TBS「サンデーモーニング」、2020年6月14日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① アメリカ大統領選について報道された部分
② 「風を読む」にてレイシズムについて報道された部分
③ 朝鮮半島の南北分断について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① アメリカ大統領選について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR書き起こし】
白人警官による黒人男性暴行死に対する抗議デモが広がる中、トランプ大統領の足元がゆらぎ始めました。
(10日ワシントン・下院司法委員会)
死亡した男性の弟 フィロニス・フロイド氏「あなた方に問いたい。黒人の命は20ドルの価値なのかと。警官が間違ったことをしたとき責任を取らせてください」
10日に開かれたアメリカ議会の公聴会。偽造紙幣20ドルを使用した疑いで白人警官による暴行を受け、亡くなった男性の弟が怒りの声を上げました。こうした中、アメリカでは黒人への警官の対応が次々と問題となっています。5日、バージニア州では体調不良を訴え歩き回る黒人男性を警官が救急車に乗せようとしますが車に乗ろうとしない男性に近づいてきた別の警官が使用したのは相手の体に電気を流すスタンガンの一種、テーザー銃。さらに、倒れた男性の顔をそのテーザー銃で殴りつけたのです。人種差別問題を巡って揺れるアメリカ。不満はくすぶり続けています。抗議デモが続く中、強硬な姿勢を続けるトランプ大統領に同じ共和党内から異論が飛び出します。国民の人気が高い共和党穏健派の重鎮パウエル元国務長官はデモに対し必要なら軍を動員するとしたトランプ大統領について、7日のテレビ出演で合衆国憲法を逸脱しつつあると批判。大統領選で民主党のバイデン前副大統領に投票するとまで明言したのです。さらに、共和党のブッシュ元大統領も再選を支持しない方針であると報じられています。共和党内で進むトランプ離れ。政権内部にも不協和音が。
抗議デモへの対応を巡り共和党内で進むトランプ離れ。政権内部のきしみも表面化しました。デモ制圧のための軍の動員に反対した側近のエスパー国防長官をトランプ大統領が一時解任しようとしていたと新聞が報じたのです。一方、平和的に抗議する人々を排除して行われたトランプ大統領のパフォーマンス。批判は広がり続け、同行していた軍の制服組トップが謝罪の意を表明しました。
(11日公開・国防大学卒業式ビデオメッセージ)
ミリー統合参謀本部議長「私はそこにいるべきではなかった。あのときのあの環境での私の存在は、国内政治に軍が関与しているという認識を生み出してしまった」
謝罪は国防大学の卒業生へのビデオメッセージの中で行われ軍の首脳が大統領と距離を置く発言をするのは極めて異例です。不満や批判の声が至る所で上がる中…
(10日米・ワシントン)
トランプ大統領「オクラホマ州は新型コロナウィルス対策で素晴らしい仕事をしてきた」
新型コロナの感染拡大を防ぐため自粛してきた大規模な支持者集会を3カ月半ぶりに20日、オクラホマ州で再開すると発表。 最新の世論調査でも、バイデン前副大統領に大きく水をあけられているトランプ大統領。大統領選挙まで5カ月を切っています。
(スタジオにて水野アナの説明)
VTRにもありましたが、側近のエスパー国防長官を解任しようとしたと報じられたトランプ大統領ですが、マティス前国防長官が批判の口火を切ると、共和党出身のヘーゲル元国防長官ら歴代の国防長官4人を含む国防総省の元高官ら89人が憲法で認められた権利を侵害することに決して軍を用いてはならないとする声明を発表しました。また、共和党重鎮では、パウエル元国務長官が大統領選で民主党のバイデン氏への支持を表明。人種差別への抗議デモに参加したロムニー元共和党候補やブッシュ元大統領もトランプを支持しない構えを見せていてトランプ大統領は足元から揺さぶられています。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):共和党の中はもうバラバラじゃないかと思うけど、アメリカの選挙は、結果見るとそうならないところが理解できないんですが。
姜尚中氏(全文):トランプ大統領のまずさでいろんなものがガタガタになってる感じなんですが、オバマ政権の2期にわたる約12年間、あれ何だったんだろうかと。つまり、黒人系の大統領で10年も大統領をやって今起きているような問題の潜在的な問題は、全く触れられてなかったわけですよね。本来だったらこういう問題をあの10年の中でいろんな形で切開してやるべきだったにもかかわらず今、噴出しているのは確かにトランプ大統領のときなんですけど、じゃあ、その10年間は何であって副大統領のバイデン氏は本当に今の人種差別に対して向き合えるような人なんだろうかと。結局アメリカは二大政党制の中でにっちもさっちもいかなくて、僕はサンダースのような第三項が途中でつぶされたということでいわば黒人系の人がこれに反対している人からいうとどっちもどっちという気持ちは拭いきれないんじゃないかと思うんですね。
荻中氏(全文):一つは今、アメリカで起きていることの中でトランプさんのやり方があまりにもひどいと。平和的なデモに対して軍を使うとこれはあってはならないことだということで、わーっと前の国防長官がみんな声を上げたんですよね。もう1つは、平和的なデモに対して言ったことが何かといったら略奪があれば射殺しろとか発砲しろと言うということで、だから共和党の重鎮が、これはいかんよということを言っているのだと思います。CNNだけを見ると15%ぐらい差がついたということなんですが、よくよく見ますとまだまだ接戦州例えばフロリダとかペンシルベニアとか、ウィスコンシン、こういう接戦州では3~4ポイント、誤差があるんですね。これから起きることは何かというと11月までですけれども、これが平和的なデモでしっかりと続いていくのかどうか、彼らが本当に怒った人たちが投票に行くかどうか。最後は投票に行かなきゃいけないんですね。そのためにやっているので、例えば副大統領候補を有色人種で女性にというのがいいんじゃないかと声が上がっていますがそれを含めて女性候補になることは間違いないんですけれどもバイデンさんのそれの対応の仕方、それから、これから起きていく実際のデモの展開、彼らがみんなで投票しようと、トランプを辞めさせよう、僕はそうあってほしいと思っているんです。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、荻中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
姜尚中氏は今回の報道で、以下のように述べています。
姜尚中氏(抜粋):トランプ大統領のまずさでいろんなものがガタガタになってる感じなんですが、オバマ政権の2期にわたる約12年間、あれ何だったんだろうかと。つまり、黒人系の大統領で10年も大統領をやって今起きているような問題の潜在的な問題は、全く触れられてなかったわけですよね。本来だったらこういう問題をあの10年の中でいろんな形で切開してやるべきだったにもかかわらず今、噴出しているのは確かにトランプ大統領のときなんですけど、じゃあ、その10年間は何であって副大統領のバイデン氏は本当に今の人種差別に対して向き合えるような人なんだろうかと。結局アメリカは二大政党制の中でにっちもさっちもいかなくて、僕はサンダースのような第三項が途中でつぶされたということでいわば黒人系の人がこれに反対している人からいうとどっちもどっちという気持ちは拭いきれないんじゃないかと思うんですね。
要旨をまとめると、
・オバマ政権の2期にわたる12年間は何だったのか。黒人系の大統領が10年も大統領を務めていても潜在的な問題には触れられてなかった
・オバマ政権の時に副大統領だったバイデン氏は人種差別に対して向き会うことができず、民主党にも黒人が反対しているので、どっちもどっちである。
というものです。
しかしながら、
・そもそも大統領の1期間が5年である国は韓国。
・アメリカの大統領の任期は一期4年であり、2期務めたオバマは8年間大統領であった。そのため、「10年間大統領をしていた」という姜尚中氏の発言は事実に明らかに反する。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での姜尚中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、荻中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
荻中氏は今回の報道で、以下のように述べています。
荻中氏(抜粋):一つは今、アメリカで起きていることの中でトランプさんのやり方があまりにもひどいと。平和的なデモに対して軍を使うとこれはあってはならないことだということで、わーっと前の国防長官がみんな声を上げたんですよね。もう1つは、平和的なデモに対して言ったことが何かといったら略奪があれば射殺しろとか発砲しろと言うということで、だから共和党の重鎮が、これはいかんよということを言っているのだと思います。CNNだけを見ると15%ぐらい差がついたということなんですが、よくよく見ますとまだまだ接戦州例えばフロリダとかペンシルベニアとか、ウィスコンシン、こういう接戦州では3~4ポイント、誤差がありますんですね。これから起きることは何かというと11月までですけれども、これが平和的なデモでしっかりと続いていくのかどうか、彼らが本当に怒った人たちが投票に行くかどうか。最後は投票に行かなきゃいけないんですね。そのためにやっているので、例えば副大統領候補を有色人種で女性にというのがいいんじゃないかと声が上がっていますがそれを含めて女性候補になることは間違いないんですけれどもバイデンさんのそれの対応の仕方、それから、これから起きていく実際のデモの展開、彼らがみんなで投票しようと、トランプを辞めさせよう、僕はそうあってほしいと思っているんです。
要旨をまとめると、
・平和的なデモに対してトランプ氏のやり方があまりにもひどい。
・依然トランプ支持層の州がある。これからのデモや投票によって結果が変わる。
・トランプには大統領をやめて欲しいと思っている
というものです。
しかしながら
・事実、黒人層が行っているデモの中には暴動・略奪などが発生しており、暴動に対してとトランプは「射殺や発泡をせざるを得ない」と発言しているのであり、「平和的なデモである」という荻中氏の発言は事実に明らかに反する。
・「トランプは大統領はやめてほしいと思っている」という荻中氏の個人的な願望は極めて主観的であり、政治的公平を欠く。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での荻中氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ氏は辞職すべきである」「黒人デモは擁護すべきである」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「トランプ氏は続投すべきである」「黒人デモのなかには、暴動や略奪など危険な行為も含まれている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」にてレイシズムについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 朝鮮半島の南北分断について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。