2020年10月4日 サンデーモーニング(後編)

2020年10月4日 サンデーモーニング(後編)

10月4日放送のサンデーモーニングのレポート後編、中国の人権弾圧について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR人権問題に関する部分】
中国に対する批判は軍事面にとどまりません。
トランプ大統領は「我々はこの病気を世界に広めた国 中国の責任を問わなければならない」と発言し、いまだ猛威を振るう新型コロナウイルスについて中国の責任を問う声が上がっています。
さらに 英・ロンドン (7月1日 )ジョンソン首相「この法律は香港の高度な自治を侵し、香港基本法に抵触している。」香港の治安維持に関して、中国政府の権限がより強まる国家安全維持法の制定を巡っては香港の民主派や国際社会から強い非難の声が上がっています。
人権問題を巡っては、中国の内モンゴル自治区政府は小中学校で中国の標準語である漢語の教育を強化すると発表し、モンゴル語の教育が縮小されることになり住民が反発しています。
さらに新疆ウイグル自治区を巡り、ウイグル人に対して中国政府が強制労働を課しているのではといった批判が上がっています。先月28日には、ノルウェーの研究機関が今年のノーベル平和賞の候補に、中国の少数民族政策を批判し現在服役中のウイグル人学者、イリハム・トフティ氏の名前を挙げました。
軍事からコロナ、香港、人権問題とさまざまな分野で高まる中国批判。これに対し中国は、みずからの正当性をアピールし始めています。

【コメンテーター発言内容】
安田氏(全文):映像にもありましたとおり、例えば香港なんかでは人の地涌も恣意的にいくらでも奪えるような法律が導入されていますよね。なので、民主化運動に携わっている方々から届く声というのは本当に悲鳴に近いようなものがあるんですけれども、ただ経済的なつながりなんかを背景にして表向き、そうした中国の姿勢を支持している国もまた多くあるということも現実ですよね。それに対して、こうした状況の中で日本が人権という軸で言うべきことを言えるのかというところも問われていると思うんですね。ただ、今日の冒頭でもあったように日本の国内でも今、学問の自由に政治介入があったことが発覚したばかりですよね。そうなると、他国の人権状況を指摘できるだけの説得力を持っている政治が果たして行えているかどうかということも同時に問われてくる、突きつけられている課題ではあるかなと思います。

望月氏(全文):私も中国の国内の人権のことをすごい憂慮しています。ウイグルやチベットといった領域も行ったことがありますし、そこでお世話になった方たちが今どうなっているか分からない。そのウイグルでは再教育キャンプということで文化や言語も奪われるような報道もあります。安田さんもおっしゃっていたように、日本からそういったことに対する反対の声を出していくうえでも日本の国内でマイノリティーの方の人権を守るというのは前提になると思います、文化、言語を国内でちゃんと守れているのか、難民の問題もあります。入管収容でひどい虐待のような状況も報道もあります。マイノリティーの方を国内でしっかり人権を守るというのが前提のうえで、他国に対しても言うべきことはしっかり言っていくということが重要じゃないかなと思っています。

【検証部分】
ここでは、安田氏の発言「日本の国内でも今、学問の自由に政治介入があったことが発覚したばかりですよね。そうなると、他国の人権状況を指摘できるだけの説得力を持っている政治が果たして行えているかどうかということも同時に問われてくる」、望月氏の発言「マイノリティーの方を国内でしっかり人権を守るというのが前提のうえで、他国に対しても言うべきことはしっかり言っていくということが重要じゃないかなと思っています」について検証します。

まず、中国の人権弾圧について確認したいと思います。VTRにも紹介されていたように、中国は国家安全維持法を制定し香港での言論弾圧を強めています。具体的にはデモに参加した一般市民を暴力的な方法で取り締まり、不当な逮捕を繰り返しています。また内モンゴル自治区では、モンゴル語の教育を縮小させ漢語の教育を強化させています。ウイグルでも、中国政府がウイグル人に対して強制労働を課しているのではという批判が広がっています。これは明らかな人権侵害であり、日本としても見過ごすことのできない問題といえます。

ここで、安田氏、望月氏の発言内容を再度確認します。両氏ともに発言内容としては、中国の人権問題に言及する以前に、日本の人権問題を解決する必要がある、という趣旨でした。日本での人権問題として具体的に、安田氏は日本学術会議について、望月氏は日本の入管収容所について言及していました。
しかし日本学術会議については、学問の自由には当たらないという指摘もあります。任命の見送り自体は何ら学問の統制にはなっていないという考えです。また入管収容所については、そもそも違法滞在者に対しての施設であるという前提があります。刑務所と同様に、法律違反をした個人はある程度身体の自由が制限されても仕方がないと考えられています。

今あげたような日本の人権侵害として両氏が主張するものと、中国における人権侵害とを比べたときに、中国の行為は日本のそれと性質、程度において明らかな相違があります。もちろん、日本の入管収容所にも問題点があり、適切に議論して解決を図るべきかもしれませんが、この問題の解決が中国の人権侵害を批判する前提となり、それがなされなければ日本は中国を批判することができない、というのはあまりに浅慮な主張と言わざるを得ません。

そもそも、このニュースに日本政府は関係するのでしょうか。これはあくまで中国の人権侵害に関する報道であり、日本政府とは直接の関係のない中国の内政の問題として扱われています。それを両氏は日本の問題にかこつけて発言をしています。
このニュースでまず注目されるべきは、中国の人権侵害がいかに間違っているものか、国民を苦しめているものか、といったことではないでしょうか。中国で民主主義と法の支配が確立されていないこと、そしてその問題点や深刻性について、第一に論じられる必要があります。
こういった論点について両氏の発言からは十分な説明がなされていたとはいえません。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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