10月4日放送のサンデーモーニングのレポート中編、中国と周辺国との軍事的緊張について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた放送であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR冒頭~軍事に関する部分】
軍事からコロナ、さらに人権問題などさまざまな分野で中国の動きが目立ちます。
先月中国国営のテレビが報じた人民解放軍による市街戦訓練の映像では、商業施設を再現した場での銃撃や無人機を使った偵察が行われています。また、先月26日には短距離弾道ミサイルを同時発射する訓練映像を公開。28日には、南シナ海、東シナ海など4つの海域で同時に軍事演習を実施。
繰り返される中国の軍事行動に、台湾の蔡英文総裁は「我が国の兵士は絶対に有能であり、国土防衛や地域平和を守る決心を持つ鋼鉄のような強い兵士であることを確約する」と反発しました。片や中国は、(9月24日)「もし台湾独立勢力が台湾を中国から分裂しようとする度胸があるのなら我々は必ずどんな代償を払ってもそれを挫く」と中国国防省報道官が述べました。
強硬な姿勢をとる中国に対し、国際社会もまた警戒感を強めています。
米・ハワイ( 8月26日)エスパー国防長官は「南シナ海や東シナ海での挑発的行動が強まることは疑いようがない。中国は自由で開かれた秩序を弱体化させようとしている。」と述べました。
【末尾外交に関する部分】
巻き起こるさまざまな中国への批判に対し、9月22日の国連総会(ビデオメッセージ)で国際社会の団結を訴えた中国の習近平主席。人権問題で批判されているウイグル人に関しては会議の場で、新疆の人々の生活を豊かにする、彼らはより幸福で安全になっていると中国政府の正当性を主張しました。高まる中国批判に対し、国際貢献や自国の正当性のアピールを繰り返していますが、中国を警戒する国際社会の目は厳しさを増しています。
明後日、東京で開催が予定されている日本、アメリカ、オーストラリア、インドによる4カ国外相会合。ここでも中国に対して、今後どのように連携し対応していくかが話し合われる見通しです。こうした動きを9月29日 中国外務省報道官は「(いかなる多国間協力も)国同士の信頼と相互理解に役立つべきで’’第三国’’の利益を損害するべきではない。」と述べは牽制しました。
国際社会からの批判を浴びる中、今後、中国はどのような方向に向かうのでしょうか。
【コメンテーター発言内容】
松原氏(全文):中国は実は今月の終わりに五中全会という大事な会議をする。ここでは大体5カ年計画を話し合うわけですけれども、ここでなんと、2035年までの長期展望というのが議題に上がってるんです。どういうことかというとこれから15年間は習近平国家主席が、永久皇帝、終身皇帝になるという道を拓んじゃないかと。毛沢東さんへの道をまっしぐらと言ってもいいと思うんですね。アメリカはこうした習氏の強権的な首相を変えるのは無理だと、ある種、諦めてこの対立の路線に転換したわけですね。でも本当に中国を変えることを諦めていいのかという問いが出てくると思うんですね。例えば台湾を巡って米中が衝突したとする。そのときにアメリカは日本にある米軍基地から作戦行動をしようとすると日本に事前協議を恐らく求めてくる。そうすると日本は恐らくノーとは言えない。しかも安保法制ができてますから、後方支援ができるようになる。やりますかと迫られる。戦争となっては絶対いけないわけですね、米中。それを防ぐためにも日本はアメリカの対立一辺倒の外交ではない戦略的な外交というのを本気で考えないといけないと思います。
【検証部分】
今回は松原氏の発言、中でも特に「アメリカはこうした習氏の強権的な首相を変えるのは無理だと、ある種、諦めてこの対立の路線に転換したわけですね。でも本当に中国を変えることを諦めていいのかという問いが出てくると思うんですね。」「日本はアメリカの対立一辺倒の外交ではない戦略的な外交というのを本気で考えないといけないと思います。」について検証したいと思います。
そもそも中国とアメリカ、日本などの国々との関係の推移について整理したいと思います。
第二次世界大戦後、中国では内戦に勝利した共産党が中華人民共和国を建国し、共産党による一党独裁体制を確立しました。アメリカ、日本などははじめ中国は国家承認をしないなどの対抗措置をとっていました。しかし、1960年代、70年代頃から次第に中国への接近を進めていきます。このような変化の背景には、中国では経済発展に伴い民主化が進むだろう、大国になるにつれて国際社会における責任あるステークホルダーとなるだろうという国際社会の認識がありました。
しかし、現実にはVTRにもあるように、中国共産党は独裁体制をさらに確固たるものとし、国際社会においても既存の秩序に対して挑戦的な態度をとっています。つまりかつての楽観的な対中認識は間違いであったことが明らかとなったのです。
このような現実を受け、アメリカは中国に対する対立の路線へと転換したのです。
ここで問題となるのは、日本が採るべき外交方針はいかなるものか、ということです。
これには大きく分けて2つの選択肢が考えられます。
1つ目は、松原氏が指摘したように、アメリカに同調した対立路線からの離脱です。松原氏はそこまで踏み込んだ言及はしていませんが、つまりは中国との対立を抑え、中国との関係改善を推し進めていくべきだという意見です。
2つ目は、中国の現状変更政策を抑え込むことです。つまり、中国の一方的な現状変更や他国への不当な介入に対してははっきりとノーを突き付け、毅然とした態度で臨むことです。
1つ目の選択肢である中国との宥和を進めていくことは、日本が中国の影響下に置かれることを意味します。これは中国が東南アジア諸国などに対して行ってきたことを見れば明らかです。中国は圧倒的な軍事力と経済力を背景に東南アジア地域、南シナ海、東シナ海への進出を進めています。そして現在、その地域での圧倒的な軍事的プレゼンスを確保しつつあります。このような拡張主義的な方針は、中国共産党の一党独裁体制が盤石である以上継続される可能性が高いと考えられます。そして中国が次に手を伸ばすのは、台湾、日本といった国々です。そしてそこで日本が中国の拡張路線を受け入れるということは、現に中国の力に屈しつつある東南アジア諸国と同じ道を歩むことを意味します。
これを避けるためには、2つ目の選択肢である、中国の現状変更を抑え込む方針をとる必要があります。日本国民の安全を守るため、また民主主義や法の支配といった日本の根幹をなす制度を維持するために、中国の勝手な振る舞いには対抗する必要があるという考えです。中国の強引で一方的な現状変更は、国際法違反であり日本の安全保障を脅かす問題です。このような問題を看過せず、毅然とした態度で臨み、中国の勝手な振る舞いを抑えることではじめて、日本の安全を守ることが可能となるのです。
このような論点が提示せずに、なされた放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。