2019年3月7日 報道ステーション

2019年3月7日 報道ステーション

3月7日の報道ステーションのレポートです。
この日は景気の動向について政権の主張と、データが異なっているという論調で放送がなされていました。

アベノミクスが始まって以降約300万人の雇用を生み出し、失業率を下げ、日本経済を復活させてきましたが、実感がない景気回復であるとの解説が加えられていました。

今回検証するのは2点。
1点目に景気回復について様々な論点が取り上げられていたか、
2点目に賃金上昇について正しい報道がなされていたか、です。

まずは放送内容を見ていきましょう。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:さて、続きましては日本の景気に関しまして気になるデータが入ってきたんですね。政府はですね、今年の1月に景気の拡大は戦後最長になった可能性があるといった認識を示していましたけれども、今日ですね、内閣府から出されたデータを見てみますと、景気が後退局面に入ったかもしれないと言うんです。

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【VTR】
茂木敏充 経済再生担当大臣:景気動向指数、これは清算や雇用など、景気に関する経済指標を統合して指数化したものでありまして、本来であれば景気の基調と分けて考えた方が良い。

ナレーション:景気に関する政府の見解と、真っ向から異なるデータが出てきました。今日、内閣府は、1月の景気動向指数を発表し、景気が既に後退局面に入った可能性を示しました。景気動向指数とは、景気全体の動きを捉えるため、毎月公表されているものです。1月の速報値が、前の月より2.7ポイント低い97.9になりました。というのも、景気動向指数の元になる九つの指標のうち、すでに公表されている七つ全てが悪化したからです。景気動向指数の悪化は3ヶ月連続となり、その背景には中国の景気減速があります。

記者:消費増税の影響はどうお考えでしょうか。

菅義偉官房長官:リーマンショック級の出来事が起こらない限り、10月に10%に引き上げる予定であります。

ナレ:戦後最長の景気拡大は、これまで2008年のリーマンショックまで6年1ヶ月続いたいざなみ景気でした。そして、第二次安倍政権が発足した2012年12月から現在まで、景気拡大が続いているとされています。

安倍晋三総理大臣:戦後最長に並んだかもしれない。この景気回復は戦後最長なのに、かつての「神武景気」「岩戸景気」といったネーミングがない。

ナレ:政府は今年1月、景気の拡大は戦後最長になった可能性があるとの認識を示しました。この政府見解と、今回の景気動向指数の基調判断は異なるものです。

記者:これまで政府は、景気は回復基調にあるというふうにしてきたと思いますが、その点の認識は変わりないのでしょうか

菅義偉官房長官:そこは変わりません。月例の経済報告では景気は緩やかに回復しているということになっております。

ナレ:専門家は景気後退に入ったかどうかは2月の状況を見極めるべきとした上で、こう分析します。

第一生命経済研究所 熊野英生主席エコノミスト:賃金の上がり方、消費の勢い、非常に弱いですね。戦後最長の景気拡大と言うよりは、“実感がない景気拡大”だから、中国からの悪影響がすぐ響いてきて、微妙な判断になってしまうと。3月末に米中の首脳会談が行われて、そこで貿易戦争のゆくえが大きく変わってくると。ここが焦点だと思いますね。

【スタジオ】

徳永有美アナ:景気は後退局面にあるのか、ということなんですけれども、こうなってくると気になるのは10月からの消費増税の、あるかどうかということですよね。

後藤謙次氏:そうなんですね。安倍総理はこれまで二回延期をしてますから、現に安倍総理に近いエコノミストの中には、もうやるべきではないと公言する人もいるんですね。ただ安倍総理、条件をずっと出してるんですね。それは2008年のリーマンショック級の景気後退があった場合には消費税上げませんよと。じゃあリーマンショック級って今考えられるのはどういうことか。一つは今VTRにもありました、中国の景気後退がさらに続くということと、米中貿易戦争がですね、さらに激化をして、世界貿易全体が縮小してしまう。これは二つの要素があるんですが、中国については今開かれている全人代で、訳70兆円の景気対策をしましたから、そこまでいかないだろうと。ただ安倍総理自身は今度の、来年の予算編成の中でですね、巨額の消費税対策をもう決めてますから。もう後戻りできない状況に入ってきてると。そういう見方が大勢なんですが、ただまだまだ時間がありますから、4月、5月が限界とも言われてますから、その辺注目していきたいと思いますね。

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まず放送をまとめると、
政府見解では景気拡大は戦後最長である
しかしそれは景気動向指数と異なる
景気が後退している要因について「実感のない」景気拡大だからと解説

今回の放送ではそもそも景気回復とはどういったことを指すのかが示されていません。
景気回復には具体的な定義がありませんが、いくつかのポイントがあります。

1つあげられるのが失業率の推移です。
民主党政権時は失業率は4.3%でしたが、アベノミクスが始まって以降は下がり続け最大2.2%まで下がりました。
他に雇用関係では有効求人倍率は民主党政権時0.83倍だったのが安倍政権下では1.59倍に。
正社員の有効求人倍率は民主党政権時0.50倍でしたが、安倍政権では1.08倍と大きく改善しました。

その他にも民主党政権時8000円台だった株価はアベノミクスによって2万円台にまで伸び、新たに約300万人の雇用を創出してきました。

このような様々な論点を提示せずに景気動向指数に関してのみの放送を行うことは
以下の放送法に抵触するおそれがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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次に2点目の賃金についての解説ですが、まずは解説部分を振り返ります。

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第一生命経済研究所 熊野英生主席エコノミスト:賃金の上がり方、消費の勢い、非常に弱いですね。戦後最長の景気拡大と言うよりは、“実感がない景気拡大”だから、中国からの悪影響がすぐ響いてきて、微妙な判断になってしまうと。3月末に米中の首脳会談が行われて、そこで貿易戦争のゆくえが大きく変わってくると。ここが焦点だと思いますね。
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まず「実感」ベースで景気を語ることは難しいです。
バブル期であっても景気実感を感じていたのは国民の半分程度で、さらに実感がある景気拡大は経済的にはバブル崩壊後であったとも言われています。

さて、本題の賃金の上がり方についてですが、これは統計不正の問題に関する野党の主張でも実質賃金が伸びていないというものがありました。
しかし実質賃金が大きく伸びないのはある程度当然のことと言えます。
これについて解説します。

そもそも実質賃金とは物価の変動による影響を排除し、実際にどれだけのものが買えるかという数字です。
例えば10%賃金が上がっても、物価が10%上がれば実質賃金は上がりません。

この賃金とは平均賃金のことを言いますが、アベノミクスにより、新たに約300万人の方が労働市場に入ることになりました。
新たに働き始める方は賃金が0円からのスタートですので賃金は当然上がっています。
しかし平均で賃金を算出するとき、労働者数という母数が増えることになるので平均賃金はなかなか上がりません。
したがって、賃金は実際に上がっているが実質賃金が上がらないことがあるのです。
こういった解説がなければ賃金が上がっていないという解説は事実と異なる恐れがあります。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後とも監視を続けて参ります。

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