2020年12月20日 サンデーモーニング(中編)

2020年12月20日 サンデーモーニング(中編)

12月20日のサンデーモーニングのレポート中編、医療の人手不足について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 東京都では新規感染者が増え続けており、警戒レベルはもっとも深刻な『医療体制のひっ迫』の段階まで引き上げられた。7日間平均の新規陽性者数や接触歴不明者数は次々と過去最多を更新し、東京都の幹部からは『都内の緊急事態宣言のようなことも考えていかないと』との言葉まで聞かれるほどだ。
 病床が不足する中、東京都は初のコロナ専用病院をオープン。しかし当初予定していた100床の3分の1にも満たない32床からスタートとなった。背景にはコロナに対応できる医療スタッフの不足があり、集められた看護師48人のうち29人は小児病棟などからの参加で、そのほとんどは感染症の対応を経験したことがないという。

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【パネル解説】
東京の新規感染者は木曜日に過去最多の822人で、800人を超えた。重症者も火曜日に緊急事態宣言解除後最多の78人となり、感染拡大が止まらない。東京の人出を緊急事態宣言が出された4月7日と比較しても、主要な駅や観光地の人出は減少するどころか増加している。こうした中、東京都のモニタリング会議で保健所が入院先を見つけられず、都に入院先の追加を依頼する件数について、Go To トラベルに東京が追加された10月1日は一日50件ほどだったのに対し、最新の数字では160件、3倍以上に増えていることが分かった。東京都医師会の猪口副会長も「保健所が入院先を見つけられず、入院が翌日以降に繰り越される事例も増えている」としていて、医療ひっ迫の影響がここにも表れてきている。

【コメンテーターによる解説】(一部要約)
尾崎治夫 氏(以下尾崎氏):一番上のグラフ(東京都の新規感染者数)を見ると、カーブが一時なだらかになってきたのがまた急峻に上がってきています。この週の増加率で行くと、年末には1000を超えるという可能性は十分あると思います。2番目の表(東京都内の人出)を見ますと夜の9時の段階の人出の流れ、やはり飲食に行くとか飲みに行くとかが入ってくる流れだと思うんですけど、これをもっとどんどん抑えていかないと、なかなか感染の拡大は防げないと思っています。それから一番下の表(保健所から都への入院調整依頼数)では、調整が困難な例が非常に増えていると。今、入院するのか宿泊療養するのかを保健所さんが指示するまで自宅待機になっている人がもう1500人を超えていて、大分きつい状態になっていることは確かです。(要約)

荻上チキ氏:ベッド数を確保できても人手の確保は厳しい状況にある。なので政府が見通しを出すことが重要だと思います。赤字の補てんを約束するとか、コロナ感染症が緩和されるまで医療支援をやめないとか、あらかじめ宣言することで医療リソースのひっ迫を少しでも緩和すると。人の移動を防ぐのも政府のメッセージなので、早めに宣言を、緊急事態宣言ということじゃなくて、政治的コミュニケーションを行い続けることが大事だと思います。(要約)

青木理 氏:さっきのVTRで昭和大学病院でしたっけ、脳卒中とか心筋梗塞を一部断らざるをえないというのはほぼ医療崩壊が起き始めていると考えるべきなんでしょうね。夏から秋にかけて、多少、余裕があったときに一体何をしてたんだろうか、もちろん政府はいろいろ対応はしていたんでしょうけれども全然それが形になって表れていない。赤字の病院がまだ苦しいままだという状況を見ていてたぶんみんなが不安を抱いている。さっきの政治の話に戻すと例えばインターネットの番組に出て「ガースーです」と言ったとかね、会合がけしからんと言ってるんだけれども、本当にみんなが不安に思ったり怒ってるのはそこじゃない気がするんですね。菅さん、お酒飲まないので、ああいう仕事のスタイルだと思うんですよね。それ自体は別に非難しても仕方のないところはあるんですがそれよりも、これだけ予測されていた感染が拡大してきたのに、一体何をしてるんだというGoToにしても、結局意地なのか二階さんへの配慮なのか止めずに、突然止めたのはどうも支持率だというお話がありましたが支持率が下がると止める、それてろくな説明がない国民に対して本気で動いているんですよ、あるいは私は本当にこう思っているんだという、自分の言葉で血の通ったメッセージを発しないということ、それに伴って本気で動いていないところが不安感とか憤りというのが会食への批判とかガースー発言への批判になってると思うんですよね。なので結論を言えば、結局、政治が機能していないんじゃないかとこれだけ深刻な状況になっているにもかかわらず、ということに対する不信感、不安感ですよね。だから、本当に深刻な政治不信というかね、政治に対する頼れないというような不安感というものが今、ものすごくまん延している。今からでも遅くないと思うのできちんと記者会見なり説明の場を作ってメルケルさんのようなとは申しませんけれどもこれから本当にどうするのか、自分は今、どう考えているのかというようなメッセージを発して、共に対策をしていきましょうという体制を作らないとこれから先、大変なことになるんじゃないかなというのと、もう1つだけ申し上げておくと、緊急事態宣言を出せと野党がおっしゃってて、メディアも一部言ってるんですけどこれは野党とかメディアが私権制限を伴うようなことを出せ出せというふうにある種求めていくというのは、少し違うのかなと。むしろ政権が緊急事態宣言を出すというときにどこまで私権制限を許すんですかということをチェックする役割は野党とかメディアが果たさなくちゃいけないという辺りはちょっと注意深く見なきゃいけないかなと思っています。

関口宏 氏:尾崎さん、今朝の段階でこれからクリスマス、忘年会お正月になります。何を我々に気をつけろとおっしゃいますか?

尾崎氏:このまま感染者が増えますと、通常医療、冬場に増えてくる脳卒中などの救急患者さんを診れなくなりますので、それを防ぐためにはしっかりした行動の変容。20歳~50歳代の方の動きをぜひ止めていただきたいのが一つ。それから病気の予防。生活習慣病を持っている方は、この冬場に大きな病気につながらないよう予防をしっかりやっていただきたい。感染者をこれ以上増やしたらもちませんので、そこをぜひ皆さんにお願いしたいというのが本当の気持ちです。(要約)

【検証部分】
今回は医療のひっ迫に関する報道を取り上げました。今回問題となるのは、青木氏の発言が政治的に公平ではない点です。

該当する箇所は、「もう1つだけ申し上げておくと、緊急事態宣言を出せと野党がおっしゃってて、メディアも一部言ってるんですけどこれは野党とかメディアが私権制限を伴うようなことを出せ出せというふうにある種求めていくというのは、少し違うのかなと。むしろ政権が緊急事態宣言を出すというときにどこまで私権制限を許すんですかということをチェックする役割は野党とかメディアが果たさなくちゃいけないという辺りはちょっと注意深く見なきゃいけないかなと思っています。」という部分です。つまり青木氏は、野党、メディアが緊急事態宣言を要求しているのは、彼らの立場、役割からずれていると指摘しています。

ここで野党、メディアに期待されている役割を整理します。
野党の役割として重要なのが、現在の社会に必要な政策を提案し、議論を通してより良いものにしていくことです。その中で与党と方針の異なるものについては反対し、与党と方針を同じくするものは足並みをそろえて進めていくことが求められます。その点では、野党は与党に反対することを目的とするのではなく、より良い政策を求めることを第一とするべきだといえます。
たしかに青木氏の言うように、野党の役割の1つとして政権の行き過ぎを是正するというものも求められています。しかし政策の是非に関しては、そのような監視は自らの政策と照らし合わせたうえで行われるべきです。本来緊急事態宣言が求められているにもかかわらず、野党の役割だからという理由のみでそれに反対するのは、日本のためにはなりません。もちろん野党自身が緊急事態宣言を行うべきではないという立場であるならば、そのような指摘は意味を持ちますが、反対のための反対は建設的ではなく、そのような姿勢は野党のあり方として望ましいものとはいえません。

次にメディアの役割を整理します。メディアの役割は国民に事実を伝えることにあります。もちろんその中に、政権の行き過ぎをチェックする役割も求められています。しかしそれ以上に、一方の立場に偏らずに報道することが求められているのではないでしょうか。国民知るべきことは、一方に偏った視点からの政権に対するチェックや批判ではなく、なるべく公平な視点から見たときの真実ではないでしょうか。
政権に対する批判や権力の行き過ぎに対するチェックも、公平な立場に立ったうえで行われてこそ説得力を持つものであり、はじめから政権批判を目的としたような場合には、報道に説得力が失われることにもなりかねません。

今挙げたようなものが、野党やメディアの役割の一つとして挙げられますが、青木氏の指摘では野党、メディアは緊急事態宣言を求めるべきではない、政権のチェックに徹するべきだとしています。

このような青木氏の野党、メディアのあり方に関する指摘は、政治的な公平性を欠いたものといわざるを得ません。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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