2019年6月23日 サンデーモーニング(前編)

2019年6月23日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年6月23日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 年金の報告書について報道された部分
② 中朝会談と日本の外交について報道された部分
③ 「風を読む」にて安倍政権が不都合な真実を隠していると報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 年金の報告書について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
年金以外で老後に必要とされる資金について2000万円とした報告書とは別に、金融庁は1500~3000万円と試算していたこと、麻生金融相が過去に「年金財政は破綻している」と主張していたことが伝えられる。党首討論の映像が流された後、財政制度等審議会が麻生大臣に渡した意見書について、将来の年金給付の水準が「想定より低くなることが見込まれる」という文言が削除されたことが判明し、政権への忖度があったのではとの声があったとナレーション。これに対し野党は、麻生大臣に対する問責決議案と不信任決議案を提出したが、それぞれ否決されたと伝えられる。
 政府の対応に関し、セミナーに参加した人のインタビュー映像が流される。
37歳女性「政治家はあんまり信用できないところもあるじゃないですか。皆なんか口で良いことばかり言ってるのかなっていうのを思いますよね。(全文)」
25歳男性「がっかり感はありましたね。自分の責任じゃないよと言っている気がして、ちょっと不信感は出ました。(全文)」

「急速に広がった年金への不安。信頼は取り戻せるのでしょうか。」と疑問を呈する言葉を最後に、VTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・麻生大臣が報告書の受け取りを拒否したことについて、「問題だ」と回答した人は71.3%、「問題ではない」と回答した人は19.1%(共同通信・世論調査)
・財政制度等審議会の意見書から、「将来の年金給付の水準の低下が見込まれる」という文言が削除されており、政権への忖度があったのではないかという見方が出ている
・厚生労働省などがまとめた認知症対策の大網から「高齢社会における資産形成の心構え」という記述も削除されていた

【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):年金制度の不信感・不安感は以前からずっとあった。それが明らかになったという点では良かったと思う。結局、バブルの発生から崩壊まで間に考えた年金制度の基本的な方向性を転換なされていなかったのが問題。野党も与党も、年金制度について根本的に考え直す機会にすべき。

大宅映子氏(要求):最初の頃はピラミッド型の人口構成だったが、働き手が減ったことで、今は30兆円を現役世代から集め、50兆円を給付し15兆円分のマイナスは税金で補填してる。引退してから15年も20年も生きる分を全部カバーする制度はあり得ない。人口形成が全然違っているので、変えなきゃいけないのにちゃんとやらないからいけない。

荻上チキ氏(全文):今回の報告書、別にまあ2000万人全員足りなくなるというふうに言っているものではないのですが、ただ、やっぱりその年金制度の不安感というものと、それにこうまあ、油をさすような、ガソリンをぶちまけるような、麻生さんの5万円とか貯蓄が必要だってのは誰でも分かるというような発言から、大きな反発というのが呼ばれたと思うんですね。で、これから例えば、安倍総理がよく強調しているように、マクロ経済スライドによって、支給額というものを経済状況に合わせて変化させていく。それはつまり、若い世代にとっては、これからは受給額というのは減っていくだろうと。さらに言うと、支給開始年齢、受給開始年齢というのも、60歳から70歳、75歳という形で、年をこう上にずらしていくことになるだろうと。そうすると、やっぱりその世代間で年金の意味合いというのも当然変わってくるわけですね。でまたこれから、高齢者の生活保護受給者というのもこれから増えていくでしょう。それは年金だけでは暮らせないから。また、若い人たちも、そもそも年金を納める環境になかった方々。この方々をどうするのかっていうのは政治の課題もあるわけです。つまり、年金問題を真っ正面から議論すると、こういった雇用の問題や、社会保障の問題に突っこんでいかなくてはいけないんですね。それを本来は、選挙前の今だからこそ、正面から国会でやってほしいですよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、VTR内に事実と異なる認識を視聴者に与える恐れのある内容が含まれている
2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、VTR内に事実と異なる認識を視聴者に与える恐れのある内容が含まれている
今回のVTRで、以下のような発言が取り上げられています。

37歳女性(VTRより全文抜粋):政治家はあんまり信用できないところもあるじゃないですか。皆なんか口で良いことばかり言ってるのかなっていうのを思いますよね。
25歳男性(VTRより全文抜粋):がっかり感はありましたね。自分の責任じゃないよと言っている気がして、ちょっと不信感は出ました。

これらの発言について、放送ではそれぞれ
・今回の年金問題で報告書の文言にこだわってばかりの麻生氏などの政治家は信用できない
・野党の不信任案は否決されたが、政府の責任でないなどといっているような気がして不信感がある

という趣旨の発言として説明されていました。

しかしながら、
・この2人の意見はあくまでそれぞれの個人的な感想であり、世間全体の反応ではない。
・この2人の意見を世間全体の反応かのように報道することは明らかな印象操作であり、事実に即しているとは言えない
・年金に不安を感じている人たちのみの意見を取り上げることは政治的に公平とは言えない

など、今回の放送で取り上げた趣旨とは明らかに異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道でのVTRは政治的に公平とは言えず、事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
萩上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

萩上氏(抜粋):今回の報告書、別にまあ2000万円全員足りなくなるというふうに言っているものではないのですが、ただ、やっぱりその年金制度の不安感というものと、それにこうまあ、油をさすような、ガソリンをぶちまけるような、麻生さんの5万円とか貯蓄が必要だってのは誰でも分かるというような発言から、大きな反発というのが呼ばれたと思うんですね。で、これから例えば、安倍総理がよく強調しているように、マクロ経済スライドによって、支給額というものを経済状況に合わせて変化させていく。それはつまり、若い世代にとっては、これからは受給額というのは減っていくだろうと。さらに言うと、支給開始年齢、受給開始年齢というのも、60歳から70歳、75歳という形で、年をこう上にずらしていくことになるだろうと。そうすると、やっぱりその世代間で年金の意味合いというのも当然変わってくるわけですね。でまたこれから、高齢者の生活保護受給者というのもこれから増えていくでしょう。それは年金だけでは暮らせないから。また、若い人たちも、そもそも年金を納める環境になかった方々。この方々をどうするのかっていうのは政治の課題もあるわけです。つまり、年金問題を真っ正面から議論すると、こういった雇用の問題や、社会保障の問題に突っこんでいかなくてはいけないんですね。それを本来は、選挙前の今だからこそ、正面から国会でやってほしいですよね。

要旨をまとめると、
・今回の報告書は2000万円全員が足りなくなると言っているわけではないが、年金制度の不安感とそれを煽るような麻生氏の発言に反発が集まった。
・マクロ経済スライドで若者の支給額が減り、受給年齢も引き上げられるなど若者にとって年金の意味合いは変わってくる
・年金を収める環境になかった若い人たちをどうするかは政治の課題だ

というものです。

しかしながら、
・報告書に「年金制度が崩壊する」などという内容がないことを知りつつ、根拠のない不安と麻生氏の発言の恣意的な切り抜きによって架空の危機を演出するメディアを正当化する発言をしている。
・これは放送法違反を容認する発言であり、事実ではないという自覚があるにもかかわらず視聴者に対し誤りの認識を与える非常に悪質な発言と言わざるを得ない。
・マクロ経済スライドは経済の状況によって支給額を変動させるもので「年金支給額減額」を意味するものではない。
・国民年金の場合支払いは国民の義務であり、年金を納めなかった人間が受給できないのは年金制度の仕組みとして普通のこと。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での萩上氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「今回の報告書もあいまって年金制度はもう崩壊寸前だ」「安倍政権はこの問題から逃げずに向き合うべきだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「報告書の内容は年金制度の破たんを明示するものではない」「そもそも年金制度の問題は民主党時代から存在していた」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 中朝会談と日本の外交について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にて安倍政権が不都合な真実を隠していると報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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