2019年12月22日 サンデーモーニング(後編)

2019年12月22日 サンデーモーニング(後編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年12月22日放送回の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① トランプ米大統領の下院での弾劾訴追について報道された部分
② 徴用工問題における韓国国会議長案への反発について報道された部分
③ 「風を読む」にて日本の今年の景気について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて日本の今年の景気について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 今、クリスマスケーキ商戦をめぐり異変が起きている。ここ最近、洋菓子店でのケーキの売上が芳しくなく、洋菓子店の倒産件数は2000年以降で最多となった。その背景にはコンビニスイーツの台頭に加え消費者の節約志向からケーキへの支出額減少が背景にあるという。
一方、日経平均株価の終値が今年の最高値を更新。経団連の調査では今年の大企業の冬のボーナスは過去最高を記録し、一見日本経済は好調なように見える。しかし民間のシンクタンクによれば、民間企業全体では去年より減少するという。去年8月、政府は名目賃金は21年ぶりの高い伸び率だったと公表したが、その後厚労省がデータを補正したことで賃金伸び率が実際より高い数値だったことが判明。野党からの追及に対し、安倍総理はあくまで労働者の賃金は上がっていると主張した。しかしOECDの調査によると、1997年の水準に比べ実質賃金は10%低下したという。安倍政権は目標として2%の物価上昇を掲げたが、日銀による積極的な金融緩和から6年以上が経過しても達成できそうにない。こうした日本の状況を外国人は「全てのものが安い」と話している。安い物価と上がらない賃金の負の連鎖に、日本社会はどっぷり漬かっており、非正規雇用労働者も10年前より約360万人増加している。慶應大白井さゆり教授は、株価は上昇しているにもかかわらず日本経済が低迷している理由について「株高になっても恩恵を受ける人は一部。雇用が増えているのは非正規の仕事」と話した。

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):実質GDPは1%前後を彷徨っているが日経平均は上がっている。その理由は公的資金を投入しているから。日銀が日本の株式の保有のトップになった。だから幻覚症状になっている。景気が良いような症候群に陥っているが、大事なのは国民が潤っているかどうか。経世済民を忘れてはいけない。

西崎文子氏(全文):株価のことを言うことで格差が隠れているっていうのはそこはもう明らかなわけですよね。でも、やはり安倍首相が好循環っていうときはそういった株価のことだけをもちろん言っているわけで。ですから、社会構想がすごくちぐはぐになって、オリンピックでカンフル剤のように景気を上げようと。で、なんか皆そういう気になるんですけれども、でも実際にはこれが長く続かないっていうことは見えてるわけですよね。そこが政治不信にもなってますし、何とも言えない無力感につながってるんではないかと思うんです。

犬山紙子(要約):児童虐待のボランティアをやっているが、シングルマザーの半分が貧困であることがわかっている。それが子どもたちに影響が出ている。格差是正は大きな問題だと。

荻上チキ氏(全文):脱デフレを掲げたんですけれども、まだまだ金融政策、成功していません。それから財政政策なども非常に中途半端な状況があります。一方で、雇用が増えたという話を政権は強調するんですけれども、雇用の質の改善も進んでいない。プラス、やっぱり給料というものを上げていくっていうことが必要になってくるわけですよね。こうした一貫性のある政策ということを本来は最初からやるべきだったのが、例えば消費税を上げるであるとか、いろいろちぐはぐな状況が続いているので、長期政権だからできることっていうのは本来あったにも関わらず、それをスポイルしてしまった側面がある。そこのあたりはやっぱりネジを巻いて欲しいなというふうに思いますね。

青木理氏(全文):僕ら日本は豊かな先進国だというようなこう、幻想の中でこの何十年か生きてきたんだけど、そろそろひょっとするともうこれ先進国とは言えないんじゃないなかと。だってダイソーとか100円ショップのものがこの海外の国にの方がね、もうどんどん上がってきていて、日本はむしろ安いねなんて言われるような状況ってのそれだけじゃないんだけれども、先進国とは言えない。今日扱ったね、テーマの中でも、例えばジェンダーギャップは世界最下位クラスですよね。それから気候変動への取り組みっていうのはもう全然日本はやらないじゃないかって国際的に文句を言われてる。それからまあ、これは公文書の在り方なんていうのはもうひどい状況だっていうことがこの間明らかになってきて、なのにその政権は嘘だったりごまかしだったり隠蔽したりとか廃棄しちゃったりっていうことを繰り返していると。今日のVTRの中で確かその首相が、世界の真ん中で咲き誇った1年だったっていうようなことをおっしゃったような気がするんだけれども、どうやら僕らはもうそうじゃないと。先進国ではどうもなくて、やっぱりその新しい時代にふさわしい産業界のイノベーションも含めて、来年はやっぱりもっとこう根本的にあらゆるものを見直して新しく一歩前に出るような時代にしていかないと、本当にこれ、なんていうかな、こズルズルとダメになっていく。ズルズルと後退していきかねないっていうことをいい加減自覚するべきだなと。今のVTR見て僕はそう思いましたけどね。
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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋):株価のことを言うことで格差が隠れているっていうのはそこはもう明らかなわけですよね。でも、やはり安倍首相が好循環っていうときはそういった株価のことだけをもちろん言っているわけで。ですから、社会構想がすごくちぐはぐになって、オリンピックでカンフル剤のように景気を上げようと。で、なんか皆そういう気になるんですけれども、でも実際にはこれが長く続かないっていうことは見えてるわけですよね。そこが政治不信にもなってますし、何とも言えない無力感につながってるんではないかと思うんです。

要旨をまとめると、
・安倍首相の言う好循環は株価のことだけを言っており、格差のことを隠しているため社会の構造がちぐはぐになってしまう。
・オリンピックでカンフル剤のように景気を上げようとしているが、そうした景気は長くは続かないことは見えている。これが政治不信と無力感を生んでいる。

というものです。

しかしながら、
・雇用や企業収益の上昇など安倍首相がアベノミクスによる成果として掲げているものは株価だけではなく、西崎氏の主張は事実に即していない。また格差のことを隠しているという主張や社会の構造がちぐはぐになっているという主張には何ら根拠がない。
・オリンピックは短期的な景気回復の要因になり得るが、好景気が長くは続かないという主張は好調な経済を鑑みれば事実に即しているとは言えない。また、政治不信や無力感がアベノミクスによって生じているという主張には何ら根拠がなく、野党への支持率が極めて低い現状を鑑みれば事実とは言い難い。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西崎氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
萩上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

萩上氏(抜粋):脱デフレを掲げたんですけれども、まだまだ金融政策、成功していません。それから財政政策なども非常に中途半端な状況があります。一方で、雇用が増えたという話を政権は強調するんですけれども、雇用の質の改善も進んでいない。プラス、やっぱり給料というものを上げていくっていうことが必要になってくるわけですよね。こうした一貫性のある政策ということを本来は最初からやるべきだったのが、例えば消費税を上げるであるとか、いろいろちぐはぐな状況が続いているので、長期政権だからできることっていうのは本来あったにも関わらず、それをスポイルしてしまった側面がある。そこのあたりはやっぱりネジを巻いて欲しいなというふうに思いますね。

要旨をまとめると、
・脱デフレを掲げているが、金融政策はまだ成功していない。財政政策も中途半端だ。
・雇用が増えたという主張があるが、雇用の質については改善していない。賃上げを達成する必要がある。
・本来はこうした一貫性のある政策を最初からすべきだったが、消費増税をはじめちぐはぐになってしまったため、長期政権だからできたことができなかった側面がある。

というものです。

しかしながら、
・第2次安倍内閣以降、日本経済はアベノミクスによって消費者物価指数がプラス基調に転ずるなど「デフレではない状態」が達成されており、デフレ脱却の定義である「再びデフレに陥る見込みがない」状態とまでは言えないものの政権発足以前と比較して良好な状態にあると言える。またマイナス金利によって大企業や中小企業の設備投資が続くなどより一層脱デフレが加速する要素も存在しており、「成功していない」とする主張は事実に即しているとは言えない。
・労働需要と正規雇用労働者が増加し、非正規労働者については増加するものの「正規雇用の職がないから非正規労働者になった」という不本意非正規労働者は減少するなど安倍政権下での雇用政策は成功している。
・雇用の質については働き方改革をはじめとする施策が実施され効果を出しており、また賃金についても働き口の増加で新規に雇用された労働者や定年退職後に非正規雇用された高齢労働者の増加が平均を押し下げているため、質が改善していないとする主張は事実に即しているとは言えない。
・民主党政権下で決まった消費増税を除き、安倍政権はこれまで脱デフレ、金融緩和を目的とした一貫性のある政策を実施しており、長期政権だからできたことを捨てたという主張は事実に即していない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):僕ら日本は豊かな先進国だというようなこう、幻想の中でこの何十年か生きてきたんだけど、そろそろひょっとするともうこれ先進国とは言えないんじゃないなかと。だってダイソーとか100円ショップのものがこの海外の国にの方がね、もうどんどん上がってきていて、日本はむしろ安いねなんて言われるような状況ってのそれだけじゃないんだけれども、先進国とは言えない。今日扱ったね、テーマの中でも、例えばジェンダーギャップは世界最下位クラスですよね。それから気候変動への取り組みっていうのはもう全然日本はやらないじゃないかって国際的に文句を言われてる。
それからまあ、これは公文書の在り方なんていうのはもうひどい状況だっていうことがこの間明らかになってきて、なのにその政権は嘘だったりごまかしだったり隠蔽したりとか廃棄しちゃったりっていうことを繰り返していると。

要旨をまとめると、
・我々は日本が豊かな先進国だという幻想のなかで生きてきたが、100円ショップのものが海外の人に安いと言われ、ジェンダーキャップ指数は世界最下位、気候変動への取組にも国際的に文句を言われるなど先進国とは言えない状況にある。
・公文書の管理もひどい状況だと言われているにもかかわらず、政権は嘘やごまかし、隠ぺいや破棄に終始している。

というものです。

しかしながら、
・100円ショップのコストパフォーマンスやジェンダーキャップ指数、気候変動への取組といった問題は一国家を先進国かどうか判断する基準ではない。したがって青木氏の「日本が先進国だというのは幻想だ」とする主張は事実に即していない。
・森友加計問題や桜を見る会など、公文書管理について問題とされてきた事柄は公文書管理法に則ったもので違法性はない。したがって「安倍政権が嘘、ごまかし、隠ぺい」をしたとする主張は事実に即しておらず、政治的に公平とは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍政権の経済政策は株価だけで、実質賃金の低下や非正規雇用の拡大など格差が広がる一方である」「日本はもはや先進国とは呼べない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「労働需要の増加は経済が好調になっている根拠にほかならない」「正規で働きたいのに働けないという不本意非正規労働者は減少しており、格差が拡大しているわけではない」「日本の経済は立ち直りを見せている」「日本が先進国ではないという批判はあまりにヒステリックで誇大妄想的だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① トランプ米大統領の下院での弾劾訴追について報道された部分
については前編の報告を、

② 徴用工問題における韓国国会議長案への反発について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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