2019年5月12日 サンデーモーニング(前編)

2019年5月12日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年5月12日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 米国の対中関税25%発動について報道された部分
② 「風を読む」でトランプ大統領の支持率上昇について報道された部分
③ 憲法審査会にてCM規制に関する聴取実施について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 米国の対中関税25%発動について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
「トランプ大統領つぶやきが、世界に波紋を広げました」とのアナウンスとともに、トランプ大統領のTwitterアカウントが表示される。進まない中国との交渉に怒りを露わにし、中国からの輸入品に25%の制裁関税をかけると表明した影響で株価が急落したと伝えられる。トランプ大統領の演説映像に切り替わり、「中国が合意を破ったんだ!」と述べるトランプ大統領の姿が映し出され、CMへ。
CM後、中国商務省高報道官が「中国側はやむを得ず対抗措置を取らなければならない」と話す映像が流される。追加関税の対象は日用品も含まれ消費者に影響が出ると伝えられた後、「年間1000億ドルが入ってくるから悪いことではない」と語るトランプ大統領の姿が流される。ペンス副大統領の会見映像が映し出され、「中国の諜報機関が最先端の軍事技術を含むアメリカの技術を丸ごと盗んでる」と話す映像が流される。アメリカの企業が中国に進出した際、最先端技術などの企業秘密を中国側に開示させられたり、中国企業はハイテク企業等に巨額の補助金を出していることで公正な競争が損なわれると主張している旨伝えられるアナウンス。劉鶴副首相が「我々は絶対に譲歩しない」と述べる映像の後、中国側は国策を変えるつもりはないとの姿勢を崩さなかったと伝えっれる。
アメリカ政府は、中国からの輸入品すべてに追加関税をかけると表明し、米中の貿易戦争はさらにエスカレートしそうな気配だと伝えられ、VTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・中国の産業補助金を55兆円以上であり、国ぐるみで産業の育成を図っている
・アメリカ側は「不当な競争力をつけている」「市場の公平性が脅かされている」と主張
・神田外大興梠教授は、「中国は国内政策だと反発しており、これ以上譲歩することはない」と指摘
・IMFは米中が互いに25%の関税をかけた場合、アメリカは0.6%、中国も1.5%GDPが下がると予測

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):次世代技術の技術覇権をめぐっての戦いだと考えるべき。90年代には日本も官民連携で競争力をつけているとアメリカからバッシングを受けた。泥沼のような議論に踏み込み疲労困憊した結果、急速に米中合意に変わっていくかもしれない。単なる貿易戦争ではない。

西崎文子氏(全文):寺島さんがおっしゃったとおりだとも思うんですけど、同時に、やはりトランプ大統領をみていてると、そういったところとはまたちょっとずれたところで、この問題に取り組んでいるような気がするんですよね。つまり、公正な競争とか、覇権のための関税よりも、関税そのものが目的になってると。要するに、トランプはいつも、日本とか、あるいは中国が、アメリカにつけこんで、それで儲けてきた。金儲けしてきたと。だからこれから取り返すんだって。そういう言い方をする。つまり関税をかけたら、アメリカが儲かるっていうような、そういう錯覚に陥っていて。で、そのなかで、本当はそうではなく、アメリカの消費者とか生産者がこれで被害を被るとか。あるいは、国際秩序まで、アメリカが第二次大戦後、それによって自分達の利益を得てきた国際秩序を全部台無しにするんだとか、そういったことは、頭の中にない。ですから、同床異夢なところがあって、交渉してる人と、財務省の考え方と、それから、その中にもいろいろあるんでしょうけども、トランプ自身のスタンス、ズレがあるっていうことも、ちょっと重要かなと思います。

藪中三十二氏(全文):今、いろいろご指摘の通り、基本は米中の覇権争いというのがあると思うんですね。そういうなかで出てきたのは、中国、アメリカもそうですけど、交渉者の力量不足。国内の基本政策に触れてしまうとですね、やっぱり国内から反発があったということだと思います。それで、今回起きたことっていうのは、中国の読み間違いなんですね。トランプなら、米中の貿易戦争っていうのは基本的にはやると株が下がると。トランプは嫌なはずだと。だから、トランプが何とかなくなるだろうと思っていたんですね。ところが、トランプさん、2つのことがあって、1つは意外とアメリカ経済が強いなというのがあったんですね。もう1つは、決定的なのは、もう完全に彼の頭の中は選挙モード。大統領選挙モードになってると、これは中国に厳しくやったほうが有利だということですね。そこのところを今回、中国は読み誤って、結果的にこういう形になったと私は思いますですね。

元村有希子氏(要約):中国は科学技術を国策として、巨額なお金を突っ込んで国家主導で行っている。国策そのものは悪いものではないと思う。ただ中国とアメリカの喧嘩は世界をこれだけ動かすんだなと改めて感じた。日本にもかなり影響が大きいので不安に思う。G20でまたひと悶着あるかもしれない。日本が交渉の舞台の一つになっていくので注目している。

青木理氏(要約):先端技術に限らない米中の覇権争い。一方で、中国が世界の工場で世界経済の牽引役であるので、この矛盾で大丈夫なのかという心配が世界を渦巻いている。これから10年20年も米中の覇権争いは起き続けるんだろうが、政治家が自分たちの国のことしか考えないでブロック経済化していくと、恐慌が起きたり戦争につながるような流れにもなりかねない。日本として何ができるのかを考えなければいけない時代が続くと思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋):公正な競争とか、覇権のための関税よりも、関税そのものが目的になってると。要するに、トランプはいつも、日本とか、あるいは中国が、アメリカにつけこんで、それで儲けてきた。金儲けしてきたと。だからこれから取り返すんだって。そういう言い方をする。つまり関税をかけたら、アメリカが儲かるっていうような、そういう錯覚に陥っていて。で、そのなかで、本当はそうではなく、アメリカの消費者とか生産者がこれで被害を被るとか。あるいは、国際秩序まで、アメリカが第二次大戦後、それによって自分達の利益を得てきた国際秩序を全部台無しにするんだとか、そういったことは、頭の中にない。

要旨をまとめると、
・トランプ大統領は関税を掛けたらアメリカが儲かるという錯覚に陥っている
・公正な競争などを目指す関税ではなく、関税をかけることが目的となっている
・アメリカの消費者や生産者がこれで被害を受けるとか、アメリカが築いてきた国際秩序が台無しになるとか、そういうことはトランプ大統領の頭にない

というものです。

しかしながら、
・トランプ米大統領が関税をかけるとした理由は米中貿易協議の決裂にある。中国はそれまで米国と進めていた「知的財産、企業秘密の保護」「技術の強制移転」「競争政策」「金融サービス市場へのアクセス」「為替操作」などの市場の公正化・自由化の合意について、内容の修正という形で白紙に戻す要求をした。
・つまり、今回の関税はアメリカが儲かることを目的にしているわけでもなければ、関税自体を目的化しているわけでもない。
・また、経済への影響や国際秩序についてトランプ政権が考えていないとする主張には何ら根拠がない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
藪中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

藪中氏(抜粋):今回起きたことっていうのは、中国の読み間違いなんですね。トランプなら、米中の貿易戦争っていうのは基本的にはやると株が下がると。トランプは嫌なはずだと。だから、トランプが何とかなくなるだろうと思っていたんですね。ところが、トランプさん、2つのことがあって、1つは意外とアメリカ経済が強いなというのがあったんですね。もう1つは、決定的なのは、もう完全に彼の頭の中は選挙モード。大統領選挙モードになってると、これは中国に厳しくやったほうが有利だということですね。そこのところを今回、中国は読み誤って、結果的にこういう形になったと私は思いますですね。

要旨をまとめると、
・今回の一件は「トランプが米中貿易戦争を嫌がるだろう」という中国の読み間違いが原因である
・アメリカ経済が強いことと、大統領選挙を意識した結果トランプは関税実施に踏み切ったのが今回の結果につながった

というものです。

しかしながら、
・今回の中国の合意修正要求はそれまでの交渉内容を白紙に戻すもので、米国としては到底容認できないものだったことが関税実施の理由である
・トランプ大統領が大統領選を意識して対中強硬路線を取ったという主張には何ら根拠がない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での藪中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ大統領の選挙戦略だ」「米中の覇権争いの一環である」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「共産党支配が市場の自由主義化で揺らぐことを懸念した中国の身勝手な行動だ」「米中の歩み寄りを反故にしたのは中国だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「風を読む」でトランプ大統領の支持率上昇について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 憲法審査会にてCM規制に関する聴取実施について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事