2019年4月28日 サンデーモーニング(前編)

2019年4月28日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年4月28日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 日米首脳会談と露朝首脳会談について報道された部分
② 衆院補選で自民2敗の件について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 日米首脳会談と露朝首脳会談について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
トランプ大統領と安倍首相がゴルフをしている様子とともに、日米首脳会談が行われたと伝えられる。北朝鮮の非核化と拉致問題について議題に上がったことについて、成果を述べる安倍首相の映像とともに伝えられる。
 CM後、ロシアに到着した金党委員長が海外メディアにインタビューを受ける映像が流される。露朝首脳会談が行われる様子が流され、会談後、プーチン大統領は体制の保証に言及したと伝えられる。
露朝首脳会談で金党委員長はアメリカを批判し、アメリカに態度を改めるよう警告した一方、トランプ大統領は露朝首脳会談の際にプーチン大統領も非核化実現に意欲を示したと歓迎してみせたとアナウンス。

【アナウンサーによるパネル説明】
・露朝首脳会談を終えてプーチン大統領は、「北朝鮮が米韓による体制の保証で不十分と考えるなら6か国協議の必要性もある」と語った
・6か国協議とは北朝鮮の非核化を目的とする多国間協議をいう。中韓米露日が参加しているが、2008年事事実上決裂して以降開かれていない
・今回の露朝首脳会談により、6か国の中で北朝鮮と首脳会談を行っていないのは日本だけとなった

【コメンテーターの発言】
藪中三十二氏(全文):そうですね。最初の一回目から三回目、首席代表として参加しましてですね。(関口氏:その頃は上手くいってましたよね。)まああの、結果的にああいうふうになりましたからね。北朝鮮が核実験をすると。だから六者会合はダメだったって評価をするんですが、我々としてはすごく一生懸命やっていたというつもりだったんですけど。今、ちょっと心配してますのはね、米朝が漂流してる。米朝の交渉がですね、漂流した格好になっているという状況だと思いますね。その漂流のところへ、ロシア、プーチンさんが入り込んできた。もう、出番だぞという格好で。そうすると、トランプさんもまあ、評価するよってなことを言ってましたけれども、我々としてはその、このまま漂流した格好では、拉致問題も解決しませんしね。何とかせないかんと。単に、非核化、全部しないうちは制裁解除しないと。いいんですけれども、それだけ言ってるだけで、本当に物事は動くのかどうか。北朝鮮の側も、そうとうアメリカに不信感がある。アメリカちゃんと作戦立ててるのか。そこだと思うんですね。一つだけ、この間のハノイで起きたので北朝鮮はそうとう思い切ったことを出したというつもりなんですね。その具体的なことと言えば、濃縮ウランです。寧辺にある。これを廃棄しますよと出したんですね。その重みをどこまで理解して、アメリカがですね。まあ向こうはもちろん北朝鮮が全部制裁解除してくれると言ったっていうんだけど、それはまだまだありますよと。その他にも、濃縮ウランもあれば、あるいは30発から60発の核爆弾もあると。だからそこはまだあるよと言いながら、少しはね、それをまずガッチリと取って。そのうえで、少しだけ経済制裁を解除するとか。やり方があるんですね。だからプーチンさんが今度言ってる会合っていうのも、ほっとくと全然うまく進まないようになってる。だから作戦会合のようなことだと思います。私は基本的には、米朝の首脳でこれは進めるしかないと思うんですよね。その前の作戦を立てるのはね、割とこういうロシア的なやつの階級会合で一生懸命作戦を立てて、さあやらしてみると。要するに何のシナリオも準備もなく第三回の首脳会談に突入するのは絶対良くないと思います。

姜尚中氏(要約):六者会合の共同宣言文では段階論的なアプローチをとっている。0か100かやるのはアメリカの実務担当者も無理だと分かってるのに、なぜやったのか分からない。日本にとって六者協議は必ずしも悪いものではない。今のままでは米朝が動かなければ日本も動けないという状況が続く。

田中優子氏(全文):私達がどういうふうに北朝鮮を見るのかっていうことはとても大事なことだと思うんですね。私はあの、金正恩体制というのは、最初から経済開放。経済改革をして開放して以降と言っていますし、一貫してその姿勢は崩れていないと思うんです。それで今はもう、国内に20ヶ所以上の開放地区を作っていますし。それから20か国以上のところに労働者派遣して外貨を稼いでますし。経済改革をとにかくしようとしている。で、どうして、じゃあ核を持ち続けるのかっていう真理は私達はよく考えてみるとわかるはずで、大量破壊兵器なかったのにイラクにアメリカは侵略しましたよね。それからリビアも査定を受け入れていたのにああいうことになってしまった。つまり、アメリカの今までの行動をちゃんとみてるわけです。だったら、アメリカはもうそういうことはしないということをちゃんと保証しなきゃいけないし、そういうふうにして初めて進展する。とにかく私たちは東アジアの平和を作らなければならないわけですから、目標ははっきりしていますから。日本としてもアメリカに対して6か国協議に向かっていく必要があると思います。

浜田敬子氏(要約):スペインの北朝鮮大使館を襲った「自由朝鮮」のメンバーが逮捕された。自由朝鮮はFBIと協力関係にあると思われていたのに、なぜ逮捕になったのか。アメリカの意図が分からない。アメリカがどういうふうに北朝鮮を向き合おうとしているのか今一つ見えてこない。日本はそこに振り回されている印象がある。日本としてはどういうふうに北朝鮮と向き合うのかということも見えてこない。

青木理氏(全文):まさにそこなんですよね。日本がどうするのか。VTRの冒頭で安倍さんが、これから金正恩と私がこれから向き合うんだと。僕はそれは素晴らしいことだと思います。ぜひ向き合ってもらいたいんですけれど、日本が主体的にこの地域の平和と安定をどうやって作っていくのかっていうその、絵図が見えないんですね。振り返ってみると、ちょっと前まで、トランプ大統領と100%共にあって、最大限の圧力をかけるんだと言ってたんですよ。ところが、トランプさんがコロッと変わって米朝やったら、今度は向き合うんだと言ってるんですね。僕これ、北朝鮮の金正恩委員長の立場にしてみれば、まだ安倍さんと会ってないですよね。で、その気持ち、僕わかるんですよ。だって、トランプさん次第でどっちにでも行くから。むしろ、まったく日本の主体性が見えない。いずれ最終的に日本はその、戦後補償の問題を含めて、かなりの金額を北朝鮮に支払わなければならないんですけれど、そういうその、本来カードがあるのに、そのカードを全く使わずに、アメリカについていってるっていう印象しかなければ、金正恩委員長としても向き合う気にはならないですよね。だからその辺の、今の安倍政権。それから日本の外交っていうもののどういう方向に目指していくのか見えない。アメリカ追従にしか見えないっていうあたりが、今の日本の最大の課題じゃないかなと僕は思いますけどね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
藪中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

藪中氏(抜粋):米朝が漂流してる。(中略)このまま漂流した格好では、拉致問題も解決しませんしね。何とかせないかんと。単に、非核化、全部しないうちは制裁解除しないと。いいんですけれども、それだけ言ってるだけで、本当に物事は動くのかどうか。北朝鮮の側も、そうとうアメリカに不信感がある。アメリカちゃんと作戦立ててるのか。そこだと思うんですね。一つだけ、この間のハノイで起きたので北朝鮮はそうとう思い切ったことを出したというつもりなんですね。その具体的なことと言えば、濃縮ウランです。寧辺にある。これを廃棄しますよと出したんですね。その重みをどこまで理解して、アメリカがですね。まあ向こうはもちろん北朝鮮が全部制裁解除してくれると言ったっていうんだけど、それはまだまだありますよと。その他にも、濃縮ウランもあれば、あるいは30発から60発の核爆弾もあると。だからそこはまだあるよと言いながら、少しはね、それをまずガッチリと取って。そのうえで、少しだけ経済制裁を解除するとか。やり方があるんですね。(中略)要するに何のシナリオも準備もなく第三回の首脳会談に突入するのは絶対良くないと思います。

要旨をまとめると、
・米朝会談が宙に浮いており、日本としてはこのままでは拉致問題も解決しないので何とかすべき
・非核化の完全実施を条件とした制裁解除ばかりでは物事は動かない。ハノイの会談でも、濃縮ウラン破棄に応じて部分的に経済制裁を緩和するなどして柔軟に対応していくべきだった
・何のシナリオもなく第三回首脳会談に参加するのは危険だ

というものです。

しかしながら、
・米朝会談が宙に浮いているというのは氏の主観であり、また拉致問題はその解決を米朝会談にのみ頼っているわけではない
・北朝鮮は米国との交渉の裏でミサイル施設を再建し、また各施設に物資を搬入したりと核に関する動きを続けており、段階的な妥協はこうした動きを加速させる懸念がある。
・第三回の首脳会談に何のシナリオもないとする主張には根拠がない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での藪中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):私達がどういうふうに北朝鮮を見るのかっていうことはとても大事なことだと思うんですね。私はあの、金正恩体制というのは、最初から経済開放。経済改革をして開放して以降と言っていますし、一貫してその姿勢は崩れていないと思うんです。それで今はもう、国内に20ヶ所以上の開放地区を作っていますし。それから20か国以上のところに労働者派遣して外貨を稼いでますし。経済改革をとにかくしようとしている。で、どうして、じゃあ核を持ち続けるのかっていう真理は私達はよく考えてみるとわかるはずで、大量破壊兵器なかったのにイラクにアメリカは侵略しましたよね。それからリビアも査定を受け入れていたのにああいうことになってしまった。つまり、アメリカの今までの行動をちゃんとみてるわけです。

要旨をまとめると、
・私たちの北朝鮮に対する見方は大切である
・金正恩体制は経済開放を目指していて、国内に20か所の開放地区を作ったり労働者を海外に派遣したりと経済改革に腐心している
・それでも核を持ち続ける理由はイラクが大量破壊兵器がないにもかかわらず侵略されたり、査定を受けていたリビアが崩壊したりと、アメリカの行動が原因である

というものです。

しかしながら、
・金正恩政権は当然独裁政権であり、反対派の大規模な粛清を行うなどその本質は極めて危険なものである。また、長きにわたる経済制裁が北朝鮮の経済に大打撃を与えているといわれており、田中氏の主張は事実を正しく認識したものとは言えない
・こうした事実に基づかない風説を流布し、さらにその主張を日本人が理解することが大切だと主張することは、北朝鮮寄りの立場をとることが大切だと主張することであり、政治的に公平であるとは言えない
・イラク戦争の顛末、及びアラブの春によるリビア内戦勃発と北朝鮮の非核化問題とは何の因果関係もなく、またそれを示す根拠もない

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「アメリカは北朝鮮の段階的非核化に応じるべきだ」「六か国協議の国々に日本は遅れを取っている」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「裏でコソコソと動く北朝鮮の言動は信用ならない」「日本は米国と連携して主張を伝えているからそれでいい」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
① 日米首脳会談と露朝首脳会談について報道された部分
検証3「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
② 衆院補選で自民2敗の件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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