2020年4月27日 報道ステーション

2020年4月27日 報道ステーション

4月27日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・様々な論点を報じていたか
・政治的に公平な放送であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):世界で感染者が最も多いアメリカ。一部の州では、24日から美容院やネイルサロンなど限られた業種で営業が再開されました。

理髪店店主『手袋をつけて髪を切ったりマスクを着けるのは面倒だけど政府指針に従って必要なことをしますよ。家でじっとして身をつぶすよりずっとマシ』

ナレ:一方、こんなものも再開されました。タトゥーショップやスポーツジムなど必ずしも生活に必要ではないと思われるものも含まれています。これには経済活動再開を強く望むトランプ大統領でさえ…。

トランプ大統領『スパや美容室タトゥーショップはやりすぎだ』

ナレ:ただ、経済活動を再開しようとする動きはほかの州でも広がっています。そこで起きているのが…。

(CM)

ナレ:経済活動がストップしているアメリカ。各地で起きているのが…。

(抗議活動をする市民の映像)

ナレ:経済活動の再開を求める抗議活動です。

ニューヨーク市民『俺たちの敵はウイルスだけじゃない。“経済の崩壊”も俺たちの敵だ』

再開“反対”派市民『俺は男だ。好きに叫ぶさ』
再開“賛成”派市民『ここは俺たちの縄張りだ』

ナレ:ロイター通信によると一部の州で行われたデモにトランプ陣営の関係者が関わっていたそうです。しかも、その場所というのがペンシルベニアやノースカロライナなどアメリカ大統領選の激戦州。トランプ陣営が世論誘導に力を入れている可能性があるのです。5月1日までに再開を目指す州の数は16に上っています。多くが共和党の知事による判断です。時期尚早ではないかという慎重論も出る中トランプ大統領はこう力説しています。

トランプ大統領『再流行しない可能性も予測されている。再流行したとしても現状より悪くなることはない』

ナレ:しかし、この場に同席していた専門家の意見は真逆でした。

国立アレルギー感染症研究所・ファウチ所長『秋に新型コロナウイルスは流行すると確信している』

ナレ:第2波は間違いなくくる。それに備えるべきだと危機感をあらわにしたのです。世界経済の中心であるとともに感染者数が突出しているニューヨーク。クオモ知事は建設業と製造業で段階を踏んで再開していくことを表明しました。ほかの州に比べ慎重な姿勢です。

クオモ知事『経済再開の第1段階は建設業と製造業から着手する。第2段階に突入する際、各業界に分析してもらいたい。“新しい日常”に向けどう再開するか考えてほしい』

【記者レポート】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):ここでワシントンの布施支局長に話を聞いていきます。布施さん、トランプ大統領は感染がまだ拡大する中早いうちに経済を再開すると言っていたんですが非常に急いでいるようにも見えるんですがこの狙いというのはどこにあるんでしょうか。

ワシントン支局・布施哲支局長(以下布施支局長):トランプ大統領の狙いは一刻も早く経済を再開をして一気に経済のV字回復これを演出したいというものになります。その背景にあるのは11月の大統領選挙への焦りです。世論調査では民主党のバイデン候補にリードされているところにこの新型コロナの問題で経済が大幅に悪化して再選が危なくなっているんです。そこで経済を再開させればたまりにたまった消費者の消費意欲これが爆発をして経済がV字回復。自分の選挙に関わる悪材料も全部吹き飛ばしてくれるこういう戦略です。

徳永アナ:そんなにうまくいくのかなとも思うんですけれども感染が収まらないのに経済を再開すると感染が広がるリスクは更に高まると思うんですね。いってみれば、経済か命かというところだと思うんですがトランプ大統領はその辺りは、どのように考えているんでしょうか?

布施支局長:経済の再開はいつか、どこかで決断しなければいけません。ただ、そこでポイントになるのはまさに経済と感染予防のバランスをどうとっていくのか。とりわけ政治的な思惑や計算ではなく科学的根拠に基づいて決断することが重要になるわけです。ただ、トランプ大統領を見ていくと政治的な計算を優先させるというそういう傾向があります。そんなトランプ大統領にとって今、一番目障りなのが専門家の間で言われている秋に大規模感染の第2波がくるのではないかという説です。その説が報じられると記者会見でわざわざ専門家を連れてきてそれを否定させるとそういうことまでやっています。まさに、そうした第2波を懸念する専門家の間には慎重論が根強くあるんですけどトランプ大統領のほうはどこ吹く風。専門家の話は聞くが最後決めるのは俺なんだと非常に前のめりです。専門家のアドバイスを無視して決めることになればそれは世界を巻き込んだ選挙対策優先の危険な賭けになります。こうした危険な賭けに踏み切るタイミングをトランプ大統領、今、虎視眈々とうかがっています。

徳永アナ:布施支局長でした。ありがとうございます。

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【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:太田さん究極の自己都合ということで大統領選が優先ということに万が一なってくるとアメリカのような大国がトランプ大統領の手に委ねられる。ちょっと心配なところでもありますよね。

共同通信社編集委員・太田昌克氏:私も大いに心配なんですね。アメリカの政策決定コミュニティーの中にはこういう言葉があるんです。サイエンティフィックインテグリティー。すなわち、科学的公正さ。政策を決めるときは科学的な客観的証拠に基づいてしっかり決めていくという文化があるんですね。例えば、政府内の専門家が外部の専門家と意見交換を行ってしっかり説明責任を果たしながら真実を追求していくというよき文化があるんですが私、オバマ政権前の政権ですがその高官から聞いたんですがトランプ大統領が入ってきてそれを弱めてしまったという話をかつて聞いたことがあるんです。すなわちサイエンスよりも政治都合、自分中心なんです。科学者の良心すら踏みにじることすらある。心配なのがいずれポストコロナの世界がきますがアメリカの世界的な影響力これはますます凋落していく。それも懸念しております。

【検証部分】
今回の報道ぶりはご覧の通りトランプ大統領に対してかなり批判的な報道であったと言えます。
確かに、新型コロナウイルスが収束しないうちに経済活動を再開しては感染が拡大してしまう恐れがあり、命に関わることです。

しかし、経済も同様に命に関わる問題です。
経済が停滞し続ければ、失業者が続出し、経済的に追い詰められる人が出てきてしまうからです。

トランプ大統領はじめ政治家が新型コロナウイルスをなんとかすることはできません。
政治家ができることは国民が生活を守れるような政策を打ち出すことです。

この日の放送ではこのような経済対策の重要性とトランプ大統領の政策を論点として提示し、トランプ大統領を正しく評価できているとは言えません。

トランプ大統領はコロナへの経済対策をかなり積極的かつ迅速に打ち出しています。

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新型コロナウイルスに関連した経済対策として、ドナルド・トランプ米大統領と米連邦議会による「第4弾」の財政支出の調整がつき、米国政府は巨額の経済対策を矢継ぎ早に打ち出してきた。米国政府は3月6日の第1弾、3月18日の第2弾、3月末に成立した第3弾・約220兆円の追加予算に加えて、第4弾の主な内容は中小企業の給与肩代わりをメインとした予算を組み上げた。これらの追加予算には企業存続・雇用維持に全力を注ぎ、米国の産業競争力を保ってV字回復を狙う、というトランプ政権の強い意志が色濃く反映されている。第1弾から第4弾の合計予算額は約300兆円に迫る超大型の補正予算群となっており、金額面からもその本気度を推し量ることが可能だ。
《PRESIDENT Online 渡瀬裕哉 絶望…安倍晋三のコロナ経済対策は「大大失敗」に終わる
https://president.jp/articles/-/34848
より抜粋》
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このようにトランプ大統領は矢継ぎ早に経済対策を打ち出しています。
日本が国民一人当たり10万円の給付の方針をやっと決めた時に、アメリカでは4月の時点で国民への現金給付が決定しており、すでに給付が始まってました。

こういう緊急時の経済対策はとにかく早さが重要と言えます。
突然解雇された人々が命をつなげるようにするためです。

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本政府は16日、国民1人当たり一律10万円の現金給付の方針を決めた。

アメリカではすでに緊急経済対策の一環として現金の給付が始まっている。その額は大人1人につき最大1200ドル(約13万円)、子供にも500ドル(約5万5000円)が支給される。トランプ大統領が新型コロナウイルスに対処する2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策法案に署名したのは3月27日だ。4月中旬には給付が始まっていることを考えると、対応は日本と比べるとスピーディだ。また、予算額も各国と比較してケタ違いに大きい。
《FNN PRIMEアメリカではすでに給付スタート 大人13万円 子供5万5000円“コロナ対策”巨額の救済予算の中身
https://www.fnn.jp/articles/-/33355
より抜粋》
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このような経済対策の重要性、トランプ大統領の動きの早さをしっかりと紹介していた放送とは言えません。

マスコミの多くはリベラルですから、ナショナリスト的な発言で注目を集めたトランプ大統領を肯定的に取り上げたくないということもあるのでしょう。
しかし、この日のような放送を繰り返していたためトランプ大統領の誕生をマスコミは予測できなかったのではないでしょうか。

このような放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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