2019年4月19日 報道ステーション

2019年4月19日 報道ステーション

4月19日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送ではアメリカ大統領選挙におけるトランプ陣営とロシア政府との関わりをめぐる、いわゆるロシア疑惑に関する報道が取り上げられていました。

ロシア疑惑の捜査報告書がアメリカ司法省から公表され、調査結果から述べれば、トランプ陣営とロシアの共謀は立証されませんでした。

トランプ大統領当選後、アメリカの大手メディアやそれに追随した日本の大手メディアはフェイクニュースとも言えるこの問題を追い続けてきた、といった結果です。

しかしメディアはトランプ大統領による、司法妨害があったと、論点を変え追及を弱めないようです。
これはおかしな話に思えます。
なぜならロシアとの関わりはないと調査報告が出たにも関わらず、司法妨害を追求するのは、いったい何に対する司法妨害だったのか不明瞭だからです。
トランプ大統領の攻撃材料を絶やしたくないだけであると思われます。

今回の報道ステーションも、トランプ大統領には何らかの不正があるという前提の元、放送がなされていました。

そこで今回検証するのは、2点です。
1. ロシア疑惑をめぐる放送は政治的に中立であったか
2. さまざまな論点を提示して放送がなされていたか
この2点について検証していきます。

まずは放送内容から確認していきます。

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【スタジオ】
竹内由恵アナ:アメリカの司法省が400ページ以上にわたるロシア疑惑の捜査報告書を公表しました。これでトランプ大統領による司法妨害の疑いが晴れたとはいえないようなんですが、トランプ大統領、Twitterにこのような画像を投稿したんです。”GAME OVER”と、勝利宣言しました。

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【VTR】
ナレーション:アメリカはイースター休暇に入りました。トランプ大統領が向かうはマー・ア・ラゴです。

記者:疑いは晴れたか。

記者:「大統領生命は終わりだ」と思った理由は。

ナレ:意気揚々、気分も上々、といった感じでしょうか。それもそのはずです。

バー司法長官:特別検察官が示した証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したと立証するには不十分との結論に至った。

ナレ:ロシアゲートをめぐる一連の捜査中、トランプ大統領が司法妨害をしたという疑惑に対して、司法省は「証拠不十分」との結論を出しました。

トランプ大統領:私にとって素晴らしい日だ。共謀も妨害もない良い一日になった。

ナレ:ただ、すべてにおいて真っ白かというと、そうではないようです。

特別検察官の報告書:「大統領は司法妨害を行わなかった」と自信を持って言えるならばそう書いている。

ナレ:報告書には、司法妨害が疑われる10の事例について書かれています。たとえば、ロシアゲートの捜査にミュラー特別検察官が任命されたときは、こう嘆いていたそうです。

トランプ大統領(特別検察官の報告書から):俺は終わりだ。特別検察官の捜査対象になったら大統領生命も潰える。

ナレ:特別検察官とは、強い独立性が担保されていて、大統領や政府高官の捜査を担当する人たちです。

トランプ大統領(特別検察官の報告書から):ミュラー特別検察官はクビにしないと駄目だ。

ナレ:このときのトランプ大統領。あの手この手で捜査を止めさせようとしていました。

—-【CM】—-

ナレ:特別検察官の捜査対象になったとき、トランプ大統領は明らかにいらついていました。

トランプ大統領:検察官任命は尊重するが、捜査はすべて”魔女狩り”だ。私自身にも選挙陣営にもロシアとの共謀などない。”ゼロ”だ。

ナレ:報告書によると、トランプ大統領は特別検察官の解任を模索していました。ホワイトハウスの法律顧問の自宅に電話して、このような指示を出しています。

トランプ大統領(特別検察官の報告書から):ミュラー特別検察官はクビにしないと駄目だ。言われたとおりやったら報告するように。

ナレ:ただ周辺の人たちは、司法妨害になるのを直前で食い止めていました。

特別検察官の報告書:大統領の意思は通らなかった。側近たちは命令を聞かず、実行しなかったからだ。

ナレ:ちなみに、ロシアゲートそのものについての報告書は「ロシアは組織的に大統領選に介入し、トランプ陣営とも繋がりがあった」としています。

記者:ロシアとの”共謀はない”そうですが?

ニューヨーク市民:完全にでたらめでしょう。”大統領が罪を犯した”と言える証拠がなかっただけです。

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【スタジオ】
小木逸平アナ:さあ、これでどうなっていくんでしょうか。ワシントン支局の布施哲局長に聞きます。布施さん、トランプ大統領は勝利宣言をしていますけれども、これで本当に逃げ切れたんでしょうか。

ワシントン支局長 布施哲氏:そうですね。政権の根本を揺るがすような深刻な事態はとりあえず乗り越えられたと言っていいと思います。野党の民主党からも、大統領の段階に打って出るには今回の証拠では弱すぎるという声が出ています。1年半後に迫った大統領選挙で、有権者の判断に委ねようという声が強まっています。

小木アナ:その有権者は当然その支持層によっていろいろ反応は違うと思うんですけども、大統領選への影響という面ではどうでしょうか。

ワシントン支局長 布施哲氏:全体では4割、共和党内では実に8割といわれるトランプ支持者なんですけども、それは今回で揺らぐということはなさそうです。というのもこの2年間ずっとロシア疑惑というのは言われ続けてきたんですね。それにも関わらずトランプ支持率というのは落ちることはありませんでした。ですのでトランプ支持者にとってはロシア疑惑は影響しないというのがワシントンでの定説です。とはいえ大統領選挙を考えると、影響というのはないわけではありません。特にまだ態度を決めかねている有権者、この浮動票の取り込みにはトランプ大統領そうとう苦労することになると思います。犯罪までは立証できないものの、裏ではいろんな画策をしていたんではないか。こういう批判が続くことになるからです。特に司法妨害が成立しなかった背景は先ほどVTRにもありましたように、トランプ大統領の命令をまわりの側近たちが無視をしていたと。拒否していたと。それによって助けられた側面があるわけです。そしてさらに最も深刻なのは、アメリカを代表する法律家が特別検察官として2年間におよぶ捜査をしたにも関わらず、現職の大統領に関して完全にシロだとお墨付きを与えなかったことなんですね。これはある意味驚くべきことで、深刻な事態だと言っていいと思います。ですのでこのロシア疑惑の余波、これは大統領選挙に向けて今後もジワジワとトランプ大統領を苦しめ続けることになると思います。

小木アナ:ワシントンからでした。ごめんなさい、今もあったとおり、報告書を見る限りでは真っ白というよりはグレーっていう印象が残り続けてしまうと思うんですけどね。

中央大学法学科大学院教授・弁護士 野村修也:そうですね。まあ法律家の立場からいけば、犯罪の構成要件は満たしてなかったと。まさに犯罪かどうかという判定だけで言えば犯罪は立証できない。ただその結論が出ただけで、たとえば今も話がありましたように、具体的にその司法妨害を命じてはいたわけですよね。このことに対する政治的な責任っていうのは、やはりこれからいろんなところで問われてくることになるだろうというのは気になるんですよね。さらに実はこのミュラー特別検察官というのが、捜査していたのはロシア疑惑と司法妨害、この二つだけなんですけども、実はトランプ大統領の周りでは、他にも脱税などを中心とする、経済犯罪に関する問題とか、あるいは自分の選挙を有利にするために口止め料を払ったのではないかといった疑惑など、他の疑惑もいくつかあるんですね。これについては実はニューヨークの地方検察官がまだ捜査を続けている段階なんですよ。

小木アナ:それはいつ結論を出していく?

中央大学法学科大学院教授・弁護士 野村修也:それはまだ分かりませんが、捜査が続いてますので、普通に立件することになれば、そのこと自体を問題視してくると。そういうことは出てくるんですね。確かにアメリカの司法省は現職の大統領を訴追することはないという立場を取ってますけども、しかし捜査が終われば何らかの形で明らかになってきますので、それ自身がかなり大きなダメージを与える可能性もあるということは見ていかなきゃいけないんじゃないかと思いますけどね。

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検証を始める前に放送内容をまとめます。
1. 調査の結果ロシアによる大統領選挙干渉はトランプ陣営と関係なかった
2. しかし司法妨害をした疑いがある
3. スタジオ解説にて、司法妨害がなかったとは言えないと解説

2016年アメリカ大統領選挙に対するロシア当局についての448ページに渡る報告書、ムラーレポートが公表されました。
結果としては、トランプ陣営とロシア政府の共謀は立証されませんでした。

しかし放送でもあったように、この報告書には司法妨害をした疑いがあるという記載があります。

司法妨害の可能性がある行為について起訴は行われませんでした。
その理由は司法省が起訴するのは不適切であり、起訴するかどうかの判断は連邦議会に委ねられるべきことだからとされています。

そもそも共謀がなかったことは分かったにも関わらず、司法妨害をしたことを追求するというのは少し不思議な話であります。
共謀はなかったのですから、なぜ司法妨害を行う必要がであったのかが不明です。
司法妨害をする理由が失われてしまいます。

また以下のような解説は大きな問題をはらんでいます。
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ワシントン支局長 布施哲氏:全体では4割、共和党内では実に8割といわれるトランプ支持者なんですけども、それは今回で揺らぐということはなさそうです。というのもこの2年間ずっとロシア疑惑というのは言われ続けてきたんですね。それにも関わらずトランプ支持率というのは落ちることはありませんでした。ですのでトランプ支持者にとってはロシア疑惑は影響しないというのがワシントンでの定説です。とはいえ大統領選挙を考えると、影響というのはないわけではありません。特にまだ態度を決めかねている有権者、この浮動票の取り込みにはトランプ大統領そうとう苦労することになると思います。犯罪までは立証できないものの、裏ではいろんな画策をしていたんではないか。
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「裏ではいろんな画策をしていたのではないか」、無罪であることを証明せよ、とも言っているようですが、こちらの論は非常に危険です。
通常は有罪であることを否定すれば、無罪です。しかし無罪であるという証明は難しいです。
言ってみれば悪魔の証明です。

このようにトランプ政権ばかりを攻撃しているように思われます。
これはこの日の放送でもわかります。

トランプ大統領当選以後、この2年間大手メディアはトランプ政権への追求を強めてきた一方民主党にもロシアと関係があったのではないかという疑いがあります。
ヒラリー・クリントン陣営の選対本部長を務めていたジョン・ボデスタという有名なロビイストは外国から支援を得て活動をしていた疑いがあり、オバマ大統領の法律顧問もウクライナから献金を得ていたという調査もあります。

このような民主党政権にも同様な不正があるにも関わらず、トランプ政権のことばかりを取り上げるのは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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次に検証する点として、ロシアとトランプ政権におけるアメリカの関係です。
ロシアとの共謀、言ってみればトランプ政権がロシアと協力関係にあるとするならば、当然考えなければならない点です。

今のトランプ政権が行なっている政策を見てみると親露的とはとても言えません。
たとえば、INFを脱退して軍拡の競争を再開、大西洋艦隊の再編、NATOの軍事費を増やすなど、トランプ政権の動きを見てみると、ロシアに対して厳しい政策を打ち出していることが分かります。

このような論点を取り上げずに、放送することは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。

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