2019年2月3日 サンデーモーニング(前編)

2019年2月3日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年2月3日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
アメリカのコーツ長官の「北朝鮮非核化困難」発言とINF全廃条約撤廃について報道された部分
「賃金構造基本統計」の不正と実質賃金の野党試算について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① アメリカのコーツ長官の「北朝鮮非核化困難」発言とINF全廃条約撤廃について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
北朝鮮の核開発をめぐり新たな動きがあったことが伝えられVTRが始まる。
まず、米上院・情報特別委員会の様子が映し出され、北朝鮮の核放棄に楽観的なトランプ大統領と異なる見解を示したとアナウンス。続けて米朝首脳会談の映像とともに、ビーガン特別代表は核施設閉鎖の条件として北朝鮮が求める見返りについて協議を行う考えを示したと報じた。CMが明けるとトランプ大統領の姿が映し出される。米朝首脳会談に前向きなトランプ政権に対し、米下院の超党派議員は在韓米軍の撤退を禁じる法案を提出したと報じ民主党下院議員の会見映像へと切り替わる。政権のブレーキ役が次々と政権を去ったことで、「非核化のメドがつかないうちに、トランプ大統領が在韓米軍撤退など大きな譲歩を行うのではとの懸念が広がっている」と伝えた。
続いて、“トランプ大統領の決断が波紋を広げている”とのアナウンスとともに、ホワイトハウスでトランプ大統領が記者団の質問に答える映像が流される。トランプ政権はINFからの離脱を正式に表明したことが伝えられる。INF全廃条約に関する簡単な説明※1の後、一方的な離脱表明にプーチン大統領が反発しているとアナウンス。続けてロシア・モスクワでINFについて協議するプーチン大統領の姿が映し出される。プーチン大統領が「我々も停止する(字幕)」と表明する様子とともに、対抗措置として極超音速中距離ミサイルの開発着手が発表され、米公共ラジオでは米エネルギー省による小型核兵器の製造開始が報じられたアナウンス。アメリカのINF離脱は、ロシアによる新型巡航ミサイル開発に対する反発と、中国による中距離核ミサイル配備に対する危機感が理由であると伝えられ、続けてトランプ大統領が「INF全廃条約は古い(字幕)」と発言する様子が流される。
広島の原爆ドーム映像に切り替わり、被団協理事長がインタビューで「憤りを感じる」と述べる様子が流される。最後に軍事パレード※2が行われる様子とともに、軍拡競争への心配が広がっていると伝えられVTRは締めくくられる。

※1 INF全廃条約に関する簡単な説明(全文)
 この条約は、地上から発射する射程500キロから5500キロの核ミサイルを持たないと約束した条約で、アメリカと旧ソ連が1987年に調印。冷戦終結につながった歴史的条約との評価を受けています。

※2 中国人民解放軍建軍90周年記念軍事パレード

【アナウンサーによるパネル説明】
水野アナによるパネル説明
・アメリカはロシアが条約を違反して巡航ミサイル開発を進めているとしてINF離脱を表明した
・その背景には中国の核戦力増強に抵抗する狙いもあるとみられる
・INF失効後、米露の核軍縮の枠組みは新STARTのみとなる
・しかし新STARTは 2021年に期限となり、延長会議の見通しは立っていない

【コメンテーターの発言】
岡本行夫氏(要約・パネル説明):核兵器は、戦略核・戦域核・戦術核の3種類がある。戦略核は強力で使われたら世界はお終いなので、まず使われることはない。戦域核は中距離ミサイルで、この間全廃されたので米露両方とも持ってない。だから短射程の戦術核が問題になってくる。昔、ソ連からヨーロッパへ打ち込む中距離ミサイルがあり、危機感を抱いた米・ヨーロッパ等も中距離ミサイルをドイツに搬入したが、これに根を上げたソ連が止めようと言ったことが戦域核の全廃につながった。ところが、ロシアが新しい巡航ミサイルを開発しており、射程距離は500キロ以内だと主張している。しかしアメリカにとっては死活問題。バルト三国にロシアの飛び地があり、ここにロシアはミサイル配備増強を進めている。ここから打つとバルト海全域をカバーしてしまう。バルト三国がNATOに入ったので、アメリカは防衛義務がある。バルト三国を守るためにアメリカの艦隊はバルト海に入らなければならないが、ロシアの新型ミサイルでやられてしまう。これでは不公平。もう一つは中国。中国はグアム島まで届く中距離ミサイルを100発以上持っている。中国は、米露だけがお互いに自粛しあってた影で野放しで中距離核を開発してきた。世界で一番中距離核を持ってるのは中国。だから、アメリカは全体を規制しようじゃないかということで、捨て身の決断をしたのだろうが、上手くいかなければ全体的な軍拡につながることになってしまう。

姜尚中氏(要約):北朝鮮に限っていうとトランプ政権側に不協和音がある。コーツ氏とビーガン氏の発現のニュアンスはかなり違う。ただ在韓米軍撤収はないと思う。北朝鮮にとって在韓米軍がいることは有利な条件で、撤収は要求されていない。韓国からすると日本に対するけん制にもなる。だから危機を煽っているような雰囲気があるが、そこは違う。

大宅映子氏(要約):INFは冷戦終結のきっかけとなった条約。全体が規制しなければ不公平だというのは正しいと思うが、全員順守すべきと言っている本人(トランプ大統領)が一番最初に自分達だけ離脱したのはどうかと思うし、矛盾してる。もっとやり方を変えないと、元の暗闇の軍拡戦争になってしまうと思う。

荻上チキ氏(全文):そうですね、先ほど捨て身って話があったんですけど、捨て身と捨て鉢って言葉は似てるけど違いますよね。つまりあの、本当に捨て身で相手を導こうとしてるのか、捨て鉢というか、先のプランがなくて、とにかく不公平だからやめましょうと、一旦それで核などの軍拡をこう、拡大していって、広げていくことによってもう一度その根本になって、改めてルールを作らなきゃいけないというげんなり感を意図的に作ろうとしてるというのであったとしても、これはやっぱり多くの人々を巻き込むような出来事になるわけですよね。やはり新たな合意を作る際には、一番最初にその合意を取りまとめる人って、まずは不公平というのをかぶる立場なんです。まずは自分が止めるんで、皆もどうぞ入ってくださいっていうふうに参加させるものなんですけれども、自分が後から入るから、皆が守ったら入るよっていうふうに言っていたら、それでは合意は形成できないんですよね。アメリカはそういった歴史を過去にも何度か行っているので、そうしたことから学んでほしいなとは思います。

青木理氏(全文):この番組でもう何度か申し上げたんですけど、今の世界の核体制ってのは、今のNPT、つまり5大国は核は持っていいけれども、他は持っちゃダメっていう、非常に不平等な話なんですよね。ただそれを許してるのは、核保有国は核軍縮に努めるっていう前提があるからですけど、その最も超大国のアメリカがこんなことを言い出せば、北朝鮮とこれから非核化交渉をしていくときに、北朝鮮にしてみれば、何言ってんだっていう話になりかねないっていう懸念が一つと、それからこれ、まったくその日本無縁ではなくて、岡本さんの話にも出てきましたけど中国が持ってるってことになると、じゃあこの中距離核戦力をアジアではどこに配備するのかっていったら、日本っていう名前が多分出てくるんですよね。日本から仮に発射すると15分ぐらいで中国に着弾するんで、そうなると中国も即反撃するっていうことになると、日本の基地。特に沖縄なんかは非常に不安も掻き立てられるでしょうし、ロシアも一部射程範囲に入りますからね。そうなってくると、日ロの関係ってもすごく悪化しかねないっていう意味でいうと、日本もこれから懸念材料が残る。だからこの状況で良いのかっていうことを、本来同盟国と称している日本がトランプ政権にどうなんでしょうって言わなきゃいけないところもあるんじゃないですかね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):今の世界の核体制ってのは、今のNPT、つまり5大国は核は持っていいけれども、他は持っちゃダメっていう、非常に不平等な話なんですよね。ただそれを許してるのは、核保有国は核軍縮に努めるっていう前提があるからですけど、その最も超大国のアメリカがこんなことを言い出せば、北朝鮮とこれから非核化交渉をしていくときに、北朝鮮にしてみれば、何言ってんだっていう話になりかねない(中略)中国が持ってるってことになると、じゃあこの中距離核戦力をアジアではどこに配備するのかっていったら、日本っていう名前が多分出てくるんですよね。日本から仮に発射すると15分ぐらいで中国に着弾するんで、そうなると中国も即反撃するっていうことになると、日本の基地。特に沖縄なんかは非常に不安も掻き立てられる(中略)ロシアも一部射程範囲に入りますからね。そうなってくると、日ロの関係ってもすごく悪化しかねないっていう意味でいうと、日本もこれから懸念材料が残る。

要旨をまとめると、
・今の世界の核配備はNPTにより5大国に限定されておりこれは不平等であるが、それはこれらの国々が核軍縮をする前提があるから。今回のINF全廃条約破棄はこの前提を覆すもので、核保有を目指す北朝鮮に正当性を与えてしまう。
・中距離核戦力は対中国を意識したものなので、日本への配備がありうる。その場合アメリカが撃てば即反撃されるので米軍基地のある沖縄などは不安を掻き立てられる。
・日本へ配備する場合ロシアも一部射程に入るので、日露間の関係も悪化する。
というものです。

しかしながら、
・NPTの第6条には確かに核保有国の核軍縮交渉義務が明記されているが、そもそもNPTは核拡散を防止することが目的であるため、この義務の履行の有無に関わらず核非保有国の核保有は容認されない。
・北朝鮮が核保有を許されないのは核の拡散が許されないからという理由はもちろん、独裁国家が核を持つことの危険性や地域の不安定化を招く危険性、その技術をテロリストや他国に売る危険性など多くの懸念があるからで、米国の核保有の議論が北朝鮮の核保有を正当化することはない。
・INF全廃条約破棄の目的はロシアの条約違反への抗議と中国を巻き込んだスキームの立て直しであり、中国に対する中距離核戦力配備ではない。したがって現時点で沖縄に中距離核戦力を直接配備する可能性が高いとは言えない。
・また、仮に配備したところで米国が先制攻撃をするという前提を置くだけの合理的理由がない。このように極端な仮定のもとで危険性をあおるのは視聴者に事実と異なる認識を与える悪質なものである。
・同様の理由でロシアとの関係が悪化する恐れが高いとは言えない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
萩上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

萩上氏(抜粋):やはり新たな合意を作る際には、一番最初にその合意を取りまとめる人って、まずは不公平というのをかぶる立場なんです。まずは自分が止めるんで、皆もどうぞ入ってくださいっていうふうに参加させるものなんですけれども、自分が後から入るから、皆が守ったら入るよっていうふうに言っていたら、それでは合意は形成できないんですよね。

要旨をまとめると、
・新たな合意が形成される際、最初にその合意を取りまとめる国が不公平を被る立場にある
・「みんなが守ったら自分も入るよ」という合意形成はない
というものです。

しかしながら、
・一般論として、最初に合意を取りまとめる国が必ず不公平を被るものであるということは言えない。
・今回のNPT全廃条約破棄の目的は有名無実化した条約への対策であり、合意を取りまとめるかどうかは関係のない話である。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での萩上氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「今回のアメリカのINF全廃条約破棄は手段として誤りである」「さらなる軍拡を招く恐れがある」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「条約全体を組み立てなおす必要がある」「先に軍拡をしたのは中露であり、今回の破棄はその対応でしかない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「賃金構造基本統計」の不正と実質賃金の野党試算について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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