12月13日のサンデーモーニングのレポート中編、アメリカ大統領選挙を巡る訴訟と日米関係の展望について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】
12月11日金曜日。アメリカの大統領選挙を巡り、テキサス州が激戦となった4つの州の結果を無効とするよう求めた訴訟で、この日、連邦最高裁判所はこの訴えを退けた。トランプ大統領はこの訴訟を支持していたが、司法によって大統領選の結果を覆すことは厳しい状況となった。
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【コメンテーターによる解説】
寺島実朗氏:これ間違いなく大統領選挙によって、アメリカって民主主義の復元力を見せていると思うんですけれども、特に明日、選挙人によってバイデンという形でしっかりと方向性が見えてくると思うんですね。そこで私、触れたいのはね、バイデン外交と日本ということです。日本はバイデンとどう向き合うかということですね。一般的に言って、バイデンという人は国際協調主義、さらに同盟重視ということを言ってて、ある種の安堵感と期待感があると言っていいと思うんですね。ところが日本にとって、ちょっと注目すべきところがある。ワシントンにおけるジャパンハンドラーという人たちがいるんですね。つまり日本問題で飯食ってる人、日米同盟で飯を食ってる人と言ってもいいんですけどそれらの人たちが、トランプ政権下では封印されていた人たちが復活してきているんですね。例えば11月12日、我々お祝いの電話を菅さんがバイデンにかけたときに、バイデンサイドからいきなり、尖閣は日米安保の対象だということが出てきて日本は本領安堵された御家人のような感じで、新聞も1面でそれを報道するというニュアンスだったんですね。だけど本当だったらその瞬間に、じゃあアメリカは尖閣は日本の領土だと認めるんですかと踏み込まないといけないんですけど実はアメリカは72年の沖縄返還以来、尖閣列島については、日中でやってくれということで、領土権について、必ずしもコミットしてこないんだよね、微妙なんです。だけどこれ何を意味するかというとバイデンの背景に、日本人にはこのことを言えば歓迎されるよとアドバイスしてる人たちがいるんだということです。つい先週です、いよいよ動いたなと僕は思ったんですが12月7日にアーミテージ・レポートの5回目が出たんですね。このアーミテージという人は国務省の高官だった人で、日米問題の、いわばジャパンハンドラーの中心人物みたいな人ですね。今回のレポートで何を言ってるかというと、いわゆる英語圏の5カ国で持ってる機密共有のシステムがファイブ・アイズ、5つの目ということで、それに日本が参画したらどうかと提案しているんですよ。何を意味しているかというと、アミテージ・レポートというのは2000年から今回5回目なんだけれども例えば有事法制だとか、集団的自衛権に日本が踏み込むべきだというたぐいのことを、そのたびに提案してきていて、今でいう日米の軍事的一体化の流れを作ってきたといってもいいんですね。日本としては、例えば米中戦争という事態は国民誰もが思っていると思うんですけれども、米中対立から分断されないためにただいたずらにアメリカの枠組みの中に引き込まれていっていいのか、そういう意味において、バイデン外交とどう向き合うのかは日本の運命を決めると言ってもいいようなテーマが横たわっているんだということを確認しておきたいですね。
【検証部分】
今回はアメリカ大統領選挙の結果に関する訴訟と、バイデン政権下での日米関係についての寺島氏による解説を取り上げました。
今回問題となるのは、寺島氏の解説に論点の偏りが見られる点です。
寺島氏はいわゆる「ジャパンハンドラー」とよばれる知日派がバイデン氏を裏で操っていると批判し、日本はそれに乗るべきではないと指摘しています。そしてその理由として、日本が米中対立に巻き込まれるリスクを挙げています。
しかし、この点についてはさまざまな考えがあります。
日本の安全保障環境を考えたときに、中国は大きな脅威となっています。尖閣諸島をめぐる問題では以前にも増して領海侵犯を行うようになり、さらには沖ノ鳥島でも調査活動などを活発化させているという状況です。
そして、軍事的にも急激な拡大がみられます。ここ数十年で世界有数の軍事大国となり、今やアメリカの覇権をも脅かすような存在になりつつあります。
日本としては、この中国への対応として大まかに、宥和的な対応をとる、もしくは強硬な対応をとるという選択肢があります。しかし現在の状況では、宥和的な対応を取るというのは現実的な選択肢とはいえないという意見があります。なぜなら日本が中国に対して宥和的な対応を取ったとしても、中国がそれに友好的に反応することはなく、むしろ中国の主張を受け入れるように迫ってくると考えられるからです。それでも日本が宥和的な態度を取り続ければ、日本は中国のいいなりになってしまいます。
さらに中国は周辺の多くの国と領有権をめぐる紛争を抱えており、その中には中国側に合理的な根拠が全くないケースも多くあります。そして国内では、共産党一党独裁の強化、香港における民主派の弾圧、ウイグルなどでの人権侵害といった、日本や国際社会が許容することのできない行為が見られます。このような中国と手を結ぶことは、国際社会における日本の立場を悪くすることにもなりかねません。国内的にも、民主主義、法の支配といった原則を守るためにも、中国の行動を認めるわけにはいきません。
ですから、日本の対中外交としては、中国の一方的な現状変更には断固反対する、日本や国際社会に対する挑発的な言動には強硬に対応することが求められています。このときに、強大な軍事力を持つ中国に対抗するために、アメリカなどとの協力は不可欠となります。そして中国の脅威の増大を考えれば、日本はそのような協力の範囲を広げ、緊密なものにしていく必要があるといえます。
このような意見があることも踏まえると、寺島氏の主張するアメリカとの関係の緊密化を進めるべきではないという意見は、さまざまな角度からの分析に基づいたものとはいえません。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。