2020年5月31日 サンデーモーニング(前編)

2020年5月31日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年5月31日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの第二波について報道された部分
② 「風を読む」にて国家安全法案について放送された部分
③コロナウイルスの議事録が作成されていないことについて放送された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
①新型コロナウイルスの第二波について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

新型コロナの第2波到来に各地の病院が対応に追われています。東京都立墨東病院では病室の消毒に使われる紫外線照射装置が導入されました。職員や患者43人に新型コロナ感染が広がり医療崩壊寸前に至りましたが、院内感染の予防対策を講じ20日から通常の外来診療などを再開しました。千葉県松戸市の千葉西総合病院では、3億5000万円かけて駐車場に新たにプレハブのコロナ専用病棟を新設しました。
26日、日本医師会・横倉氏は「医療提供体制が壊れていくということも十分な配慮が必要だろうと思っています」と述べました。病院の存続すら危うくなるような新たな医療崩壊の危機が迫っているのです。
埼玉県三芳町にあるふじみの救急クリニックでは、これまで新型コロナの患者に対応してきたためか診察に訪れる一般患者が一気に減りました。さらに埼玉県から第2波に備え受け入れ態勢の維持を要請され、コロナ専用病床を設置するなどの対応に追われました。費用の3300万円はすべてクリニックの負担で、4月の利益は去年と比べると75%減ったといいます。
千葉大学医学部附属病院では、病床稼働率が低下し、およそ2億4000万円の減収に加え医療物資の追加購入などに6000万円かかったといいます。横手院長は「2ヶ月程度であれば乗り越えられますけれども、半年 一年と続いてくるとこれは大変なことだと思います。」と述べました。東京医科歯科大学病院では外来診療の制限などによる赤字が大きく、4月分だけで12億円にのぼり、大学では寄付金の募集をホームページで呼びかけるなど異例の対応に追われています。
また病院の経営面での苦境に加え人の問題も大きくのしかかってきています。院内感染が起きた首都圏の病院で働く看護師は、患者から看護師さん汚いんじゃないか、コロナの人に今日は会っていないのかなど聞かれると話しました。日常生活でも周囲から偏見や差別の厳しいまなざしにさらされる看護師も多く、3月4月で3〜40人は辞めてしまったなどと退職が相次いでいます。第2波に備える医療の現場は今、経営や人の確保が難しく危うい状況に置かれています。

【コメンテーター発言内容】
水野アナ(VTR前 全文):全世界で600万人が感染、うち36万人の命を奪った新型コロナウイルス。これまでは中国やロシア、イギリススペインなどのヨーロッパ、そしてアメリカと主に北半球を中心に感染が広がってきました。ところが、今、南半球で猛威を振るっているんです。中でも感染が急増しているのが南米のブラジルで、感染者の数は46万人、うち2万7000人が死亡しています。イギリスのメディアは、検査体制が不十分で実際の感染者数は15倍に及ぶ可能性があるといいます。感染は貧困地区で広がっているほか、アマゾンの先住民が暮らす地域で広がる心配が強まっています。こうした深刻な事態は南米だけではなく、アフリカでも懸念されています。アフリカ全体での感染者の数は把握できているだけで13万人、そのうち4000人近くが亡くなっています。今のところ、爆発的な感染の報告はされていないんですが、そもそもアフリカは検査数が少なく感染の実態が把握しづらいうえに、集中治療用のベッド数と人工呼吸器の数が10万人当たり1台未満と重症患者に対応するには困難な状況です。WHOは対策を取らなかった場合、この1年でアフリカでは2900〜4400万人が感染、19万人が死亡すると警鐘を鳴らしています。こうした南半球で猛威を振るう新型コロナウイルスが再び北半球を秋にも第2波、第3波となって襲うことが懸念されているんです。そんな中、アジアに目を向けてみますと、注目されているのが、その死者数の少なさなんです。こちらは慶応大学の菅谷憲夫客員教授がまとめた5月16日のデータなんですが、欧米と比較してみますと、アジアの死者数が少ないのが見てとれます。菅谷教授は、死者数の差についてはっきりとした原因は分からないとしたうえで、人種の差、年齢構成の違い、BCG接種の影響、そして欧米ではアジアとは別の高い感染力を持ち病毒性の強いウイルスが出現した可能性を挙げています。日本ではクラスター対策が功を奏したとの見方がある一方で、10万人当たりの死者数はこのように日本は中国や韓国よりも上回っています。菅谷教授は、今季はインフルエンザによる大規模な流行の可能性が高く、新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える必要があると警戒を呼びかけています。では、日本の医療現場での第2波、第3波への対策はどうなっているんでしょうか。

水野アナ(VTR後 全文):来る第2波、第3波にどう備えるかなんですが、秋までの課題はたくさんあります。①PCR等の検査体制の充実、ワクチン・治療薬の開発、②医療提供体制の確保などです。二次補正予算では、これらには(①)2719億円、医療提供体制の確保のために、空けておいた病床代の補助、患者と接した医療従事者らへの慰労金給付などにおそよ2兆7179億円が盛り込まれています。それでも、先ほどのVTRにありましたように病院経営の悪化は深刻です。全日本病院協会などの調査によりますと、4月は外来患者や入院患者の減少で、全国的に赤字が増加、特に東京都で新型コロナの患者を受け入れた病院というのは、ひとつきでおよそ2億4000万円の赤字となりました。
城西大学の伊関教授は「問題は普通の開業医。地方から医療がなくなる可能性もある。さらなる財政措置が必要だ。」と指摘しています。

倉持氏(全文):今の状況というのはもともと病院とか医療機関というのはここ10年、このコロナが始まる前からきつきつの状態で、きっちりきっちり医療を行ってきたんですね。つまりそれはどういうことかといいますと決められたベッド数に対して決められた人員配置をして、そして決められた病名でどういった検査とか治療をするか内容を決めたうえで患者さん入院してお金をいただいていたというような、パッケージの旅行を次々と詰めていくようなことをやっていたんですね。ベッドを常に埋めておくと。それをほぼ8割、9割と回すことで何とか赤字にならないようになっている仕組みだったんですね。そこにきて今回新たにコロナの対策をしなければならなくなりましたので、新たな設備投資が必要であったりあるいは一般の外来診療、入院診療ができなくなってしまってそのきっちりきっちりやっていたことで得られていた収益がなくなって、それで非常に困ってると。さらにコロナウイルスの感染症というのは自粛をすれば減ってしまいますし、自粛しなければ増えてしまいますしということで、数の想定、どのくらいベッドを空けておけば対応できるか全く読めないんですね。ですから、今の状態でコロナの患者さんが減って医療機関としてはありがたい反面、患者さんの数が減っていって収益が減っていますから今の状態のままではとても長くもたないということで医療現場、これは病院の先生方もそうですし、あるいは一般の開業医の先生方も本来きちんと受診しなきゃいけない方もコロナを恐れて受診していないという状況が続いています。ですからそういったところが現状としてあるわけですから、それにそういう保険医療の制度もそれに合わせていく必要があるということですね。

今、早急に1次補正から比べればかなり医療に対しての充実度というのは図ってくれたと思うんですけれどもやはり一番懸念しているのは秋、冬にインフルエンザが増えてきてしまったときなんですね。インフルエンザが増えてしまいますと1シーズンで1000万人の患者さんが来ると言われてますから、今の外来の診療体制ですと、コロナの患者さんがインフルエンザの中に交ざってやってくるんですね。インフルエンザの患者さんのほうが非常に重篤に見えることが多いですから、そうするとコロナウイルスとインフルエンザの患者さんと見分けがつかないんですね。それに見合うだけの検査体制ができていないととてもじゃないけれども、インフルエンザの患者さんがもしかしたらコロナかもしれないということで、これは検査体制の話もそうですし、一般の外来の診療体制もそうですね。1つの市とかで数カ所しかないような態勢ではとてもインフルエンザのシーズンを乗り切ることができないですし、もし外来の診療がきちんとできなければ熱の患者さんが受診できず、結果、自宅で急変して救急車を呼んで、そして高度医療機関が混乱することが予想されますから、今回の2次補正の中にも、そこまでの組み込みというのはなかったと思いますから、そういったところもこれから秋に向けて準備しておく必要があると思いますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、水野アナウンサーの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、倉持氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、水野アナウンサーの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
水野アナウンサーは今回の報道で、以下のように述べています。

水野アナウンサー(抜粋):全世界で600万人が感染、うち36万人の命を奪った新型コロナウイルス。これまでは中国やロシア、イギリススペインなどのヨーロッパ、そしてアメリカと主に北半球を中心に感染が広がってきました。ところが、今、南半球で猛威を振るっているんです。中でも感染が急増しているのが南米のブラジルで、感染者の数は46万人、うち2万7000人が死亡しています。イギリスのメディアは、検査体制が不十分で実際の感染者数は15倍に及ぶ可能性があるといいます。感染は貧困地区で広がっているほか、アマゾンの先住民が暮らす地域で広がる心配が強まっています。こうした深刻な事態は南米だけではなく、アフリカでも懸念されています。アフリカ全体での感染者の数は把握できているだけで13万人、そのうち4000人近くが亡くなっています。今のところ、爆発的な感染の報告はされていないんですが、そもそもアフリカは検査数が少なく感染の実態が把握しづらいうえに、集中治療用のベッド数と人工呼吸器の数が10万人当たり1台未満と重症患者に対応するには困難な状況です。WHOのは対策を取らなかった場合、この1年でアフリカでは2900〜4400万人が感染、19万人が死亡すると警鐘を鳴らしています。こうした南半球で猛威を振るう新型コロナウイルスが再び北半球を秋にも第2波、第3波となって襲うことが懸念されているんです。そんな中、アジアに目を向けてみますと、注目されているのが、その死者数の少なさなんです。こちらは慶応大学の菅谷憲夫客員教授がまとめた5月16日のデータなんですが、欧米と比較してみますと、アジアの死者数が少ないのが見てとれます。菅谷教授は、死者数の差についてはっきりとした原因は分からないとしたうえで、人種の差、年齢構成の違い、BCG接種の影響、そして欧米ではアジアとは別の高い感染力を持ち病毒性の強いウイルスが出現した可能性を挙げています。日本ではクラスター対策が功を奏したとの見方がある一方で、10万人当たりの死者数はこのように日本は中国や韓国よりも上回っています。菅谷教授は、今季はインフルエンザによる大規模な流行の可能性が高く、新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える必要があると警戒を呼びかけています。では、日本の医療現場での第2波、第3波への対策はどうなっているんでしょうか。

要旨をまとめると、
・南アメリカ、アフリカでの感染が拡大しているが、アジアの死者数が少ない
・日本ではクラスター対策が功を奏したという見方がある一方、10万人当たりの死者数は中国や韓国を上回っている。

というものです。

しかしながら、
・5/31当時の10万人あたりの死者数は、日本は0.56人、中国は0.32人、韓国は0.51人であり、ほとんど大差がない。
・その為、あたかも「日本はコロナウイルス対策に失敗しており、人口比当たりの感染者数が多い」と誤認させる報道をするのは政治的に公平ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での水野アナウンサーの発言は政治的に公平でないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。

2、倉持氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
倉持氏は今回の報道で、以下のように述べています。

倉持氏(抜粋):今の状況というのはもともと病院とか医療機関というのはここ10年、このコロナが始まる前からきつきつの状態で、きっちりきっちり医療を行ってきたんですね。つまりそれはどういうことかといいますと決められたベッド数に対して決められた人員配置をして、そして決められた病名でどういった検査とか治療をするか内容を決めたうえで患者さん入院してお金をいただいていたというような、パッケージの旅行を次々と詰めていくようなことをやっていたんですね。ベッドを常に埋めておくと。それをほぼ8割、9割と回すことで何とか赤字にならないようになっている仕組みだったんですね。そこにきて今回新たにコロナの対策をしなければならなくなりましたので、新たな設備投資が必要であったりあるいは一般の外来診療、入院診療ができなくなってしまってそのきっちりきっちりやっていたことで得られていた収益がなくなって、それで非常に困ってると。さらにコロナウイルスの感染症というのは自粛をすれば減ってしまいますし、自粛しなければ増えてしまいますしということで、数の想定、どのくらいベッドを空けておけば対応できるか全く読めないんですね。ですから、今の状態でコロナの患者さんが減って医療機関としてはありがたい反面、患者さんの数が減っていって収益が減っていますから今の状態のままではとても長くもたないということで医療現場、これは病院の先生方もそうですし、あるいは一般の開業医の先生方も本来きちんと受診しなきゃいけない方もコロナを恐れて受診していないという状況が続いています。ですからそういったところが現状としてあるわけですから、それにそういう保険医療の制度もそれに合わせていく必要があるということですね。

今、早急に1次補正から比べればかなり医療に対しての充実度というのは図ってくれたと思うんですけれどもやはり一番懸念しているのは秋、冬にインフルエンザが増えてきてしまったときなんですね。インフルエンザが増えてしまいますと1シーズンで1000万人の患者さんが来ると言われてますから、今の外来の診療体制ですと、コロナの患者さんがインフルエンザの中に交ざってやってくるんですね。インフルエンザの患者さんのほうが非常に重篤に見えることが多いですから、そうするとコロナウイルスとインフルエンザの患者さんと見分けがつかないんですね。それに見合うだけの検査体制ができていないととてもじゃないけれども、インフルエンザの患者さんがもしかしたらコロナかもしれないということで、これは検査体制の話もそうですし、一般の外来の診療体制もそうですね。1つの市とかで数カ所しかないような態勢ではとてもインフルエンザのシーズンを乗り切ることができないですし、もし外来の診療がきちんとできなければ熱の患者さんが受診できず、結果、自宅で急変して救急車を呼んで、そして高度医療機関が混乱することが予想されますから、今回の2次補正の中にも、そこまでの組み込みというのはなかったと思いますから、そういったところもこれから秋に向けて準備しておく必要があると思いますね。

要旨をまとめると、
・医療機関は病床率を8割や9割と高くすることで収益を担保していた。コロナの影響により、空きベッド率が上昇しており、収益が見込めない。また、コロナを恐れて本来受診しないといけない人が受診できていない。
・一番の懸念は秋冬にインフルエンザとコロナ両方が流行することである。コロナとインフルエンザ患者を見分ける検査体制が整っていない。
というものです。

しかしながら、
・政府はこのような状況を受けて、オンライン診療の拡充を図っており、コロナ以外の患者が感染リスクを減らしたまま現在の医療提供体制を保つことができる環境を構築している。
・その為「コロナを恐れて本来受診しないといけない人が医療を受けられない」と主張する倉持氏の発言は政治的に公平ではなく、また事実に反する恐れがある。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での倉持氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「このままでは医療現場の収益が担保できない」「コロナ第二波に対応できない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「オンライン診療を拡充すべきである」「感染者数を限りなくゼロにするのは難しいのだから、一定程度の感染は容認すべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条(第3号「政治的に公平であること」、同)第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
②「風を読む」にて国家安全法案について放送された部分については中編の報告をご覧ください。

③コロナウイルスの議事録が作成されていないことについて放送された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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