2020年12月20日 サンデーモーニング(後編)

2020年12月20日 サンデーモーニング(後編)

12月20日のサンデーモーニングのレポート後編、トランプ政権の総括について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか
・事実をまげない報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 2017年1月の大統領就任式でアメリカファーストを掲げたトランプ大統領。彼は就任当初から、歴代の政権が築いてきた国際秩序を自ら破壊するような行動を次々と起こす。パリ協定やイランとの核合意から離脱。また、エルサレムをイスラエルの首都と認定。大使館を移転し、各地で混乱を招いた。中国とは関税引き上げを巡って厳しく対立し、貿易戦争に突入。米中関係は史上最悪となった。
一方で、トランプ大統領は就任からこれまで2万3000を超える虚偽、もしくは誤解を招く主張を繰り返したとされる。新型コロナについても、トランプ大統領は発生当初、脅威はほとんどないと明言。しかしアメリカの感染者は世界最多の31万人に達している。彼のビジネスマン時代の自伝には『ある程度の誇張は望ましい。これを真実の誇張と呼ぶ』という取引の極意が記されており、こうしたトランプ流の手法として利用されたのがツイッターだった。結果、支持率は安定していたものの、この4年を通してトランプ大統領がもたらしたのは深刻な分断だった。12月10日に公表された世論調査では、共和党支持者の77%が大統領選で不正があったと回答している。次の政権に大きな課題を積み残したトランプ大統領。その4年が間もなく幕を下ろす。

【コメンテーターによる解説】(一部要約)
姜尚中 氏:問題は、なぜトランプ現象が起きたのかということをリベラルがちゃんと説明していないことです。グローバル化(を支持しているの)は西海岸や東海岸の、ITや金融で儲けた人たち。オバマの場合もバイデンの場合も政治資金は富裕層から大口でもらっているんです。トランプのほうは小口で、そして富裕層ではない。つまりアメリカの中に反グローバリズムが起きているわけで、このことをしっかり見ないと、ただ、バカだと言うだけでは済まない。恐らく4年後、もう1回、トランプ出てくるんじゃないでしょうか。そういう気がします。(要約)

目加田説子 氏:結局、この4年間で何が危機にさらされてきたのかというと民主主義を支える信義だと思うんですね。信義というのは政治的な文脈では、約束したことをきちんと守る、議論して決めたことをきちんと説明するということで、こうした有権者との広い意味での約束があってこそ民主主義というのは成り立っているんですよね。そこをことごとくトランプさんは破壊してきた。うそをついたり、フェイクにうそを流したりという形でこの部分を壊してしまったということが最も罪深いのかなと思いますし、民主主義の赤字という言葉がありますけれどもトランプさんは巨大な赤字を残した。これからバイデンさんが大統領に就任してから最初の4年間の大きな仕事というのはどこまでこの赤字を黒字に転じさせることができるかというところだと思っています。

安田菜津紀 氏:トランプ政権が残した禍根はフェイクにとどまらないと思います。排斥や差別の言葉を繰り返していくことによって、市井のヘイトクライムにお墨付きを与えてしまう。これから新たな関係性を日米で築いていくと思うんですけど、政権が差別や憎悪の後ろ盾にならないこと、それはアメリカだけでなくてこの日本側にも求められてくることではないかと思います。(要約)

荻上チキ 氏:雇用統計の話がありましたが、景気は良かったんです。だから多少のフェイクはしょうがないという反応も出てきてしまう。しかし多少という言葉では許されないものも多々あるわけで、これから政治を考える上では、経済の改善に加えて人道的な被害も解消する、複数の課題に立ち向かうリーダーが必要になってくると思います。(要約)

青木洋 氏:皆さんの話、踏まえていうとトランプさんはたぶん、原因じゃなくて症状なんでしょうね。要するに新自由主義的なものだったりグローバリズム、強欲至上主義の富が偏在しちゃって、数パーセントの人が富を持って、中間層が崩壊しちゃって、そういう人たちが何とかしてくれと言って現れたのがトランプさんだった。悲しいのは人間の本能なのかもしれないですけど、差別とか排他とか不寛容とかあるいは反知性主義、嘘とか陰謀論とかにワッと火をつけて、それが今回7200万とっちゃったとなるとバイデンさんの政権のもとでアメリカが復元力をとっていけるのかどうかというのは、これからの課題ですよね。ただこれはひと事じゃなくて、格差が広がっているのは日本もそうだし富の偏在もそうだし、あと為政者の問題で、森友学園で139回、桜で33回も言ってるんですよ。だから我々も足元見なきゃいけない、という気がしますよね。

【検証部分】
今回はトランプ政権の4年間を総括したコーナーを取り上げました。今回問題となるのは、全体を通して政治的に公平でない点、また目賀田氏から事実と異なる発言が見られた点です。
順に確認します。

まず、報道全体を通して政治的に公平でない点についてです。VTRと5人のコメンテーターからの発言からは、いずれもトランプ氏を批判する内容ばかりで、トランプ政権のよい面に目を向けた内容は全くありませんでした。

トランプ政権のプラスの面として、アメリカの経済、雇用を守ったということが挙げられます。2017年から2019年の間、トランプ政権下での経済政策の影響もありアメリカのGDPは安定して成長しており、一時期は年率4.2%という高水準を記録しました。また失業率も3.7%という非常に低い水準に達しました。
また、景気、雇用の面以外にも、外交の場においてアメリカの国益を守ってきたことも挙げられます。トランプ政権以前のアメリカは、国際協調の名のもとにアメリカの国益を大きく損なう行動をとってきました。外国への米軍の展開やTPPをはじめとする貿易協定の締結などが例として挙げられます。もちろんそれ自体が悪いことではありません。しかしそれが行き過ぎた結果、アメリカ国民の利益が損なわれ、また政府として必要な財政支出ができなくなり、国内での不満が高まっていたことも事実です。ですからトランプ政権が国際協調を過度に重視する姿勢を改め国益重視へと転換したことは評価するべきことだといえます。

しかし、今回の報道ではこのようなトランプ政権の評価するべき点に言及されることはありませんでした。このようなトランプ政権に対する批判一辺倒な報道は、明らかに政治的な公平性を欠いているといわざるを得ません。

次に、目加田氏の発言を検証します。
目加田氏の発言の中で問題となるのは、「民主主義の赤字という言葉がありますけれどもトランプさんは巨大な赤字を残した。」という部分です。

そもそも「民主主義の赤字」というのは、国民の民主的統制の及ばない政府から、一方的に統制を受けている状態のことをいいます。基本的な国民と政府の関係は、国民は選挙などを通して政府を統制し、政府は国民との契約や国民からの支持を背景として国民を統制しているというものです。
しかしグローバル化が進んだ現在、国民はその国の政府のみから統制を受けている状態ではなくなっています。外国と協定などを結ぶ場合や、超国家組織に所属する場合などには、自国の政府以外からの統制を受けることになります。このように国民が決定プロセスに参画できないにもかかわらず、一方的な統制を受けている状態を「民主主義の赤字」と呼びます。

このことを踏まえてトランプ政権の政策を見ていきます。トランプ政権は米国第一主義を掲げていました。そしてアメリカの国益を損なう外国の干渉や外国との協定を見直してきました。これは民主主義の赤字を拡大するものではなく、むしろ民主主義の赤字を減らしていくような政策でした。

ですから目加田氏の、トランプ政権が民主主義の赤字を残したという発言は、事実と異なるものといえます。

今回の放送では、放送全体がトランプ政権の批判ばかりに論点が集中しているという点で政治的に公平ではなく、また目加田氏からは民主主義の赤字とトランプ政権に関する、事実と異なる発言が見られました。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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