7月1日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送から永寿総合病院に関する報道と香港に関する報道を取り上げます。
今回は前半として永寿総合病院に関する報道を取り上げます。
検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を紹介した放送だったか。
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):台東区にある永寿総合病院の湯浅院長です。永寿総合病院では入院患者、医師、看護師など合わせて214人が感染し国内最大級の院内感染となりました。3月下旬発熱する人が相次ぎましたがPCR検査もすぐに受けられず結果が出るころにはすでに蔓延していたといいます。感染はフロアがつながっている2つの病棟で広がり患者や医療従事者などの移動で更に、ほかのフロアにも拡大したといいます。防げなかった理由については…。
永寿総合病院・湯浅祐二院長(以下湯浅院長)『基本的感染予防策が不十分であったという点。職員のマスク着用と手指書毒を励行してまいりましたが、その実施には不十分な点があったと考えなければならない』
ナレ:人手不足となった病院では職員や看護師などが部署の枠を超えて慣れない仕事も請け負っていたそうです。
湯浅院長『元気に病棟に向かっていく姿にかける言葉が見つからず彼らにこのような任務を背負わせたことに対し院長として非常に申し訳なく思いました』
ナレ:感染した患者は病院で治療を受けていましたが43人が亡くなりました。
湯浅院長『これまでに43名の入院患者様がお亡くなりになりました。そのうち約半数が血液疾患で入院中の方々で、様々な疾患のあるご高齢の方が多く、アビガンやフサンなどの薬剤を早期より使用しましたが、救命することができませんでした』
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【パネル解説】(要約)
本日(7月1日)の都内感染者は67人で、緊急事態宣言解除後で最多となった。ここ2週間、感染者は右肩上がりであり、特に若年層の割合が大きく、危機感が低下しているのではないかと堀賢教授は分析する。
東京都は病床の確保を、レベル1の1000床から1週間以内に最大3000床のレベル2に上げる準備を出すよう通知した。これを達成できるよう、東京都にはかねてから新型コロナウイルス感染症用のベッド配置計画があり、各医療機関が準備を進めている。
【コメンテーターによる解説】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):VTRにもありましたけれども永寿総合病院は今日、会見を開きました。東京・台東区にある永寿総合病院ですが3月下旬ごろ発熱する人が相次ぎまして患者、職員214人が感染して43人の患者が死亡したということでした。この主な原因なんですけれどもその当時PCR検査が一般的でなく全病棟の患者・職員の検査結果が出るまでに9日以上かかった。この間に大規模な感染が発生していったということです。そのほかにもいろいろあります。会見の中で明らかにされたのはマスク、手洗い、消毒が不十分だったということ。それから休憩室、仮眠室等で医療従事者間でうつってしまったという可能性。病棟間の通路などで職員と患者が交差する。こういった可能性も挙げられたわけなんですよね。
徳永有美アナウンサー:ほかにも院内感染が発生した病院というのは多く出たとは思うんですけど堀先生、当時何が足りなかったというふうにお考えですか?
順天堂大学院・堀賢教授(以下堀教授):今回の原因となった新型コロナウイルスには特有な特徴がありました。例えば従来の対策だけでは不足した部分もありまして症状が出ないうちから周囲に感染を広げる人が少なからずいるということがあとから分かりました。気がついたら院内にするっと入っているステルスのような感じで入ってくると。もう1つはエアロゾル感染という新しい感染経路も見つかってきましたしちょうど問題になっていた検査体制も3月下旬では東京都内でPCRが1日220件しかできなかったという状態でもありました。
小木アナ:やっぱりこの教訓を生かしていかないといけないと思うんですけど永寿総合病院の湯浅院長は今後の対策として今も行っている対策ですけれどもマスクや手や指の消毒の徹底そして検査結果が判明するまでは個室で隔離。翌日には結果が判明できる体制をとっていくということですが堀先生、第2波に備えて特にどんなところに注意していかなければいけないでしょうか。
堀教授:いつ入ってきてもいいように基本的な感染症対策のレベルを上げておくということと医師が疑って検体を提出すればその日か翌日の午前中には分かるぐらいにスピーディーになっていくことが重要ですね。そのために大きい病院では院内に検査できるような体制を作ったり中小の病院でも検査会社にすぐ検体を出せるような体制になることが理想かなと思います。
小木アナ:ここまで堀先生にお話をお伺いしました。どうもありがとうございました。
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【検証部分】
院内で集団感染が発生した永寿総合病院の湯浅院長が7月1日、会見を行いました。
患者・職員ら計214人が感染、うち患者43人が死亡するという事態になった経緯や今後の対策、職員たちの思いを語っています。
会見は下記リンクから閲覧できます。
https://www.youtube.com/watch?v=7Cv6hB1iZWI&feature=youtu.be
この日の放送では永寿総合病院がどのような状況に置かれているのを十分に報道できていないといえます。
スタジオ解説では検査数が足りない、感染防止策が不十分だったことなどを指摘しています。
元々永寿総合病院には大学病院などから転院した患者、つまり免疫力が低下した患者が多く、湯浅院長は亡くなった患者43人のうちおよそ半数が血液疾患やがんなど様々な疾患があり、治療が難しかったと言います。
そして永寿総合病院が地域医療を支えていたことに触れていません。
会見では地域からの温かい支援があったことなどさまざまな支えがあったことが述べられていました。
永寿総合病院を応援する寄せ書きや垂れ幕の写真、病院に寄せられた支援の品、4200万円を超える寄付金などについては全く報じられていませんでした。
また湯浅院長は病院職員たちへの思いを涙ながらに語っていました。
永寿総合病院の職員だからと、子どもの通園・通学が拒まれたり、アパートを退去させられた事例などもあったそうです。
現場で働く職員たちの思いにも触れられ、永寿総合病院のホームページには職員の手記が掲載されています。
http://www.eijuhp.com/user/media/eiju_kenshin/layout/20200701siryou2.pdf
感染拡大を防ぐ方策だけでなく、現場で働く職員たちの状況がこの会見によって明らかになりました。
そういった職員たちにもっと焦点を当てるべきだったのではないでしょうか。
この日の放送では上記の論点について触れられていませんでした。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。