3月18日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・事実を曲げずに伝えた放送であったか
まずは放送内容を確認していきます。
——-
【スタジオ】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ):森友学園への国有地売却をめぐって公文書が改ざんされた問題で自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんが一連の経緯を手記にまとめていたことが分かりました。こちら、手書きのものを見てみますと日付が30年の3月7日となっています。こちらは赤木さんが自殺した日です。ここには、今回の問題は全て理財局が行いました。指示もとは佐川元理財局長と思いますと書かれています。赤木さんの妻は今日、国と佐川元理財局長を提訴しました。
——-
【VTR】
遺書(一部抜粋)『最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。(略)修正は三回程度行われ、学園に厚遇したととられかねない部分をエスカレートするように本省が修正案を示し現場として相当抵抗(略)事実を知っている者として責任をとります』
ナレーション(以下ナレ):こう書き残し自ら命を絶ちました。まもなく55歳の誕生日を迎えるはずでした。手記を残したのは近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんです。森友学園への国有地売却をめぐって公文書が改ざんされた問題で赤木さんの妻は国と財務省の理財局長だった佐川宣寿氏に損害賠償を求めて提訴しました。佐川氏の指示で改ざんを強制され自殺に追い込まれたと訴えています。
生越照幸弁護士『非常に明るい方らしいんですね。大声でガハガハ笑ったりしていろいろな趣味を持たれてて活動的。改ざん後は笑わなくなったし眠れなくなったし。改ざんしちゃったことの後悔をずっと口にされていたと』
ナレ:国有地が不当に8億円値引きされ売却されたのではという疑惑が持ち上がった2017年2月。安倍総理はこう答弁していました。
安倍晋三総理大臣(以下安倍総理):『私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい』
ナレ:土地売却の経緯は適正だったのか。森友学園との交渉記録を出すよう追及された佐川氏は…。
佐川宣寿元理財局長『交渉記録というのはございませんでした。記録は残ってございません』
ナレ:しかし、このころから財務省は森友文書を廃棄し改ざんしていました。3000ページに及ぶ公文書の改ざん。その手始めに行われたのが複数の政治家や昭恵夫人の名前が出てくる決裁文書でした。
決裁文書の一部抜粋『安倍昭恵総理夫人を現地へ案内し夫人からは、いい土地ですから前に進めてくださいとのお言葉をいただいたとの発言あり』
ナレ:そして、籠池夫妻が昭恵夫人と写ったこの写真を提示されたという記述もありました。これらの経緯の記録を根こそぎ削除する作業を赤木さんは強制されたといいます。作業を指示されたのは、日曜日で家族で公園を散策していたときだったといいます。
赤木氏の手記『当日出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので手伝ってほしいとの連絡を受け役所に出勤すうよう指示がありました」
ナレ:このとき、赤木さんは妻に統括が困っているから助けに行くわと言って近畿財務局に向かったそうです。
赤木氏の手記『元はすべて佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました』
ナレ:赤木さん側はその後も佐川氏の指示のもと更なる改ざんの作業を強いられたとしています。赤木さんは、長時間労働も重なりうつ病を発症して休職します。
訴状より抜粋『大変なことをさせられた 僕は犯罪者や』
ナレ:自分の体を、ちくしょうちくしょうなどと言いながらたたき続けることもあったそうです。
赤木さんの手記『森友事案は全て本省の指示。本省が処理方針を決め嘘に嘘を塗り重ねるという通常ではあり得ない対応を本省、佐川が引き起こしたのです。怖い無責任な組織です。抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどうとるかずっと考えてきました』
Q.なんで財務省の方々はそこまでやらなければいけなかったのか。
麻生太郎財務大臣(以下麻生大臣)『それがわかれば苦労しないです。それがわからんからみんな苦労してるんですよ。私らも』
ナレ:改ざんについて、財務省は佐川氏の明確な指示は認めていません。今日、国会では野党が財務省に対し再調査を行う考えはないかとただしましたが…。
茶谷栄治官房長『一連の問題についてのけじめをつけたものと思っております。再調査を行うことは考えていないところです』
ナレ:麻生大臣は…。
Q.手記を受けて再調査する考えは?
Q.手記を読まれてどう思われたか?
麻生大臣『……(無回答)』
Q.改ざんが佐川氏の指示と報じられているが?
安倍総理『真面目に職務に精励していた方が自ら命を絶たれたことは大変痛ましい出来事であり本当に胸が痛みます』
Q.総理ご自身の責任については?
安倍総理『……(無回答)』
ナレ:赤木さんの妻は、国に対し健康を悪化する恐れを認識でき自殺の予見は可能だったとしておよそ1億円を佐川氏には、主導的立場から改ざん指示を行ったとして550万円を求めています。赤木さんは国家公務員としての仕事に誇りを持っていて友人たちに僕の契約相手は国民ですと話していたといいます。
赤木氏の妻『夫が死を選ぶ原因になった改ざんは誰が何のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたか真実を知りたいです。この裁判ですべてを明らかにしてほしいです』
——-
【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):公務員としての矜持を強くお持ちになっていた赤木さんが、どのような過程で信念を曲げざるを得なかったのか手記から伝わってきますね。
後藤謙次氏(以下後藤氏):今日私は何度も読みましたけど今回、「週刊文春」が報じたこの手記。長期政権の下でいかに官僚たちが政権の意向に沿う形に文書改ざんあるいは廃棄を行ったのかそれを浮き彫りにしましたよね。と、同時にトップがやったことに対して一番下の人たちがしわ寄せを受けるという官僚だけに限らずですね、組織が持つ悪しき構造上の問題というのが今回、浮き彫りになりましたね。
徳永アナ:赤木さんの奥様はなぜここで今、国に対して提訴という形に踏み切ったと考えられますか?
後藤氏:やはり、この間の財務省の不誠実な態度だと思いますね。とりわけ赤木さんがどのような形で亡くなっていったのかということで当然、文書開示請求をしているんですがそれにほとんど答えていないんですね。それを裁判の中で明らかにしたいというのが最初の動機だと思いますね。そして今のこの問題今回の検察人事もそうなんですが総理発言あるいは政権トップが語るとそれにみんなが発言を合わせていくと。そして最終的には文書改ざんあるいは廃棄にまで至る。その構造上の問題は全く変わってないんですね。その意味で赤木さんが投げかけたこの問題は今の問題でもあるということを肝に銘じなければいけないと思います。
——-
【検証部分】
森友学園に関する問題で近畿財務局の職員が亡くなったという報道に関して、後藤氏は「政権の意向に沿う形に文書改ざんあるいは廃棄を行ったのかそれを浮き彫りに」した、と述べています。
今回の報道でも安倍首相が「(関与があったら)私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」と発言したことを放送し、安倍首相への忖度があったという論調でした。
しかし、これは事実を正しく伝えた報道といえない可能性があります。
文書改ざんは安倍首相に対する忖度ではない可能性があるのです。
元財務官僚の高橋洋一氏は、3月25日放送のラジオで以下のように解説しています。
——————————————————————————————————–
高橋)多くの人が誤解していると思いますが、国有地の売却は通常、競争入札で行われるものです。競争入札していなかったから値引きの話が出てしまったという、事務的には単純なものです。案件が近畿財務局にあって、国会で取り上げられ、予算委員会の前にも取り上げられていました。そのときの佐川氏の答弁は、はっきり言って不勉強なものでした。その後に総理が「私がもし関わっていれば、首相も国会議員も辞めます」と言ったのです。それ以降をマスコミは報道するのですが、その前の佐川氏の答弁にミスがあるのです。自分の答弁のミスに合わせて、資料を変えたという感じです。
飯田)よく言われるのが、総理答弁で「もし私が関わっていたら私の首をかける」という発言があって、「文書改ざんはそれがきっかけなのだ」と。
高橋)それ以降で変わったという言い方をしますよね。そうではなく、その前に佐川氏への質問があり、きちんと調べずに答弁を行ったので不十分だったのです。その答弁の辻褄を合わすために資料を削除したのです。財務局の資料に余計なことが書いてあるのは事実です。その余計なところを省いただけなので、文書改ざんにはあたりません。削っただけなので内容は変わっていない。削ることもいいことではありませんが、法律では問いようがないということだと思います。
≪ニッポン放送 森友公文書改ざん~佐川氏が安倍総理「辞める」発言の前に一部を削除
https://news.1242.com/article/215446≫
——————————————————————————————————–
つまり安倍総理が「(関与があったら)私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」と述べた前に文書を一部削除していたのです。
この日の放送を含むマスコミの論調は安倍首相の発言に合わせて文書改ざんが行われたとするものですが、そのストーリーは事実でない可能性があるのです。
以上から後藤氏の「長期政権の下でいかに官僚たちが政権の意向に沿う形に文書改ざんあるいは廃棄を行ったのかそれを浮き彫りにしました」や「総理発言あるいは政権トップが語るとそれにみんなが発言を合わせていくと。そして最終的には文書改ざんあるいは廃棄にまで至る。その構造上の問題は全く変わってないんです」といった主張は事実と異なる発言があります。
このような放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。
——————————————————————————————————–
放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
——————————————————————————————————–
視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります