2020年5月12日 報道ステーション

2020年5月12日 報道ステーション

5月12日の報道ステーションのレポートです。
今回取り上げるのは検察庁法案改正に関する報道です。
検証するのは下記の点です。

・様々な論点を取り上げた放送であったか
・事実を曲げた報道はなかったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
森葉子アナウンサー:ツイッターでの抗議が注目されました。検察幹部の定年を政府の判断で延長できるとした。検察庁法の改正案をめぐり与野党の対立が激しくなっています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):今日、そろってインターネット上での会見に臨んだ野党5党の党首たち。

共産党・志位和夫委員長『検察のキャリアの一番最後のところで“生殺与奪”の権を内閣に握られてしまう。そうすると検察全体が委縮してチェック機能を失ってしまう』

立憲民主党・枝野幸男代表『コロナを軽く見ている証しじゃないか。どさくさに紛れてやりたいことをやっておけば野党も反対しにくいし、国民の多くも気づかないうちに通せると。断固許すわけにはいかない』

ナレ:国会では安倍総理が改めて法案の内容に問題はないとの認識を示しました。

安倍晋三総理大臣『インターネット上の様々なご意見に対して政府としてコメントすることは差し控えますが、今般の検察庁法改正案には検察官の独立性を害するものではなく 国民のみなさんのご理解が深まるように引き続き丁寧な説明に努めてまいります』

ナレ:森法務大臣も…。

森雅子法務大臣『東京高検の黒川検事長の人事と今回の法案は関係のないものです。人事については決定したものであるという趣旨でございます。国民の皆様の誤解や疑念については真摯に説明をしてまいりたいと思います』

ナレ:野党は幹部の定年延長部分の削除を求める修正案を与党に提示しましたが与党側は法案の修正には応じず、あさってにも政府案の採決を目指す方針です。しかし、野党の抵抗に自民党内からは微妙な状況だという声も出ていて採決が週明けにずれ込む可能性もあります。

【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー:採決が週明けにずれ込む可能性があるということですがやはり太田さんなぜ、そんな中でも今なんだろうということは疑問がぬぐえないところがありますね。

太田昌克氏:おっしゃるとおりです。今回の政権・与党のアプローチですが私は民主主義にとって不可欠な2つの要素が欠如している。欠けていると思うんです。まず1つはデュープロセス。すなわち公正で適正で必要なプロセス。民主主義は手続きプロセスなんですね。今回は検察庁法改正案と国家公務員法改正法案をドッキングさせて内閣委員会に持っていた。本来はこれは検察庁改正法案は今回、検察人事に政治が手を突っ込むことになりかねない重要な法案だから法務委員会でしっかりといつも以上にデュープロセスを尽くして審議すべき案件なんです。しかしそうなっていない。それから、もう1つの重大な民主主義の要素。森雅子法務大臣は明日の内閣委員会での答弁には立たないというふうに私、国会関係者から聞きました。当事者の口からしっかり説明責任を果たしてほしい。それができていないできない可能性があるのに強行採決に突っ込んでしまえばこれは、民主主義が崩壊する。やっぱり、ツイートもそうですが為政者は民意に耳を澄ませるべきなんです。引くも進むも安倍総理の腹一つ。このまま突き進めば日本の民主主義は危機に瀕すると思います。

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【検証部分】
世論を2分していると言っても過言ではないこの検察庁法の改正に関する問題です。
様々な著名人がTwitterなどで意見を表明しています。

意見も様々です。
反対、賛成も当然あれば部分的な反対・賛成もあります。

その上でこの日の放送では全否定的な論調で放送がなされていました。
どのような論点が挙げられていたかは後述しますが、反対意見のみを放送することは下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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様々な意見がある問題ですから、当然様々な意見を紹介するべきです。

次にスタジオ解説で太田氏が挙げていた問題点を見ていきます。

① 検察人事に政治が介入してしまう恐れがある問題にも関わらず、公正で適正で必要なプロセスを経ていない
② 法案の当事者たる森雅子法務大臣が説明責任を果たさずに強行採決となれば民主主義が崩壊してしまう恐れがある

今回の改正案では検事総長や検事長などの検察庁幹部を内閣の判断で3年延長できるようにする特別規定が盛り込まれており、この部分について検察人事に政治が介入してしまう恐れがあるという主張がなされています。

この点についてですが、まず検察は司法機関ではなく行政機関です。
ですから、人事の任命権はそもそも内閣にあります。
その意味では選挙で選ばれた政治家が人事権を握ることは民主的であると言うこともいえます。
ただし、検察は司法の性質もあります。時には政治家という権力者に立ち向かうことも必要になりますから、恣意的な人事のために政治介入してはならないという原則があります。
検察の性格を考えると政治が人事に介入していいのかは議論が必要なのです。

このような前提があるため、検察庁法改正案は議論を巻き起こしているのです。

しかし、この日の放送では安倍内閣が民主主義を崩壊させてしまう恐れがある、といったかなり誇張した発言がありました。
このような一面的な発言は事実が正しく伝わっていない可能性があり、下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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