2020年10月27日 報道ステーション

2020年10月27日 報道ステーション

10月27日の報道ステーションのレポートです。
今回、検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【放送内容】

徳永有美アナ(以下徳永アナ):続いては投票日まであと1週間に迫ったアメリカ大統領選挙です。両候補は勝敗の鍵となる激戦州を回り最後の追い込みをかけています。そんな中、波紋を呼んでいるのが武装した熱狂的なトランプ支持者です。投票所での監視も行うとしていて選挙自体にも影響を及ぼしかねない存在となっています。

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【VTR】
ナレーター:選挙戦終盤両候補が入ったのは激戦州ペンシルベニアでした。

バイデン候補:コロナ禍の国民を導くのにトランプほど最悪の人物はいない。人が死に続けているのだから少しは恥じたらどうだ。

ナレーター;一方、この州で5ポイント近いリードを許しているトランプ大統領。州内の3か所で大規模な集会を開き、巻き返しに躍起です。コロナに感染したことさえもネタにします。

トランプ大統領:大統領だと医者が12人もいる。信じられるか?体の部分位よって別の専門医が見るんだ。

ナレーター:劣勢のトランプ大統領にとって救いの神となるのでしょうか。1人の女性が連邦最高裁判事に就任しました。

トランプ大統領:今日はアメリカと合衆国憲法、法の支配に非常に重要な日となった。

ナレーター:先月亡くなった判事の後任としてトランプ大統領が指名したバレット氏。民主党は選挙後に次の大統領が指名すべきだと反発していましたが上院で多数派の共和党が採決を強行し人事案が承認されました。バレット氏は人工妊娠中絶や銃規制などに反対する保守派の人物。最高裁の判事9人のうち保守派が6人を占めることになりました。

米連邦最高裁バレット判事:恐れることも偏ることもなく、政治にも個人の考えにも左右されず、職責を果たします。

ナレーター:党派的な判断はしないと強調するバレット氏。しかし、大統領選の結果が最高裁にもつれ込むことを視野に入れるトランプ氏はこの人事に期待をかけているようです。選挙結果を巡る混乱は法廷だけとは限らない可能性があります。支持する候補が負けた場合どちらの支持者も少なくない人が街頭での抗議か場合によっては暴力的な手段に訴えると答えています。中西部ミシガン州。ここで行われている選挙集会はほかのそれとは少し違っています。

猪ノ口克司朗レポーター:こちら高齢者や子供の姿もあるんですがトランプ支持者が大勢集まっています。そして、迷彩服を着た男性の姿もあります。胸に大きな銃を抱えています。

ナレーター:武装した一般人が警護する中で集会は行われていました。

集会参加者:私も“ミリシア”の1人です。複数のミリシアが集結していますが、騒ぎを起こすつもりはありません。星条旗への支持を示しているだけです。

ナレーター:このように武装した市民のグループはミリシアと呼ばれ独立戦争のころから各地に存在します。街の自警団を自認する者たち。白人至上主義者に共感する人たち。さまざまな形態がありますがその多くは保守系でトランプ大統領の支持者です。こうしたミリシアが大統領選でトラブルを引き起こすことが危惧されています。

トランプ大統領:私の支持者には投票所に行って目を光らせてほしい。

ナレーター:ミリシアが投票所周辺に集まることでバイデン候補の支持者を威嚇したり更には選挙結果に納得しなかった場合武器を持って抗議行動に出ると指摘されているのです。

米国内のテロに詳しい元司法次官補代理マコード氏:選挙後の混乱が予測されるため多くの組織が準備している。ミリシアという組織が有害な理由は個人ではできない危険な行為が集団になるとできてしまうからです。

ナレーター:現にミリシアが極端な行動に出たケースも。

CNN:FBIはミシンガンの州知事誘拐を計画し逮捕された6人の追訴を発表しました。州政府転覆を図ろうとした容疑もかけられています。

ナレーター:あるミリシアのメンバーたちが民主党のミシガン州知事が掲げた新型コロナウイルス対策ロックダウンなどに反対し、拉致しようと計画したのでした。

ナレーター:ミシガン州に住むアダムさん。ミリシアに所属していて州知事の拉致計画を立てた容疑者たちとも顔見知りでした。

ミリシアに所属しているアダム・ハイッキラさん(39):(知事のコロナ対策は)権力の乱用です。この国では誰もが自由で生きるべきでマスク着用も個人の自由のはずです。住民の不満が高まれば過激な行動に繋がります。ミシガン州知事誘拐計画が良い例で住民は不満でいっぱいなのです。

ナレーター:アダムさんは子供4人を育てる電子機器店の経営者です。銃は携帯するけれど、いわゆる普通のアメリカ人。ミリシアが大統領選に絡んで実力行使に出るといわれていることについては…。

アダムさん:私たちの組織は規律を守る一般市民で構成され、地元のみなさんを守り面倒を見ることが役目です。ミリシア全体が悪者扱いされているのは事実で「暴力組織」呼ばわりですが、実際は違います。

ナレーター:ミシガン州では混乱に備えてトランプ大統領を支持しない側の人たちにも銃を買う人が後を絶ちません。

銃愛好家:こういう状況では安心材料として銃に頼りがちになります。一度も使わずに済めばそれでよいけれど、あれば安心する物として所持するのでしょう。

猪ノ口レポーター:あちらでトランプ大統領の支持者が大勢集まっている中でそのすぐそばで民主党支持者の集会が開かれています。こちらも危険を警戒してか銃を抱えている人たちがいます。民主党の支持者が向かっていきます。トランプ支持者が歩いていますね。

民主党支持者:トランプは退陣しろ!!

【スタジオ解説】
徳永アナ:銃をたくさん見ましたけども大統領を決める選挙で随分、物騒なことになっていますね。

太田昌克共同通信編集委員(以下太田氏):今、VTRに出てきましたミリシアは民兵ですけれども、この多くは実は白人の優越性を主張する排他的な白人至上主義の過激グループといわば同盟関係共闘関係を組んでいるところが多いんですね。私、今日気になりましてテロ対策を担当するアメリカの国土安全保障省の最新レポートを読んでみたんですけども、気になるくだりがあったんですね。報告書はこう言っています。白人至上主義過激派がアメリカ本土にとって最も破壊的な脅威であり続けるであろうと。

小木逸平アナ:国外からのテロとかそういうことではなくて。

太田氏:国内ですね。心配しているのは。

徳永アナ:当然、大統領選挙にも影響は大きくなってきますよね。

太田氏:もちろんそうだと思いますね。私、今回の大統領選を見ておりまして一番驚いたというか、あごが落ちそうになったのはトランプ大統領が1回目のバイデンさんとの討論会で司会者からこう聞かれたんですね。
「トランプ大統領あなたは白人主義者やミリシアを公然と非難することができますか?」
って聞かれたらトランプ大統領ははっきり明確な非難をしないで、
「ある白人主義グループに対して今はおとなしくしててくれ、待機しててくれ、スタンバイしろ」
と言ったんですね。
これを聞いたら多くのミリシアグループそれから白人至上主義者たちは何か大統領に元気づけられたみたいな。
「スタンバイしろ」って言われていますからね。怖いのが大統領選。バイデン氏が勝利した場合スタンバイしていたこういったミリシアや白人至上主義のグループたちが社会不安や一種の暴動を起こすんじゃないかというのがやっぱりいささかの不安は私の中で否めませんね。

徳永アナ:トランプ大統領もたきつけるような、黙認するようなというところがあると。

太田氏:トランプ大統領は明らかに自分のベースを固めて票の上積みという政治目的でやっているわけですけども、そういった政治の思惑とは全く別次元でアメリカが混乱に陥る可能性があるということだと思います。

【検証部分】
今回はアメリカ大統領選挙に関して、アメリカの右派的なグループに焦点を当てた放送がなされていましたが、今回の報道は政治的に公平なものであったとはとても言えません。
なぜなら右派の集団の問題行動ばかりに焦点を当てているため、左派の問題に目が向けられていないからです。

米国政治に詳しいアナリストの渡瀬裕哉氏は近著の中で以下のように記しています。

(引用開始)
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(Black Lives Matterの抗議運動を受けて※)今回の抗議運動の中には暴徒化した集団も存在しており、米国の歴史的シンボルである銅像を「差別を助長するもの」として撤去・破壊する動きに発展し、店舗に対する略奪や自動車に対する放火、シアトルでは暴徒は市庁舎の一部を占拠する事態に発展し、結果として銃撃事件が発生する最悪の事態を引き起こすに至っている。
 過激なグループの一部は「アンティファ」と呼ばれる一団で、近年では左派系の暴力事件が絡む衝突が発生する度に目立つようになったグループだ。

渡瀬裕哉『2020年大統領選挙後の世界と日本”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎 2020年)
※はレポート執筆者による
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(引用終了)

渡瀬氏が指摘しているように、アンティファなどの極左暴力集団も存在しており、このグループは暴力的な過激です。
気になった方はグーグルなどで検索して、調べてみてください。動画などもあるためどのような集団であるか、すぐにわかるかと思います。
具体的な事件を見てみると、例えば次のような暴動を引き起こし、逮捕者まで出しています。

(引用開始)
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 極左グループ「アンティファ」の本拠地であるオレゴン州ポートランドで、総選挙投票日の11月3日夜から、アンティファによる広範な暴動や破壊行為が相次いで発生している。暴動は水曜日まで続き、オレゴン州はすでに州兵を出動させ、地元警察の治安維持に協力している。
 ポートランド市内の商店が荒らされ、略奪があったことが判明し、地元警察は暴動を起こした少なくとも11人を逮捕した。ポートランド地区警察合同指令センターが映像と画像を公開し、暴動や解決の状況を紹介した。

《「アンティファ」が全米各地で暴動を起こし、警察が逮捕に出動
https://www.visiontimesjp.com/?p=10834
》より
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(引用終了)

上記リンクの記事には動画や写真などを交えて、暴動の様子が紹介されています。
暴動に参加した女性が警察官に悪態をつきながら唾を吐きかける動画や”No borders. No walls. No USA at all.”(国境いらない、壁いらない、アメリカもいらない!)などと絶叫しながらデモ行進している様子をご覧いただけます。

放送では彼らに代表されるアメリカ左派の伸長に目を向けずに、右派集団ばかりを取り上げ、トランプ大統領との関係を取り沙汰しています。そしてアメリカでは右派が分断を招いている、右派が問題だ。と主張します。このような放送は政治的に公平とは言えず、次の放送法に抵触する恐れがあります。

(引用開始)
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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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(引用終了)

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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