2020年2月2日 サンデーモーニング(中編)

2020年2月2日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年2月2日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
② 「風を読む」にて太平洋戦争について報道された部分
③ 桜を見る会の新たな答弁について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 「風を読む」にて太平洋戦争について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 ポーランドで行われたアウシュビッツ強制収容所解放75年の追悼式典。およそ50カ国の首脳や国王が招かれ、高齢となった元収容者も出席しました。そうした中、日本でも公開中の映画「ジョジョ・ラビット」が話題を集めています。ナチス支配下のドイツで、立派なナチ党員となることを目指す少年の物語です。屋根裏に隠れ、生活をしていたユダヤ人少女との出会いで、少年は変わります。ユダヤ人である監督は、「独裁主義や毛に主義の歴史は古い、かつてないほど今に直結する。だからこそ第二次世界大戦の出来事を語り継ぐ必要がある」と語ります。ナチスによるホロコーストの死者数は、600万人にものぼると言われます。その背景には、ローマ帝国による弾圧以来離散したユダヤ人、特に、経済的な成功者に対する差別、反感の気持ちがあります。元収容者は、「歴史を偽ることに無関心になるな、権力を握る者に無関心になるな。そうしなければ、アウシュビッツは空から降ってくる。」と訴えました。しかし、ホロコーストを知らない人が増えるなど、風化は進行しています。そうした状況は、現実にも反映されています。反ユダヤ主義に基づく犯罪は5年間で4割増加しました。27日、国連のグテーレス事務総長は、反ユダヤ主義に対する警鐘を鳴らしました。しかし、ドイツでは「ナチスの行為に対する反省はもうやめにしよう」と訴える極右政党も登場しました。極右政党の台頭は、オランダやオーストリアでも見られます。

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【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):第一次世界大戦は、三四人の愚か者が起こしたとロイドジョージが回顧録で述べてる。それから二十年して第二次世界大戦が始まった。第二次世界大戦の道は、ミュンヘンに集まった数人の指導者によって開かれた。今の世界の指導者にも、愚か者と呼ばれる人が何人かいる。それに止めに入る有力な指導者が一人でも二人でも居ればいい。ドイツのメルケルさんはそれに近いが、もっと強力な人がいなければ心配な情勢。指導者選ぶ側の責任もある。

元村有希子(全文):あの、強いものが弱いものを虐げて、でそのまあ歓心を買う、という強者の論理というのが本当に繰り返されてきたんだなあということ思いますね。日本にもそれはあって。例えば、第2次世界大戦中は沖縄がその弱者として、つまり日本の捨て石にされたわけですよね。最後は、軍人だけが逃げて、沖縄の人は置き去りにされたってことがありましたよね。で、長崎も広島もそうですね。でその日本では、その核廃絶のね核兵器禁止条約、えー日本が関与しなさいと言っているのに日本政府はアメリカに忖度しているのか知りませんけど、ま何も動こうとしない。あのー、な、なんでこうその気持ちがわからないのかなっていうことを思うんですけど、あの日本とアメリカが戦争をしたってことを知らない若者もいたりする。だから歴史の教育は絶対に必要で、そしてまあ私もアウシュビッツ行きましたけども、あの日本語で学ぶことも出来ますし、解説員の方もおられるのでですね。自国ならではだけでなくて、世界の人たちが失敗をきちんと見据えるってことはほんと最低限必要だと思います。

鎌田實氏(要約):反ユダヤっていうのはとにかく許せないですね。ただ、過剰反応をユダヤ人がして、自分たちがされて辛かったことをパレスチナ人にするという歴史の繰り返しのようなことをしている。僕は、イスラエル兵に撃たれて亡くなったパレスチナ人の子供の心臓を、イスラエルの子供に移植をしたという話を絵本にした。これをヘブライ語や英語、アラビア語に翻訳して、イスラエルとパレスチナでこんなに命の交換をして、助け合ったことがあるじゃないかと訴えてきた。そういうことをして、少しずつ平和になってきたところに、トランプが自分の選挙のためにものすごい掻き回しをした。中東全体がすごい不安になった。不安になれば、ユダヤ人たちは強圧な敵になり、パレスチナ人は制圧されることとなる。この悪循環を、人間は愛みたいなもので乗り越えなければならない。

仁藤夢乃氏(要約):国のトップやリーダーが差別に対してどんな態度を取るかはとても大事なこと。ドイツの大統領が差別に反対するメッセージを出したのは大事なこと。アメリカでは、トランプ大統領のような差別的な発言を繰り返すリーダーがいることで、これまでは堂々と言うことの出来なかったことがためらわずに言う人も増えていると言われている。日本も年始に、川崎市の多文化交流施設に、在日コリアンの殺害を予告するような年賀はがきが届いた。つい数日前には、川崎市に、在日コリアンなどの攻撃を予告する手紙が届いた。これに対して、川崎市の市長は、差別に基づく犯罪は絶対に行けないと表明。被害届を出す準備を行っている。被害者を矢面に立たせるのではなく、トップがしっかり差別に反対をしていくこと。私達市民が無関心でいないことが大切だと思っています。

青木理氏(全文):VTRの中にね、「歴史を偽ることに無関心になるな、権力を握る者に対して無関心になるな」って言って。ま、ヨーロッパでもヘイトとか差別っての風潮が広がってるんだけど、全く他人事じゃないですよね。あのー、仁藤さんもちょっとおっしゃいましたけれども、日本でももうほとんど同じようなことが起きている。あるいは本屋さんにはヘイト雑誌とか、その嫌韓、嫌中を煽るような出版物があって。実はそこに、首相とか政府の高官まで出たりとかして、お墨付きを与えるような状況になってるんですよね。ヨーロッパの状況ってのは、けしてヨーロッパだけではなく、日本にも起きてるんだということを、僕らは考えなくちゃいけない、真剣に。ってことですよね。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
元村氏は今回の報道で、以下のように述べています。

元村氏(抜粋):あの、強いものが弱いものを虐げて、でそのまあ歓心を買う、という強者の論理というのが本当に繰り返されてきたんだなあということ思いますね。日本にもそれはあって。例えば、第2次世界大戦中は沖縄がその弱者として、つまり日本の捨て石にされたわけですよね。最後は、軍人だけが逃げて、沖縄の人は置き去りにされたってことがありましたよね。で、長崎も広島もそうですね。でその日本では、その核廃絶のね核兵器禁止条約、えー日本が関与しなさいと言っているのに日本政府はアメリカに忖度しているのか知りませんけど、ま何も動こうとしない。あのー、な、なんでこうその気持ちがわからないのかなっていうことを思うんですけど、あの日本とアメリカが戦争をしたってことを知らない若者もいたりする。だから歴史の教育は絶対に必要で、そしてまあ私もアウシュビッツ行きましたけども、あの日本語で学ぶことも出来ますし、解説員の方もおられるのでですね。自国ならではだけでなくて、世界の人たちが失敗をきちんと見据えるってことはほんと最低限必要だと思います。

要旨をまとめると、
・強いものが弱いものを虐げて歓心を買う行為が繰り返された。日本でも沖縄が捨て石にされた。
・核兵器禁止条約に日本が参加しないのはアメリカへの忖度だと思う。本当に戦争をなくしたいという気持ちが分かっていない。
・日本とアメリカが戦争したことを知らない若者もいる。日本だけではなく世界の人たちが失敗をきちんと見据えることが最低限必要だ。

というものです。

しかしながら、
・旧日本軍は沖縄を防衛するために多大な犠牲を払っており、「捨て石にされた」「強いものが弱いものを虐げて歓心を買う」行為だとする元村氏の主張は明らかに事実に反している。
・核兵器禁止条約は内容が理想主義的で核抑止力が必要な現実から乖離しており、当事者である核保有国や安全保障上核抑止力が必要な非核保有国からの反対を受けている。したがって「本当に戦争をなくしたい気持ちが分からない」「アメリカへの忖度」などと不参加の理由を断定する主張は明らかに事実に反している。
・極端な若者の事例だけを根拠に「世界の失敗を見据えていない」などと全体を評価する主張は根拠に欠ける。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での元村氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):VTRの中にね、「歴史を偽ることに無関心になるな、権力を握る者に対して無関心になるな」って言って。ま、ヨーロッパでもヘイトとか差別っての風潮が広がってるんだけど、全く他人事じゃないですよね。あのー、仁藤さんもちょっとおっしゃいましたけれども、日本でももうほとんど同じようなことが起きている。あるいは本屋さんにはヘイト雑誌とか、その嫌韓、嫌中を煽るような出版物があって。実はそこに、首相とか政府の高官まで出たりとかして、お墨付きを与えるような状況になってるんですよね。ヨーロッパの状況ってのは、けしてヨーロッパだけではなく、日本にも起きてるんだということを、僕らは考えなくちゃいけない、真剣に。ってことですよね。

要旨をまとめると、
・「歴史を偽ることに無関心になるな、権力を握るものに無関心になるな」という言葉がVTRであったが、日本も他人ごとではない。
・日本もヨーロッパと同じでヘイトや差別が横行している。本屋にはヘイト雑誌や嫌韓・嫌中を煽る出版物があり、首相や政府の高官がお墨付きを与えている。

というものです。

しかしながら、
・日本で「歴史を偽ること」が起きているという主張には全く根拠がない。
・日本でヨーロッパと同じようなヘイトや差別が横行しているとする主張には全く根拠がない。また中国、韓国への論理的批判を「ヘイト」と断定する主張は明らかに事実に反しており、また政治的に公平とは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「過去起きた悲惨な出来事を忘れず反省すべきだ」「ヘイトが蔓延しているのは歴史の教訓を忘れているからだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「現代を生きる人々に過去の歴史の責任を求めるべきではない」「ヘイトの蔓延と過去の歴史とは関係ない」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ 桜を見る会の新たな答弁について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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