TBS「サンデーモーニング」、2020年2月16日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 「風を読む」にて感染症から見えた中国について報道された部分
② 安倍首相の野次による国会紛糾について報道された部分
③ 検事長の定年延長について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 安倍首相の野次による国会紛糾について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
水曜日、安倍総理がヤジを飛ばし国会が紛糾しました。安倍総理は、こうした非生産的な、あるいは政策とは無縁のやり取りを長々と続ける気持ちは全くない。と答弁。水曜日の予算委員会で、安倍総理が「非生産的」と評したのは、桜を見る会前夜祭に関するやり取りでした。その後質問に立った、立憲民主党の辻元清美議員は、「さっき総理はまだこの話をしていると言うけれども、総理が領収書をドンと出して、明細書をバンと出せば終わるじゃないか。」と追及。更に、「鯛は頭から腐るという言葉をご存知ですか、総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれと言われているから。ここまできたら原因は鯛の頭。頭をかえるしかないんじゃないですか。」と追及。その後、委員会は、安倍総理の「意味のない質問だよ」というヤジを受け騒然としました。これに対し、野党側は強く抗議。審議を止めるように詰め寄るなど、委員会は一時騒然としました。その後の答弁で安倍総理は、「罵詈雑言の連続であった。腐っている本体が私であると。ここは質疑の場であって、一方的にののしる場なのか。こんなやり取りでは無意味じゃないかと申し上げた。」と答弁。こう釈明しましたが、ヤジを飛ばされた辻元氏は、「私は歴代13人の首相と議論をしてきて、はっきりものを言わせてもらっていますが、罵詈雑言と取った人は安倍首相一人です。」とコメント。野党側は安倍首相に発言の撤回と謝罪を求め、審議を拒否。翌日の国会は空転しました。自民党内からも、石破茂議員が「罵詈雑言を浴びせられようが罵倒されようが辞めちまえと言われようが、平身低頭。審議をお願いしているのはこちら側である。」という意見も。与野党は、明日の衆院予算委員会で安倍首相が謝罪することで合意したとしています。国会は一旦正常化しましたが、果たして野党が納得する謝罪となるのでしょうか。
【アナウンサーによるパネル説明】
・首相がヤジを飛ばした野党の質問は、首相に関わる疑惑が官僚の不祥事に影響しているのではないかという趣旨
・ヤジにとどまらず他のいくつかの答弁に関しても野党側は、国会軽視と問題視
【コメンテーターの発言】
青木理氏(全文):鯛は頭から腐るって、まあうまい言い方かは別としてまあ僕は、うん、そうかなっていう気はするんですけどただ言われたほうは確かに頭に来ますよね、カッときたんだと思うんです。ただ、これその辺の口げんかでもなければ、その対等の議論でもないんですね。これ原則的なのは、議会制民主主義において、あの国会は憲法が定める国憲の最高機関なわけですね。で安倍さんは行政府の長、なんかご本人は立法府の長だと勘違いしたことがあったらしいですけど、行政府の長として、法案だったりとか予算案について説明をして、理解を求める立場で、まああの石破さんがちょっとおっしゃってましたけど、立場で来ているわけですね。だからカッときても、そういうこと言っちゃいけないんですよ。かつてねえ皆さんご記憶かもしれないですけれども、吉田茂総理大臣が小さな声で頭来てねばか野郎って言っただけで大問題になって、内閣不信任案に与党も賛成しちゃって最終的に解散。バカヤロー解散に追い込まれたっていうことがありましたけど。要するに国会と行政府の長として首相としていらっしゃっているという立場を考えるとあのようなことは言えないし、ナントカの勘繰りというのは、ようは下衆の勘繰り、こんな言葉遣いも使うべきではないし、どうも安倍さんは自分の立場を今ひとつ分かってらっしゃらないんじゃないかという懐疑心を僕はずっと持ってますけどね。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):言われたほうは確かに頭に来ますよね、カッときたんだと思うんです。ただ、これその辺の口げんかでもなければ、その対等の議論でもないんですね。これ原則的なのは、議会制民主主義において、あの国会は憲法が定める国憲の最高機関なわけですね。で安倍さんは行政府の長、なんかご本人は立法府の長だと勘違いしたことがあったらしいですけど、行政府の長として、法案だったりとか予算案について説明をして、理解を求める立場で、まああの石破さんがちょっとおっしゃってましたけど、立場で来ているわけですね。だからカッときても、そういうこと言っちゃいけないんですよ。かつてねえ皆さんご記憶かもしれないですけれども、吉田茂総理大臣が小さな声で頭来てねばか野郎って言っただけで大問題になって、内閣不信任案に与党も賛成しちゃって最終的に解散。バカヤロー解散に追い込まれたっていうことがありましたけど。要するに国会と行政府の長として首相としていらっしゃっているという立場を考えるとあのようなことは言えないし、ナントカの勘繰りというのは、ようは下衆の勘繰り、こんな言葉遣いも使うべきではないし、どうも安倍さんは自分の立場を今ひとつ分かってらっしゃらないんじゃないかという懐疑心を僕はずっと持ってますけどね。
要旨をまとめると、
・国会での議論は口喧嘩でもなければ対等でもない。議会制民主主義において国会は国権の最高機関であり、行政府の長である首相は法案や予算案について国会で説明し理解を求める立場である。だから安倍首相は辻元議員の野次にカッとなっても反論してはいけない。
・吉田茂首相のバカヤロー解散が大問題になったことも国会と行政府の関係性を示している。安倍首相はナントカの勘繰りという言葉を使うべきではないし、立場をわかっていない。
というものです。
しかしながら、
・国会が国権の最高機関であり行政府の長が説明する立場・理解を求める立場であるということは、野党議員による無意味な質疑や首相への一方的な罵詈雑言・誹謗中傷を容認するものではない。
・吉田茂首相の「バカヤロー」発言は誹謗中傷と言わざるを得ないものであるが、今回の安倍首相の発言は「無意味な質問」という野次であり誹謗中傷ではないため、これらを同一視する主張は事実に即しているとは言えない。また、安倍首相が自らの立場を分かっていないという主張には根拠がない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍首相の野次や答弁は行政府の長として大いに問題がある」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「国会議員なら首相に何を言ってもいいことにはならない」「辻元議員の発言内容こそ批判されるべきだ」「無意味な質問や罵詈雑言ばかりだから野党は国民の支持を得られない」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ 検事長の定年延長について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
① 「風を読む」にて感染症から見えた中国について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。