2018年10月23日 報道ステーション

2018年10月23日 報道ステーション

2018年10月23日の報道ステーションの報告です。
この日、最も多くの時間を割かれたのはトルコのサウジアラビア総領事館でサウジアラビア人のジャーナリストが殺害された事件に関する話題でした。
今回取り上げるのは、「トランプ大統領の支持者」に関する話題です。

——-
【スタジオ】
徳永有美アナ:続いて、トランプ氏は、救世主と主張する人々までいます。
——–
【VTR】
インタビュー(字幕):「Q」は明らかに逆襲しようとしている 人々の希望になるよ。

ナレーター:アメリカで最近目にする「Q」という存在が、トランプ大統領の追い風に。
——-
【スタジオ】
徳永アナ:2年前の大統領選挙で、激しく罵り合ったライバルまでもが、トランプ人気にあやかろうとしています。

富川アナ:こちら。すごい歓声でしょ。トランプ大統領が応援に駆け付けますと、かつてライバルだった上院議員の支持者たちもこれだけの盛り上がりを見せたんですね。この熱狂的な人気には、トランプ氏は悪の権力者からアメリカを救う救世主だと信じている「Q」という謎の集団の存在がありました。
——–
【VTR】
ナレーター:あの帽子をかぶったファンたちが押しかけていました。

布施哲記者:演説まで5時間以上はあるんですけども、ご覧の通り、これだけ多くのトランプ支持者がすでに集まっています。

集会参加者の女性(字幕):トランプ大統領!

集会参加者の男性(字幕):あの人が大好きだ あの人がアメリカのためにしていることが大好きだ

ナレーター:この日、政治集会を開いたのは、テッド・クルーズ上院議員です。この方とトランプ大統領と言えば、2年前。

トランプ大統領(字幕):テッド・クルーズは「嘘つきテッド」 彼は嘘つきなんだよ

テッド・クルーズ氏(字幕):ドナルドは「ハナタレの臆病者」だ あと俺の妻にちょっかい出すな

ナレーター:大統領選の候補者指名争いで、互いに罵り合う仲でした。そんなテッド・クルーズ議員ですが、中間選挙の情勢がいまいち芳しくありません。そこで頼ったのが。

テッド・クルーズ氏(字幕):皆さんに紹介できることを大変光栄に思う 第45代アメリカ大統領

ナレーター:宿敵だったトランプ大統領です。そのかいあって、2万人収容の会場はぱんぱん。外には、立ち見客もできる盛り上がりでした。トランプ大統領が推薦する候補は、軒並み支持率が上がるそうです。

トランプ大統領(字幕):まあ ちょっとした“いざこざ”もあったさ でも実は俺たち最初からお互いに好きだったんだぜ

ナレーター:トランプ大統領への信任投票への意味もある中間選挙まであと2週間です。そんな中今回、会場で奇妙なマークを見つけました。Qの文字です。ここにも。あそこにも。

布施記者:あっ。ここにはQ関連のグッズもありますね。一体、何の意味が。

字幕:「Q」とは何か

「Q」の信奉者の男性1(字幕):今までで最高のストーリーさ 善人から善人へ届けられた知恵だよ 世界を救う計画だよ

「Q」の信奉者の男性2(字幕):「Q」は明らかに逆襲しようとしている 人の希望になるよ だからクールだね。

ナレーター:今いちピンとこないので、ネットで調べてみると。

「Q」の宣伝映像 YouTubeから(字幕):世界は今 聖書の中の劇的な隠れた戦争の真っただ中にある 文字通り 地球上での善と悪の戦いなのである

ナレーター:謎めいた、このQ。一部で熱狂的な信奉者を持つ存在のようです。

字幕:CNNは最低だ! CNNは最低だ!

ナレーター:中間選挙真っただ中のアメリカで、最近よく目にするものがあります。この日も、共和党の集会で。

高羽佑輔記者:トランプ大統領の支持者の中には、少数ですがQという謎の人物を支持する熱狂的なグループもいて、あちらの方のようにTシャツで主張する人もいます。

ナレーター:タイム誌で、ネットで最も影響力のある25人にも選ばれたQですが、その主張はこんな感じです。

「Q」の宣伝映像 YouTubeから(字幕):犯罪者たちはディープ・ステイトとして知られていた やつらはあらゆるシーンで我々を操っていたからだ “犯罪者”が大統領に就任するたび 悪の闇はさらに深まり アメリカと世界は沈んだ 真っ暗な闇へと 

ナレーター:ざっくり説明すると、世界のシステムを支配する陰の支配者「ディープ・ステイト」という存在がいて、かつてはケネディ大統領も暗殺した集団にトランプ大統領が戦いを挑んでいるといった主張をしているのがQです。

「Q」の宣伝映像 YouTubeから(字幕):トランプは候補者として最良の選択肢だった 彼は愛国者であり 国民に称賛された

ナレーター:陰謀論をまき散らしているだけ、とも解釈できますが、信奉者たちは真剣です。

「Q」の信奉者の男性3(字幕):この世には世界の金融システムに巨大な影響力をもつ一族がいて 「Q」が登場するまで私は彼らの存在を知ることはなかった

記者(字幕):「Q」を支持しますか

「Q」の信奉者の男性4(字幕):そうとも もちろんだ これからビッグニュースがあるぞ トランプ最高!

ナレーター:「Q」の運営者は、キリスト教福音派の信者とか、営利目的のプログラマーと言われていますが、確かな正体は分かっていません。しかし、トランプ大統領も最近は、こんなことを言いだしています。

トランプ大統領(字幕):ディープ・ステイト(影の政府)の工作員が有権者を無視し 秘密の計画を進めようとしている これは民主主義への脅威だ

——-
【スタジオ】
徳永アナ:影の支配者「Q」ということですけれども、なんか過剰ですし、何というか熱狂的すぎるし、違和感はね、少し残りますけどね。

富川アナ:我々は普通にそう感じるんですけれども、そうやって信じそうな人に、ネットなどでそうさせて、どんどんああやって宣伝映画みたいなものを送りつけて信じさせるっていう。その、トランプ大統領のね、支持率を見ていくと30%代半ばから40%代の半ばでずっと安定しているわけですけれども、分裂はね、どんどん深まっていて。アメリカ国民の。で、今回の中間選挙の候補者を見ても、両極端の候補者が争っていたり、というような状況になってますよね。

後藤謙次氏:そうですね、まさにトランプさんのある面で選挙戦略そのものですよね。分断することによって、自分の岩盤支持層を固めるという。とりわけ中間選挙はですね、投票率が上がらないとされていますから、40%前後のトランプさんの、多分自分の支持母体さえ固めれば、楽勝にいけると。ただ非常にですね、政策的にはいろんな政策を打ち出すんですね。一貫性がないんですけれども、選挙戦略は極めて一貫性がある。つまり自分たちの支持層だけを徹底的に丁寧にまわると。これはもうトランプさんが、大統領になってから、中間選挙を睨み、さらに2年後の大統領選挙を睨むと。これがトランプ流の政治なんですね。ですから政策的な細かい積み上げはいらないと。選挙に勝てるためにはどうしたらいいか。そのことだけをやってるのが今のトランプさんですね。

徳永アナ:すごく過激な政策ばかりにね、入ってくる感じがしますよね。

富川アナ:そうですね。でも信じる人は信じてしまうから支持率は一定っていうことにつながるんですよね。

——-

【検証部分】
今回の放送の問題点は、視聴者にトランプ大統領の支持者層を勘違いさせるような演出がされていたことです。
詳しくお伝えしていきます。
この日の放送では、「Q」と呼ばれるインターネット上の発信者について取り上げています。
その主張はVTRの中で
ナレーター「ざっくり説明すると、世界のシステムを支配する陰の支配者「ディープ・ステイト」という存在がいて、かつてはケネディ大統領も暗殺した集団にトランプ大統領が戦いを挑んでいるといった主張をしているのがQです」
と紹介されています。
この「Q」は熱狂的な支持者を生み、その多くがトランプ大統領を支持しているというのです。
その後、スタジオでも
後藤謙次氏:(中略)トランプさんのある面で選挙戦略そのものですよね。分断することによって、自分の岩盤支持層を固めるという。とりわけ中間選挙はですね、投票率が上がらないとされていますから、40%前後のトランプさんの、多分自分の支持母体さえ固めれば、楽勝にいけると。(中略)選挙に勝てるためにはどうしたらいいか。そのことだけをやってるのが今のトランプさんですね。」
徳永アナ「すごく過激な政策ばかりにね、入ってくる感じがしますよね」
との発言がありました。

ここで問題になるのは、トランプ氏の支持者の多くが陰謀論を信じているのか、という問題です。まず、全米の4割の有権者の支持を受けるトランプ大統領ですが、そのすべての支持者が「Q」の影響を受けているわけではありません。しかし、番組の中ではそのような印象付けが至る所で行われていました。後藤氏は「40%の支持率を固めていれば楽勝」という主張をしており、番組を見ただけでは支持基盤は陰謀論を唱える人々が多くを占めている、という印象を受けます。
後藤氏は他にも「トランプ大統領は選挙に勝つためだけの政策をとっている」という発言をしていましたし、徳永アナは「過激な政策ばかり」という発言をしていましたが、ではどんな政策がどう支持者固めにつながっていて、どう過激なのか。そのような言及は一切ありませんでした。

したがって、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」第3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。

今後も監視を続けます。

報道ステーションカテゴリの最新記事