2019年5月13日 報道ステーション

2019年5月13日 報道ステーション

5月13日の報道ステーションのレポートです。

今回検証するのは、以下の点です。

・衆院解散による選挙に関する解説

まずは放送内容から確認していきます。
——-
【スタジオ】
富川悠太アナ:安倍政権が戦後最長と謳ってきました日本の景気回復ですが、メッキが少し剥がれてきたということなのかもしれませんね。

徳永有美アナ:確かに街でお話を伺っても、景気が良くなったという声はなかなか聞こえてこないんです。内閣府は今日、景気動向指数の基調判断について、6年2ヶ月ぶりに悪化に引き下げました。

——-
【VTR】
金具メーカーの社長:中国がちょっとクシャミをすると、日本は風邪を引いてしまう。

ナレーション:景気の後退がより濃厚となったことで、気になるのは10月に迫る消費増税の行方です。今日、内閣府は3月の景気動向指数の基調判断について、これまでの「下方への局面変化」から「悪化」へと引き下げました。基調判断が「悪化」となるのは、2013年1月以来、6年2ヶ月ぶりとなります。アメリカと中国の貿易摩擦で、中国経済が減速して、日本からの輸出が減少し、その結果、自動車や半導体製造装置などの生産が減ったことが主な要員です。悪化の定義を見てみると「景気後退の可能性が高いことを示す」とあります。

記者:景気後退局面に入った可能性もありますが。

菅義偉官房長官:中国経済の減速などから一部の業種で輸出や生産が鈍化していますが、雇用や所得など内需を支えるファンダメンタルズはしっかりしており、というふうにしっかりしているとまず考えています。

ナレーション:今日示された景気動向指数の基調判断である「悪化」は、複数の経済指標をもとに機械的に算出されたものです。いっぽうで政府が公式見解としているのは月例経済報告です。これは総理や日銀総裁らが出席する会議で、内外の経済環境などを総合的に判断したものです。政府は直近の4月の月例経済報告で、「景気はこのところ輸出や生産の一部に弱さも見られるが、緩やかに回復している」という見方を維持しています。さらに、景気拡大については。

安倍晋三総理大臣:アベノミクスは本日でちょうど6年目を迎えます。今月で73ヶ月連続の景気回復となり、“戦後最長”に並んだかもしれない。こう言われています。

ナレーション:政府は、「第二次安倍政権が発足した2012年12月以来、戦後最長となる景気拡大が続いている」との認識です。悪化を受け、すでに景気が後退局面にあると認定されると、景気拡大のピークは去年の10月となる見込みで、“戦後最長”記録は幻だったことになります。年初に、先行きの不透明感を天気になぞらえ、“曇り”と表現したこの人は。

日本自動車工業会豊田章男会長(トヨタ自動車社長):まだ“曇り”が。雲の厚さが厚いのではないかということですので、いまだに晴れ間は見えないなと言うのが現状です。

ナレーション:景気の実感はどうなっているのでしょうか。新潟県上越市にある金型メーカーです。

記者:こちらの金型工業では受注が減っているため、工場の稼働時間が1日1時間ほどずつ減っているそうなんです。

ナレーション:取引先の自動車メーカーや部品メーカーにブレーキがかかっていて、受注が落ち込んでいるそうです。今回、景気動向指数の基調判断が「悪化」に下方修正されたことについては。

南雲製作所 米桝弘社長:ようやく政府の数字と我々の現場感がマッチしたという感じで、驚くほどでもない。去年の秋から2割くらい仕事が落ちています。

ナレーション:追い打ちをかけるのは、加熱する米中の貿易摩擦です。

南雲製作所 米桝弘社長:中国がちょっとクシャミをすると、日本は風邪を引いてしまう。我々はどうしようもないところですね。こればかりはトランプさんと習さん、お2人の考え次第だと思います。

ナレーション:日本経済に悪影響を与えている米中の貿易摩擦ですが、早くても来月末までは両者が歩み寄る可能性はほぼゼロです。

国家経済会議 クドロー委員長:様子を見るつもりだ、交渉は続く。日本で6月下旬にG20が開かれるが、トランプ大統領と習主席はそこで落ち合うだろう。

ナレーション:アメリカは間もなく、中国に対する追加関税の第4弾の中身を発表します。今度はスマートフォンやおもちゃ、衣類なども対象に含まれる見通しで、発動されれば中国からの輸入品すべてに制裁関税が課せられることになります。

トランプ大統領(Twitter):私の2期目で再交渉するとなれば、中国にとってさらに厳しい状況になる。今決めた方が賢いはずだが、大きな関税を徴収するのは嫌いじゃない。

ナレーション:経済の先行きが不透明ななか、今年10月の消費税引き上げに影響はないのでしょうか。野党側からは。

立憲民主党 逢坂誠二政調会長:景気の様々な指標が良いものではなくて悪いものが次々に出てくるわけですから、秋の消費増税は、私は凍結すべきだと。

共産党 小池晃書記局長:こういう中で消費税増税を10月に強行するなどということは、愚の骨頂。

ナレーション:こうしたなか、今日、大阪市では。

財政制度等審議会 榊原定征会長:受益と負担のバランスを回復しないといけない。

ナレーション:財務省が13年ぶりに開いた地方公聴会です。消費増税を含めた財政再建への理解を、深めたい考えです。

会社員(24):今の消費税の増税というのはおかしいと思うからです。財務省の言い分についてお伺いしたいと思い、来ました。

公務員(50代):私も子供がおりますので、子供の時代にちゃんとした財政が保てるようにしていただきたいなと思います。

ナレーション:予定通り10月に消費増税するのでしょうか。

菅義偉官房長官:リーマンショック級の出来事が起こらない限り、本年10月に引き上げる予定。消費税が引き上げられることのできるような経済環境をしっかり作っていくっていうことです。

記者:追加の経済政策を検討する可能性は?

菅義偉官房長官:状況を見て様々な判断をしていくことは当然のことだと思います。

——-
【スタジオ】
富川悠太アナ:6年2ヶ月ぶりに景気動向指数が悪化となりまして、消費税が予定通り引き上げられるかどうかということに、より関心が集まっているような感じがしますよね。そもそも景気動向素数とはどんなものなのかと言いますと、生産、投資、雇用、消費、物価、こうしたものの経済指標がありまして、それを統合して“機械的”に算出するというものなんですね。5つの言葉で表現されます。①改善;良くなっているんですね。②足踏み;だいたい横ばいのとき。③局面変化;これは上方への局面変化、下方への局面変化、2パターンあります。④悪化;原則3ヶ月以上連続で平均が下がった場合。⑤下げ止まり;これは一番下げてはいますけども、改善に向かうという下げ“止まり”ですから、この“悪化”という言葉が一番悪い表現ということになりますよね。じゃあ過去に“悪化”と使われたのはどういった場面だったのか。まず2009年の4月、リーマンショックの影響が日本でもずっと続いたときに、“悪化”という表現になりました。もう一回ありました、2013年1月、欧州債務危機。ギリシャに始まりましてイタリアやスペインにも飛び火しましたよね。その影響が日本でも続いたときに、“悪化”という表現になりました。で、6年2ヶ月ぶりに今回“悪化”ということになったわけです。この“悪化”、改めて定義を見てみますと、「原則3ヶ月以上連続で平均が下がった場合」ということですから、2019年の1月~3月の平均が悪化したということになりますよね。ここで政府の報告を思い出してみましょうか。1月2月、「景気は緩やかに回復している」と言っていましたよね。3月4月は「景気はこのところ輸出や生産の一部に弱さも見られるが緩やかに回復している」と言っていました。あれ、ちょっと“悪化”と表現が違うよねと思いますが、これはまた別の経済報告なんですね。これは「月例経済報告」でのコメントだったんですね。じゃあ月例経済報告というのはどういったものなのかというと、景気の状況を政府が総合的に判断する公式な見解と言うことになります。つまりこの景気動向指数もこの判断に含まれるということになりますよね。じゃあ5月の月例経済報告で政府はどう判断するのか。専門家、小林(真一郎;三菱UFJリサーチ&コンサルティング首席研究員)さんに話を伺ったところ、このような表現になるんじゃないかと。「景気は弱まっている」という言葉が入るんじゃないか、もしくはそこまでいかないにしても「一部に弱い動きが見られる」という表現になるんじゃないかということなんですね。じゃあ今後の景気、どうなっていくのか。小林さんはこう見ています。「今後3ヶ月は横ばいで推移するのではないか」ということなんです。「米中の貿易摩擦がありますから、海外に目を転じると景気は悪くなっていくんじゃないか。ただ、国内を見てみますと令和改元の経済効果が出ていましてプラスですから、プラスマイナスゼロで、国内と国外でだいたい横ばいになるんじゃないか」ということなんですね。

徳永有美アナ:景気が良くなっているという実感がそんなにないなかで、消費税10%に上げるっていう話はどうなりそうなんですかね。

富川悠太アナ:一応今後の日程見ておきましょうかね。5月20日に1-3月期のGDPが発表されまして、だいたい同じ時期に月例経済報告もあります。ここでどういう判断が出るのか。そして6月の28,29日には日本でG20があります。そのときに米中の首脳会談が行われるのではないかという可能性も指摘されています。トップ同士じゃないとという話も出てきていますからね、どうなるんでしょうか。7月1日には日銀短観も入っておりまして、そしてそのあとに参院選が控えています。じゃあ消費税はどうなるのか。政府はリーマンショック級の出来事がない限り予定通り消費税は引き上げるということなんですが、改めてリーマンショックの時見てみますと、同じ“悪化”という表現でもリーマンショックの時と今回では、景気が良いというなかでの“悪化”とも言えます。これを受けて消費税増税は、後藤さん、どうなるのかということですね。

後藤謙次氏:私の見方は、今回は予定通り10月1日から消費税は上げるという大きな流れができてるんだと思いますね。それの決定的な違いというのは、過去二度消費増税を先送りしていますが、これは予算編成前なんです。次の時の予算を決める前にそれを決めて、今回は予算編成をしたうえで、そのなかに消費税対策、これ2兆円も織り込んでるわけですね。そして今は予算案が成立もして、その施行が始まっているという状況ですから、今度は上げないリスクというのも当然出てくるわけですね。上げるリスクと上げないリスク。むしろ上げないリスクのほうが、安倍総理というのは結局決断をしない総理じゃないかというリーダーシップが問われかねない。その意味では私は予定通り今回は上げていくという方向になってるんだと。

富川悠太アナ:じゃあ消費税は予定通り引き上げるということは、一部で取りざたされていた衆参ダブル選挙というのはなくなったとみていいんですか。

後藤謙次氏:それがですね、今回は消費税論議と、衆議院解散総選挙が別問題だという見方が浮上しているんですね。といいますのは、いつやったら安倍総理にとって残り任期を計算したときに勝てる選挙になるのかということになると、消去法で言えば消費増税前。そして安倍さんの任期が短くならないこの時期、しかも野党側が足並みがなかなか揃わずに選挙対策が進んでない。この状況を逃すとなかなか次に、与党側に勝機が生まれてこないという意味では、理屈はあとから貨車で来るとよく言われるんですが、理由がなく解散総選挙に打って出るという可能性も否定できないなと思います。

徳永有美アナ:理由がなく、っていうこともできるんですか。何かを問うっていう。

後藤謙次氏:たとえば野党側が内閣不信任案を提出したとする。それに呼応するように解散総選挙に打って出るということも充分考えられる。ですからこの6月26日が会期末ですけども、その前に野党側がどう出てくるか、それに対して安倍総理の決断がどうやって固まってくるのか、それを見ていく必要があると思いますね。

富川悠太アナ:なるほど。この参院選、そして消費税増税、このあいだの時期は注視が必要ですね。

後藤謙次氏:その通りだと思いますね。

——-

今回検証する解説は以下の部分です。

——————————————————————————————————-
富川悠太アナ:消費税は予定通り引き上げるということは、一部で取りざたされていた衆参ダブル選挙というのはなくなったとみていいんですか。

後藤謙次氏:それがですね、今回は消費税論議と、衆議院解散総選挙が別問題だという見方が浮上しているんですね。といいますのは、いつやったら安倍総理にとって残り任期を計算したときに勝てる選挙になるのかということになると、消去法で言えば消費増税前。そして安倍さんの任期が短くならないこの時期、しかも野党側が足並みがなかなか揃わずに選挙対策が進んでない。この状況を逃すとなかなか次に、与党側に勝機が生まれてこないという意味では、理屈はあとから貨車で来るとよく言われるんですが、理由がなく解散総選挙に打って出るという可能性も否定できないなと思います。

徳永有美アナ:理由がなく、っていうこともできるんですか。何かを問うっていう。

後藤謙次氏:たとえば野党側が内閣不信任案を提出したとする。それに呼応するように解散総選挙に打って出るということも充分考えられる。ですからこの6月26日が会期末ですけども、その前に野党側がどう出てくるか、それに対して安倍総理の決断がどうやって固まってくるのか、それを見ていく必要があると思いますね。
——————————————————————————————————-

この解説の問題点は2点あります。

1.解散総選挙を行うことについて否定的に報道しており、印象操作の疑いがある点
2.野党への言及がなされておらず、政治的に公平とは言えない点

1点目から見ていきます。
後藤氏は解説の中で、消費増税の信を問わずに衆院を解散して、選挙を行うことを「理屈はあとから貨車で来る」と述べています。
選挙の意味は後から言い訳できると述べているのです。
これは大儀なき解散はしない方がよいという、後藤氏の主観に基づく発言であります。

しかし、衆院解散による選挙は、民意の更新という民主主義において非常に重要な意味があります。民意が示されることで、安倍政権が支持されるのか、野党が支持されるのか、それによって政権が決まります。

こういった選挙の重要性があるにも関わらず、後藤氏の主観による解説は、解散権を行使することは良くないという印象を与えかねません。

次に2点目について見ていきます。
後藤氏は野党が弱い今、安倍政権が選挙で勝つことができるため、内閣不信任案によって衆院を解散し、選挙に打って出る可能性があると述べています。

ここで、安倍政権が選挙に打って出ることの要因として野党の弱さが挙げられているものの、解散のタイミングについての言及が述べられているのみで、野党が政権交代の選択肢と成りえていないことに対する言及がありません。

現在野党第一党の立憲民主党などは国民民主党などとの協力には必ずしも前向きとは言えず、55年体制下の社会党のような存在となってしまっています。
つまり、政権をとる意思がないのです。
現在の小選挙区制では政権交代ができる政党が2つ以上あってこそ、緊張感のある政治が生まれるものですが、現在の野党はその役割を果たしているとは言えません。
野党への言及をせずに、解散権の行使への問題提起をすることは以下の放送法に抵触する恐れがあります。
——————————————————————————————————-
放送法4条
第2項 政治的に公平であること
——————————————————————————————————-
視聴者の会では公正なテレビ放送を目指して、今後も監視を続けてまいります。

報道ステーションカテゴリの最新記事