2018年7月1日 サンデーモーニング

2018年7月1日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、7月1日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・参議院予算委員会での審議について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのかを公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

伊藤友里アナウンサー(以下、伊藤):続いては、国内の政治の動きです。お伝えします。安倍総理が気色ばむ場面もあった党首討論。国会が混迷する中、新たな動きもありました。

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【VTR】
・参議院予算委員会の審議で、安倍総理は加計学園獣医学部をめぐる問題について繰り返し追及を受ける
・二階幹事長が「“子どもを産まないほうが幸せに送れるんじゃないか”と勝手なことを考えている人がいる」と物議を醸す発言をし、野党は強く反発
・前回の党首討論では、立憲民主党の持ち時間19分間のうち12分間にわたり安倍首相が持論を展開し、枝野氏が怒りをあらわにしていた
・今回の党首討論では、枝野氏が6分間にわたり安倍政権を批判し、安倍総理の反論の時間はわずか30秒だった
・これに対して安倍総理は、規定の時間を3分オーバーして反論
・働き方改革関連法案が与党などの賛成多数で可決・成立し、過労死の遺族からは怒りの声
・小泉進次郎議員ら自民党若手議員が国会改革に向けた提言を発表
【VTR終了】
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司会 関口 宏(以下、関口):国会改革ですか。できんならやってないと本当にどうしようもないなって気が僕はしてますが、古田さんにちょっと解説してもらいましょう。

古田大輔(以下、古田):はい。今話題に上がった国会改革というのは、国会でやるべき3つのことを、分割してやりませんか、というふうなものが成り立っています。一つは国家ビジョンを議論する場。それを、党首討論でしっかりとやりましょうと。で、もう一つは、法案・政策を議論する場として、各委員会での議論を政策本位に活性化しましょうと。で、疑惑については特別調査会を設けて、しっかりと調べましょうと。でそれぞれですね、例えば党首討論は、2週間に1回開くようにしようとか、大臣も討論するようにしよう、など。また、委員会の方に関しては、政策本位の議論だけではなくて、まず日程を計画化しましょうと。実は今、国会の日程って直前まで決まらないので、質問の内容もどうしても浅くなってしまうし、答弁も官僚が徹夜で準備すると。そういうふうな状態になっているので、もっと計画的にしっかりと議論しましょうと。でもう一つが、特別調査会。ここで、ちゃんと報告書、国会の中でしっかりと捜査をして調査をして、報告書を作成して公表をする。なので結論を出しましょうというふうなことを話しています。
で、これ、かなり包括的でですね、画期的な提案だなと思うんですけど、まだ課題は残っています。で、何かというと、一つは、党の事前審査。自民党が法案を出してくるときに、既に党内でかなりしっかりと議論がされていると。そうすると、国会の場ではほとんど最後の微調整しか出されなくなってしまう。で、それに対して反発する野党は、じゃあもう日程で争って、廃案に。議論を先延ばしにして廃案にしましょうというところで争うようになってしまう。そうすると国会内での議論が盛り上がらないと。

で、もう一つ大きな課題となるのが、じゃあ特別調査会を設置しましょうといっても、設置基準をどうするんですかと。今実際、森友加計問題に関して、野党の方々は特別委員会を作るべきだと言ってきたと。でも自民党はそれに対して、「いやいや、いりません」と言って、設置させない。じゃあこういうふうに特別調査会のルールを作ったとしても、もし設置基準が厳しかったら、そもそも設置できない。与党側は拒む。という構図が続くのではないかと。
で、これそれぞれですね、国会改革案を読んでいただくと、記されてることがあって、こちら側(事前審査と日程闘争)で言うとですね、実はイギリスは事前審査ってやってませんと。だから国会の議論が盛り上がる。こちら(調査会の設置基準)に関しても、ドイツの場合だと、国会議員の4分の1が賛成したら設置しましょうという事例をそれぞれ示してるんですね。まあここら辺をもとにして、今後この国会改革案の議論が進めばいいなと思うんですが、実は国会改革の議論って平静を通じてもう20年間ずっとやってるわけです。でも進まない。みんな問題があることは実は分かっている。で、なぜ進まないかというと、やっぱり与野党の信頼関係が成り立たたないから。そこで、やはり野党の方々も与党の方々も、先程の小泉さんも仰ってましたけども問題点は認識してるんですね。なので、何とかそこで話し合って、より良い方向に進めてもらえたらなと思います。

関口:この説明を受けて青木さんはどう感じます?

ジャーナリスト 青木 理(以下、青木):その通りだなと思う部分が多いんですけど、ただ、昨今の今の、日本の雰囲気を見てるとワールドカップ一色でしょ。で、実はその影で、例えば今回の働き方改革法案も、法案自体にもいろいろと問題はあったんですけれど、例えば参議院の厚生労働委員会でこれ、委員長の解任決議案ってのを野党が出したんですよね。ところがこれ、採決しないまま進んじゃったんですよ。これ、初めてのことなんですよね。
で、民主主義って何が大事かっていうと、結果も大事なんだけど、やっぱり手続きってものがものすごく大事でね。例えば、憲法解釈ってものを一内閣がひっくり返すとかね、あるいは、共謀罪のときですかね、委員会採決をすっ飛ばしちゃうとかね。そういうことをこれまでずーっとやってきて、またこんなことを行ってるんだけれど、そのワールドカップであまり注目もされない。批判もされない。で、その陰に隠れてって言ったら失礼かもしれないけど、加計学園の理事長がこっそり記者会見したりとかってこともやってるんですよね。だから、嘘とかごまかしってのがあるんだけど、全然丁寧でも真摯でもない。で、今まさに紹介してもらったような、こういう議論もほとんど行われない、っていうことで。ただ一方で、支持率は徐々に戻ってきてるんですよ。これどういうことかっていうと、やっぱり多分、これ何をやっても変わんないでしょうと。何言っても変わらないじゃないかっていう諦めっていうかね。ニヒリズムの影で、一番大事な手続きがどんどんどんどこなぎ倒されていってるっていう状況ですよね。だからこれ、僕はですけれども、いつかこれまとめて、今のところ大丈夫かもしれないけど、いつかまとめてとんでもないツケを払わされる日が、僕はくると思いますよ。

寺島 実郎(以下、寺島):日本の政治に、今、漂ってる議論にもつながる虚脱感っていうのかな。ある意味では、政権側がある種の傲慢とも言えるような数の論理っていうようなですね、背景にあるのはね、今、支持率の話が出ましたけれども、結局ですね、国民の政治を見抜く力っていうのかな。それが支持率にあらわれてると思うんですね。で、実はその背後にある構図を分析すると極めて明快でね。例えば地方で議論してて、地方の経営者とかですね、高齢者の人。日本の高齢者の7割以上の人がですね、いわゆる今の政権を支持しているって流れがある。その背景にはですね、分かりやすく言うと株がね、この政権下で2倍になったってことなんですよ。で、つまりね、その株ってのはね、極めて政治的に株を上げてるんですよ。日銀のETF買いと、それからGPIFっていう我々の年金基金を今ですね、約60兆円突っ込んでます。株式市場に。そんな国は世界にありません。で、そうやって株を上げてるからね、今ね、株の7割以上が高齢者が持ってんですよ。若い人が株なんか持っちゃいないです。ですから、何でもいいからですね、政治主導で株上げてくれっていう空気の中にあって、株が上がる政治ならいいじゃないかと。だけどこれはですね、例えば広大負担がくるんですよ。我々の後の世代にね。例えば財政出動しとけば赤字国債のツケがくるんですよ。で、そういう、経済を歪めちゃうんですよ。政治的にですね、株価を動かしたりするとね。ですから、政治改革だとか国会改革だっていう問題意識に対して、我々も正面から問題意識をもっていかなきゃいけない。そういうことだろうと思いますよ。

関口:かもしれませんね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、青木氏の発言に視聴者にミスリードを生みかねない内容が含まれている
2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、青木氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている

青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

岩本氏(抜粋):例えば参議院の厚生労働委員会でこれ、委員長の解任決議案ってのを野党が出したんですよね。ところがこれ、採決しないまま進んじゃったんですよ。これ、初めてのことなんですよね。
で、民主主義って何が大事かっていうと、結果も大事なんだけど、やっぱり手続きってものがものすごく大事でね。例えば、憲法解釈ってものを一内閣がひっくり返すとかね、あるいは、共謀罪のときですかね、委員会採決をすっ飛ばしちゃうとかね。そういうことをこれまでずーっとやってきて、またこんなことを行ってるんだけれど、

要旨をまとめると、
・委員長解任決議を野党が提出した。
・しかし、委員会は採決しないまま審議が進んだ。これは初めてのことである。
・与党は今回も民主主義の手続きを飛ばした
というものです。

しかしながら、今回のような委員長解任決議を飛ばす行為は決して初めてのものではなく、10年前にも同じことがあったことが分かっています。委員長の解任決議は、野党第一党が反対した場合採決しないという慣例があるからです。今回の場合、現在の野党第一党である国民民主党がこの解任決議に同調しなかったため、解任決議案の採決が行われなかったのです。

よって、今回の青木氏の発言は「参院の慣例で野党第一党が同調しないために採決を行わなかった」だけであるにもかかわらず、「与党が野党の解任決議案を無視した」という事実と異なる内容が含まれる恐れがあります。したがって、この発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):高齢者の人。日本の高齢者の7割以上の人がですね、いわゆる今の政権を支持しているって流れがある。その背景にはですね、分かりやすく言うと株がね、この政権下で2倍になったってことなんですよ。で、つまりね、その株ってのはね、極めて政治的に株を上げてるんですよ。日銀のETF買いと、それからGPIFっていう我々の年金基金を今ですね、約60兆円突っ込んでます。株式市場に。そんな国は世界にありません。で、そうやって株を上げてるからね、今ね、株の7割以上が高齢者が持ってんですよ。

要旨をまとめると、
・日本の高齢者の7割が安倍政権を支持している
・その理由は株である。なぜなら高齢者の7割以上が株を持っており、株価が上がっているからである

という内容です。

ですが、
・日経新聞の世論調査によると、2018年6月時点で安倍政権を最も支持している年齢層は18歳~29歳である。この年齢層の内閣支持率は63%で、50代の44%、60代の44%と比べてもひときわ高くなっている。他社の調査も検証したところ、時事通信や読売新聞でも同様に若年層が高く、高齢者層の支持率が低いことが見て取れる。よって、高齢者の支持率が70%というのは誤りである可能性が高い。
・高齢者の7割が株を持っていたとして、その7割が安倍政権支持に回っているとは論理的に言い切れない。また、共同通信によると、安倍政権を支持する理由として経済政策以外にも「外交に期待できる」「リーダーシップがある」など様々な理由が挙げられている。

以上のことから、今回の報道での「高齢者の7割が安倍首相を支持している」「安倍首相を支持する理由は株価の上昇である」という主張は、「高齢者で安倍首相を支持しているのは4割弱」「指示要因としては外交やリーダーシップ等のウェイトも大きい」という実態にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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