2020年12月27日 サンデーモーニング(前編)

2020年12月27日 サンデーモーニング(前編)

12月27日のサンデーモーニングのレポート前編、桜を見る会に関する安倍元首相の国会招致について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
 桜を見る会で国会での説明に応じた安倍前総理だったが、その結果は真相解明にはほど遠いものだった。桜を見る会の前夜祭を巡り、安倍氏側が会費の差額分700万円を補てんしていた問題で、東京地検特捜部は安倍前総理を不起訴とする一方、会計担当の配川博之公設第一秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。これまで繰り返し補てんを否定してきた安倍前総理は、秘書が真実を語っていなかったという趣旨の説明を述べ、補てんに使われた原資については、安倍前総理個人の預金から立て替えていたと証言した。9月の総理退任にも実は補填の問題が影響していたのではと問われると、「首相の辞職と(補てんの問題は)当然、その時には知らないわけであるから全く関わりがない」と否認。野党側が再三問題視していたホテル側からの明細書については「ホテル側は営業上の秘密としている」とこれまでと同じ答弁を繰り返し、提出を拒んだ。
 略式起訴された配川秘書は即日、罰金100万円を納付。公開の法廷での審理は開かれず、今後、司法による解明は難しい状況にある。国会での質疑を終えた安倍氏は「説明責任を果たすことができたのではないか」と述べた。

【パネル解説】
費用の補填問題について、安倍氏は「私が知らない中で行われていた」と、秘書や事務所任せだったことを繰り返した。そして安倍氏は、問題が指摘された去年の11月、「東京の事務所に電話で『5000円で賄われていたんだね』と確認すると、『そうです』と答えられた」と話した。しかし実際には、秘書が700万円を超える補てんをしていた。その補てんの原資について安倍氏は、自らのポケットマネーを秘書に預けていたと説明。灰川秘書は略式起訴され、罰金100万円を納付した。

——-
【コメンテーターによる解説】(一部要約)
寺島実郎 氏:私、政治リーダーの言葉の軽さというのに改めてあきれるんだけども、自分は聞いてなかったから責任はないが道義的責任はあると言ってるんですね。道義的責任という言葉の意味を理解していないというかこれは自分が指揮命令系統のあるラインの責任者が犯した犯罪なんですよ。それに対して道義的責任しかないという捉え方の驚くべき認識ですね。要するに安倍さん、日本を取り戻すとして政権に復帰してきて、官邸主導政治をやったんだけども、結局、日本の政治を矮小化したなと思いますね。この言葉の軽さね。道義というものを見失った国にしてしまったなという気が僕はします。

元村有希子 氏:私も納得できません。まず、不起訴になったからいいじゃないかという態度が見えてくる、それから説明にも全く説得力がない、更に118回も国会で虚偽答弁をしたことについて反省をあまりしておられないように見えてしまうんですね。これはきちんと、分からないことがいっぱいありますので、証人喚問という手続きが必要だと思っています。野党も与党も今回、議会運営委員会での質疑を終わらせているんですけれども、いわゆる証人喚問であれば、うそをつけば罰せられるということがあります。ここできちんと明細書の件も、動機も秘書の独断でできたかどうかというところも、一問一答の偽証罪が成り立つ場で解明していくことがいわゆる首相を経験した人の責任だと思います。

高橋純子 氏:前にこちらの番組に出たときに、安倍さんがこれだけ国会でうそをつき、国権の最高機関であることを汚したんだから、議員辞職でしか責任の取りようはないのではないかと私、申し上げたのですが、そのうえで、今回の初めて安倍さんがご自身の口で説明されるのを聞いたらなんと秘書に対しては、口頭で確認をしただけだと。一国の首相が自らに降りかかった疑念を払わなければいけない局面で、この軽々しさというのは一体何なのかと思います。その姿勢が変わったかというと、金曜日の国会での説明を聞いても何ら変わっていない。この場を取り繕い、この場をやり過ごせばいいという姿勢が明白で、証拠も、何一つ資料も出していない。そしてごまかしの答弁を行うと。これはやはり国会での説明でもその姿勢、最低限国会に対する間違った、うそをついちゃいけないんだということへの反省も見られないのであれば、議員辞職という形でしか責任のとりようはないのではないかということを重ねて申し上げたいと思います。

竹下隆一郎 氏:安倍前首相は何度も確認したとおっしゃっていますが、「5000円で賄ったんだよね」というようなイエス・ノークエスチョンを立場の上の人がしてしまうと、部下の秘書の方は「はい」か「いいえ」で答えざるをえないんですね。それよりは「本当にそうだったの?」「でも、5000円じゃ賄えないよね」とより深い対話をして初めて確認といえると思うんですよね。それを「5000円で賄ったんだよね」「はいそうです」というやり取りで確認とするのは、政治家としてというより社会人として、かなり疑問を持ちました(要約)

松原耕二 氏:嫌疑不十分の不起訴というのは、裁判で立証するに足る十分な証拠がなかったというだけで、嫌疑がなかったわけじゃないのに、安倍前総理は検察が問題ないと言っているから終わりだみたいな言い方をする。説明責任を果たしたかというと、会見は限られた人たちで、施設がこれ以上使えないという理由で、1時間で打ち切る。会見も国会も、通過儀礼として最小限のダメージを抑えるために使っているとしか思えなかったですね。安倍さんだけじゃないですが、最近の国会の答弁は、間違っていようが、はぐらかそうが、その場しのぎで抑えればいいというのが多くて、心からの言葉がほとんど聞かれない。このままでは国会への信頼はますます薄れていくと思います。(要約)

【検証部分】
今回は、桜を見る会の前夜祭における補填についての安倍元首相の国会招致に関する報道を取り上げました。
今回の発言で問題となるのは、寺島氏、元村氏、高橋氏の発言が政治的に公平ではないという点です。

三氏の発言では、安倍元首相の姿勢に対してきわめて主観的な言及がなされています。順に確認していきます。

寺島氏は、安倍氏の反省に対して「道義的責任しかないという捉え方の驚くべき認識ですね」という批判をしています。たしかにVTRの中では「道義的責任を痛感している」という安倍元首相の発言が取り上げられていましたが、それは必ずしも道義的責任以外の責任はないと言っているわけではありません。寺島氏の指摘は発言の趣旨を歪曲するものといえます。

また、元村氏からは「不起訴になったからいいじゃないかという態度が見えてくる」「118回も国会で虚偽答弁をしたことについて反省をあまりしておられないように見えてしまうんですね」という発言があり、高橋氏からは「この場を取り繕い、この場をやり過ごせばいいという姿勢が明白」「ごまかしの答弁を行う」「うそをついちゃいけないんだということへの反省も見られない」という発言が見られました。
これらはいずれも、客観的な根拠に基づいたものではありません。安倍元首相の発言から反省の気持ちが見られるかどうかは、国民一人一人が判断することです。そしてメディアは、それを判断するのに十分な情報を提供する必要があります。しかし今回の報道では、実際の安倍元首相の発言はごく一部しか取り上げられておらず、コメンテーターによる、反省の色が見られないという発言ばかりが報道されていました。これでは国民一人一人が反省しているかどうかを判断することができなくなってしまいます。
そしてその中でも、高橋氏からは「この場を取り繕い、この場をやり過ごせばいいという姿勢が明白」という発言があり、松原氏からも同様の発言が見られました。しかし実際には安倍元首相は「今後も必要があれば説明したい」としており、両氏の発言と全く矛盾したものとなっています。この点については、コメンテーターの発言が公平でない一方的な視点からなされたものであるということがより明白であるといえます。

このように、今回の報道の中ではコメンテーターの発言から、安倍元首相に対する主観的で一方的なコメントがなされていました。これらのコメントは政治的な公平性に欠けており、印象操作のような側面が強いものであったといえます。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————————————————–
放送法4条
(2)政治的に公平であること
————————————————————————————–

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事