こしてます。女性たちは、そのまあMeToo運動ですね。黒人の人たちはブラック・ライヴズ・マター運動。若者たちは、銃規制を求めるマーチをして、社会運動は起こしてるんですけど、今回彼らの運動は投票に初めて反映されるということになります。

富川アナ:その結果が、やっぱり中間選挙の、開票したときに出てくると思われますか?

町山氏:はい。もともと、国民全体でいうと民主党支持者の方が共和党支持者よりも多いんですよ。だから投票率が上がれば上がるほど民主党が強くなってきます。で、特にその3つの層。投票に前行かなかった人たち。トランプが大統領になったときの選挙で投票に行かなかった人たちが、ごっそり投票するとなると、やっぱり民主党の票が増えるという計算になりますね。

富川アナ:そういった危機を感じてか、トランプがもう大統領選のように応援演説に各州回ってますよね。

町山氏:はい!そうです。すごいですよ、もう。自分の選挙じゃないのに、もうアメリカ中回って、まあ非常に共和党が弱いところとか、拮抗しているところに回って、もうすごく後押しして、支持率を引き上げてますよ。

富川アナ:実際に回ったところは支持率引きあがってるし、しかもこうやってあの、工事をね、見るとやってるんですよね。こういう工事が行われているとこをみても支持者の皆さんは、トランプ大統領のおかげで景気が上がってるんだと思うように捉えていると。いうことなんですよね。ここにきて、最終段階で共和党が盛り返したというのは、そういうトランプの動きから、ということも考えられます。で、私、2年前に、大統領選、前にですね、取材したトランプ大統領支持者にも取材してきたんですけれども、彼らは、2年前よりもさらに大統領に心酔していました。

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【VTR】
ナレーター:向かったのは、ニューヨーク郊外のスタテン島です。ニューヨークは、民主党の地盤ですが、この島では57%の人がトランプ氏に投票しました。

プリシラ・ピロッゾロさん(字幕・2016年取材):貧困層の底上げをお願いしたい 誰だって貧困は嫌よ

ナレーター:2年前、トランプ氏に投票したピロッゾロさんです。自宅の庭には、トランプのTをもじった巨大な看板がありました。再び、尋ねると。

富川アナ:あれ、Tの大きな文字がなくなっていますね。ここにどーんと立っていたんですけどね。

ナレーター:トランプ大統領を誕生させる目的は達成したので、Tは撤去したといいます。

富川アナ:2年前から、ずーっとトランプ支持は変わらないんですか?

ピロッゾロさん(字幕):今でも彼を支持しています 彼のおかげで経済が成長しているので

ナレーター:コンタクトレンズ販売などを手掛けていて、好景気の恩恵を受けているといいます。今後は、トランプ流が世界に広がるのを期待しているそうです。

ピロッゾロさん(字幕):トランプ大統領のやり方がブラジルやドイツにも広がっている メルケルもいなくなるし様々なことが起きている

ピロッゾロ氏の夫サムさん(字幕):国連も変わってきたよね

ピロッゾロさん(字幕):人々は歯に衣着せぬ発言をするようになりました

ナレーター:インタビューの後、案内されたのは。

富川アナ:近所の人が立てた2年後の再選を願う看板です。撮影中、男性が割り込んできました。

近所の人(字幕):俺が投票した大統領は彼だけだ アップル株を買ったらドーンと跳ね上がった たくさん稼がせてもらったよ

ナレーター:好景気以外の理由で支持する人もいます。アメリカの人口のおよそ4分の1を占めるというキリスト教福音派の人たちです。聖書の言葉を忠実に守り、中絶や同性婚に否定的なため、共和党の強固な支持基盤でもあります。

福音派の牧師(字幕):皆さんにはキリスト教徒として投票していただきたい 家族や生い立ちに関係なく 神の教えに従って投票するのです

ナレーター:有名な牧師たちが激戦州をめぐって投票を呼び掛けるバスツアーも始めました。バスは、投票への近いともいえる信者たちのサインで埋め尽くされています。トランプ政権の何を評価しているのでしょうか。

福音派の信者の女性(字幕):エルサレムへの米大使館移設よ 実現する度胸があったのはトランプだけ エルサレムはイスラエルの永遠の首都よ

ナレーター:去年、トランプ大統領は国際社会の意向を無視して、エルサレムをイスラエルの首都に認定しました。これは、福音派の悲願でした。では、彼の言動については。

福音派の信者の女性(字幕):赤ちゃんがゲップやウンチをした時のように 彼にも助けが必要です 彼のために毎日祈っています 「余計なことを言わないように」

ナレーター:ところが、福音派も一枚岩ではなくなりました。ロサンゼルスの教会で開かれたイベントを覗いてみると。

反共和党福音派ダグ・パジット牧師(字幕):共和党は壁を作り 兵士を送り 移民を締め出そうとしている でも忘れないで 私たちを一つに することが神の御心なのです

ナレーター:福音派の牧師が共和党批判をしていました。パジット牧師は、全米をバスで移動し、共和党を支持しないよう説いて回っています。今回の選挙中に共和党が強い15の州、31都市を回る予定です。

パジット牧師(字幕):トランプは福音派のためにはならない 彼の政策は世界の人々の “害”になることばかりだ 残酷さを正当化するのに キリストの名を使うべきではない

ナレーター:そして、トランプ氏が福音派に近づくのは、票のためだと批判します。トランプ大統領を支持する福音派はどう思ってるんでしょうか。

記者(字幕):大統領は票集めにやっているだけでは

親共和党福音派トラヴィス・ウェバー氏:それが政治というものです 政治家は誰しも支持を得るために有権者の求めに応えるものだ

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【中継】
富川アナ:私が取材しましたご夫婦にですね、移民排斥の話ですとか、LGBTや少数の人たちへの差別問題について聞いてもですね、それはメディアが作り出した嘘なんだと、もうやってフェイクニュースをお前らが・・・

町山氏:フェイクニュースって言うんですよ。

富川アナ:その通り。お前らが伝えるからいけないんだというような、ちょっと空気が悪くなってしまうような感じで、まさに心酔しきっているような状況なんですよね。トランプ支持者が、なんであそこまで心酔できるのかなって取材していて感じたんですけれども。

町山氏:まあ、公約を果たしてるからですよね。トランプが。もう景気めちゃくちゃ良いですからアメリカ。まず、仕事があるってことと、個別のその支持者の求めるものに応えてまして、福音派に対しては、エルサレムの移転であったり、最高裁判事の指名で公約を果たして、ラストベルトの人たちに対しては、関税を、輸入関税に対して、上げるという形で。で、また白人至上主義的な人たちにとっては、移民を徹底的に取り締まるとか、すごく個別の公約を実行していますから、だからやっぱり支持者はすごいトランプを評価しています。

富川アナ:州ごとに求めるものは違うわけですよね。

町山氏:求めるものは全然違いますよ。それぞれ、だって聖書を信じてる人たちにとっては、経済よりも大事なのは同性婚を禁止することだったり、人工中絶を禁止することの方が重要なんですよ。だからそこをポイントで出してきます。

富川アナ:うまいこと、場所場所によって、トランプ大統領は言うことも変えていて。それがまた硬い岩盤と言われている支持層・・・

町山氏:それは、彼、ビジネスマンですから、ニーズに応えてるんです。すごく。

富川アナ:一方で、民主党側は、女性の候補者が非常に多くなってますよね。

町山氏:はい。女性の候補者がね、もう200人を超えていて、まあ前代未聞の数なんですよ。で、それはやっぱり女性が投票に行かなかったためにトランプが大統領になっていまったってことで、トランプが大統領になった途端にウーマンズマーチって形でもって、大運動が起こっているんですけれども、それが本当に選挙の場でですね、実行されることになります。で、特に、最高裁判事が、保守派が多数派を占めることによって、人工中絶がまた違法化される可能性が出てきてるので、女性たちが権利を守るために出ています。あと、若者たちが投票するのは、今回は、銃規制ですね。乱射事件とか多くて、それに対する銃規制をトランプが進めないので出てくると。だから、今回投票する人たち。黒人の人たちは黒人とか、マイノリティーの人権運動なので、経済と関係のない人たちが反トランプの投票をするんですよ。だからこれほど経済の調子がいいのにもかかわらずトランプの支持率が低迷しているのは、そういうことなんです。経済と無関係の問題が今、問われてるんです。

富川アナ:そこを盛り上げたい人たちと、支持は低いけれども固いトランプ支持層と。その戦いとなってるわけですね。

町山氏:はい。

富川アナ:スタジオからどうですか。

平石アナ:はい。町山さん、スタジオから失礼します。まさにこの中間選挙のこのタイミングに多くの移民たちがアメリカの国境を目指してやってきてるわけですけども、この移民キャラバンの選挙への影響はどう見てらっしゃいますか?

町山氏:聞こえない…

富川アナ:このタイミングで、私聞こえてるんで。

町山氏:ありがとうございます。

富川アナ:あの、今、移民キャラバンがやってきていて、これの選挙への影響っていうのはどのような。

町山氏:移民キャラバン、ものすごくトランプ大統領に対して有効に動いてます。トランプ派と、まあ共和党はですね、今回の難民のキャラバンをですね、コマーシャルに使って、難民への恐怖を煽ることで支持率を高めています。すごくトランプにとってはラッキーですよ。はい。

富川アナ:ものすごいこの、恐慌的なものをCMなどでアピールして、さらに支持率を煽ってという状況ですよね。

町山氏:はい。本当にこの難民はですね、トランプさんは本当に運がついてるなと思いましたね。このパレードがなければ、難民のマーチがなければ、多分支持率をそんなにガーンと上がることはなかったと思います。

富川アナ:そこで巻き返したトランプ大統領の評価というものがどうでるのか。全米でこの中間選挙に注目が集まっています。

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【スタジオ】
徳永アナ:町山さん、富川さん、ありがとうございました。さて、後藤さん、トランプ大統領の支持者は、トランプ流が世界中に広がることを期待してると。本当にその、何て言うかアメリカ、自国ファーストですとか、自国中心みたいな考え方が広がることにちょっと驚きもあるんですけども。

後藤謙次氏:そうですね。まさにそれがトランプ氏の勝利の方程式なんでしょうね。トランプ氏の前提というのは、低投票率なわけですね。低投票率だと、自分たちの岩盤支持層を固めれば、それで勝利が転がり込んでくる。それをまあ、トランプさんはこの間の大統領選挙で実践をしたと。再びそれをしてるということなんだと思いますね。

徳永アナ:やっぱりそのコアな支持層に向かって強烈なメッセージを発するということですね。

後藤氏:そうですね。とにかく分断分断というのがトランプさんの手法なんですね。それが全世界にも蔓延してしまうと。現に、共和党の中でもですね、アメリカ全部で50州。約、その各州ごとに10%はトランプ支持層がいるといわれてるんですね。結果として共和党の候補者は、全員トランプさんを支持しないと当選できないと。そういう空気が蔓延してしまってるんですね。

徳永アナ:で、みんなトランプさんに倣えということになっちゃうわけですね。

後藤氏:それはあの、日本でも言えるわけですね。日本も小選挙区制になってからですね、一定の支持層を固められれば勝利を収められる、それが全体の結果を大きく左右すると。そういう選挙風土が出てしまってるんですね。その一方で若者を中心に、どうせ投票に行っても政治は変わらない。日本は変わらない。諦めの気持ちがどんどんどんどん低投票率に繋がってってしまう。そうするとどんどんトランプさんのように政治が強くなっていく。そういう悪循環を生んでるんだと思いますね。

徳永アナ:そう考えるとやっぱり、投票率が高くなる。投票率が上がることによって、蓋を開けてみたらどうなるかわからないっていうことにつながる可能性もあるわけですよね。

後藤氏:大いにあると思いますね。この中間選挙で大きな話題になった、歌手のテイラースウィフトさん。あのインスタグラムの中にですね、彼女は100%指示できる人がいなくても、自分に近い価値観がある人。これに投票に行きましょうと。こう言ってるんですね。民主主義ってのは非常に面倒くさい制度だ何ですが、それを放棄してしまうと、民主主義そのものが崩壊してしまう。ですから、投票に行くということが全てだと思いますね。

徳永アナ:テイラースウィフトさんの言葉がすごく理にかなったようなね、身に染みるような気がするんですけれども。
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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて3つあります。
まず、1点目は、アメリカ中間選挙を中立的に論ずる立場にあって、今回のキャスティングは適当であったのかという疑問。
2点目は、町山氏とスタジオの間の会話に印象操作ともとられかねない発言があったこと。
3点目は、スタジオでの後藤氏の発言に放送法違反に抵触する可能性があったこと。
以上の3点です。

まず、1点目についてですが、今回、富川アナとともにニューヨークからレポートをした町山智浩氏。彼は、アメリカの現状について数々の論評を行っており、その多くがトランプ大統領を批判したものとなっています。
確かに、彼は現地を回り、多くの取材をしたうえで論評をしていることは間違いありません。しかし、政治的に明確な立場を表明している人物を番組に出し、多くの発言をさせるというのは本当に正しいことなのでしょうか。テレビ局として中立を保つ努力をすることは重要なことなのでは無いでしょうか。

次に2点目についてです。
番組内ではこのようなやり取りがありました。

富川アナ:スタジオからどうですか。
平石アナ:はい。町山さん、スタジオから失礼します。まさにこの中間選挙のこのタイミングに多くの移民たちがアメリカの国境を目指してやってきてるわけですけども、この移民キャラバンの選挙への影響はどう見てらっしゃいますか?
(中略)
町山氏:移民キャラバン、ものすごくトランプ大統領に対して有効に動いてます。トランプ派と、まあ共和党はですね、今回の難民のキャラバンをですね、コマーシャルに使って、難民への恐怖を煽ることで支持率を高めています。すごくトランプにとってはラッキーですよ。はい。
富川アナ:ものすごいこの、恐慌的なものをCMなどでアピールして、さらに支持率を煽ってという状況ですよね。
町山氏:はい。本当にこの難民はですね、トランプさんは本当に運がついてるなと思いましたね。このパレードがなければ、難民のマーチがなければ、多分支持率をそんなにガーンと上がることはなかったと思います。

ここでは、中間選挙の直前に中南米諸国からの移民キャラバンが米国を目指して移動していたことについて触れ、これへの恐怖をあおることでトランプ大統領や共和党の支持率が上昇したということを話していました。
しかし、アメリカに限らず、選挙の直前に政党や選挙の候補者の支持率が急激に乱高下することは珍しいことではありません。日本でも、2005年のいわゆる「郵政解散」の直前で当時の自民党の支持率は急上昇しました。これは選挙の最終盤に向かって候補者たちが広報に全力を尽くすからと言われています。
したがって、本当にキャラバンへの恐怖のみで共和党が支持率を上げたとは言い切れないのです。実際、キャラバンの話が出る以前から、共和党の支持率は上昇傾向にありました。したがって、そのような「恐怖戦術」が選挙の大勢を握った、という伝え方には疑問符を付けざるを得ません。

最後に3点目についてです。
スタジオにて後藤氏と徳永アナとのやり取りにこんな場面がありました。

徳永アナ:で、みんなトランプさんに倣えということになっちゃうわけですね。
後藤氏:それはあの、日本でも言えるわけですね。日本も小選挙区制になってからですね、一定の支持層を固められれば勝利を収められる、それが全体の結果を大きく左右すると。そういう選挙風土が出てしまってるんですね。その一方で若者を中心に、どうせ投票に行っても政治は変わらない。日本は変わらない。諦めの気持ちがどんどんどんどん低投票率に繋がってってしまう。そうするとどんどんトランプさんのように政治が強くなっていく。そういう悪循環を生んでるんだと思いますね。

ここで後藤氏は「小選挙区」について「一定層の支持率を固めれば勝利を収められる」という解説をしていますが、これには誤りが含まれています。
そもそも、小選挙区制とは「一つの選挙区で最も多くの票を集めた一人だけが当選できる」という制度のことです。
小選挙区制を考えるうえで、別の例を出して考えてみましょう。かつて(終戦後から1993年まで)の日本では一般的に「中選挙区制」と呼ばれる制度を採用していました。これは、「一つの選挙区で複数人の議員を選出する」という制度です。
例えば、6人の立候補者から3人の当選者を選ぶとしましょう。そうなれば、その選挙区の人々の少数(例えば20%)の票を固めるだけでも当選する可能性があるのです。それに比べて小選挙区制では、そもそも多くの立候補者が立たないため、票が分散する可能性も多くなく、比較的多くの票を獲得しなければなりません。
つまり、「一定層を支持率を固めれば勝利を収められる」というのは「小選挙区制」の問題ではないのです。それを「日本の選挙風土」として指摘している後藤氏の見識には明らかに誤りがあるとしか考えられません。

今回の放送は、放送法第4条第2項「政治的に公平であること」、第3項「報道は事実をまげないですること」に抵触している可能性があります。

アメリカの中間選挙という、アメリカのみならず日本の人々の多くが注目すると考えられる問題を取り上げた報道ステーション。重要な論点を視聴者に提供しなければならないはずですが、多くの箇所に問題があることは明白です。今回の放送には放送事業者としての問題を感じざるを得ません。

視聴者の会は今後も監視を続けます。

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