2019年11月17日 サンデーモーニング(前編)

2019年11月17日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年11月17日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 桜を見る会と長期政権の「驕り」について報道された部分
② 米国によるGSOMIA破棄撤回要求について報道された部分
③ 「風を読む」にて令和時代の天皇制について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 桜を見る会と長期政権の「驕り」について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 水曜日、安倍総理は来年度の桜を見る会の中止を突如決定した。野党は、この会に総理の後援者ら850人を招待していたことについて追及を強めている。桜を見る会前夜祭での会費は5000円とされているが、ホテル側は一人当たり1万1000円と説明している。日本大学岩井奉信教授によると、差額を首相事務所が補填していた場合には公職選挙法違反に問われるという。安倍総理は急遽会見を開き「安倍事務所やて講演会としての収入・支出は一切ない」と釈明したが、野党は「国会から逃げ回っておいて突然会見なんてやられたら、非常にせこいやり方(立憲民主党枝野代表)」と不意打ち会見に反発を強めている。

【アナウンサーによるパネル説明】
・桜を見る会の参加者数は、5年前(2014年)より4000人増えて2019年は約1万8200人となった
・過去5年間予算額は一律1766万円だが、実際の費用は5518万円(2019年)かかっている
・この実態に合わせるかのように来年度の概算要求は5728万円にのぼっている
・日本大学岩井奉信教授は「疑惑を晴らすには資料が必要。会費5000円で本当に済んだのかどうか、見積書やホテル側の計算書などを公開すべき」と指摘

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):日本の政治が身内に配慮した矮小な政治になっているんじゃないかというところに最大のポイントがある。本当に日本の政治が議論しなければならない大切なテーマは、「本当にアベノミクスは国民を幸福にしたのか」。同時に、「日本は世界でどういう役割を果たしていくのか」というビジョンや構想が一切伝わらない。我々もこういう話題に引きずり込まれて議論せざるを得ないような局面になっていること自体、少し深く考えなければいけないと思う。

大宅映子氏(要約):安倍政権の物事の判断について不満がある。「やめりゃいいんでしょ」という感じは国民に対して失礼。説明する義務があるのに、その責任を逃れるためにこのやり方をいつまで続けるつもりなのか。とても腹が立つ。

姜尚中氏(要約):これだけ長期政権が続く中で、党と国家と公はイコールであるという空気が流れている。結局問題は有権者がどう考えて政治を変えたほうがいいと思うのか思わないのか。これが最終的な回答になる。結局は同じことが繰り返されると思う。政党は一つの政治結社に過ぎないので国家や公とは違うが、だんだん区分けができなくなっていく空気の中で、既成事実が積み重なっていく。

高橋純子氏(全文):若者が、何が悪いのか分からないってことですけれども、端的に言うと公私混同ということですよね。人の税金を使って、「おもてなし」ならぬ「依怙贔屓」をしてると。こういう問題なんじゃないかなと思います。で、実際に先ほどグラフにあったように、予算額と実際に使われた支出額に開きがあるじゃないかと。おかしいじゃないかというのは、先の国会でですね、指摘をされたんですね。で、それを受けてじゃあどうしたかというと、来年度の概算要求では、実態に合わせてこれまで1800万円弱だった予算を、一挙に5000万円に増やしていると。要するに問題を指摘されて、「だったら実態の方を直しましょう」というんじゃなくて、「じゃあ予算を増やしましょう」と。こんな開き直りを平然とやっていたと。そしてこれだけ問題が大きくなると、さっさと「じゃ止めます」ということにしてしまうと。この無責任さたるや頬っ被りをしてそのまま過ぎ去ればいいという態度ってのはいかがなものかというふうに思います。で、もう一つあの、先ほど安倍さんがですね、ぶら下がりのことを会見と言ってましたし、メディアもですね、会見と言ってますけれども、あれはもう立ち話ですね。会見というふうに私は呼ぶべきではないというふうに思ってます。これだけ重要な問題。やっぱり首相がどうこうというものじゃなくてやっぱり政治家そのもの。政治家として大丈夫なのかという。公職選挙法に違反してるんじゃないかという疑念があるなかでですね、ああいうぶら下がりで物事を済まそうという姿勢そのものがやはりおかしいと思います。やはり記者会見という場できっちり説明をする。そして国会に出てきてきちんと説明をする。それがまず何よりも求められてるというふうに思います。

松原耕二氏(全文):今高橋さんがおっしゃいましたけども、まああの会見で総理は、ここで質問した方がいいよと。あれはもう、これで終わりだよと。まあ、(ああ)いうふうに考えるのが普通だと思うんですよね。これでもし幕引きできるというふうに考えてるとしたらやっぱり、これまでの、政権としてのおそらく成功体験というかですね、公文書は何度もなくなったり改ざんされることが続いてますけど、今回も名簿がないわけですね。しかも、国会おそらく、国会を呼ばれたら行きますよって言ったことは、呼ばないだろうと思っているということだと思うんですが、国会は結局与党は今チェック機能を失っていて、下請け化してると言われてもおかしくない状況ですから、国会で説明もできるだけしない形になるだろうと。そして、このままですね、早く幕引きして、国会で議論せずシーンとしていれば、桜が散るように国民はおそらく忘れてくれると。支持率は下がらないと。まあこういうことが続いているということだと思うんですよね。今週、あの安倍政権は歴代最長の長さになるんですよね。だからまあ、最長たらしめた構図がここにあるし、しかもまあ、最長のおごりというのもここに凝縮されてるような気がしますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。

高橋氏(抜粋):若者が、何が悪いのか分からないってことですけれども、端的に言うと公私混同ということですよね。人の税金を使って、「おもてなし」ならぬ「依怙贔屓」をしてると。こういう問題なんじゃないかなと思います。で、実際に先ほどグラフにあったように、予算額と実際に使われた支出額に開きがあるじゃないかと。おかしいじゃないかというのは、先の国会でですね、指摘をされたんですね。で、それを受けてじゃあどうしたかというと、来年度の概算要求では、実態に合わせてこれまで1800万円弱だった予算を、一挙に5000万円に増やしていると。要するに問題を指摘されて、「だったら実態の方を直しましょう」というんじゃなくて、「じゃあ予算を増やしましょう」と。こんな開き直りを平然とやっていたと。そしてこれだけ問題が大きくなると、さっさと「じゃ止めます」ということにしてしまうと。この無責任さたるや頬っ被りをしてそのまま過ぎ去ればいいという態度ってのはいかがなものかというふうに思います。で、もう一つあの、先ほど安倍さんがですね、ぶら下がりのことを会見と言ってましたし、メディアもですね、会見と言ってますけれども、あれはもう立ち話ですね。会見というふうに私は呼ぶべきではないというふうに思ってます。これだけ重要な問題。やっぱり首相がどうこうというものじゃなくてやっぱり政治家そのもの。政治家として大丈夫なのかという。公職選挙法に違反してるんじゃないかという疑念があるなかでですね、ああいうぶら下がりで物事を済まそうという姿勢そのものがやはりおかしいと思います。やはり記者会見という場できっちり説明をする。そして国会に出てきてきちんと説明をする。それがまず何よりも求められてるというふうに思います。

要旨をまとめると、
・日本の若者は「この問題の何が悪いのかわからない」と考えているらしいが、これは税金を依怙贔屓に利用する公私混同の問題だ。
・予算額と実際の支出額の間に開きがあり、野党に指摘されると実態を直すのではなく予算を増やした。これは開き直りに過ぎない。
・安倍首相はぶら下がりのことを会見と言っているが、あれは立ち話であって会見ではない。公職選挙法に違反する疑念のある重要な問題なのだから記者会見、国会での説明が必要であってぶら下がりで済まそうとする姿勢そのものが問題。

というものです。

しかしながら、
・日本の若者が「桜を見る会」問題についての詳細を理解していないとする主張には客観的根拠がない。
・桜を見る会は各界において功績のある人間を慰労する内閣の公的行事であり、今年は約1万8000人もの人が参加している。「総理の後援者が850人もいた」「呼ばれない人もいるので桜を見る会は依怙贔屓」とする主張は事実に即していない。また、一般人を招待する政府の行事が多々ある中で桜を見る会のみ問題視する姿勢は政治的に公平とは言えない。
・実際の支出額に合わせて予算を増額することは普通のことであり、実態を直さなかったことを問題視する姿勢は政治的に公平とは言えない。
・安倍首相がこの問題についてぶら下がり取材で済ませたことを「記者会見、国会での説明をすべき」という主張は桜を見る会の問題の大きさを過剰に大きくとらえたものであり、事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):今高橋さんがおっしゃいましたけども、まああの会見で総理は、ここで質問した方がいいよと。あれはもう、これで終わりだよと。まあ、(ああ)いうふうに考えるのが普通だと思うんですよね。これでもし幕引きできるというふうに考えてるとしたらやっぱり、これまでの、政権としてのおそらく成功体験というかですね、公文書は何度もなくなったり改ざんされることが続いてますけど、今回も名簿がないわけですね。しかも、国会おそらく、国会を呼ばれたら行きますよって言ったことは、呼ばないだろうと思っているということだと思うんですが、国会は結局与党は今チェック機能を失っていて、下請け化してると言われてもおかしくない状況ですから、国会で説明もできるだけしない形になるだろうと。そして、このままですね、早く幕引きして、国会で議論せずシーンとしていれば、桜が散るように国民はおそらく忘れてくれると。支持率は下がらないと。まあこういうことが続いているということだと思うんですよね。今週、あの安倍政権は歴代最長の長さになるんですよね。だからまあ、最長たらしめた構図がここにあるし、しかもまあ、最長のおごりというのもここに凝縮されてるような気がしますね。

要旨をまとめると、
・これで幕引きできると考えているなら、森友加計問題をはじめとする政権の成功体験によるものだ。
・国会や与党は政権の下請けになってしまっているので、国会で説明もされないだろう。早く幕引きして国会で議論せずシーンとしていれば国民は忘れるので支持率は下がらない。これが安倍政権を歴代最長政権たらしめた構図であり、最長の驕りが表れている。

というものです。

しかしながら、
・森友加計問題については検察等によって安倍政権の行動に違法性がないことが明らかにされており、これを「不正の幕引きを図った成功体験」とする松原氏の主張は明らかに事実に反しており、また政治的に公平とも言えない。
・「国会や与党が政権の下請けになっている」という主張に客観的根拠はなく、松原氏の主観に過ぎない。
・安倍政権が歴代最長政権となったのは安倍政権の堅調な運営と野党に対する国民の不信感によるものであり、「国民がスキャンダルを忘れるから支持率が下がらないのだ」とする松原氏の主張は日本国民を愚弄するもので事実に即しておらず、政治的に公平とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍政権の長期政権ゆえの驕りが露わになった」「前夜祭の会費5000円や領収書がないのはおかしい、安倍政権が補填していたら問題だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「安倍政権が長期政権になったのは森友加計問題や桜を見る会など無駄な追及を繰り返す野党への不信が原因だ」「政権運営の優秀さが長期政権を生んだ」「ホテルと交渉すれば会費5000円は十分ありうる」「ホテルニューオータニへの営業妨害だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 米国によるGSOMIA破棄撤回要求について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にて令和時代の天皇制について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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