2018年12月9日 サンデーモーニング(前編)

2018年12月9日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2018年12月9日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
改正入管法成立について報道された部分
辺野古移設埋め立て準備について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
①改正入管法成立について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【スタジオ】
橋谷能理子アナ:改正入管難民法など重要な法律が、多くの疑問を残したまま成立しました。与党内からも、国会軽視の声があがっています。

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【VTR】
・12月8日、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が可決・成立
・スケジュールありきで審議が不十分との批判がされており、野党側は、厚労省の調査不足を指摘
・最低賃金以下で働かされていた実習生について、法務省は22人と認定したが、野党の集計では1927人だった(全体の67%)。
・2015年からの3年間で69人の外国人技能実習生が死亡
・入管難民法改正案の参議院審議時間は20時間45分であり、審議時間が異例の短さだと野党側は批判
・自民党の村上衆議院議員は、「国会を軽視することは、国民を軽視することになる」と述べた

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【スタジオ】
橋谷アナ:本国会で成立しました改正水道法、そして改正入管難民法なんですけれども、野党は議論の前提である調査の不十分さを指摘しています。まず水道法についてなんですが、海外で水道事業を民間に委託した後、再公営化した事例は海外で235件あるんですけれども、厚労省は3例しか調査していません。また、改正入管難民法、これについては、失踪した技能実習生に対する聞き取り調査で、法務省は最低賃金以下の実習生は22人としていたんですが、野党の調査では1927人。全然違うわけなんですね。なぜこのようなずさんな調査が行われていたのか。自民党の村上議員によりますと、かつての自民党内では、出された法案に対して部会や政務調査会、総務会が、厳しいチェックを行っていたと。ところが今では時の総理やトップがやりたいことに引っ張られてしまうというんですね。その結果、上に逆らうのは損だということになって、いわゆる生煮えの法案が出されてしまうと、村上さんは指摘しています。

関口宏氏:一強体制の下では起こりやすい現象だし、だから国会を見てると虚しくなってくるんだよね。何のための国会なのか、段々段々、馬鹿馬鹿しくなってきちゃうんですがいけませんか、秀征さん。

田中秀征氏:あの、党が立ちはだかるんですよね。こういう事態は。昔の自民党でも。それで、無理なことをさせないという方向で働くんだけれども、皆黙ってついてくるということですよね。特に今回、6月にやるぞって言った、いわゆる今回の外国人受け入れの問題ってのも、来年4月に実行するんですかね。もう考えられないですよ。これほど短期間に、しかもこれほど大量に外国人を受け入れたっていうことは、有史以来ですよね。古代まで遡ってもこんな例はないんで、国の形、社会の形、あるいは文化の形。これは想定外っていうくらい、大変大きな変わりようをするだろうと私は見てるんですよ。これが4月始まって直ぐにね、何らかのマイナスの兆候が、ほとんど必ず出てくるって言ってもいいんで、そうしたらもう、勇気をもって撤退するとかね、方向転換するとかしてもらわなかったら、受け入れた日本人にとっても幸せじゃないし、そしてまた来てくれた外国人にとっても幸せじゃないって、そういう事態を招く可能性が非常に強いですよね。ただ人手不足解決して良かったって話じゃなくて、その事自体、人手不足が解消されるってことは、賃金に下落ちの圧力がかかるってことだから、日本の中低所得者の人たちの賃金が上にあがっていくって話じゃないんですよ。高すぎないように、人手が必要だって話ですからね、そしたら、生活も変わらないっていろんな事態が出てくる。それこそややこしいっていう言葉が最近出てきましたけど、ややこしい事態になるということが避けられないから、これは本当にぶつかったら勇気をもって転換するということが必要だと思います。こんな重大なことをこんな政策でやることは絶対やっちゃいけないですよ。

関口氏:なんか日本の国の雰囲気がガラッと変わってしまうかもしれないかなあという気もしないでもないんですが、大宅さんどうでしょう。

大宅映子氏:いやあ、見てて民主主義の一番悪いところが、そのまま見えてきたな。つまり、本当は徹底的に議論して、最後の手段として数で決めるわけ。もうすぐ数で決めるっていうことですよね。で、しかもその議論に出すデータがインチキで。しかも、世界的レベルで見ると、一周二周遅れの政策。もうやめました、移民のことなんか世界中で大問題なわけです。メルケルさんも代わんなきゃいけない状況になって。移民じゃないって言い張ればそれと違うって言い張れるのかって、すごく異常な感じがしますよね。で、日本の場合、人手不足って企業から要請があるんだと思うんですけれど、人手不足って、人手だけをもらう、労働力だけをもらうってあり得ないです。人間がくるんだから。で、人間がちゃんと日本人と共生できるようにするってことを徹底的にやって我々の側もその気持ちを持ったうえで、スタートさせなきゃいけないことを、皆そう言ってるのに通ってしまう空しい。

関口氏:ありますね。高橋さんいきます。

高橋純子氏:あの、やっぱり、あまりにもひどすぎる。すべてのことがですね、どれから言っていいのか分からないという。で、結局何が、どういう気持ちが喚起されるかというと、空しいとかですね、もう何が問題なのかも段々分からなくなってくるという、こういう、無関心。政治に対する無関心、法案に対する無安心みたいなものを誘うという点で、罪が大きいなと思います。やっぱりなんで議論が必要かと言うと、もちろんいい法律にしていくっていうこともそうなんですが、社会のですね、意識の肝要。この問題をどうとらえたらいいのかということを有権者一人ひとり、主権者一人ひとりが考えていく。そのためにも充実した審議をしていくっていうことが非常に大事だと思うんですけれども、そういう役目すら政治が果たせていないっていうのは、非常にこれも罪が大きいなと思います。で、結局どうしてこういうことをしていると、何が損なわれるかというと、結局、国権の最高機関である議会そのものの権威を自ら掘り崩してるということになるわけですよね。結局、国会議員が自分で自分の首を絞めてると。どうしてそういう事態に対して自分たちが危機感をもたないのかっていうことを非常に強く思います。

関口氏:古田さん。

古田大輔氏:2つの点を指摘したいんですけれども、一つは、なぜ今こういう法案が必要とされたか。労働力不足と少子高齢化ですよね。で、そのうちの労働力不足の方をとって、こういう法がまた改正されると。で、ただし、大きな問題として、少子高齢化は、長期的にみて日本の国力を絶対に削いでいく問題があるのに、そこのところを深く議論せずに、これは移民ではないと言い切って、労働力だけ短期的に、応急措置的に入れることをちゃんと議論しなかったのは非常に大きな問題であると。で、もう一つの点なんですけれども、この問題って長年もう議論してきたわけです。僕、10年前の改正のときに取材をしていたんですけれども、10年前に技能実習制度の改正があったと。そのときも、奴隷労働だと。これは、労働者としての人権を守らないといけないと言って、改正したわけです。それでいたはずだった。けど、実際蓋を開けてみたら、2015年から3年間で69人の方が亡くなっている。異常な状況。むしろ、状況は全然改善されていなかった。で、この間、10年間あったはずなのに、いよいよ議論する。でも実際の審議時間は20時間しかなかったと。で、首相も69人亡くなって、今、初めて知りましたと。どれだけやっぱり議論がなされていなかったのかというところにやっぱり衝撃を覚えます。

関口氏:青木さん。

青木理氏:酷いんです。本当にひどいんです。この法案、冷静に考えてみると、野党がすごく反発している映像ばっかり流れましたけれど、この議論ね、むしろ野党多分、ちゃんと議論すれば賛成した、むしろ、外国人の受け入れに対して野党の方がむしろ寛容なんですよね。つまり、本当はこの法案、国会で大いに議論して、相当充実したものにしようとすれば、与党がね。しようとすれば、多分できたはずなんですよ。なぜやらなかったかって言えば、むしろ、経済界はとにかく今回の法案を欲しがるんだけれども、安倍さんのコアな支持基盤、特に保守とか右派って言われてる人たちが、反対なんですよ。だから、もうできるだけ議論を短く、たいして深くしないでも通しちゃいたいっていうこれ、一方的に政権の都合なんですよね。それによって、まさに皆さんおっしゃったように、国会が完全に形骸化した特定秘密保護法とか安保法とか共謀でも酷かったけれども、今回の、少なくとも国会審議の通し方に関して言うと、最悪ですよ。こんなことやってたら国会いらないって話になっちゃいますよね。

田中氏:ちょっと、もうちょっとこれ、言いたいんだけど、古田さんがさっきおっしゃったけど、少子高齢化の問題で、もうこの事態は、少子化を加速すると思ってるんですよ。要するに、学生生活がますます厳しくなってくる。この時代だから、どうしてもお子さん作るっていうことになれば、大学あげたいと思うから、とても、2人の力では大学、一人しかあげられないって言ったら、2人の子はなかなかいかないっていうふうに、考えてるんですよ。で、これうんと深刻で、学生生活がうんと厳しくなる。親からも、もっと仕送りしてもらう。親の所得も増えないっていう。それはね、少子高齢、少子化の方に向いちゃうんですよ。拍車がかかるんですよ。僕が一番具体的に心配してるのはそれなんですよね。だから当面、確かに人手不足の解消にはなるかもしれないけどね、もっともっと深く考えて議論して決めていかなきゃいけない問題だと思うね。

関口氏:うん。目の前の労働力不足、これは間違いないんだろうけど、これだけ解決しちゃえっていうことじゃ済まない大きな実は問題なんだろうと思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、田中氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):これほど短期間に、しかもこれほど大量に外国人を受け入れたっていうことは、有史以来ですよね。古代まで遡ってもこんな例はないんで、(中略)少子高齢化の問題で、もうこの事態は、少子化を加速すると思ってるんですよ。要するに、学生生活がますます厳しくなってくる。

要旨をまとめると、
・この短期間にこれほど大量に外国人を受け入れることは有史以来初である
・この問題は日本の少子高齢化を加速する
・なぜなら日本の学生生活が厳しくなるからである
というものです。

しかしながら、
・外国人労働者受け入れ数は過去5年で約60万人、今後5年で35万人受け入れ予定のため、今回の施策が有史初の大規模受け入れということにはならない
・日本の少子化問題と外国人労働者受け入れには何の因果関係もない
・同じく、日本の学生生活の厳しさと外国人労働者受け入れには何の因果関係もない
など、発言と相反する事実が存在しています。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、高橋氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。

高橋氏(抜粋):あの、やっぱり、あまりにもひどすぎる。すべてのことがですね、どれから言っていいのか分からないという。で、結局何が、どういう気持ちが喚起されるかというと、空しいとかですね、もう何が問題なのかも段々分からなくなってくるという、こういう、無関心。政治に対する無関心、法案に対する無安心みたいなものを誘うという点で、罪が大きいなと思います。

要旨をまとめると、
・すべてのことがひどすぎる(?)
・政治に対する無関心を引き起こす
というものです。

しかしながら、
・法案の採決は合法的手続きを経ており、ひどいという批判は非常に感情的、恣意的なものである
・政治に対する無関心とこの法案の可決とは何の因果関係もない

など、発言と相反する事実が存在しています。

以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「今回の入管法には問題がある」「移民は日本を不安定にする」「議論がなされていないのが問題だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「今回の入管法は問題こそあれど人材は間違いなく必要だ」「移民への差別意識をあおることは問題だ」「原理原則論に終始する野党側にも問題がある」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
辺野古移設埋め立て準備について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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