サンデーモーニング、2019年12月1日分の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 香港の区議選とアメリカによる香港人権法成立について報道された部分
② 桜を見る会の新たな「疑惑」について報道された部分
③ 入国管理局における長期滞在者問題について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 桜を見る会の新たな「疑惑」について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
反社会的勢力とみられる人物と写真を撮っていたとして野党から追及を受けた菅官房長官。反社会勢力が出席していたことを事実上認めていたが、翌日には一転して否定した。招待客について問われた西村官房副長官も、個人に関する情報であるとして回答しなかった。
マルチ商法で高齢者から巨額の資金を集め経営破綻したジャパンライフが宣伝チラシに桜を見る会の招待状を使っていたことがわかった。ジャパンライフに出資した女性は、「政治家の名前を出されたときは(中略)信用のある会社だと思った」と語る。野党はジャパンライフの元会長に宛てた招待状にあった「60」という数字を問題視。野党が入手した資料によると招待状には区分番号が振られており、60~63は総理・官房長官等の推薦者であると記されているが、これについて内閣府職員は頑なに「わからない」と繰り返した。
共産党の議員が資料請求した当日に招待者名簿が廃棄されたことについても野党は問題視。説明がない限り国会審議に応じない方針を決めた翌日、政府は推薦者の区分番号の分類を示す文書が内閣府の資料であると認めた。しかしジャパンライフの元会長推薦が総理枠であったかについて菅官房長官は明言しなかった。野党側は明日、参議院本会議で桜を見る会をめぐる一連の疑惑について追及する構えである。
【アナウンサーによるパネル説明】
・2014年の総理・官邸の推薦者は3400人だったが今年の推薦者は2000人であったことについて、過少申告ではないかと野党は指摘しているが、政府はこの3400人の中には自民党推薦者を含むと説明
・名簿の廃棄は隠蔽ではないかと追及したが、廃棄した職員はこの追及を知らなかったとしている
・名簿管理のデータは文書は良き前後に削除されていることも判明しているが、復元できるのではと迫られているが、菅官房長官は「できないと聞いている」との説明を繰り返している
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【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):問われているのは文書主義。データを記録するという基本的な考え方が揺らぐと、国家・政府に対する信頼が揺らぐ。大本営発表に誰も口を挟めなかった体質を変えようというのが戦後の出発点。問題は小さなことかもしれないが、本質は国家の基本的な原理に対する信頼性が揺らぐということ。総理は国会や記者会見でしっかり説明した方がいい。そうしないと求心力が弱まっていくと思う。
谷口真由美氏(全文):関口さんが、図式がね、同じようだっておっしゃってたんですけど、私いま、ずーっと公私混同だなって思うんですよね。公の私物化っていうか、なんか公と私みたいなものの区別がつかないのかって思うんですけど、例えば、「反社の皆様」っておっしゃってましたけど、個人情報だから出せないと。で、公金を使って功績のあった人を公のお金を使って呼んだ会なんだったら、名簿は全部出して然るべきですよね。だって私たちの税金なんだから。功績があった人を教えてくださいよって話だと思うんですよ。それが出せないって、じゃあ私物化でしたよねっていう話だと思いますし、情報がバックアップ取れてないって言うんだったら、それこそ公金大量に投入して政府の情報なんだからバックアップ取ってくださいって思いますし。で、政治家の皆さんが写真を撮ったりとかするのが結局すごい信用に関わってるっていうか、誰かを信用させるってことになるんだったら、なんかそれ、気をつけなきゃいけないし、官僚の皆さんにむしろ、忖度してるっていうか私ね、嘘つかしてるんじゃないかと。あの人たちもすごく苦しくて嘘ついてらっしゃるんじゃないかっていうふうに見えてきて。そうすると嘘つかせてるのは誰なんだっていうことに、それも私物化やから結局公には言えないのかなって気がして、もう全て私物化っていう気がしますね。
岡本行夫氏(要約):本筋が違うと思う。野党が納得すればいいんだと。本来説明すべきなのは国民に対して。これだけ大規模な会合なのに、名簿がすぐに裁断されたりデータも復元できない等にわかには信じがたいようなことが言われている。政府全体がなんか胡散臭いというような不信感を国民に与えるのは本当にまずいと思う。企画自体は良いと思うので、素直に謝って来年からこうしますって透明性をもってやってくれていい話だと思う。
安田菜津紀氏(全文):例えばその名簿の書類でしたり、あとはデータだったり、示しさえすれば事実が明らかになるはずのものを、どうしてこう積極的に破棄をしてしまうのか。そこはもう見過ごせない点だと思うんですね。で、姜さんもおっしゃったように、この問題をいつまで追及するんだって声もあると思うんですけど、でもこれって桜を見る会だけではなくって、もう次世代にどういうツケを回してはいけないのかっていう問題だと思うんですよね。例えば、中止にする。なかったことにする。で、全てが済むのかだったり、「書類はありません。だから検証できません」がまかり通るのか。で、これが放置されると、同じようなことがおそらく社会の中で蔓延していってしまうんじゃないかと思うんですね。こうした大きな問題が起こる度に、首相から「責任を痛感している」っていう言葉が聞かれていたと思うんですけど、ぜひその痛感するのではなくって、責任をとる姿っていうのを見せていただきたいなというふうに思います。
松原耕二氏(全文):まあ本当は考えてみると、本当簡単な話のはずなんですよね。菅官房長官も復元できますか?「できないと聞いている。」じゃ復元しなさいよと指示すれば済むことなわけです。いろんなことがそれでわかってくるかもしれない。安倍総理も国会がお決めになったら説明しますと言ってるけども、本来自民党総裁として集中審議に呼んでと、それを説明したいんだと指示すれば終わることなわけですよね。つまり指示できないということ自体が、しゃべってしまうとまたいろんなことが起きてしまうというのが、何かあるんだろうなと思っても仕方がないわけですよね。だから自民党の議員たちがなぜここまで、最近毎度ですけど、黙っているのかというのは気になるし、ただ森友加計なんかとだいぶ違うのは、これは参加してる人数がとても多いわけですよね。関わってる人たちが。だからまだまだ証言出てくると思いますよ。だから国会事実上今週でもう終わるかもしれないけれども、まだまだ続くし、記者たちはですね、いろんな会見の場を通して今もやってますけれども、ぜひ問いをね、繰り返すことを続けて欲しいなというふうに思いますね。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。
谷口氏(抜粋):関口さんが、図式がね、同じようだっておっしゃってたんですけど、私いま、ずーっと公私混同だなって思うんですよね。公の私物化っていうか、なんか公と私みたいなものの区別がつかないのかって思うんですけど、例えば、「反社の皆様」っておっしゃってましたけど、個人情報だから出せないと。で、公金を使って功績のあった人を公のお金を使って呼んだ会なんだったら、名簿は全部出して然るべきですよね。だって私たちの税金なんだから。功績があった人を教えてくださいよって話だと思うんですよ。それが出せないって、じゃあ私物化でしたよねっていう話だと思いますし、 (中略)官僚の皆さんにむしろ、忖度してるっていうか私ね、嘘つかしてるんじゃないかと。あの人たちもすごく苦しくて嘘ついてらっしゃるんじゃないかっていうふうに見えてきて。そうすると嘘つかせてるのは誰なんだっていうことに、それも私物化やから結局公には言えないのかなって気がして、もう全て私物化っていう気がしますね。
要旨をまとめると、
・安倍政権はずっと公私を混同してきた。功績があった人を公のお金で呼んだのであれば当然名簿は公開するべきで、「個人情報だから出せない」ならじゃあそれは私物化ですよねって話になる。
・政治家が官僚に忖度させているというよりも、官僚に嘘をつかせているように見える。官僚たちは嘘をつくことについてすごく苦しんでいるし、官僚に嘘をつかせるのは官僚の私物化に他ならない。
というものです。
しかしながら、
・「安倍政権がずっと公私を混同してきた」とする主張は事実に基づいておらず、また政治的に公平とは言えない。
・功績のあった人を公のお金で呼んだからといって、いたずらに呼ばれた人たちの名簿を公開してプライバシーの権利を侵害していいことにはならない。また、こうしたプライバシーへの配慮を「私物化」とする主張は事実に即したものとは言えない。
・「政治家が官僚に嘘をつかせており、官僚はそのことで苦しんでいる」という主張には根拠が全くない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
安田氏(抜粋):姜さんもおっしゃったように、この問題をいつまで追及するんだって声もあると思うんですけど、でもこれって桜を見る会だけではなくって、もう次世代にどういうツケを回してはいけないのかっていう問題だと思うんですよね。例えば、中止にする。なかったことにする。で、全てが済むのかだったり、「書類はありません。だから検証できません」がまかり通るのか。で、これが放置されると、同じようなことがおそらく社会の中で蔓延していってしまうんじゃないかと思うんですね。こうした大きな問題が起こる度に、首相から「責任を痛感している」っていう言葉が聞かれていたと思うんですけど、ぜひその痛感するのではなくって、責任をとる姿っていうのを見せていただきたいなというふうに思います。
要旨をまとめると、
・この問題をいつまで追求するんだという声もあるが、この問題は桜を見る会だけでなく、次世代に「中止にすることでなかったことにする」というやり方でツケを回してはいけないという話である。
・桜を見る会が許されてしまえば社会全体で同じようなことが蔓延してしまう。安倍首相は責任を取るべきだ。
というものです。
しかしながら、
・桜を見る会が中止になったことで「なかったことに」されたという主張は誇大妄想的で事実に即していない。またこうした主張は「桜を見る会」そのものに問題があるかどうかという話とは全く別の話である。
・社会全体で「桜を見る会」と同じことが蔓延するという主張には一切根拠がない。また「桜を見る会」は吉田茂首相の頃から開催され続けており、この問題の責任を安倍首相にのみ求める主張は事実に即しておらず政治的に公平とも言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「『桜を見る会』は決して小さな問題ではないので今後も追及していくべきだ」「安倍政権の驕りが出ているので首相は責任を取るべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「他にも議論すべき問題が山積しているなかで『桜を見る会』の優先順位は低い」「桜を見る会は長年の慣習であって安倍政権の驕りによるものではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 桜を見る会の新たな「疑惑」について報道された部分における
検証4「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 入国管理局における長期滞在者問題について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 香港の区議選とアメリカによる香港人権法成立について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。