サンデーモーニング、2019年5月5日分の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 上皇陛下退位・天皇陛下即位について報道された部分
② 女性天皇、女系天皇について報道された部分
③ 憲法改正に安倍首相が言及した件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 女性天皇、女系天皇について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
「皇位の継承が男性皇族に限られるなど、皇室の在り方について疑問の声が上がっています。」というアナウンサーの言葉とともに、VTR映像に切り替わる。
陛下の若い頃の映像が流され、ノンフィクション作家保坂正康氏のインタビュー映像に切り替わる。保坂氏は「皇室が果たすべき役割はもっと大所高所からの意見を発表するような見解を明らかにするような方向へ進んでいかざるを得ないのでは」と話す映像が流される。
5月1日に行われた剣璽等承継の儀の様子とともに、出席できるのは、皇族では成人男性のみであるとアナウンス。ニューヨークタイムズはこの事実を紹介し、「女性皇族の低い地位、ひいては日本社会において女性が直面している困難の一例」と報じた旨伝えられる。一方、現在の皇室典範で皇位を継承できるのは3人だけであるため、小泉政権や野田政権下で女性天皇を認めることなど皇室典範の改正を議論したが、立ち消えとなったとアナウンス。
菅官房長官の会見映像に切り替わる。菅官房長官「安定的な皇位継承の維持は国家の基本にかかわる極めて重要な問題」「慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」と話す映像を最後にVTRは終了した。
【アナウンサーによるパネル説明】
・剣璽等承継の儀で立ち会われた男性皇族は6人だったが、今回は2人だけだった
・現在の皇室18人のうち13人は女性
・ニューヨークタイムズ紙は、「皇室の存続が危機にひんしている」と伝え、背景に女系・女性天皇を認めない皇室制度があると解説している
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【コメンテーターの発言】
松原耕二氏(全文・ボード説明):実はですね、朝日新聞の4月21日の記事。このなかの秋篠宮さまの言葉がものすごく波紋を呼んだんですね。なんておっしゃったかというと、「兄が80歳の時わたしは70代半ば。それからはできないです」と。秋篠宮さまは皇嗣という立場になられて。皇位継承順位は1位ですから、その方の言葉ですから、まあ波紋を呼んだわけですね。そうだとすると、やはり悠仁さま頼みになってしまうのかなと。これは、皇室の中からの強い危機感の表れというふうにもとることができるというふうに思うんですね。これまでどんな議論がされてきたかというと、VTRでもちょっとありましたけども2005年には小泉政権が女性・女系天皇容認の報告書を出したんですね。女系天皇というのは、母方の方に、天皇の血筋を引くという。女系天皇なんですが、いいではないかという報告書が出たんですが、結局悠仁さまが誕生されたということで、立ち消えになってしまったということ。これ、このときの有識者のメンバーの方にインタビューしたことがあるんですが、その方は、悠仁さまが生まれたとしても、結局危機は変わらないんだから、やっぱり法制化しとくべきだったと、ものすごくある種悔やんでらっしゃいました。そして、その後12年、2012年に野田政権が女性宮家創設を議論したんですね。女性宮家というのは、女性の皇族が結婚後も皇室に残るというものなんですが、これも議論したんですが、結局安倍政権になって立ち消えになってしまった。これはまあ背景には、安倍総理自身も女性天皇・女系天皇に消極的であるということを言ってもいいんだと思います。そう考えると、今のようにですね、まあ皇位継承が危機的状況と言われるぐらいになってしまったというのは、これはやっぱり政治の不作為と言ってもいいんじゃないか。言われても仕方がないんじゃないかと私は思いますね。そしてもう一つ。退位のあり方ということなんですが、今回は一代限りということで、定められたわけですが、これはまあ、これからも向き合わなきゃいけない議論だから、恒久法を。一代限りじゃない法律の必要があるじゃないかという議論もあったんですが、結局これも、まあ一代限りということで、ありきということで進んだと言ってもいいと思います。これ結局、こちらもですね、こっち側にとってみれば、この議論が深まれば深まるほど、結局、女性天皇・女系天皇に、議論に行かざるを得ないわけですね。それを恐れたという面がある。そういう意味では、もう一度退位の在り方を議論するべきではと思いますね。そしてもう一つ最後にですね。実はこれ、共同通信がこの1日、2日に緊急電話調査をしたんですが、79%が女性天皇を容認する、認めるというふうに答えている。世論も大きく変わりつつあるということは押さえてもいいと思うんですね。まあ、政権は秋以降に何とか議論を始めたいというふうに、始めるというふうに言ってますけども、何といっても、まあ、安定的な皇位継承ということを第一に、早く議論することが必要なんだろうというふうに思います。
大宅映子氏(全文):本当にあの、小泉政権のときに、やっと動くなと思ってたわけです。そしたら、幸いなのか、どうなのか分かりませんが、悠仁さまがお生まれになって。じゃあまあ、とりあえずいいかって話になって、先送り。全部先送りなんですよね。だけど誰が考えても、少子化の問題でもそうですけど、数見たら減っていくのわかってるのに、手を打っていないみたいなところもそうですけど、数見たら減っていくのわかってるのに、手を打っていないみたいなところが各所にあるんですよ。あと今どきね、女性が継承できないなんて話は世界の人から見たら、嘘でしょっていうぐらい変な話だと思いますね。
加来耕三氏(要約):伝統というのは現状の積み重ねであるから、議論をするといっても時間はかかると思う。いずれ決着をつけなければいけないのであれば、それに備えるべき。私は歴史をやっているので、歴史は今まで男系しか見たことがないのでこのまま続いてくれることを祈っている。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、松原氏のボード説明に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、松原氏のボード説明に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(ボード説明・抜粋):(小泉政権時に)女系天皇というのは、母方の方に、天皇の血筋を引くという。女系天皇なんですが、いいではないかという報告書が出たんですが、結局悠仁さまが誕生されたということで、立ち消えになってしまったということ。(中略)2012年に野田政権が女性宮家創設を議論したんですね。女性宮家というのは、女性の皇族が結婚後も皇室に残るというものなんですが、これも議論したんですが、結局安倍政権になって立ち消えになってしまった。これはまあ背景には、安倍総理自身も女性天皇・女系天皇に消極的であるということを言ってもいいんだと思います。そう考えると、今のようにですね、まあ皇位継承が危機的状況と言われるぐらいになってしまったというのは、これはやっぱり政治の不作為と言ってもいいんじゃないか。(中略)そしてもう一つ最後にですね。実はこれ、共同通信がこの1日、2日に緊急電話調査をしたんですが、79%が女性天皇を容認する、認めるというふうに答えている。世論も大きく変わりつつあるということは押さえてもいいと思うんですね。
要旨をまとめると、
・小泉政権時や野田政権時に女系天皇や女性宮家創設などの議論がなされてきたが、安倍首相が消極的なため立ち消えになった
・その結果皇位継承が危機的状況に陥ったので、政治に責任がある
・共同通信の世論調査では79%が女性天皇を容認しており、世論もそうした方向に変わりつつある
というものです。
しかしながら、
・女系天皇、女性宮家、女性天皇はそれぞれ全く別の存在である
―女系天皇は女系継承、つまり「母方をたどれば天皇に行き着くが、父方は違う」とするもの
―女性宮家は「女性皇族が結婚後宮家の当主として皇室に残る」とするもの
―女性天皇はその言葉通り「女性の天皇」で、歴史上例は存在するもの(ただしいずれも未亡人か未婚の状態での即位で、かつ男系の女性天皇である。また、女性天皇であっても、その子どもや夫の父方が皇族でない限り皇位継承権はないとされる。理由は以下の通り)
・天皇制はそのすべてが男系継承、つまり「父親をたどれば天皇に行き着く皇族に皇位継承権がある」とする継承で成り立っており、それが天皇という存在の正当性である。女系継承が行われると天皇ではない家系が父親になるため、これは有史以来現在まで続いてきた皇室、天皇制の断絶を意味している。
・つまり、女系天皇が誕生したところで皇位継承の危機が解消されるわけではない
・女性天皇と女系天皇はまったく別の問題であり、女性天皇が79%容認されているというデータを元に女系天皇や女性宮家を世論が認めているとする主張は明らかに虚偽ものである
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での松原氏のボード説明は事実に基づかないだけでなく、天皇制断絶を引き起こしかねない女系天皇について、視聴者に対しそう見えない形で支持する立場へ誘導するなど公安を害す危険なものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第1号「公安及び善良な風俗を害しないこと」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):本当にあの、小泉政権のときに、やっと動くなと思ってたわけです。そしたら、幸いなのか、どうなのか分かりませんが、悠仁さまがお生まれになって。じゃあまあ、とりあえずいいかって話になって、先送り。全部先送りなんですよね。(中略)あと今どきね、女性が継承できないなんて話は世界の人から見たら、嘘でしょっていうぐらい変な話だと思いますね。
要旨をまとめると、
・小泉政権の時に女系天皇、女性宮家の創設について議論が進むと思っていたが、幸か不幸か悠仁様の誕生で話が先送りになった
・今どき女性が継承できないなど世界からしたらありえない話だ
というものです。
しかしながら、
・悠仁様の誕生が自身の主張に反するからといって幸かどうかわからないなどと発言することは極めて政治的公平性を欠いた立場からの発言である
・女系天皇と女性天皇の問題はまったく別のもので、女性の社会的立場の問題と皇位継承の話も全く無関係な議論である
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「女性宮家、女系天皇を認めるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「天皇家が断絶するので女系天皇は認めてはならない」「女性宮家は女系継承を生む危険があるため慎重に検討すべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ 憲法改正に安倍首相が言及した件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 上皇陛下退位・天皇陛下即位について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。